キラーネット・殺人ゲームへようこそ/KILLER NET

【監督】 ジョフリー・サックス
【出演】 ポール・ベタニー/タム・ウリィアムズ/エミリー・ウーフ

■ ポール・ベタニー見たさに中古ビデオを購入して約1年。最初の30分があまりにもつまらなくて放置しっぱなしだったのを、マスコマでベタニー熱が再燃した今なら見れるはず!!と思い引っ張り出してきました。 で、感想ですが。最後の20分だけはベタニー・ファンなら必見。他はどうでもよろしい。

ストーリーは、主人公のスコットが家でねちねちやってるコンピュータ・ゲーム(殺人のシュミレーションゲーム。趣味悪い)そっくりの殺人事件が実際に起きて、容疑者としてスコットが逮捕されるが果たして事件の真相は?という、ようはちょっと手の込んだ火サスです。ベタニーはスコットのルームメイトで法科の大学生ジョー役。98年の映画だから当時、26、7歳でしょうか。若いです。そして細い。細いというか身体が薄いんですな、この人は。薄くて長いという不思議な体型。(脱ぐとお腹だけがぷにぷにしてるあたり意外と幼児体型か)

さておき作品の話ですが、ミステリーとしてはどうしようもないです。すぐに犯人わかります。一応、偽装工作らしき小技も使ってましたが、これが「そんなことで刑事を騙せると本気で思ってたんか!」と泣けてくるくらいのお粗末さ。案の定、あっさり裏取られて逮捕されとりました。しかもこれタイトルどおり、「殺人事件」ではなく「殺人ゲーム」なもんで後味が悪いったらありゃせんです。(犯人が捕まった、これで安心だ!と思ったら実は・・・という例のあれ。せめて意外な人が真犯人だったらまだ話として面白いのだけど、それもないというね。嫌な話ですよまったく) ベタニーファンの見所といえば、なんといっても容疑者のルームメイトとして警察に尋問を受ける場面。これに尽きます。また担当の警部補がマスコマのヒギンズくんだったりするんですよ!マスコマでベタニー演じるマチュリン先生がヒギンズくんにそこはかとなく厳しいのは、「この時の取り調べで泣かされたのが原因だったのか!」とうっかり萌えること間違いなし!!いやホント、見事な泣きべそっぷりです。がわいい〜。 最後、おんおん泣いちゃうベタニーの光の加減でかグリーンに見える髪と、長い睫毛を拝みたい方はどうかレンタルしてみて下さい。私のように買ってまで見る価値があるかどうかは、あなたのベタニー好き度次第。


アダプテーション/ADAPTATION

【監督】 スパイク・ジョーンズ
【出演】 ニコラス・ケイジ/メリル・ストリープ/クリス・クーパー/ティルダ・スウィントン

■ これはもしかしたら傑作なのかも知れないと、映画見たあと、他の人の書いたしっかりしたレビューを数本読んでから気づきました(遅)。

物語は「マルコヴィッチの穴」で成功を収めた脚本家、チャーリー・カウフマン(ニコラス・ケイジ)が、作家スーザン・オーリアン(メリル・ストリープ)の「蘭に魅せられた男 驚くべき蘭コレクターの世界」のシナリオ化を依頼されたものの、作品自体にドラマがないためになにをどうしていいやらわからず、苦肉の策として、双子の弟ドナルド(ニコラス・ケイジ二役)に薦められたシナリオ講座に参加したり、スーザンに会いに行ったりしてるうちに話がとんでもない方向に転がり、大変だー!どうしよう!となって人も簡単に死んじゃって、それでもなんとなくハッピーエンドに終わるといった感じでしょうか。全然説明になってませんな。だってこれ、こういう映画の見方を知らん人間には不親切な作りになってるんやもん。あとでいろんなサイトを巡ってようやく、ゆったりとした前半(というか正直退屈)に比べ、いきなりいろんなことが巻き起こる後半というバランスの悪さにもちゃんとした意味があるってことを理解できた私のような人間にはちょいと高尚すぎました。ごめん、読解力なくて。でもニコラス・ケイジの尋常じゃない不細工ぶりにも問題があると思うけどなぁ。ストーリー追うより彼の顔に嫌でも注目するような仕組みになってると思うのはうがちすぎですか?(ずるいよ、あのハゲ)

チャーリー・カフウマンとスーザン・オーリアンは実在の人物だそうで、自分をネタに笑い取ってる脚本家はいいとして、原作者のスーザンはよくこれにOK出したなと。彼女も脚本に一枚噛んでるとはいえ、なかなか洒落のわかる方のようです。原作「蘭に魅せられた男」の主人公、ジョン・ラロシュ役のクリス・クーパーはこの作品でアカデミー賞助演男優賞を獲得。「前歯が一本もないのにハンサムで魅力的」ってどんな男かと思ったら、これがホントにイイ男だったりしましたよ。変人の蘭おたくでおまけにポルノ写真をネット通販してるような、普通に考えたら「あらいいじゃない」と思える要素なんか何ひとつないというのに、スーザンが次第にハマっていくのもなんかわかるわぁという不思議な色気。例えて言うなら火野正平か←古いし違う。

