HPTOPに戻る


キヤノン 液体収納容器事件
2007/11/08 最高裁判所
【事件番号】 平成18(受)826 特許権侵害差止請求事件 特許権 民事訴訟
【原  告】
被上告人 キヤノン株式会社
【被  告】
上告人 リサイクル・アシスト株式会社
【主  文】
 本件上告を棄却する。
 上告費用は上告人の負担とする。
(裁判長裁判官 横尾 和子、裁判官 甲斐中 辰夫、裁判官 泉 徳治、裁判官 才口 千晴、裁判官 涌井 紀夫、 裁判所調査官 (未調査))
【発明名称】 液体収納容器,該容器の製造方法,該容器のパッケージ,該容器と記録ヘッドとを一体化したインクジェットヘッドカートリッジ及び液体吐出記録装置
【本件公報】 B:3278410
【発明要旨】
 <本件発明>
 A 互いに圧接する第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aを収納するとともに液体供給部114と大気連通部112とを備える負圧発生部材収納室134と,
 B 該負圧発生部材収納室と連通する連通部140を備えると共に実質的な密閉空間を形成するとともに前記負圧発生部材へ供給される液体を貯溜する液体収納室136と,
 C 前記負圧発生部材収納室134と前記液体収納室136とを仕切るとともに前記連通部140を形成するための仕切り壁138と,
 D を有する液体収納容器?において,
 E 前記第一及び第二の負圧発生部材の圧接部の界面132Cは前記仕切り壁138と交差し,
 F 前記第一の負圧発生部材132Bは前記連通部140と連通するとともに前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記大気連通部112と連通可能であると共に,
 G 前記第二の負圧発生部材132Aは前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記連通部140と連通可能であり,
 H 前記圧接部の界面132Cの毛管力が第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aの毛管力より高く,かつ,
 K 液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体が負圧発生部材収納室内に充填されている
 L ことを特徴とする液体収納容器。

(DB注:上記本件発明(請求項1)の要旨中に、第1実施例(図2)で対応すると思われる符号を当DBにおいて加入した。)
【判示事項】
 イ 本件発明は,インクジェットプリンタに使用されるインクタンクに関するものである。従来技術によるインクタンクとしては,インクタンク内のインクが外部に漏れないようにこれを保持しつつ,インクタンクの単位体積当たりのインク収容量を増加させ,かつ,インクを安定的に供給することができるようにするために,インクタンクの内部を仕切り壁によって複数の部屋に分け,プリンタヘのインク供給口のある側の部屋(負圧発生部材収納室)に,負圧発生部材(ウレタンフォーム等の多孔質体やフェルト等のインク吸収体)を収納してインクを含浸させる一方,それ以外の部分(液体収納室)には,負圧発生部材を収納せずにインクを直接充てんするという構成のものがあった。(*DB注1)

 しかし,この構成のインクタンクにおいては,使用開始前の輸送時や保管時に液体収納室が負圧発生部材収納室の上に置かれる姿勢で放置されると,負圧発生部材収納室内の空気が気液交換動作によって液体収納室内のインクと入れ替わって液体収納室内のインクが連通孔を通って負圧発生部材収納室に流出し,負圧発生部材のうちインクが含浸されていなかった領域にもインクが含浸されて負圧発生部材収納室のインクが過充てんとなり,開封時に液体供給口等からインクが漏れ出して,使用者の手などを汚すという問題があった。(*DB注2)

 本件発明は,@負圧発生部材収納室に2個の負圧発生部材(液体収納室との連通部側に第1の負圧発生部材,大気連通部側に第2の負圧発生部材)を収納し,これらを互いに圧接させ,その境界層である圧接部の界面の毛管力を上記各負圧発生部材のそれよりも高くする(構成要件H)とともに,Aインクタンクの姿勢のいかんにかかわらず,前記圧接部の界面全体がインクを保持することが可能な量のインクを負圧発生部材収納室に収納する(構成要件K)などの構成を採ることによって,上記圧接部の界面において常にインクを保持した状態とし,これにより空気の移動を妨げる障壁を形成する機能を果たさせて,インクタンクがどのような姿勢にあっても液体収納室内のインクが負圧発生部材収納室に流出して負圧発生部材収納室のインクが過充てんとなることのないようにし,開封時のインク漏れを防止しようというものであり,構成要件H及び構成要件Kの双方の構成を,その本質的部分,すなわち,当該特許発明特有の解決手段を基礎付ける技術的思想の中核を成す特徴的部分とするものである。(*DB注3)

(DB注1:本件公報記載の実施例には、気液交換に関与するバッファ室44が存在する。これに対して、従来技術、例えば、特開平9-216378号公報記載の実施例には、バッファ室が存在しない。
 DB注2:開封時に開封されるシール手段が、権利付与の請求に係る特許請求の範囲において、構成要件として記載されていない。そうすると、輸送時や保管時に、相当量の液漏れが生じ、消費者が購入する頃には、シールされていない負圧発生部材収納室の過充填状態は、既に解消されていると思われる。また、実際に販売されているキヤノン純正BCI-3eBKインクタンクは、シール手段(保護キャップ)で密封されており、その外箱には、「上記開封手順どおりに行わないと保護キャップを外す時にインクが漏れる場合があります」及び「保護キャップを外したあと、インクで手や他のものを汚す恐れがあります」との注意書があり、権利が付与された「液体収納容器」とは、構成及び機能が相違すると思われる。
 DB注3:構成要件Kの、「・・・することが可能な」というような、発明者の単なる希望や願望を表す記載で特定された発明の構成をもって、「技術的思想の中核を成す特徴的部分」とすることはできないと思われる。詳細は控訴審判決の当DB注参照。なお、事例分類の500番台は、事件が侵害訴訟等であり、90番台はその判決に誤りがあり、1番はその誤りが本件発明の解釈にあることを示す。)

 * キヤノンのニュースリリース 「特許侵害訴訟の判決に関して」の記者発表
 「
キヤノンでは、今回の最高裁による判決は、加工や部材の交換がされ、特許製品が新たに製造されたと認められるときは、特許権を行使することができるとするものであり、極めて妥当なものと評価しています。
 キヤノンは、これまでも、自社および他社の知的財産を重視し、尊重しながら、事業の展開を行なってまいりました。
 今後も、今までと同様の方針の下、お客様に更に喜んで頂けるような、高品質な商品、サービスのご提供に努力していきます。
(最新のニュースリリース(2007/11/09)(http://web.canon.jp/pressrelease/2007/p2007nov09j.html)参照)

 * 一橋大学大学院 相澤 英孝教授のご意見
 「これにより,研究開発型の企業の研究開発による技術の発展が我が国のこれからの経済発展に寄与することも期待される。最高裁判所は,特許法が技術開発に与える影響を考え,技術開発投資の重要さを重視し,日本経済の将来の発展を考えたものと評価できる。
(日経BP知財Awareness CIPOフォーラム 「インクカートリッジ判決の意味するもの」(http://cipo.jp/nishimura/column/20071113.html)参照))
【判決資料】 なし
【査定資料】 特開平7−125239、特開平7−52404、特開平9−94976、特開平8−25640、特開平8−207304(誤記)、特開平7−101071、特開平9−136425、特開平7−323565、特開平9−174867
【技術分類】 B41J  【事例分類】 591本件発明解釈  【参照条文】 特許法1条、特許法29条1項柱書、特許法36条、特許法70条、特許法104条の3、特許法197条
【審査官】 尾崎 俊彦


