シネマ法話度チェック
       2003年 4月

「酔っ払った馬の時間」  2000・イラン   
                         (法話度 5)

今や話題のクルド人を主人公に、初めてクルド人監督自身が描いた映画。

イランやイラクの国境近くに住むクルド人たちは、生活のため、危険な国境を越えて密輸の仕事をする。地雷で父を失った5人兄妹等。障害を抱えた長男を助けて、13歳の次男や、8歳の妹などがけなげに働く。

時にケンカもし、けれどあくまでお互いへの思いやり、助け合いを忘れない。兄の手術費用をかせぐため、次男は危険な密輸の仕事を手伝い、長女は兄の面倒も見てくれるという約束で近くの村へ嫁ごうとする。

険しい山を越えさすため、馬(らば)にたっぷり酒を飲ませてタイヤを背負わせ、待ち伏せする国境警備隊の目を逃れようとする姿は、時にユーモラスにさえ映るが・・。

貧しい中だからこそ、互いへのいたわりを忘れない。つい計算づくで考えてしまう自分を見つめ直させてもらった。静かに心に染み入る映画である。



「ボウリング・フォー・コロンバイン」 2002・カナダ  
                            (法話度 3)

アカデミー賞の受賞会場での監督マイケル・ムーアの激しい演説は、世界中の記憶に新しい。

なぜアメリカは銃の犠牲者がぶっちぎりで世界一多いのか?そんな疑問をもった監督自身が、体当たりでいろいろな人たちにインタビューを試みる。

監督の出身地近くのコロンバイン高校で銃の乱射事件があり、13人もの犠牲者が出て、犯人の高校生たちも自殺する。世間は原因をいろいろ取りざたし、犯人たちが好んで聴いていた過激なロック歌手が槍玉に挙げられたりするが、犯人たちがその朝プレイしていたボウリングが原因と名指されることはない。

事件の被害者の父親や、障害を追った生徒たち。あるいは事件直後に現地に乗り込んで演説するNRA(全米ライフル協会)会長で俳優のチャールトン・ヘストン等への聞き取り。結論がでるわけではないが、さまざまなモザイクの中から見た人自身が判断していくしかないのだろう。

槍玉にあげられたロック歌手、マリリン・マンソンの言葉に「恐怖を助長することでメディアは消費へ向かわせようとする」の言葉に、真相に近いものがあるのかもしれない。それは今回の「イラク戦争」にも通じるものがあるようだ。



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