タイトルの「アダプテーション」から何も汲み取らずにぼさーっと見ていた私が勝手に決めたこの作品の主題は「人間、気の持ちよう」です。双子だけにまったく同じルックス(デブでハゲで不細工)なのに、なぜか弟のドナルドだけがGFと上手くやってられるのは、「学生時代、弟がクラスの人気者の女子と気軽に話してるのを羨ましく思いつつ、彼が立ち去った後、その子が笑ってたのを見てまるで自分のことのように傷ついた」チャーリーと、「笑われてもいいんだ。僕が彼女を好きだという気持ちは彼女にも奪えないから」とあくまで前向きなドナルドとの性格の差にあるのだなと深く納得。自分の気持ちを大事に正直に生きてる人は強くて魅力的なのだ。ニコラス・ケイジが普段よりさらに不細工な顔で言う言葉には説得力があるなぁ。私も見習おう。


ベント 堕ちた饗宴/ BENT

【監督】 ショーン・マサイアス
【出演】 ロテール・ブリュトー/クライブ・オーウェン/ポール・ベタニー/イアン・マッケラン/ミック・ジャガー

※盛大にネタばれしてます(日本の舞台版含む)

■ ブロードウェイの舞台劇を映画化。第二次世界大戦中のベルリン。ゲシュタポの手によって逮捕された同性愛者のマックス(ロテール・ブリュトー)とホルスト(クライブ・オーウェン)は、悪名高いダハウの強制収容所で地獄のような生活を送りながら言葉だけで愛を交わす。

最近、日本でも椎名桔平と遠藤憲一主演で舞台がありました。マックスが椎名氏でホルストが遠藤氏。ベタニーが演じたナチスの大尉役とミック・ジャガーが演じたゲイの歌姫の二役を篠井英介氏。個人的には遠藤氏にベタニの役をやってもらいたかったな(爬虫類系のルックスと雰囲気が似てると思うのだ)。で、この舞台版のレビューを何本か読んだのですが、「椎名桔平がどうにもあれ・・・」と書いてる人が多いようでした。最後も映画版とは違うようですな。映画の方はホルストを喪ったマックスが彼のシャツを着て後を追うというもので、自分が生き残るためにはパートナーでさえ見殺しにし、同性愛者であることを隠していたマックスが、ゲイの印であるピンクの星を身に付け、自ら死を選んだところに彼の絶望の深さを見るわけですが、舞台版の方はそうではなく生き続ける方を選ぶようです。どちらかというと私は映画版の最後の方がしっくりくるように思います。あの過酷な収容所暮らしで唯一の心の拠り所を失ってまで生きていけるとは思えないから。(ホルストとマックスの間に本物の愛情があったとは実はちょっと思えないんですが。でもお互いいないと生きていけない。そんな関係ではないのかな)

さておき、普通ならまず観ないタイプのこの作品をレンタルしたのは、ジュード・ロウとポール・ベタニーが出てるという情報を得たからなんですね。ジュードは最初の方、ゲイ御用達のナイトクラブの客として(アイ・パッチしてます)一瞬出てくるだけですが、ベタニーは出演時間こそ短いもののかなり重要なナチスの将校役でした。収容所に新しく赴任してきた若き大尉という設定なんですが、確かに若造。それが大尉とは、よほど悪どいことやってここまできたんだなという感じです。で、案の定、冷酷そのもの。薬を貰いたいマックスにご奉仕させたり(このひと絶対ゲイじゃないのに、あえてそういうことさせて愉しんでると思う)、その薬が実はホルストのために手に入れたものだと知った瞬間、目をキラーンとさせて二人を嬲ったりとやりたい放題。しかも、「You! Jew!」「Walk!」「Watch!」と極力単語だけで命令するあたり、ユダヤ人のそれも同性愛者なんか人間とも思ってないですよってな匂いがぷんぷんしてて、ムキーー!。普段は大好きなあの声がもうたまらなく耳障りで後ろから撃ち殺してやろうかと。(でも「Relax and Watch!」には不謹慎にも萌え)。 ベタニー、映画初出演がこれとはなぁって感じですが、ナチスの制服は似合ってるんだな。不本意ながらもカッコイイと思ってしまった。

それと歌姫ミック・ジャガーですが、最初こそキツイなおい!と思ったけど、歌は上手いし(当然か)演技も上手い。ちょい役ですが印象的でした。


キャメロット・ガーデンの少女/LAWN DOGS

【監督】 ジョン・ダイガン
【出演】 サム・ロックウェル/ミーシャ・バートン/クリストファー・マクドナルド

※ネタばれしてます。

■ キャメロット・ガーデンというのは町のぐるりを壁で囲んだ高級住宅地のことです。きちんと区画整理された土地に同じような家が立ち並び、どこの家の庭も青々とした芝生が広がり、週末にはそこでホームパーティが開かれるようなリッチで平和な町。ただし住人はゲスばっかり。