2006/01/31 知財(東京)高裁(侵害訴訟控訴)・特許
【事件番号】 平成17年(ネ)第10021号 特許権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(ワ)第8557号)
【原  告】
控訴人 キヤノン株式会社
【被  告】
被控訴人 リサイクル・アシスト株式会社
【主  文】
 1 原判決を取り消す。
 2 被控訴人は,別紙物件目録(1)及び(2)記載のインクタンクを輸入し,販売し,又は販売のために展示してはならない。
 3 被控訴人は,前項記載のインクタンクを廃棄せよ。
 4 訴訟費用は,第1,2審とも被控訴人の負担とする。
(特別部 裁判長裁判官 篠原 勝美、裁判官 塚原 朋一、裁判官 中野 哲弘、裁判官 三村 量一、裁判官 長谷川 浩二)
【発明名称】 液体収納容器、該容器の製造方法、該容器のパッケージ、該容器と記録ヘッドとを一体化したインクジェットヘッドカートリッジ及び液体吐出記録装置
【本件公報】 B:3278410
【発明要旨】
 (本件発明1)
 A 互いに圧接する第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aを収納するとともに液体供給部114と大気連通部112とを備える負圧発生部材収納室134と,
 B 該負圧発生部材収納室と連通する連通部140を備えると共に実質的な密閉空間を形成するとともに前記負圧発生部材へ供給される液体を貯溜する液体収納室136と,
 C 前記負圧発生部材収納室134と前記液体収納室136とを仕切るとともに前記連通部140を形成するための仕切り壁138と,
 D を有する液体収納容器?において,
 E 前記第一及び第二の負圧発生部材の圧接部の界面132Cは前記仕切り壁138と交差し,
 F 前記第一の負圧発生部材132Bは前記連通部140と連通するとともに前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記大気連通部112と連通可能であると共に,
 G 前記第二の負圧発生部材132Aは前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記連通部140と連通可能であり,
 H 前記圧接部の界面132Cの毛管力が第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aの毛管力より高く,かつ,
 K 液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体が負圧発生部材収納室内に充填されている
 L ことを特徴とする液体収納容器。

 (本件発明10)
 A’ 互いに圧接する第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aを収納するとともに液体供給部114と大気連通部112とを備える負圧発生部材収納室134と,
 B’ 該負圧発生部材収納室と連通する連通部140を備えると共に実質的な密閉空間を形成するとともに前記負圧発生部材へ供給される液体を貯溜する液体収納室136と,
 C’ 前記負圧発生部材収納室134と前記液体収納室136とを仕切るとともに前記連通部140を形成するための仕切り壁138と,を有し,
 E’ 前記第一及び第二の負圧発生部材の圧接部の界面132Cは前記仕切り壁138と交差し,
 F’ 前記第一の負圧発生部材132Bは前記連通部140と連通するとともに前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記大気連通部112と連通可能であると共に,
 G’ 前記第二の負圧発生部材132Aは前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記連通部140と連通可能であり,
 H’ 前記圧接部の界面132Cの毛管力が第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aの毛管力より高い
 I’ 液体収納容器?を用意する工程と,
 J’ 前記液体収納室に液体を充填する第1の液体充填工程と,
 K’ 前記負圧発生部材収納室に,前記液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体を充填する第2の液体充填工程と,
 L’ を有することを特徴とする液体収納容器の製造方法。

(DB注:上記本件発明(請求項1と請求項10)の要旨中に、判決の理由部分と同様に、第1実施例(図2)で対応すると思われる符号を当DBにおいて加入した。)

【判示事項】
 本件発明1のインクタンクは,負圧発生部材収納室134(別紙図2に付された符号を示す。以下同じ。)に2個の負圧発生部材(インク供給口114側の第1の負圧発生部材132Bと,大気連通口112側の第2の負圧発生部材132A)を収納し(収納された負圧発生部材と,液体収納容器の仕切り壁,連通部 及び大気連通部との位置関係は,構成要件E〜Gのとおりである。),これらを互いに圧接させることにより(構成要件A),その境界層である圧接部の界面132C(別紙図2に赤色の太線で示した部分)の毛管力が,第1及び第2の各負圧発生部材に比べて,最も高くなるように構成されている(構成要件H)。毛管力が高いということは,液体を吸収し,保持しやすいということであるから,負圧発生部材収納室に一定量のインクを収納させることによって(構成要件K),圧接部の界面が常にインクを保持した状態となり,このインクが空気の移動を妨げる障壁を形成する。その結果,負圧発生部材収納室の一部(図2中の第 2の負圧発生部材のうちインクが含浸されていない領域である緑色で示した点描部分及びバッファ室である水色で示した空白部分)に存在する空気は,この障壁を越えて第1の負圧発生部材の側へ移動することができず,液体収納室へと移動することはない。したがって,輸送時や保管時に,従来の技術で問題とされたような姿勢(別紙図2(b)のように,液体収納室136が負圧発生部材収納室134の上方に来る姿勢)で放置されたとしても,液体収納室に空気が流入することがないから,気液交換動作により,液体収納室中のインクが負圧発生部材収納室に流出し,開封時に大気連通口112や液体供給口114から漏れ出すという事態を防止することができる。
 このように,本件発明1は,インクタンクの単位体積当たりのインク収容量を増加させ,安定したインク供給を実現するという従来のインクタンクと同様の作用効果を奏しつつ,併せて,従来の技術にみられた開封時のインク漏れという問題を解決するために,@ 負圧発生部材収納室に2個の負圧発生部材を収納し,その界面の毛管力が各負圧発生部材の毛管力よりも高くなるように,これらを相互に圧接させるという構成 (この構成は,構成要件A,E〜Hによって達成されるが,そのうちで最も技術的に重要なのは,圧接部の界面の毛管力が最も高いものであることという構成要件Hであると認められる。)と,A 一定量のインク,すなわち,液体収納容器がどのような姿勢をとっても,圧接部の界面全体が液体を保持することが可能な量の液体が充填されているという構成 (構成要件K)を採用することによって,負圧発生部材の界面に空気の移動を妨げる障壁を形成することとした点に,従来のインクタンクにはみられない技術的思想の中核を成す特徴的部分があると認められる。

 以上によれば,被控訴人製品は,控訴人製品中の本件発明1の特許請求の範囲に記載された部材につき丙会社により加工又は交換がされたものであるところ,この部材は本件発明1の本質的部分を構成する部材の一部に当たるから,本件は,第2類型に該当するものとして特許権は消尽せず,控訴人が,被控訴人製品について,本件発明1に係る本件特許権に基づく権利行使をすることは,許されるというべきである。

(DB注:本件発明(本件発明1と10)は、大気連通口112又は液体供給口114を密閉するシール手段が構成要件とされていない(請求項12、段落0009、段落0010、段落0020、段落0046、段落0107、段落0114、段落0127の各記載参照)。そうすると、液体は物流時の振動、気圧変化、温度変化等により液体供給口114から流出し、構成要件Kの作用効果を達成しない虞があると思われる。また、大気連通口112からも液漏れを起こす虞があると思われる。
 (1実験例:インク(純正)が少なくなったとの注意がパソコンに表示されていたキヤノン純正BCI-3eBKインクタンクと交換するため、新しく同じ型式の純正インクタンク を用意した。その製品の外箱には、「上記開封手順どおりに行わないと保護キャップを外す時にインクが漏れる場合があります」及び「保護キャップを外したあと、インクで手や他のものを汚す恐れがあります」との注意書があった。開封手順に従って開封したところ、「開封時のインク漏れ」はなかった。次に、液体供給口114を下にした(図2(a)と同じ)状態で、台所のシンクの上でその新しいインクタンクを軽く振ると、液体供給口114からインクが飛び出し、台所のシンクを汚した。その後で、古い方のインクタンクに代えて新しい方のインクタンクをプリンタに取り付けた。一方、取り外した古い方の純正キヤノンBCI-3eBKインクタンクを、液体供給口114を上に、大気連通口112を下にした状態(図2(b)から更に90度回転させた状態)で、水道水(液体)を液体供給口114から負圧発生部材収納室134内へ、スポイトで少しずつ供給した。しばらくすると、下の大気連通口112から液体が滴り落ち始め、液体供給口114からは液体が溢れ出なかった。)

 本件発明は、「液体が負圧発生部材収納室内に充填されていることを特徴とする液体収納容器」であり、「液体を充填する第二の液体充填工程と、を有することを特徴とする液体収納容器の製造方法」の発明であるから、特許請求の範囲の末尾にいう「液体収納容器」とは、「液体が収納された状態の容器」のことであり、容器に充填された「液体」をも必須の構成要件とする発明と解される(本件明細書の段落0117の記載参照)。ところで、被控訴人のインクタンクは、控訴人製のインクを充填したものではなく、一般にインクは界面を介して空気が移動しないようにする機能を本来の機能とするものではないから、単にインクが充填されているということだけで、本件発明の技術的範囲に属するとすることはできないと思われる。本件発明は、そもそも、その「液体」や「負圧発生部材」について、組成も物性も開示されていないから(特開平08−104837号、特開平09-183231号(特許第3226803号)参照)、未完成発明というべきものであり、技術的範囲の判定すら不能と思われる。

