シネマ法話度チェック 2003年 3月 |
「黄泉がえり」 日本・2003 (法話度 3) 3週間限定というPRも効いてか、結構話題にもなったようだ。住職的には、「生死系」の映画として、要チェックと見に行ったわけである。 九州のある地域で、昔亡くなったはずの人たちが次々に生き返る?現象が起きた。厚生労働省の役人の草薙剛や、役場の竹内結子等がその調査に当たる。どうやらある山中の隕石?と関係があるらしいことがわかっていく。 別にホラーチックでなく、生き返った人たちと、残されていた人たちの戸惑いと交流がいくつかのエピソードでヒューマンに描かれていく。 そして最後は、また元に戻っていくわけだが、その山場に、いわくの山の高原における歌手の柴崎コウのライブと、草薙君、竹内結子の間が実は・・という、ちょっと「シックス・センス」に似たオチがつくわけだが・・。 最初のテンポは良かったのだが、少し話が込み入りすぎて、全体的なまとまりには欠いたような気もしたが・・。それと、草薙剛もダチョウ倶楽部の寺門も、ごくらくトンボの山本も皆熱演なのだが、どうしてもバラエティーとかのイメージが強かったりしてしまう。意外に良かったのがアクション俳優のイメージのある哀川翔のラーメン店の店主だった。 きっと原作の方が面白いのかもしれない。残念ながら「法話」には使えそうになかった。 「ボーン・アイデンテティー」 米・2002 (法話度 2) たまにはスクリーンでハリウッド映画も。記憶を失ったマッド・デイモン演じるCIAの元エージェントが、知り合った女性と共に、追っての殺し屋達からパリなどを逃げ回る。 見せ場は、記憶を失っても飛びぬけた戦闘能力をもった主人公と、追っ手たちの戦闘場面。一見強そうに見えないだけに、カタルシスを感じさせてくれる。でも最後の敵はもう少し強い相手を置いておくのが、この手の映画の常道でしょう。 「アカルイ ミライ」 日本・2002 (法話度 2) 暗い映画。きっと見ているうちにアカルイ気分になっていくかと思って見ていたが、最後まで一向にそうはならなかった。暗さを描きながらも、未来に希望を持つような方向も可能だったろうに、残念でした。最近の日本映画はこんな感じが多いのだろうか? 前半、同じ工場のアルバイト仲間の浅野忠信とオダギリジョーが、いやな上司といろいろあって、結局浅野がその上司を殺してしまい、牢屋で自殺してしまう。 残されたオダギリと浅野の父の藤竜也のからみが後半。藤の店でオダギリが働くようになり、浅野が飼育していたクラゲが一つの象徴になって、東京の川に繁殖していくのだが、その幻想的な光景もいまいち心象的な盛り上がりに欠けたような気がする。 結局何が言いたかったのだろう。わからない住職がズレているのか? オダギリへの接し方など、藤竜也の演技はさすがでしたが。 「まぼろし」 2001・フランス (法話度 3) これは前に見損ねていて、例の日伊会館で見たやつ。「8人の女」のオゾン監督作品。 海辺に避暑に来ていた初老の夫婦。夫が泳ぎに出たまま行方不明に。警察の捜索でも見つからないまま、街に帰って日常生活を送る妻。大学教員としての仕事もある。 ただ、彼女の中では夫は前と同じように家にいる存在。ふとした時に、友人達にもそういう前提で話をするので、事情を知っている友人達は当惑顔。時に新しい彼氏もでき「浮気」もするが、あくまで「夫」には内緒の話。 そうこうするうち、とうとう海辺の警察から身元不明の溺死体が見つかったと連絡がある。当地におもむく彼女だが・・。 淡々とした正攻法の映画。でも難しい。夫を失った妻の気持ちに感情移入しきれないからかもしれないが・・。主演シャーロット・ランプリングのためにあるような映画でもあった。 「戦場のピアニスト」 2002・ポーランド、フランス合作 (法話度 4) ポーランドの実在のピアニストの、ナチ支配下での体験記の映画化。 一家ともども収容所へ送られる寸前、ぎりぎりで一人だけ生き延び、過酷な逃亡生活を何年も送る。 音の出せない生活で、想像のピアノを弾くことだけが唯一の生きがい。そして実際のピアノを弾くことになったのは、何と隠れ場所で見つけられたドイツ軍将校の前でだった。そしてそのピアノが彼を奇跡的に助けることになる・・。 同じ収容所生活を経験したロマン・ポランスキー監督作品という。 今まで、いろいろな作品でも、非人間的なナチの犯罪は描かれてきたが、一方で助けてくれたドイツ人がいたことも描かれている。極限状態では、非人間性は誰の中にもあるのだろう。 そんな過酷な運命を経験したユダヤ人たちが、今また世界史の中で大きな鍵を握っている。歴史の皮肉か? |