暗戦 デッドエンド/ RUNNING OUT OF TIME

【監督】 ジョニー・トゥ
【出演】 アンディ・ラウ/ラウ・チンワン

※ややネタばれ

■ 「末期ガンで余命数週間と宣告された男(アンディ・ラウ)は、ある目的のため完全犯罪を計画する」

あらゆる意味でよくできた映画でした。面白い。なにより、アンディ・ラウのSッ気たっぷりの犯罪者ぶりが最高です。彼に一方的に見初められ犯罪の片棒を担がされる交渉人のホー刑事にラウ・チンワン。 仕事命で女っ気がないため、「ゲイだって噂よ」とからかわれていたのが、まさか伏線だったとは!!

とにかくアンディさんが魔性で魔性でしょうがない(笑)。警察に追われ逃げる途中で乗り込んだバスの中で、偶然居合わせた女にカップルを装うことを優しい笑顔で強要。拳銃をチラリと見せつつ肩を抱き、「もたれかかって」ですから。そこでまた言われた女がもたれかかるどころか全身を預ける勢い!やりすぎ!それは相手がイイ男だからこその過剰な反応だろう!!目が完全にイっちゃってるようなブサイクが同じこと言ってきたら確実に逃げ出すはずだ。しかも2度目は自分から誘ってるしー!この女、あれからずっと同じバスで張ってたんじゃなかろうかとまで邪推しました。ホーにいたっては完全に骨抜き。最初は公衆の面前で平気で使えない上司をバカにするような強面だったのにーー!最後はもうねぇ(笑)。「どうせあいつ死ぬんだし」という気持ち半分、愛半分とお見受けしました。(下手すりゃ3:7の割合かも)

しかしスター(アンディ様)は血を吐くシーンひとつとっても派手ですな。豪快すぎて「ホントにこの人、余命わずかなの?」と少しばかりの疑いが。最後のあの笑顔を見てもどうも死にそうにないんですが。あと、やろうと思えば徹底的に渋くクールにやれそうな題材なのに、どうしてコントにしか見えないシーンやアンディさんの女装をあえて入れるのか。いや女装に関してはストーリー上あってもおかしくはないんだけどさ。それにしてもあんなに張り切って胸の谷間まで作ることなかろうに。(ホー刑事に「行く前にキスして」と言うアンディのキスの受け方があまりに堂に入ってて怖い気がしたというのはここだけの話)


ハッピー・ブラザー/家有喜喜事

【監督】 クリフトン・コー
【出演】 レスリー・チャン/チャウ・シンチー/レイモンド・ウォン/マギー・チャン/サンドラ・ン

※ネタばれしてます。

■ タイトル通りの兄弟物。ぶさいくなくせに外に女を作ってる長男(レイモンド・ウォン)、オカマちゃんの次男(レスリー・チャン)、あほの三男(チャウ・シンチー)を中心に繰り広げるラブ・コメディです。

家事全般は完璧だけど女捨てちゃってるせいで、夫に愛人を作られてしまう長男の嫁ことサンドラ・ンがあまりにブサイクで最初ひいてしまいました。ヒゲ生えてるんやもん(笑)。しまいには愛人を家に連れて帰ってきた兄に怒り「あんた、なめられてるのよ!」とサンドラを家から出して自立させようとするのが、次男のレスリー。持つべきものはオカマの友人だとしみじみ思った。家の中で唯一の味方である彼の優しいこと!ホステスとして働いてる店までスープとか持ってきてくれるんだもん。泣けるわ〜。三男のシンチーは女たらし。女優(?)のマギーに一目惚れしてさんざん迫った挙句、「よくやるよな二人とも・・・」としか言えない必殺技でモノにする。でも釣った魚には餌をやらないんですな。浮気現場を抑えられて逃げた先で事故に遭い、ただでさえおかしい頭がますます変になってしまいます。家で介護受けてる場面は「これ上映していいのか?」というくらいヤバイんですが(笑)。パジャマのまんま干されてるシーンは可愛いかったな。でもシンチーの目ってよく見ると怖い。あれはお笑いの人の目じゃないな。歯がちっこいのも怖い。(怖い怖い言いすぎ)