 しかし、被告(被控訴人)は、インクは本件発明の構成要件の1つではあるが、それ自体特許された部品ではないと主張して、被控訴人製品が本件発明1の構成要件をすべて充足しその技術的範囲に属すこと、また、被控訴人製品の製品化の方法が本件発明10の構成要件をすべて充足しその技術的範囲に属すことについて、争わなかった。

 保持「可能な」量の液体について(特許法36条関連)
 「液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体が負圧発生部材収納室内に充填されている」との構成要件Kの記載は、適当な量の「液体が負圧発生部材収納室134内に充填されてい」て、その適当な量とは「液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量」であると、達成されるべき作用効果を構成として記載しているに過ぎないのであって、本件明細書及び特許請求の範囲には、負圧発生部材収納室134に収納された第一の負圧発生部材132Bと第二の負圧発生部材132Aとの体積比(即ち、界面132Cの高さ位置)や、負圧発生部材収納室134とバッファ室の容積比、さらには、「液体」や「負圧発生部材」の組成や物性などの具体的な発明の構成との関係において、充填すべき液体の量が開示特定されていない。

 進歩性について(特許法29条2項関連)
 特許電子図書館(IPDL)を利用した当DBの簡易先行技術調査(技術分類B41J2/175 遡及1年)によると、特開平09−286113号公報(以下、ブラザー工業引用例という。)には、シール材を剥離する際、インクが飛散するのを防止したインクジェットプリンタのインクカートリッジが開示されている。このインクカートリッジには本件発明にいう液体収納室が存在しない。すなわち、開封時のインク漏れの問題は、密閉されたカートリッジ(液体収納容器)内に存在する有限な空気(無限な大気ではない。)が液体と気液交換して、密閉された大気連通口周辺に液体が溜まることにより生じるものであって、液体で満たされた液体収納室の有無と直接関係がない(本件発明において、負圧発生部材が「繊維材料より構成される」との限定はない(請求項6 、本件特許公開及び本件特許公報段落0016ないし0018の記載参照)。 また、大気連通部(上位概念)と記載されているだけで、バッファ室44(下位概念)の存在は構成要件とされていない。)。特開平9-216378号公報(以下、キヤノン引用例という。)の図12には、負圧発生部材収納室と液体収納室とを具えた「インクジェット用記録液容器」が開示され、特開平09-277549号公報(以下、シチズン時計引用例という。特許第3182501号)には、負圧発生部材収納室に相当する「インクカートリッジ」(液体収納室が無い)が開示され、第一の負圧発生部材に相当すると思われる主インク保持体3と、第二の負圧発生部材に略相当すると思われる補助部材7が存在する。
 この補助部材7は「独立気泡体で構成されたゴムスポンジでできているため、インクが染み込みにくくそのために空気連通孔8にインクが入り込みにくくする効果がある」(段落0018)と記載されている。フェルトやゴムスポンジ(下位概念)は負圧発生部材(上位概念)として周知であり、この補助部材7がバッファ室と負圧発生部材収納室の気液交換を、液面位置や姿勢によらずに、本件発明と同程度(トラップ2個を含む液漏れ防止構造としての大気連通路9があるかのように、キヤノンBCI-3eBKインクタンクの蓋部材が、物件目録1に描かれている。)に阻止すると思われる。そして、ゴムスポンジの場合には、それ自体に含まれる自由な気体の量が少なく、気液交換に関与するバッファ室と負圧発生部材収納室内の空気(気体)の総和が少なくなるという利点があると思われる。構成要件Hに関して、本件明細書に「さらに他の形態として、上述の毛管力の強い境界層のかわりに、2つの負圧発生部材自体の毛管力を異ならせてもよい。」(段落0020)との記載があり、シチズン時計引用例はこの「他の形態」の要件を充足すると思われる。そうすると、本件発明の進歩性は、シチズン時計引用例単独(本件明細書図面図12の参考例は、本件公開公報の明細書において実施例として記載されていた。)又はキヤノン引用例との組み合わせにおいて否定されると思われる。

 「表1」記載のデータについて(特許法197条関連)
 本件明細書には以下の記載がある。「【0106】なお、本発明は上述のように液体を所定量以上注入することで物流時に液体収納室への空気の移動を効果的に防止できるものであるが、本発明者らは、さらなる検討の結果、液体の注入量についてより望ましい条件を見出すに至った。以下、この望ましい条件について説明する。【0107】上述の液体注入工程によって液体を注入された後の液体収納容器は、一般的には後述するように大気連通口及びインク供給口をシール部材などで密閉された後、出荷され、使用者のもとに届くようになっている。このような物流を経た後のシール部材の開封前の液体収納容器では、第1の負圧発生部材中にはほぼ100%液体が充填されているが、第2の負圧発生部材中には空気と液体が混ざった状態で充填されていることがある。【0108】このように第2の負圧発生部材中に空気と液体が混合された状態で、液体収納容器のシールを開封すると、開封前の液体収納容器内の圧力が開封される環境の気圧より高い場合(即ち、減圧環境下で開封する場合)、開封時に液体収納容器内の空気が膨張する。この時、第2の負圧発生部材中の空気が液体で囲まれ大気に対して孤立した気泡である場合、負圧発生部材中の液体をバッファ部へ押上げ、最悪の場合、大気連通口あるいはインク供給口から液体が溢れることがある。【0109】そこで、この現象について本発明者らが鋭意検討したところ、負圧発生部材収納室内の第2の負圧発生部材への液体の充填量が関与することを見出した。【0110】そこで、図2に示す液体収納容器において、液体収納室の容積が6.7cc、第1の負圧発生部材の容積が4.2cc、第2の負圧発生部材の容積が5.4cc、第2の負圧発生部材のバッファ室を形成している面を8×40mm、として、1.0気圧の条件下で液体を充填した後インク供給口と大気連通口とを密閉し、物流後に0.7気圧下で開封したときの、負圧発生部材収納室内の第2の負圧発生部材への液体の充填量と液体漏れとの関係を調べたところ、表1に示す結果を得た。」
 しかしながら、液体の組成(界面活性剤(負圧発生部材側に含有されるものを含む)の有無)や物性(粘度)については、その液体がインクであるかどうかすら明らかでない。また、蓋部材2に存在すると思われる大気連通路、特にトラップ(図1(a)において、符号42と44の間の1個の凹み、物件目録1及び特開平09-272210号公報参照)について言及されていない。それでいて、「【0112】この表から明らかなように、上述の形態では、第2の負圧発生部材へのインク充填率を70%以下にすることで、開封前の液体収納容器内の圧力と開封時の大気圧とが著しく異なるようなことがあっても、液体収納容器からの液体の漏れ出しを確実に防止することが出来る。」と記載されている(請求項11参照)。

