2004年10月10日(日)

 京都のまゆきさんちにお泊り。今回はショーコさんが一緒。四条でまゆきさんの同居人M氏に車で拾ってもらい、晩御飯を食べに「山家」という地鶏料理のお店へ。今回もM氏の奢りでおおいに飲み食べる。鳥の生レバー初体験のショーコさんが、目をぎゅっと瞑りもぐもぐやっているので「どう?あかん?」と聞くと「オイシイ〜!」(どないやねん)。見た目がアレだから見ないで食べますとのこと。女3人が焼酎をぐびぐび飲んでる隣でせっせと取り分けてくれるM氏。いつもどおりの風景である。

 店でさんざん食べて飲んだというのに、家に着いてからさらにチューハイを飲みながらF1日本GPを見る。琢磨惜しかったね〜。記憶アカデミーにも挑戦。まゆきさんもショーコさんも描ける人だからいいが(M氏もそれなりに上手い)、私はとにかく絵はダメなのだ。なのに笑いたい一心で描け描けと強要され仕方なく「忍者ハットリくん」を描く。が、描くしりからこれは違うなと自分でも思う。案の定、「ハットリくんはこんなんちゃうで」と言われる。ちなみにM氏のハットリくんもそうとう違っていた(ケンイチ氏もあんなのが窓から入ってきたらさすがに通報するだろう)。しょうがなく、側にあったジャンプの中の「Naruto」に出てくる犬の絵を見ながら描いたところ、これが自分でも意外なくらい上手く描けたのである。ところが喜び勇んでその絵を見せた途端、まゆきさんとショーコさんは床につっ伏し大爆笑。おまけに「これは犬の種類が違う!これは悪い犬や!(どんな犬よそれ)」とさんざんに突っ込まれてしまった。もう絵は描くまい。少なくとも二人の前では。

2004年10月11日(月)

 10月とは思えないような夏雲が広がる中、M氏運転の車で伏見稲荷大社へ行く。ここはショーコさんがかねてから行きたがっていたところで朝からテンションが高い。まずは今回実家の稲刈りで泣く泣く不参加となったたぬきさんへ嫌がらせの写メールを送る(鳥居の前で普段なら絶対にしないピースサインまでしてやった。大サービス)。

 境内に入り、ぷらぷらと散歩しながら奥の方へ行くと有名な「千本鳥居」がある。さっそく写真を撮ろうとカメラを構えた途端、バッテリー切れ。予備の方も充電されていなかったので、入り口まで引き返しコンビニまで電池を買いに行く(すいませんホント)。気を取り直し再び千本鳥居へ。ここはあの京極夏彦氏も写真を撮ったところだが、さすがにこう何本もあるとどこがその場所だかわからなかった。

 そのままずんずん歩いていくと「奥社奉拝所」へ出る。ここには「おもかる石」(石灯籠)というのがあって、願いことをした後、灯篭の空輪(頭の石)を持ち上げ、それが自分が予想していたより軽ければ願い事が叶い、重ければ叶い難いとされるらしい。さっそくやってみた(何を願ったかは秘密だ)が、石は想像を遥かに超える重さであった(涙)。もちろん他の3人もやっていたが、唯一「軽かったよ」と言ったのはショーコさん。彼女が何をお願いしたのか知ってるが黙っといてあげよう。

 ここの絵馬は当然、馬ではなく狐。どういうわけかみんな狐の顔に落書きをしまくっているので、原型を留めているものはほとんどない。これでホントに願いが叶うのだろうか。

 各自お守りを買い、さて戻りましょうかとなったがショーコさんが「上の方には行かないの?」とおっさるので付き合うことにした(私も初めて知ったのだが、この伏見稲荷さん、どうもお山を一周しているようなのである)。今思えばやはりここで引き返すべきだったのだが、以前一度登ったことがあるというまゆきさんが、「じゃあ行こうか」とやけに軽く頷いたので「たいしたことないんだろう」と思ったのが間違いであった。

最初こそ、「昼なお暗いとはこういう場所を言うのね〜」と会話もあったのが、だんだん無口になっていくのが自分でもわかった。延々と山の中を鳥居が突っ立ってる中を歩くのはそれなりに雰囲気もあり、「幽玄」という漢字まで思い出したりしていたのだが、身体は正直に言うことをきかなくなってくる。「萌え」が動力となって足に翼が生えたかの如く軽々と登っていくショーコさんを横目に、私はすでに息も絶え絶えである。「ちあきさん、大丈夫〜?」というショーコさんの優雅な声が天上から聞こえる気がした頃、少し平らな場所へ出た。辺りは一面の鳥居である。異様な雰囲気。しかしもっと異彩を放つものがそこにはいた。