最後は大ハッピーエンドに終わるのだけど、サンドラ・ンには家に帰って欲しくなかった。夫と愛人を見返すためにキレイになって頑張ってる彼女はすごくカッコよかったのにな。あのあほ男には勿体無いと真剣に思うよ。てっきりオカマだと思ってたら意外にも女の子が好きだったレスリーにも驚き。彼には最後までオカマちゃんのままでいて欲しかったよう。可愛いんだもん。ぷりぷり加減が。(ブエノスアイレスとはまた違う可愛らしさ。天敵のおっさんみたいな伯母(テレサ・モウ)に渋々「こんにちは、伯母様」と挨拶するシーンのキィ!って感じがたまりません)


大英雄/東成西就

【監督】 ジェフ・ラウ
【出演】 レスリー・チャン/トニー・レオン/ジャッキー・チュン/レオン・カーフェイ/マギー・チャン/カリーナ・ラウ/ジョイ・ウォン/ブリジット・リン/ヴェロニカ・イップ

※ネタばれし放題です。

■ 「楽園の瑕」(ウォン・カーウァイ監督)の出演者が本編の撮影が中断している間にちゃちゃっと撮ってしまった前代未聞の問題作。1993年制作。93年といえば「ギルバート・グレイプ」や「父の祈りを」等の名作が生まれた年でもあります。その中でこっそりこんなの撮ってるなんて。素晴らしき哉、香港。

金輪国の王妃(ヴェロニカ・イップ)は従兄の西毒(トニー・レオン)と共謀し、国王から王の印章と王位を奪い、国を乗っ取ろうとします。しかし、肝心の印章は第三皇女(ブリジット・リン)が持ってとんずら。慌てて後を追う西毒ですが、空飛ぶブーツが発火し墜落。(この場面のしょぼさには目を瞠るばかり。大真面目に飛んでるポーズを(飛んでないのがバレバレなのに)とり続けるトニーに頭が下がります)ボロボロになりながらもなんとか生還したところに出会ったのが、失恋を苦に自殺するところだった北丐(ジャッキー・チュン)。「俺を殺してくれ!」と迫る北丐に「では殺してやろう!」と秘技・蝦蟇なんとかを披露する西毒。しかし死にたいはずの北丐に逆にボコボコにやられて、ついには泣いてしまう西毒が死ぬほど可愛い(笑)。泣きながら「お前を殺すには俺はまだまだ未熟なんだ」つってるのに「そんなことない」と彼をガッチリキープする北丐は完全に遊んでいる様子が伺えます。

その後、毒までくらって唇と耳が巨大化する西毒ちゃん。絵描き歌のコックさん状態です。甘いマスク(死語)が売りのトニーさんの「こんなんなっても可愛いもんは可愛いでしょ?」という心の声がうっすら聞こえてくる余裕の珍メイク。すっかりユウジ化した西毒を可愛いなぁと思ってるのがありありの北丐は彼を連れて丹霞山へ行きます。なんで一緒に行くことになったのかは忘れました。なんかあまりにひとつひとつのエピソードが濃いもんで、全体の話の流れがわからなくなるんだよね。その点は「楽園の瑕」と一緒か。

逃げ延びた第三皇女が出会うのが東邪(レスリー・チャン)と彼の妹弟子(ジョイ・ウォン)。皇女に一目惚れした東邪は西毒に対抗できる秘法である九陰真経を探しに丹霞山に向かいます。そこで九陰真経を守っているのがゴリラと鳥と怪獣。93年といえどこの着ぐるみはあんまりあれではないの。面白いと思ってやってるのか、マジで予算が足りなかったのか判断つきませんでした。山で鉢合わせした怪物トリオと東邪たちの永遠とも思えるギャグの繰り返しには気が遠くなる思い。お互い怖がっちゃって出会う度にキャーキャー大騒ぎしたり、壺(?)をあっちやったりこっちやったりするのが延々と続きます。北丐が西毒をバキバキにやっつけるシーンもそうなんだけど、とにかくしつこいくらい同じことやるんだよね。あともう1回やったら殴るよ!と言ってもやる。それがだんだん面白くてしょうがなくなるから慣れって怖いです。