 裁判所の判断について(特許法70条関連)
 本件発明の特許請求の範囲には、大気連通口112又は液体供給口114を密閉するシール手段が構成要件として記載されていない。発明の実施の形態の説明において、「所定量の液体を注入された容器を販売するためには、物流時に大気連通口及びインク供給口を密閉することが望ましい」(段落0114)と記載されているに過ぎない。そうすると、「このように,本件発明1は,インクタンクの単位体積当たりのインク収容量を増加させ,安定したインク供給を実現するという従来のインクタンクと同様の作用効果を奏しつつ,併せて,従来の技術にみられた開封時のインク漏れという問題を解決するために,@ 負圧発生部材収納室に2個の負圧発生部材を収納し,その界面の毛管力が各負圧発生部材の毛管力よりも高くなるように,これらを相互に圧接させるという構成(この構成は,構成要件A,E〜Hによって達成されるが,そのうちで最も技術的に重要なのは,圧接部の界面の毛管力が最も高いものであることという構成要件Hであると認められる。)と,A 一定量のインク,すなわち,液体収納容器がどのような姿勢をとっても,圧接部の界面全体が液体を保持することが可能な量の液体が充填されているという構成(構成要件K)を採用することによって,負圧発生部材の界面に空気の移動を妨げる障壁を形成することとした点に,従来のインクタンクにはみられない技術的思想の中核を成す特徴的部分があると認められる。」との裁判所の判断は、「開封時のインク漏れ」はシール手段の存在を前提とするものであり、特許請求の範囲の記載に基づかないものというほかない。
 仮に、シール手段が実質的な構成要件であるとしても、構成要件H及びKを「技術的思想の中核を成す特徴的部分」とする裁判所の判断は適切でないと思われる。すなわち、(h) 前記「第一の負圧発生部材132B」の毛管力が「第二の負圧発生部材132A 」の毛管力より高く、かつ、(k) 液体収納容器の姿勢によらずに前記「第一の負圧発生部材132B」の全「幅」が液体を保持可能な量の液体が負圧発生部材収納室内に充填されている液体収納容器において、界面132Cの背後から連通口140(大気導入路150は構成要件となっていない。)に至るまでの間に存在する第一の負圧発生部材132Bの層が、常に全幅(界面と同じ幅)でインクを保持した状態となり、このインクが空気の移動を妨げる障壁を形成する筈である。このことは、本件明細書段落0020において、「さらに他の形態として、上述の毛管力の強い境界層のかわりに、2つの負圧発生部材自体の毛管力を異ならせてもよい。」との記載と符合する。
 さらに、本件発明の特許請求の範囲には、第二の負圧発生部材が繊維材料(フェルト)を用いたものとの限定はないから(請求項6、本件特許公開及び本件特許公報段落0016ないし0018の記載参照)、それがシチズン時計引用例記載の補助部材7と同様なスポンジを用いたものであれば、構成要件HやKが「技術的思想の中核を成す特徴的部分」とはなり得ないと思われる。
 本件発明において、インクの組成や物性は何ら開示・特定されていない。そして、被告(被控訴人)は、インクは本件発明の構成要件の1つではあるが、それ自体特許された部品ではないと主張している。複数の構成要件からなる発明の、1つの構成要件が特許されたものでないならば、そのような特許発明全体も特許されたものではないと解される。すなわち、被告(被控訴人)の主張は、本件特許が無効であるとの主張と善解することができる。そうだとすると、被控訴人の主張には理由があり、控訴人の請求は権利の濫用であって許されないと思われる。)(初稿掲載2006年2月26日、28日掲載削除 3月2日一部訂正掲載、3月4日一部訂正、7月1日更新。2007/01/03更新)

* 高野誠司氏 (NRIサイバーパテント社長・弁理士)のご意見
 「余談であるが、もう一つ興味深いのは、その後上告されたことである。知財高裁は専門裁判所として位置付けられており、しかも、今回審理した大合議部は、重要な案件を統一判断するための特別部である。その判決に対して、最高裁がどこまで中身に踏み込めるか興味がある。もちろん、裁判は三審制が保証されているが、覆れば専門裁判所としての知財高裁の顔が潰れてしまう。今後の成り行きに注目したい。」 (NIKKEI BIZ+PLUS 知財・総務 連載企画 日本の「知財」の行方 「第19回 知財の保護加減」(http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/rensai/nrichizai.cfm?p=1)参照)。

 * 生田 哲郎弁護士と、森本 晋弁護士のご意見
「また、固着したインクを洗浄し取り除けば機能が回復されるのであれば、インクが固着していても機能そのものは失われていないのであって、洗浄前のインクタンクが本件発明1の構成《1》を充足しない状態にあるとまではいえないのではないかとも思われます(3(4)イ(ウ))。」(「発明」 Vol.103 2006-4 「知的所有権判例ニュース」(http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/news/200604news.html)参照)

 * 一橋大学大学院 相澤 英孝教授のご意見
 「今回のインク・カートリッジの「再生品」に関する侵害訴訟に限っていえば、最先端の技術開発の場におけるライバル間のしのぎ合いでも、互換性を持ったいわゆる「サードパーティ製品」をめぐる争いでもない。技術開発に投資してきた特許権者と「廃棄物」になった使用済みのインク・カートリッジを収集して再生する者、つまりわずかな投資によって大きな利益を得ている事業者との問題である。」(NIKKEI BIZ+PLUS 知財・総務 連載企画 第54回「インク・カートリッジ『再生品』侵害訴訟が問う『特許権の本質』(http://bizplus.nikkei.co.jp/genre/soumu/rensai/senshin_chizai.cfm?i=20060126rb000rb&p=2)参照)

 * 毎日新聞武本光政記者の判決報道
 「知的財産法が専門の玉井克哉東京大教授は「特許権侵害が否定された場合、メーカーはプリンター本体の値上げか、消耗品を再製させない『後ろ向きの技術開発』に走らざるを得ず、ユーザーの利益にはつながらない」と指摘する。」(「キヤノン:知財高裁判決 専門家からは「妥当」と評価の声」(www.mainichi-msn.co.jp/shakai/ jiken/news/p20060201k0000m040114000c.html)参照)

 * 日本弁理士会特許委員会委員長 千且 和也 弁理士のご意見
 「原審においては、使用済みのインクカートリッジが、本件発明の主要な構成を未だ充足しており、インクそれ自体は、特許された部品でないと判断しているが、本控訴審においては、使用済みのインクカートリッジは、本件発明の主要な構成の充足性を失っており、インクを再充填する行為によって本件発明の主要な構成を再充足させていると判断しているのである。
 この控訴審の判断は、特許発明の実質的な内容に踏み込んでなされたものであって妥当であると思料する。」(日本弁理士会 意見・声明「 キヤノンインクカートリッジ事件控訴審判決」(http://www.jpaa.or.jp/appeal/opinion_20060215.html)参照)

 「特許問題を扱う専門職団体、日本弁理士会特許委員会の千且和也委員長は、私見と断ったうえで「写ルンですの場合はフィルムが特許発明の本質的部分をなすが、インクカートリッジの特許は、機構上のものでインクそれ自体は特許がある部品ではない。充填行為は生産ではなく修理の範囲と判断され、一審が支持されるのでは」と推測する。」(2006年1月13日(金)フジサンケイ ビジネスアイの報道(http://www.navigarasu.com/system-u/topics/topics_i_060113.htm)参照)


 * 日本弁理士会近畿支部 西原 広徳 弁理士のご意見
 「本判決は、インクを充填する行為自体は再生利用(製品を基準とする第1類型)に当たらないと判断しつつ、インクを充填すると発明の本質的部分の機能が回復することからこの回復行為が本質的部分の一部の加工または交換(特許発明を基準とする第2類型)に該当すると判断し、特許権は消尽しないと判示している。
 消耗品を交換すればただちに再生利用というのではなく、発明の本質的部分にあたるか否かという観点から判断している点について、妥当な判断であると考えられる。
 このように権利行使が認められたのは、請求項の記載に起因することが大きいと考えられる。」(「リサイクル品への権利行使を射程に入れた請求項についての一考察」(www.kjpaa.jp/public/pu_01studies/pdf/0604nishihara.pdf)

 * 牧野 和夫弁護士のご意見
 「控訴審判決では本件キヤノン特許の範囲を原審判決よりも広く解釈しており、その意味では日本の知財高裁もようやく国家的な知的財産戦略計画の下でプロパテントの判決を下したという点で高く評価できる。」(「発明」 Vol.101 2006-4「判例評釈」
」(http://www.hanketsu.jiii.or.jp/hanketsu/jsp/hatumeisi/hyou/200604hyou.html)

 * 科学評論家 馬場 錬成氏のご意見
 「今回の判決では、キヤノンが研究開発して発明したインクカートリッジ本体とその中にある特許技術に対し、リサイクル業者は何の負担もしないでいわば「ただ乗り」したものと解釈されたものである。今回のリサイクル製品が特許の侵害にあたるとした判断は妥当であり、特許の技術とその機能について詳細に論述した判決であった。」(NIKKEI BIZ+PLUS ビジネスコラム 知財戦略で勝つ 「第76回「技術革新を優先したインクカートリッジのリサイクル製品特許侵害訴訟」(http://bizplus.nikkei.co.jp/colm/baba.cfm?i=20060213c8000c8)参照)
【判決資料】 なし
【査定資料】 特開平7−125239、特開平7−52404、特開平9−94976、特開平8−25640、特開平8−207304(誤記)、特開平7−101071、特開平9−136425、特開平7−323565、特開平9−174867
【技術分類】 B41J  【事例分類】 591本件発明解釈  【参照条文】 特許法1条、特許法29条1項柱書、特許法36条、特許法70条、特許法104条の3、特許法197条
【審査官】
 尾崎 俊彦