 コスプレをした外国人である。最初は3人しか目に入らず、そのうちのひとりが「ヴァン・ヘルシング」のようだと思ったまではまだよかった。彼らと軽く目礼を交わし、奥の方へ行きかけたその時である。なにやら奇声を発しながら、森の妖精とも小人ともピーターパンともいえない緑の服を着た兄ちゃんが飛び出してきたのは。辺りは木々の葉が鬱蒼と生い茂り、何百という鳥居が林立しているような場所である。京極ワールドなのである。ここにふさわしいのは鼻緒だけが赤く目立つ全身黒衣の狂相の男であって(そんなのがいても嫌だけど)、断じてピーターパンでもなければジャングル・クルーズの船長でもないはずだ。あまりのミスマッチに驚きを隠し切れなかったが、よく見るとどうもなんかの撮影をしているようであった(カメラを抱えている男がいたのだ)。

 とにかく逃げるようにその場を離れ、ここまで来たら大丈夫だろうというところでまゆきさんが一言。「ちあきちゃん、良かったね。意外なとこで金髪みれて」。←根本的な誤解があるようなので、この際ハッキリ言っておきますが、私は別に金髪フェチでもなければ外人ならなんでもいいわけでもないのです。

 その後もまゆきさんは「あの人らはハリウッド映画のロケハンに来てるんとちゃう?一見しょぼく見えたけど、あれがスゴイ大作に生まれ変わるんやわ!」とありえない話をする。京都のどっかの大学の留学生の自主制作映画やろうというのが大方(残り3人の意見)の見方。

 黙々と歩くこと約1時間、「もうすぐやで!」という声に励まされようやく辿り着いたそこは、四の辻という途中の休憩所であった。しかも残りのルートはどう見ても今登ってきた道程より長い。すでに昼も回ってお腹も空いているし、ここからは30分の短距離コースを行こうということになる。もうへとへとなのだが、滝があると聞けばつい寄り道して見に行ってしまうあたりがミーハーの悲しさである。

 帰りは下りなのだが、これが意外と上りよりキツイことが判明した。道は階段上になっているのだが、どうにも歩幅が合わないんである。「これはいったい誰の歩幅に合わせてるわけ?」というまゆきさんに「山人じゃないですか?」(誰やそれ)と答えると、「そうやな。もしくはわざと歩幅を合えへんようにしといて注意させようとしてるとか」。なるほどと思ったが、やはり歩幅は合うに越したことはないと意見の一致を見る。足が笑いまくりの私、まゆきさんと違い、M氏とショーコさんは軽快に山を降りていく。自然にM氏、ショーコさん、まゆきさん、私の順に一列になっており、元気が有り余っているショーコさんはすっかり忍者の修行気分であったが、あれはすでに修行を通り越して苦行の域に達していたと思う(私の脳裏には八甲田山で遭難した自衛隊員の姿までが見えていた。限界)。

へろへろになりながら、ようやくもとの位置に戻り、気力を振り絞りお土産を買いに行く。きつねのお面をそろって購入。

 車で龍安寺へ(拝観料¥500)。京都には何回も来たことがあるけど、ここは初めて。全体に苔むした感じで目に優しい。しかし、まずはご飯!ということで湯豆腐を食べに行く(湯豆腐に精進料理がついて¥3300のコース)。私たちが座ったのは裏の庭に面した席だったが、こちら側は紅葉シーズンが見物だそう。お店の人に「まだ早い(紅葉シーズンは11月下旬)ですがいいですか?」と聞かれたが、庭の雰囲気が好みだったのでかまわずに座る。

 お料理はパンチの効いたものはないが(精進料理ですんで)、湯豆腐も湯葉も生麩も美味しい。お庭を見ながらゆったり食べているうちにちゃんとお腹もいっぱいになったし、安く京都らしいものが食べたいひとにはオススメ。

 

 食事の後は有名な石庭を見に行く。「石の像(かたち)、その集合、離散、遠近、起伏、禅的、哲学的に見る人の思想、信条によって多岐に解されている」(パンフレットより引用)というあたりが外国人観光客に受けるのか、カメラを抱えた外人さんがいっぱいいた。廊下に座ってじっと庭を眺めてみるが、凡庸で俗人の自分にはただの整頓されたお庭にしか見えなかった。残念。

 最後に京都駅近くでお茶をし、改札でお見送りのまゆきさん、M氏、バスで帰るショーコさんとお別れする。短くも楽しい秋の京都旅行であった。来年はもっと紅葉シーズンに来たいものだと思う。

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