第三皇女の婚約者の南帝(レオン・カーファイ)は仙人になるためには「胸にあざのある人に三度『我愛イ尓』(アイラブユー!)と言ってもらえばよい」と聞き、街で手当たり次第に、「あなたの胸を見せて!」と迫り変態扱いされます。実際変態です。偶然、東邪の胸にあざを見つけた南帝はさっそく彼に「我愛イ尓」と言ってくれ!と迫ります。が、南帝のあまりのキモさに東邪失神。可憐です。あの可憐さはそこいらの女には出せないかも。吐くほどキモかったせいか錯乱した東邪はついに「我愛イ尓」と言ってしまいますが、2回で力尽きてしまいます。頭だけが残った南帝が「あと1回言ってくれないと困るよ〜!」と東邪を追い掛け回すシーンは夢に見るほどの恐ろしさ。しかし同時に思いました。「大英雄はあんただよ。レオン・カーファイ・・・」と。この作品では出演者全員が香港役者魂とも言える怪演を見せてくれてはいますが、彼にはとうてい及びません。トニーもよくやってはいるけど、あの唇も耳も「蝦蟇戦法だぞー!」と一生懸命ほっぺたをぷうぷうさせてもどこか、「可愛いと思ってやってるだろう」というのが見える。その点、彼には邪心がありません。直球勝負です。つうか、この人バカなの?頭ん中すっからかんなんじゃないの?と人を不安にさせるほどの邪気のなさ。天晴れでした。

ごちゃごちゃやってるうちに東邪たちに追いついた西毒が怪獣トリオに出くわし、「ひとっぽく見えるけど、ホントはアヒルなんだ」と言い張るシーンは悶絶ものの愛らしさ。(やっぱり計算してるだろー!)しかもこの場面はラストに続く伏線となってたりして見逃せません。最後はまんまと九陰真経を会得した西毒対その他出演者全員の一大アクションシーンが展開されます。西毒の顔もいつの間にか元に戻っていて、こんな映画なのにちょっとカッコヨカッタりするのが驚きです。北丐でさえ敵わないほど強くなった西毒を倒せる者は誰もいないのか!いました。もちろん≪大英雄≫レオン・カーファイが満を持しての登場です。嘘です。ぽやーーんと出てくるだけです。2時間に渡ってそれぞれ勝手に迷走しているだけのように見えた各エピソードがオチに向ってひとつの形に収束しているあたり、意外にもちゃんと考えられた作品なのでしょうか。少なくとも「楽園の瑕」よりわかりやすかったことは確かです。

最後は旧正月映画らしく、出演者全員がカメラに向ってご挨拶。長い夢から醒める瞬間です。現実に立ち返るとこの映画を撮ろう!と言われてすんなり承諾した役者たちの脳をスキャンしたい気になりますが、やってる方が見てるだけよりよほど楽しそうです。私も出たい。「DVD化されるのを心待ちにしていた!」という声が多く寄せられるのも納得の一大娯楽作品でした。「楽園の瑕」よりよっぽど面白い。←でもこっちを先に観ないと出演者の偉大さが伝わりにくいやも。


デス・トゥ・スムーチー/DEATH TO SMOOCHY

【監督】 ダニー・デヴィート
【出演】 エドワード・ノートン/ロビン・ウィリアムズ/キャサリン・キーナー/ダニー・デヴィート

■ エドワード・ノートンとロビン・ウイリアムズのW主演。なのにビデオスルーなのもなんとなくわかる珍作でした。面白くないわけじゃないんだけど、笑っていいのか迷うんだよね。

