住職雑記帳(ミーハー日記)2002年 8月
8月6日   映画「上海アニメの奇跡」その他の感想など

「上海アニメの奇跡」 1960年代〜・中国

中国の水墨画がそのまま動いている。その中で牛と少年が墨の線だけで現れたり隠れたりする。
あるいは、中国京劇の音楽にのって不思議な力をもった少年が龍を相手に暴れまわる。

60年代から80年代にかけて、上海で製作された短編アニメ映画7本を、Aプログラム、Bプログラムに分けて上映された。
住職的には、最初聞いたときから万難を排して見に行こうと決めていた映画だった。

アニメといっても、今の日本でよく作られるフルアニメーションではなく、芸術的なリミテッドアニメーションの分野に入るだろうか。
特に「牧笛」「琴と少年」のように、水墨画がそのまま動いていくようなアニメを実際に見たときは、鳥肌が立つくらい感動した。

70年代から、結構リミテッドアニメーションの上映があれば見に行っていた住職としては、正にその極致を見る思いだった。
 日本などのアニメを見慣れた目から見ると、おそらくストーリー的にも技術的にも、はがゆく感じる部分もあるのだろうが、むしろそのゆったりとした時間の流れに身を任す快感があった。
例えていえばファストフードに対するスローフードのよさとでもいうか・・。

しかし中国アニメも今後日本などの影響を受けて変化していくのだろう。
技術がいくら進んでも、失ってほしくない民俗性やアイデンティティーを十分感じさせられた特集だった。
 P・S 後日、NHKTVで、ロシアのアニメ作家の「老人と海」を見た。こちらはまた、油絵がそのまま動いていくような重厚な造り。ガラスに指で油絵を使って描かれたのだそうだ。
それぞれの持ち味の素晴らしい作品たちだった。
                                         (法話度 3)

「バーバー」 2001年・アメリカ

無表情な床屋の男。ただひたすら客の髪を切る。
妻は職場の上司と不倫をしている。それを知っている男は、ひょんなことから自分の人生を変えてみたくて、ちょっとした冒険を決意する。そのために金が必要となり、妻の不倫相手を脅かす。
ところがそれがやがて大きな災難につながっていくのだった。
シニカルな人生喜劇。あまり印象に残らなかったが・・。
「オー!ブラザー」などのコーエン兄弟の製作・監督作品。
                                        (法話度 2)

「春の日は過ぎ行く」 2001年・韓日香合作 

バツイチのラジオのDJの女性と、年下の録音技師の青年。
いつしか二人は愛し合うようになるが、青年が真剣に結婚を考えるようになる頃から、微妙に女性の心が変わっていく。
 理由のわからないまま離れていく女性に、青年の心はますます燃え上がるが・・。

竹林や川の音を録音する音と、BGMが絶妙に調和し、ゆったりと時間は流れる。
韓国の自然や家族の描写も丁寧だ。

今は離れていった女性の歌う声が、川の音に交じって微かに録音されているテープを一人で聞く青年。失恋のせつなさを痛切に描いたシーンだった。

青年役を韓国では人気NO1といわれるユ・ジテ が演じる。
韓国語がこんなに耳に心地よくひびく男優は初めてだった。
「山の郵便配達」などが好きな人にはおすすめのテンポです。
                                   (法話度 3)

「ノーマンズ ランド」 2001年・仏、伊、ベルギー、スロヴェニア合作

あのボスニアとセルビアの戦争中。
その中間地帯に、たまたま両方の兵士が取り残され、しかもそのうち一人は身体の下に地雷を仕掛けられて動かすことができない状況。
どちらもが手を出せない状態で、とうとう国連軍が出動するが・・。国連も決して「正義の味方」でなく、マスコミに煽られて、仕方なく動き出すのだが、最後は司令官の非情な決断で・・。

いわゆる「コソボ危機」を題材に、ブラックにそして時にユーモラスでさえある描き方で戦争と人間を描いた作品。
一番恐かったのは、お互いに共通の知人などがいることがわかり、仲良くなりかけた両方の兵士が、最後はまた本気で憎みあい、国連監視下でも隙をみては殺しあおうとするところだった。
人間は状況の中でどのようにも変わりうる存在だということを見せつけられた。
        
                               (法話度 4)

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