シネマ法話度チェック
       2003年 10月
「トーク・トゥー・ハー」 2002・スペイン 

この夏、京都の「みなみ会館」にかかっていたのを見過ごしたので、滋賀会館まで見に行った。おすぎ(ピーコだったか?)が大絶賛だった作品。

ある事情から、それぞれの愛する女性が植物人間状態になった二人の男が同じ病院で出会う。一人は看護士の資格ももち、一目ぼれのバレリーナを献身的に看護する。

もう一人はフリーのライターで、恋人の女性闘牛士が意識不明で入院しているが、その状態をなかなか受け入れられない。しかも、事故直前、彼女が元の夫とよりを戻していることを知り、失意のうちに外国へ。

帰ってみると、バレリーナに献身的に尽くしていた男性が、刑務所に入れられている。事情を知りそれを助けようとするライター。しかし、献身的だった男性は破局へと向かう・・。数週間後、意識を取り戻したバレリーナとライターがたまたま出会うのだった。

難しい。これは「関係性」の映画だと思うのだが、誰と誰の関係を一番描きたかったのかが、よくわかりにくい気がした。

最初は、植物状態の女性たちとそれぞれの男性の「関係性」かと思ったが、途中から男たち同士の「関係性」に話が変わり、結末はバレリーナとライターの「関係性」が暗示されて終わっていく。

冒頭とラストの「劇中劇」の難解さも加わって、やや思索的過ぎる気がした。同じ監督の「オール・アバウト・マイ・マザー」の方がわかりやすかったかも。
 
(法話度 3)

「クジラの島の少女」 2002・ニュージーランド

ニュージーランドの小さな海辺の村。この地のマオリ族には、先祖が遠くの地からクジラの背にまたがって来た勇者であるという伝説がある。

そして現代。族長の家に生まれながら、母親と双子の一方の男の子は、出産時に亡くなり、一人残った女の子は12歳に成長した。

昔の勇者と同じパイケアと名づけられ、祖父母の元で育てられているが、男の子の後継者を望む祖父は、孫娘を愛しながらも、なかなかパイケアの存在を跡継ぎとしては受け入れられない。

そんな村にある日、たくさんのクジラが打ち上げられ、村人が必死で助けようとするが、思うようにいかない。そんな時、パイケアが一人クジラに近づいていき・・そして奇跡が起こった。

何より、ニュージーランドの自然と民族的な伝承がすばらしい。よく見かける、舌をベロッと出す踊りの意味とかも、祖父が少年達に教授する中で説明され、より親しみがわく。

そして、主人公の少女のけなげさ。祖父に何度も叱られながらも、必死に男の子に交じって、民族の伝承を学ぼうとする。あたかも、自らの内なる声にうながされるように・・。

クライマックスのクジラの背にまたがり海を行く少女の姿は、オームの背に乗ったナウシカのように感動的だ。

国や民族は違っても、伝統とそれを継承しようとする熱意は同じだし、もうそれを担うのに、男だ女だとこだわっていられない時代になってきたのも事実だろう。

(法話度 4)


「シティー オブ ゴッド」 2002・ブラジル

ブラジルの「シティー オブ ゴッド」(神の街)と名づけられた貧民街。
そこでは、子供も銃を手にし、強盗を働き、殺人をもおかす。

この街出身で、後に報道カメラマンになる主人公のモノローグという形をとって、身の回りで起こった友人達や家族をも含んだ、「ギャング抗争」を描いた作品。ほとんど実体験らしい。

ともすれば「陰鬱」になる内容を、わざと軽やかにサンバのリズムにさえ乗せて、ほとんどコメディーのように描いていく。

たびたび出てくるフレーズに、「神の意思」という言葉がある。
確かにこのような街では、生死を分けるのは「神の意思」以外の何者でもないような気にさせられる。

最近はそうでもないかもしれないが、安全で当たり前と言う日本にいると、ほとんど麻痺してしまっているような「死」に対する感覚。

良い悪いは別にして、日常生活に「死」が隣り合っている生活から、逆に教えられることもあるようだ。

(法話度 3)



ーー住職は見ていませんが、美也子さんが見た映画の感想ーー

「藍色夏恋」−BLUE GATE CROSSING 台湾・2002

「憶えていますか 初めての恋の痛みを」この言葉に魅せられて久しぶりに甘くせつない思いに 浸った台湾映画。

17歳の女子高生が親友に頼まれてある水泳部の男子生徒にラブレターを渡すが、 親友は差出人名を自分ではなくその女子高生の名前に・・・ラブレターをもらった若者は彼女に好意をもちふたりは接近していく・・・授業中に手紙を回したり、自転車で待ち合わせしたり、 (私にもちょっとくらいはこんな思い出が・・・)。

 教室、体育館、プールなどどこにでもありそうな場面で思春期の男女が自分の気持ちをうまく表現 できず葛藤する様子がなんとも初々しい、「恋」ってこんなに胸がドキドキするものなのに、日本の女子高生はどんな「恋」をしているのでしょうか?

女子高生役の新人グイ・ルンメイは駅の改札口でスカウトされたとか、デビュー当時の広末涼子風、 「秘密」を持つ翳りと時々見せるあどけないしぐさが良かった、詳しくは14日京都新聞「シネマで 会いましょう」に載っています。

でもどうして観客が少ないの・・・「思春期」に戻ってもう一度恋をしたいと思う方にはオススメの作品です。


シネマTOPへ