子供向け番組の人気スター、レインボー・ランドルフ(ロビン・ウィリアムズ)は収賄容疑で逮捕され、番組を降ろされる。代わりにメインを務めるのがピンク(紫?)のサイ(着ぐるみ)のSmoochy(エドワード・ノートン)。瞬く間に人気者になったSmoochyを逆恨みしたレインボーは彼を殺し、再びスターの座に返り咲こうとするが・・・。ってのがストーリーです。暴力シーンあり下ネタありで、ピンクのサイに騙されて子供と一緒に見た親は慌てるでしょうな。番組中、 Smoochyが子供たちに配るクッキーがランドルフにすり返られて、放送禁止な形状になってるのを「これはロケットだーーー!!!」と強引にまとめるノートンがおかしくて爆笑したけど、ありゃ男の子は絶対つっこむと思うよ。

レインボーと違い、根っから善良でおまけに自然食主義の彼をどこまで額面どおりに信用していいのか、最後までわかりませんでした。なにかっちゃ「子供たちのために!」とまくしたてるんだけど、ホントにそう思ってるの?と疑いっぱなし。なんせ相手はエドワード・ノートン。そら疑うさ。「インソムニア」に続き悪役のロビン・ウイリアムズはやっぱり器用な役者さんだと思いました。歌もダンスも上手で芸人としてはSmoochyよりずっと上。Smoochyはもっとレインボー師匠を敬わなければいけません。

何を思ってピンクのサイに扮したのかわからんノートンさんですが、特典映像を見る限り「ミニミニ大作戦」よりよほど楽しそうでした。変な人。


さらば、わが愛〜覇王別姫〜

【監督】 チェン・カイコー
【出演】 レスリー・チャン/チャン・フォンイー/コン・リー

■ 長いです。3時間弱あるのかな。満州事変や文化大革命といった難しい話もありまして、正味のとここの映画のすべてを理解しているわけではありません(いやまったくしてないかも)。ただただ印象的だったのがレスリー・チャン演じる程蝶衣とコン・リー演じる菊仙の女の戦いの凄まじさ。つうか菊仙の圧倒的な強さ。蝶衣はもう連戦連敗っす(泣)。

もともと娼婦の菊仙が、蝶衣の兄弟子の小樓(チャン・フォンイー)に身請けされて嫁にきたところから二人の戦いは始まるのだけど、子供の頃からの蝶衣と小樓を見てるこっちとしては、「お前ちょっとくらい遠慮してやれ」と思うわけです。ところが菊仙にはその気まるでなし。あくまでも小樓と二人だけで幸せになろうとするんですな。そのためにはすべてのことに口も顔も出すという図々しさで女の底力をまざまざと見せ付けられる感じ。蝶衣も敵に回した相手が悪過ぎたなぁ。あの女には並大抵のことでは勝てんよ。

ホントはかなり苦手なタイプの菊仙だけど、なぜか憎めないように思うのは他人に嫌われようがどうしようが、すべて自分で決めて実行する潔さにあるのかも。何が起きても揺るがないし(その点は蝶衣と似てるような気もする)。しかもなんだかんだいって蝶衣に一番優しかったのも彼女かも知れません。弟子のぶさいくな男に役を盗られた蝶衣の肩に菊仙が衣装を掛けてやるシーンは切なすぎて倒れるかと思った。(蝶衣ったら「ありがとう、姉さん」とか言うのよ!言わなくてもいいってー!)

この情の強い二人に愛される小樓のどこがそんなにいいんだか、私にはひとっつもわかりませんでしたが(子供の頃の小樓は男気に溢れたいい奴だったのに、いつからあんなぼんくらに)、二人の気持ちはよくわかる。彼女たちには他にいなかったんだよね。いや、いるにはいたんだけど菊仙も蝶衣も男運が悪すぎた。特に蝶衣に言い寄ってくるカマキリみたいな男のキモさは天下一品。かさかさしてそうなのに、視線だけが粘っこいというある意味目が離せない珍キャラでした。人間はそう悪くなさそうだったけど、蝶衣にあれで我慢しろとはさすがに言えないっす。


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