ここで芝刈りの仕事をしているトレント(サム・ロックウェル)は、町の外の森で一人暮らししている貧乏人。選民意識の強い町の住人からはあからさまにバカにされてます。中にはトレントの身体目当てで彼のトレーラーハウスに忍んで来る女もいるけど、両親にも友達にも恋人として紹介するはずもない。そんな存在。ところが、孤独だけれどそれなりに気楽な生活を送るトレントの元に、キャメロット・ガーデンに新しく引っ越してきた少女、デヴォン(ミーシャ・バートン)が現れたところから、彼の生活は一変します。というかさせられる。いやあ迷惑だったな、デヴォン!まだ10歳の彼女がトレントの身体狙いだったとは思わんけど、親をだまくらかしてまで勝手に泊まりにきたりしてなかなか侮れないもんがありました。

一方的になつかれてるのはトレントの方だけど、世間はそうは見ない。なんせ相手は町の外の芝刈り男だし(差別)。結局、「うちの娘が変態野郎にイタズラされた!」とそういう誰もが予想する展開になるんですが、ここでただトレントが袋叩きにあって謂れのない罪を負わされるという話で終わらないのが偉いといえば偉かった。それにしても強引なオチではあるのですが。

とにかく大人たちは最初から最後までデヴォンに翻弄されっぱなしで情けない限り。デヴォンは好きなだけ暴れた挙句、トレントに「早くこの町から逃げて!」とか勝手なこと言ってるし。トレントには逃げなきゃならない理由なんかひとつもないんだけどねぇ。むしろ逃げた方がいいのはお前だろうと。でもそうは言わずに黙って逃げてやるトレント。それもデヴォンが「追っ手から必ず逃げ切れる」という魔法のアイテムを受け取って(男前だ)。このくだりはデヴォンもやはり子供であったかと思えるエピソードでした。そしてあれはやはりハッピーエンドなんだろうな。ああでもしなきゃ、トレントはずっと森の中でくすぶってたろうから。それと、ひとりどうしようもなく貧乏くじを引かされた男がいて、もう私は彼が気の毒で気の毒で。あの子、トレントのこと好きだったんだよね〜。デヴォンさえ余計なことしなきゃ、町の住人で唯一の友人以上恋人未満の存在になりえたかも知れないのに!

余談:サムロクさんは本作でも豪快なフルヌードをご披露されてます。何に出てもとりあえず脱いでるよね、この人。偉い。


カーテンコール/ALIVE & KICKING

【監督】 ナンシー・メックラー
【出演】 ジェイソン・フレミング/アントニー・シャー

※ネタばれしてます。

■ HIVポジティブのバレエダンサー、トニオ(ジェイソン・フレミング)とセラピストのジャック(アントニー・シャー)の始まったばかりのラブ・ストーリー。脚本は「ベント」のマーティン・シャーマン

「ベント」が救いのない話だったのに比べ、こちらはHIVを扱いながらも明るい前向きなストーリーで悲壮感がないのが素晴しい。特にトニオを演じたジェイソン・フレミングがステキでした。恋人とバレエの恩師を同じHIVで失い、次は自分かもという恐怖を踊ることで癒している彼が残念ながらバレエダンサーには見えんかったのですが、(手足が長くて形もいいので雰囲気はあるんだけど)所属するバレエ団の最後の公演の当日に足が麻痺して動かなくなった彼が、仲間たちに支えられ上半身だけで官能的に踊ってみせる場面はよくできてたな。トニオは明るくてご陽気なイイ奴なんだけど、その分軽くも見えて彼のことをよく思ってない団員からは「HIVポジティブだから優遇されてる」なんて言われてしまう。でも、そんないけずなことを言った当人でさえ、たまらずフォローに走ったほど、彼の最後の舞台は鬼気迫るものがありました。

それだけ打ち込んでたバレエも踊れなくなって、さすがのトニオも落ち込むかというとさにあらず。すぐさま次の生き方を見つけて気持ちを切り替えるあたりが強いと言うか、ぐずぐず悩んでる時間さえ残されていないのが哀しいというか。そんなトニオを一見支えているようで、実は支えてもらってるのがパートナーのジャック。彼はセラピストなんかやってるわりに自分に自信がない弱い人に見えるんだな(ルックス的にはガッチリしてるし熊みたいなんだけど)。トニオの愛情を得たくて必死でアプローチしては撃沈し、ようやく手に入れれば「君が健康なら僕みたいなタイプは及びじゃないだろう!(否定してやって!)」と拗ねてみたり、仕事の悩みも全部トニオにぶつけてしまう。まったく役に立たない男だ(笑)。でも誠実なのは間違いないし、トニオへの愛情もたっぷり。踊れなくなったトニオは彼の面倒をみてやるのもひとつの生きがいになるのかも知れません。←いやジャックもそこまでダメ人間では。

この作品に限らず、外国の人って命のカウントダウンが始まってる人間にヘタに慰めも言わないし、むしろ病室でバカ騒ぎをしてお前ら遊びにきてるのかって雰囲気がいいですよね。深刻な時ほど笑いがあった方がいいのだ。


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