2004/12/08 東京地方裁判所・特許
【事件番号】 平成16年(ワ)第8557号 特許権侵害差止請求事件
【原  告】
原告 キャノン株式会社(特許権者)
【被  告】
被告 リサイクル・アシスト株式会社
【主  文】
 1 原告の請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
(第40部 裁判長裁判官 市川 正巳、裁判官 頼 晋一、裁判官 高嶋 卓)
【発明名称】 液体収納容器,該容器の製造方法,該容器のパッケージ,該容器と記録ヘッドとを一体化したインクジェットヘッドカートリッジ及び液体吐出記録装置
【本件公報】 B:3278410
【発明要旨】
 (本件発明1)
 A 互いに圧接する第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aを収納するとともに液体供給部114と大気連通部112とを備える負圧発生部材収納室134と,
 B 該負圧発生部材収納室と連通する連通部140を備えると共に実質的な密閉空間を形成するとともに前記負圧発生部材へ供給される液体を貯溜する液体収納室136と,
 C 前記負圧発生部材収納室134と前記液体収納室136とを仕切るとともに前記連通部140を形成するための仕切り壁138と,
 D を有する液体収納容器?において,
 E 前記第一及び第二の負圧発生部材の圧接部の界面132Cは前記仕切り壁138と交差し,
 F 前記第一の負圧発生部材132Bは前記連通部140と連通するとともに前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記大気連通部112と連通可能であると共に,
 G 前記第二の負圧発生部材132Aは前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記連通部140と連通可能であり,
 H 前記圧接部の界面132Cの毛管力が第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aの毛管力より高く,かつ,
 K 液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体が負圧発生部材収納室内に充填されている
 L ことを特徴とする液体収納容器。

 (本件発明10)
 A’互いに圧接する第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aを収納するとともに液体供給部114と大気連通部112とを備える負圧発生部材収納室134と,
 B’該負圧発生部材収納室と連通する連通部140を備えると共に実質的な密閉空間を形成するとともに前記負圧発生部材へ供給される液体を貯溜する液体収納室136と,
 C’前記負圧発生部材収納室134と前記液体収納室136とを仕切るとともに前記連通部140を形成するための仕切り壁138と,を有し,
 E’前記第一及び第二の負圧発生部材の圧接部の界面132Cは前記仕切り壁138と交差し,
 F’前記第一の負圧発生部材132Bは前記連通部140と連通するとともに前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記大気連通部112と連通可能であると共に,
 G’前記第二の負圧発生部材132Aは前記圧接部の界面132Cを介してのみ前記連通部140と連通可能であり,
 H’前記圧接部の界面132Cの毛管力が第一及び第二の負圧発生部材132B、132Aの毛管力より高い
 I’液体収納容器?を用意する工程と,
 J’前記液体収納室に液体を充填する第1の液体充填工程と,
 K’前記負圧発生部材収納室に,前記液体収納容器の姿勢によらずに前記圧接部の界面全体が液体を保持可能な量の液体を充填する第2の液体充填工程と,
 L’を有することを特徴とする液体収納容器の製造方法。

(DB注:上記本件発明(請求項1と請求項10)の要旨中に、判決の理由部分と同様に、第1実施例(図2)で対応すると思われる符号を当DBにおいて加入した。)

【判示事項】
 a 原告主張のとおり,本件発明1においては,毛管力が高い界面部分を有する構造と界面部分の上方までインクを充填することの組合せにより,輸送中のインクの漏れを防ぐ効果を奏しているものであるが,毛管力が高い界面部分を形成した構造が重要であり,界面部分の上方までインクを充填することは,上記構造に規定された必然ともいうべき充填方法であるといわざるを得ない。そして,本件インクタンク本体においては,上記毛管力が高い界面部分の構造は,インクを使い切った後もそのまま残存しているものである。
 b また,本件発明1では,インクの充填は構成要件の一部を構成しているが,インクそれ自体は,特許された部品ではない。

 以上の事実によれば,本件インクタンク本体にインクを再充填して被告製品としたことが新たな生産に当たると認めることはできないから,日本で譲渡された原告製品に基づく被告製品につき,国内消尽の成立が認められる。

 原告は,物を生産する方法の発明の場合,当該製造方法が特許として認められている以上,その実施行為が特許法上の製造に当たることに議論の余地がないから,特許製品の構造,特許発明の内容,取引の実情等に基づき新たな生産か修理かの判断を行う必要はない旨主張する。
 しかしながら,特許された製造方法により生産された製品を譲り受けた者が,当該製品を使用し譲渡等する権利に基づき,その製品の寿命を維持又は保持するために当該特許製品を修理することができることは,物の特許の場合と同様であり,製造方法の特許についてだけ構成要件の一部に該当する行為があれば当然特許権侵害となると解すべき理由はない。したがって,物を生産する方法の特許の場合も,物の特許の場合におけると同様な考慮要素を総合して新たな生産か修理かを判断する必要があるというべきであり,これに反する原告の主張は採用することができない。

(DB注:本件発明(本件発明1と10)は、大気連通口112又は液体供給口114を密閉するシール手段が構成要件とされていない(請求項12、段落0009、段落0010、段落0020、段落0046、段落0107、段落0114、段落0127の各記載参照)。また、「液体」や「負圧発生部材」についても、その組成や物性が開示特定されていないから、液体は物流時の振動、気圧変化等により液体供給口114から流出し、構成要件Kの作用効果を達成しない虞があると思われる。また、大気連通口112からも液漏れを起こす虞があると思われる。したがって、本件発明は未完成発明というべきものであり、技術的範囲の判定すら不能と思われる。)
【判決資料】 なし
【査定資料】 特開平7−125239、特開平7−52404、特開平9−94976、特開平8−25640、特開平8−207304(誤記)、特開平7−101071、特開平9−136425、特開平7−323565、特開平9−174867
【技術分類】 B41J  【事例分類】 (ワネ)消尽  【参照条文】 特許法1条、特許法70条
【審査官】
 尾崎 俊彦





エプソン インクジェット記録装置用インクタンク事件
2007/05/30 知財(東京)高裁(侵害訴訟控訴)・特許
【事件番号】 平成18年(ネ)第10077号特許権侵害差止請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成16年(ワ)第26092号)
【原  告】
控訴人 セイコーエプソン株式会社(特許権者)
【被  告】
被控訴人 株式会社エコリカ
【主  文】
 1 本件控訴を棄却する。
 2 控訴費用は控訴人の負担とする。
(第3部 裁判長裁判官 飯村 敏明、裁判官 大鷹 一郎、裁判官 嶋末 和秀)
【発明名称】 インクジェット記録装置用インクタンク
【本件公報】 B:3257597
【発明要旨】
 (本件発明1)
 1A インクを収容する容器1と,
 1B インク供給針9が挿通可能で,かつ前記容器の底面に筒状に形成されて前記インクが流入するインク取り出し口3と,
 1C 前記インク取り出し口に設けられ,前記インク供給針の外周に弾接してインクの漏れ出しを防止する環状のシール材6と,
 1D 前記シール材の前記インク供給針の挿通側を封止し,かつ前記インク取り出し口に接着されたフィルム4と,からなる
 1E インクジェット記録装置用インクタンク。

 (本件発明2)
 2A キャリッジ12に設けられた記録ヘッド10に連通するように,先端が円錐面として形成された筒胴部を備え,メニスカスによりインクを保持することができる直径のインク供給孔9aが穿設されたインク供給針9を備えたインクジェット式記録装置に着脱されるインクタンクにおいて,
 2B インクを収容する容器1と,
 2C インク供給針が挿通可能で,かつ前記容器の底面に筒状に形成されて前記インクが流入するインク取り出し口3と,
 2D 前記インク取り出し口に設けられ,前記インク供給針の外周に弾接してインクの漏れ出しを防止する環状のシール材6と,
 2E 前記シール材の前記インク供給針の挿通側を封止し,かつ前記インク取り出し口に接着されたフィルム4と,からなる
 2F インクジェット記録装置用インクタンク。
【判示事項】
 (イ) 以上によれば,本件原出願の当初明細書(乙6)には,インク供給針の先端は,インク取り出し口を封止したゴム栓を貫通できるよう鋭く加工されており危険であったという課題を解決するため,「インクタンクのインク取り出し口を封止する部材」を「先端が鋭くないインク供給針でも貫通できるフィルム」とするインクタンクとしたが,これに伴い,インク取り出し口を封止するフィルムの厚さは薄いものとなった結果,使用者がインクタンクを交換する時に不用意にフィルムを破る危険という課題が生じること,その課題解決手段として,インク取り出し口外縁がフィルムより突出させる構成を採ったこと,その突出量が一定量(インク取り出し口外縁の最大内径の10分の1以上)である場合には,使用者が通常の取扱いをする限りフィルムが破れることはないが,その突出量が一定量に満たない場合には,使用者が通常の取扱いをしても,フィルムが破れるおそれがあることを開示していることが認められる。

(DB注:特許3246516号(原特許)の訂正審判(審判2006-39179号)の請求成立(判決の「第2 事案の概要」参照)。
(DB注:報道によると、「最高裁第二小法廷(中川了滋裁判長)は9日、エプソンの上告を退ける決定をし」、これに対して、エプソンは、「極めて残念だ。当社の特許や商標を無断で使用するものについては、今後も法律に基づき対応していく」とのコメントを出した。」とされる(http://www.asahi.com/national/update/1109/TKY200711090438.html)。2007/11/13更新)
 訂正後の特許3246516号の発明の要旨は以下のとおり。なお、インクの組成や粘性について、明細書及び特許請求の範囲に、何ら開示特定されていない(特許法29条2項及び/又は特許法36条、並びに特許法126条4項違背)。
 (請求項1)
 キャリッジに設けられた記録ヘッド10に連通するインク供給針9に,装着前にはインク取り出し口3をフィルム4で封止したインクタンク1が着脱可能に設けられたインクジェット記録装置において,
 前記インク供給針9は,樹脂成形で,前記フィルムを貫通できるように先端が円錐面として形成された筒胴部を備え,
 かつ前記円錐面のみに前記筒胴部の内径よりも小さく,メニスカスによりインクを保持することができる直径のインク供給孔9aが複数穿設されているインクジェット記録装置。)
【判決資料】 特開平4−257452号公報(文献乙9、特許第3060555号)
【査定資料】 特開平2−198861、特開昭63−9545、特開昭63−3961
【技術分類】 B41J  【事例分類】 優先権、分割、変更  【参照条文】 特許法29条1項3号、特許法29条2項、平成6年法律第116号改正前特許法44条1項、特許法104条の3
【審査官】 江成 克己


2006/10/18 東京地方裁判所・特許
【事件番号】 平成16年(ワ)第26092号特許権侵害差止請求事件
【原  告】
原告 セイコーエプソン株式会社(特許権者)
【被  告】
被告 株式会社エコリカ
【主  文】
 1 原告の請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告の負担とする。
(民事第29部 裁判長裁判官 清水 節、裁判官 山田 真紀、裁判官 佐野 信)
【発明名称】 インクジェット記録装置用インクタンク
【本件公報】 B:3257597
【発明要旨】
 (本件発明1)
 1A インクを収容する容器1と,
 1B インク供給針9が挿通可能で,かつ前記容器の底面に筒状に形成されて前記インクが流入するインク取り出し口3と,
 1C 前記インク取り出し口に設けられ,前記インク供給針の外周に弾接してインクの漏れ出しを防止する環状のシール材6と,
 1D 前記シール材の前記インク供給針の挿通側を封止し,かつ前記インク取り出し口に接着されたフィルム4と,からなる
 1E インクジェット記録装置用インクタンク。

 (本件発明2)
 2A キャリッジ12に設けられた記録ヘッド10に連通するように,先端が円錐面として形成された筒胴部を備え,メニスカスによりインクを保持することができる直径のインク供給孔9aが穿設されたインク供給針9を備えたインクジェット式記録装置に着脱されるインクタンクにおいて,
 2B インクを収容する容器1と,
 2C インク供給針が挿通可能で,かつ前記容器の底面に筒状に形成されて前記インクが流入するインク取り出し口3と,
 2D 前記インク取り出し口に設けられ,前記インク供給針の外周に弾接してインクの漏れ出しを防止する環状のシール材6と,
 2E 前記シール材の前記インク供給針の挿通側を封止し,かつ前記インク取り出し口に接着されたフィルム4と,からなる
 2F インクジェット記録装置用インクタンク。
【判示事項】
 これに対し,原告は,インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させるという構成は,フィルムを保護するという目的のために採用されたものであり,本件原当初発明の本来の目的を達成させるための構成ではないから,付加的な構成にすぎず,同構成を削除したことにより分割出願が不適法となることはない旨主張する。
 確かに,前記(3)のとおり,本件原当初発明の目的は,@インクタンクの交換時に記録ヘッドに侵入する気泡の量が多かったこと,Aインク供給針の先端が鋭く加工されており危険であったこと,という課題を解決するものであるが,本件原当初発明は,Aの目的を達成するために,インク取り出し口を封止する部材を,先端が鋭くないインク供給針でも貫通できるフィルムとしたのであり,このことから,必然的に当該フィルムの保護の問題が生じた以上,フィルムを保護するための構成が本件原当初発明の目的達成のための構成ではないということはできない。そして,本件原明細書において,インク取り出し口の外縁をフィルムより外側に突出させた構成が本件原当初発明にとって不可欠のものであると見なしていたことは,前記(3)で判示したとおりである。
 したがって,原告の上記主張は理由がない。

 そうすると,本件分割出願は,平成6年法律第116号改正前特許法44条1項の分割要件を満たしているとは認められない不適法なものであるから,出願日の遡及は認められず,本件特許の出願日は現実の出願日となる。そして,前記争いのない事実等で判示したとおり,本件特許は,平成4年2月19日にされた本件原出願につき,平成12年12月21日に分割出願されたものであるから,本件特許の出願日は,平成12年12月21日となる。

 本件発明2の構成要件2Aは文献乙9発明の上記構成@と,本件発明1の構成要件1A及び本件発明2の構成要件2Bは文献乙9発明の上記構成Aと,本件発明1の構成要件1B及び本件発明2の構成要件2Cは文献乙9発明の上記構成Bと,本件発明1の構成要件1C及び本件発明2の構成要件2Dは文献乙9発明の上記構成Cと,本件発明1の構成要件1D及び本件発明2の構成要件2Eは文献乙9発明の上記構成Dと,本件発明1の構成要件1E及び本件発明2の構成要件2Fは文献乙9発明の上記構成Eと,それぞれ同一であるから,本件発明1及び本件発明2はいずれも文献乙9発明と同一である。
 したがって,本件発明は,文献乙9により新規性を欠くものといわなければならない。

 以上のとおり,本件特許は,特許法29条1項3号の規定に違反して特許されたものであるから,同法123条1項2号の規定に基づき,特許無効審判により無効にされるべきものである。したがって,原告は,同法104条の3第1項の規定により,被告に対し,本件特許権に基づく権利行使をすることはできない。

(DB注:被告は、出願日が遡及されないとの前提で、本件特許発明の無効理由を主張している。しかしながら、そのような前提がなくても、本件発明の進歩性は否定されると思われる。すなわち、本件明細書の従来技術である特開昭63-9545公報には、環状シール材が開示されており、特許電子図書館を用いた簡易先行技術調査によると、同様なシール機能を果たすと思われる弾性リングが、特開平03-71853号や実開昭60-22346号公報にも開示されている。また、特開平3-219961号公報には、先端が円錐状の中空針が、特開平03-295665号公報には第2の弾性部材(シール材)の外側に貼着された封止膜が、それぞれ開示されている。
関連事件経過:2006/05/22特許無効審決(審判2005-80144号 引用例は本件判決の文献乙9に同じ)、 2006/06/22審決取消訴訟提起(平成18年(行ケ)10282号)、 2006/07/18特許3246516号(親特許)の訂正審判請求(審判2006-39122号)、 2006/07/31本件発明の訂正審判請求(審判2006-39130号)、 2006/09/29知財高裁第2部決定(平成18年(行ケ)10282号 裁判記録未調査(裁判所のホームページで公開されている判例検索システムには本件決定は載っていない。)))
【判決資料】 特開平4−257452号公報(文献乙9、特許第3060555号)
【査定資料】 特開平2−198861、特開昭63−9545、特開昭63−3961
【技術分類】 B41J  【事例分類】 優先権、分割、変更  【参照条文】 特許法29条1項3号、特許法29条2項、平成6年法律第116号改正前特許法44条1項、特許法104条の3
【審査官】 江成 克己




富士フイルム レンズ付きフイルムユニット事件
2007/04/24 東京地方裁判所・特許
【事件番号】 平成17年(ワ)第15327号損害賠償請求事件
平成18年(ワ)第26540号承継参加申立事件
【原  告】
脱退原告 富士フイルムホールディングス株式会社(特許権者)
承継参加人 富士フイルム株式会社
【被  告】
被告 株式会社大東貿易
被告 有限会社ハマ・コーポレーション
【主  文】
 1 被告株式会社大東貿易は,承継参加人に対し,3978万8482円及びこれに対する平成17年8月9日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 2 被告らは,承継参加人に対し,連帯して162万3619円及びこれに対する被告株式会社大東貿易については平成17年8月9日から,被告有限会社ハマ・コーポレーションについては平成17年8月7日から各支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
 3 承継参加人のその余の請求を棄却する。
 4 訴訟費用は,これを60分し,その10を被告株式会社大東貿易の負担とし, その1を同被告と被告有限会社ハマ・コーポレーションの連帯負担とし,その余を承継参加人の負担とする。
 5 この判決は第1項及び第2項に限り,仮に執行することができる。
(民事第46部 裁判長裁判官 設楽 隆一、裁判官 古河 謙一、裁判官 間 史恵)
【発明名称】 1)レンズ付きフイルムユニット及びその製造方法 2)レンズ付きフイルムユニット及びその製造方法
【本件公報】 B:H02-32615
【発明要旨】
 <本件特許発明1>
 A1 予め未露光フイルム21を内蔵し,
 A2 このフイルムに対してシャッタ手段66,63を操作することにより,
 A3 露光付与機構86を通して露光を付与するようにし,
 A4 撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた
 A5 レンズ付きフイルムユニットにおいて,
 B1 前記ユニット内のフイルム露光枠10の一方側に未露光フイルムロール23が配置され,
 B2 フイルム露光枠10の反対側に回転可能な巻芯28を内部に有するパトローネ20が配置されており,
 B3 未露光フイルム21の一端と巻芯28が予め固定されていること,
 C1 前記パトローネ20内に回転可能に支承された巻芯28には,ユニットのフイルム巻取り操作手段60を連結させ,
 C2 前記シャッタ手段66が操作された後に,前記未露光フイルムをパトローネ内に巻き込み可能?としていること,
 D1 前記未露光フイルムロール23は,該ユニット1の製造工程で前記パトローネ20内に収納された状態から引き出されて形成されており,
 D2 該フイルムロール23の中心部が中空状態で,
 D3 未露光フイルムロール収納部11に装填されていること
 E を特徴とするレンズ付きフイルムユニット。

(DB注:第3実施例(主に、本件公報1(特公平02-32615号)明細書の第8図及び第9図参照。)で、対応すると思われる符合を、当DBにおいて、発明の分説中に加入した。
 本件公報1明細書の従来技術の欄に、米国特許2933027号、実公昭39-33924号を引用して、「これらに示されるレンズ付きフイルムは、簡易な構造で組み立ても簡単にして安価に製作する必要性から、ユニットは撮影機構及びフイルムを収納する本体部と裏蓋とが接着されてできており、ロールフイルムの供給室と巻取室の構造は、これ等の間に位置する露光室の仕切りが本体部と蓋部に接続されただけの非常に簡単な構造になっている。そして、撮影済フイルムを取り出すには、レンズ付きフイルムユニットをこわすか分解して開くようになっていた。」と記載されている。
 また、本件発明1の公開公報(特開昭64-544号)の6ページには、「これによりユニット本体1が部分的に破損されてしまうので、繰り返し使用の精度保障のないフイルムユニット本体1が再使用されるという事態を防止できるようになる。」と記載されている。また、本件公報1には、裁判所摘示のように、「レンズ付きフイルムユニットを分解又は破壊しなくては、これを取り出せないような構造にしておくと、ユーザーには再利用ができず、」と記載されている。
 そうすると、構成要件A1ないしA5からなる本件発明1のクレームの前文Aは、点検及び修理することなしには繰り返し使用することができない、このような簡易カメラ(技術分類G03B17/00)の存在を前提とし、その改良に係る発明であることを規定する記載と解される。なお、特許要件を判断する局面(特許法104条の3)において、不明確な特許請求範囲の記載を、明細書の記載を参酌して限定解釈する必要はない(クレーム優位の原則)から、例えば、撮影前に、カメラ販売会社が、その責任において、繰り返し使用の精度保障のない簡易カメラの未露光のフイルムを、パトローネ内に巻き戻して簡易カメラの外へ取り出し、それを画質に優れた他社製のフイルムと交換することまで、構成要件A4が除外しているとは解されない(実開昭48-4622号、実開昭53-127934号公報参照)。
 さらに、構成要件D1の「製造工程で前記パトローネ内に収納された状態から引き出されて形成されており」とは、「製造方法」に係る記述であって、「物」の発明の構成要件としては不適切であり、特許要件を判断する局面においては、「引き出され」た「時」は構成要件とされないと解される。
 構成要件C1記載の「フイルム巻取り操作手段」の下位概念としては、実施例記載の巻上げノブ60やフォーク16等が含まれるものの、1コマ定尺送りに関連した、撮影枚数表示板61やスプロケット65までは含まれないと思われる。(2007/11/18更新))

 <本件特許発明2>
 A1 製造時に予め写真フイルム9とパトローネ2とがユニット本体に形成されたフイルムロール室25とパトローネ室24にそれぞれ収納され,
 A2 撮影後にユニット本体に組み込まれた巻上げノブ27の回動操作により前記パトローネ内のスプール7を回転させ,
 A3 撮影済みの写真フイルムをパトローネに巻き込むようにした
 A4 レンズ付きフイルムユニットにおいて,
 B1 前記巻上げノブ27は,その下面に突出させた駆動軸28が前記パトローネ室内に突出するとともに,
 B2 この駆動軸28の外周には軸方向に延びた外歯30が180度以下の一定ピッチで形成され,
 C1 前記パトローネのスプールは,ISO規格に準拠した外形寸法を有し,
 C2 その上端側には前記駆動軸が嵌入する軸孔3が形成され,
 C3 この軸孔内の下部には軸孔の中心軸に関して180度の回転対称となるように突出し,前記駆動軸の外歯30に係合しない係合片10が設けられており,
 C4 かつ前記軸孔3を形成するスプール7の内壁の前記係合片10よりも上部には,駆動軸28の前記外歯30が噛み合う複数の内歯12からなるキー溝12が180度以下の一定ピッチで形成され,
 D 前記巻上げノブの回動操作が,前記外歯30と内歯12との噛合により前記スプール7に伝達されるようにしたこと
 E を特徴とするレンズ付きフイルムユニット。

(DB注:本件公報2(特許第3193229号公報)明細書の【発明の効果】の欄に、「したがって、最初のコマ位置設定がほとんどずれることなく、簡単にパトローネの組み込みを行うことができる。」と記載されている。しかしながら、上記本件発明1と同様に、本件発明2においても、1コマ定尺送りに関連した、撮影枚数表示板(無番号、無説明)やスプロケット(図示なし)等は権利付与の請求に係る特許請求の範囲に記載(特定)されていない(本件発明1の第1実施例(第1図)参照)。そうであれば、本件明細書2の【発明が解決しようとする課題】及び【課題を解決するための手段】の欄の記載は、その前提において誤っていると思われる。なお、ボリューム軸とその摘みのように、コレットを用いて回動位置の微調整を可能とする構成は、周知慣用技術として、様々な技術分野において用いられていると思われる。(2007/10/25更新))
【判示事項】
 第4 当裁判所の判断
 1 被告ら製品は本件特許発明1の構成要件A4(ひいてはE)を充足するか(争点1)について
 (1) 被告ら製品が本件特許発明1の構成要件A4を充足するか否か判断するにあたっては,同構成要件「撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた」にいう「再使用できないようにされた」の意義が問題となる。
 本件明細書1の「発明の詳細な説明」欄には,本件特許発明1に係る従来技術の問題点を解決する試みの例として「レンズ付きフイルムユニツトに35ミリ幅のフイルム(135フイルム)を用いる試みがなされている。また,この35ミリ幅のフイルムとして,国際標準規格(ISO:1007−1979年版)で規定されたパトローネ付きのものを利用して,レンズ付きフイルムユニツトを分解又は破壊しなくては,これを取り出せないような構造にしておくと,ユーザーには再利用できず,フイルム現像所では現行の現像処理システムを使用することができるレンズ付きフイルムユニツトが考えられる。」との記載があり(甲2の4欄39行ないし5欄5行),また,本件特許発明1の実施例の説明として,「裏蓋3は,本体基部2に超音波溶着などによって固着され,ユーザーはこれを取り外すことができないようになっている。」(甲2の8欄15ないし17行)と記載されている。
 上記各記載に照らせば,本件特許発明1の構成要件A4における「再使用できない」というのは,レンズ付きフィルムユニットを購入した一般消費者によって再使用することができないという意味に解するのが相当である。

 (2) 被告ら製品は,前カバー(11)及び裏蓋(13)と本体部(12)とは,一部爪(フック)で係合された後,遮光性粘着テープで固着されるなどの構成を採っており,撮影後に上記テープを剥がすだけでフイルムを詰め替えて再使用できるわけではなく,裏蓋などを本体から外すために,無理に力を加えて爪係合部をはずそうとすると,爪等がさらに破損することがある上,裏蓋などをはずした後に,フイルムロールを形成し,パトローネをパトローネ室に,フイルムロールをフイルムロール室にそれぞれ装填した上,裏蓋とユニット本体部の爪係合部を係合させ,遮光性粘着テープを用いて裏蓋をユニット本体部に固定するなどの作業を経なければ詰め替えができないものであり,しかも,上記の作業のうち,フイルムロールの形成から裏蓋のユニット本体部への固定に至る作業は,暗室で行わなければならないものである(前記第2の1(3)b)CないしE,IないしO参照)。
 そうすると,被告ら製品は,一般消費者がフイルムを露光させることなく詰め替えることが困難な構造であり,撮影後にフィルムを取り出した後は再利用できないものというべきである。
 したがって,被告ら製品は,構成要件A4「撮影後にフィルムを取り出したのちは再使用できないようにされた」を充足するものである。
 (3) 被告ら製品が,本件特許発明1のその余の構成要件(構成要件A1ないし3,5,B1ないし3,C1及び2,D1ないし3)を充足することは,第2の1(4)ア記載のとおり当事者間に争いがないから,被告ら製品は,構成要件Eをも充足する。
 よって,被告ら製品は,本件特許発明1の技術的範囲に属するものである。


 2 脱退原告ないし承継参加人の本件各特許権侵害を理由とする損害賠償請求の許否(争点2)について
 (1) 被告ら製品について本件各特許権は消尽したか(争点2ア)について

 イ本件特許権1について

 b) 本件明細書1の上記記載によれば,従来技術においては,撮影済みのフイルムがパトローネから引き出された状態となっている場合には,これを本体部から取り出す作業は暗室で行わなくてはならず,非常に煩わしいこと,パトローネから引き出された状態の露光済みフイルムを再びパトローネ内に巻き戻すようにすれば,明室でのフイルム取り出し作業が可能になるが,レンズ付きフイルムユニツトにフイルム巻き戻し機構を設けなくてはならず,コストアツプを招き,さらに,現像所では回収されたレンズ付きフイルムユニツトのすべてについて巻き戻し作業が必要になり,作業効率の点から好ましくないことという問題があったものであり,本件特許発明1は,上記問題を解決するために,パトローネから予め引き出された未露光フィルムをフィルムロールとしてフィルムロール収納部に装填し,撮影の度に撮影済みのフィルムがパトローネに収納されていく構成を採用した点に,従来のレンズ付きフイルムユニットにはみられない技術的思想の中核を成す特徴的な部分がある。以上からすれば,本件特許発明1の本質的部分は,レンズ付きフイルムのフイルム露光枠の一方側に未露光フイルムロールを配置し,もう一方の側に回転可能な巻芯を内部に有するパトローネを配置して未露光フイルムの一端をパトローネの巻芯に固定する構成要件B,パトローネ内にフイルム巻き取りの操作手段を連結させてシャッタ手段操作後にフイルムをパトローネ内に巻き取り可能とする構成要件C,未露光フイルムロールが製造工程においてパトローネから引き出された状態で形成されているとする構成要件Dにあると認められる。

(DB注:
 <技術的思想の中核を成す特徴的な部分について>
 「製造工程で・・・形成されており」という、構成要件D1の記載は、「レンズ付きフイルムユニットの製造方法」の発明についての記述であり、「物」の発明である「レンズ付きフイルムユニット」の構成要件としては、不適切である。
 したがって、「レンズ付きフイルムユニット」という「物」の発明の特許要件を判断する局面においては、パトローネ室にパトローネが収納された後に、裏蓋が光密に接着固定され、そのようにして製造された簡易カメラを外からノブを操作して、パトローネからフイルムロール室へ未露光フイルムを引き出してロール状に形成するものであっても、権利付与の請求に係る特許請求の範囲に含まれると解される。
 ところで、審査段階で特許庁審査官によって引用されている、実開昭48-46622号及び実開昭53-127934号公報には、接着固定されないものの、裏蓋が光密に密閉された後に、外からノブを操作して、未露光フイルムロールを引き出す構成が開示されている。同じく、英国特許558515号公報には、1つのノブでフイルムの巻き出し及び巻き戻しを行う構成が開示されている。簡易カメラとそうでないカメラは、共にカメラ製造会社で製造されており、技術分野(G03B17/00)を共通とするから、一方の技術を他方に適用することについて、動機付けがあると推定される。また、裏蓋を接着固定するか否かは単なる設計上の問題に過ぎない。そして、それらの引用例記載の技術を組み合わせることについて、格別の阻害事由があるとは認められない。
 そうだとすると、構成要件Dをもって、「技術的思想の中核を成す特徴的な部分」とすることはできないと思われる。

 <本件発明1の進歩性について>(但し、被告らは特許無効の主張をしていない。)
 構成要件A1ないしA5からなる本件発明1のクレームの前文Aは、繰り返し使用の精度保障のない簡易カメラの存在を前提として、その改良に係る発明であることを規定した記載と解される(特開昭47-9180号公報参照)。
 構成要件B1及びB2については、審査時の引用例である英国特許558515号、実開昭48-46622号及び実開昭53-127934号公報に開示又は示唆されている。構成要件B3については、特開昭58-203437号公報に開示されている。
 構成要件C1及びC2は、前記実開昭48-46622号及び実開昭53-127934号公報に開示又は示唆されている。
 構成要件D1の「製造工程で・・・」とは、「レンズ付きフイルムユニットの製造方法」の発明に係る記載であり、「レンズ付きフイルムユニット」の発明の構成要件として不適切であって、特許要件判断の局面においては、「引き出された」時について、無限定であると解される。すなわち、ユーザーが使用に際して、又はカメラ会社が製造工程において、既に裏蓋が接着固定されている簡易カメラを外から操作して、未露光フイルムロールをパトローネから引き出す形式の簡易カメラも包含されると解される(前記英国特許558515号、実開昭48-4622号及び実開昭53-127934号公報参照)。
 構成要件D2につては、前記英国特許558515号公報に開示されている。
 構成要件D3は周知慣用技術である。
 構成要件Eは構成要件A5と同じである。
 そうすると、本件発明1は、特許法104条の3の規定により、権利の行使ができない特許発明であると解される。(2007/11/18変更))
(関連事件;東京地裁平成8年(ワ)16782号、東京地裁平成15(ワ)15702号、東京高裁16(ネ)1563号事件)
【判決資料】 なし
【査定資料】 1)特開昭59-218433、実開昭53-127934、実開昭48-46622、実公昭52-43303、英国特許558515、英国特許558516、オランダ公開特許6708486、日本経済新聞社昭和61年5月28日付朝刊第14版8頁 2)特開昭63-226643、特開昭63-271326 特開平2-271333、実開昭49-100541
【技術分類】 G03B  【事例分類】 591本件発明解釈  【参照条文】 特許法17条の2、特許法29条2項、特許法36条、特許法39条、特許法104条の3
【審判官】 審判長審判官 松本 悟、審判官 今 勝義、審判官 瀧本 十良三


2005/01/25 知財(東京)高裁(侵害訴訟控訴)・特許
【事件番号】 平成16年(ネ)第1563号 特許権差止請求権不存在確認等請求控訴事件(原審・東京地方裁判所平成15年(ワ)第15702号)
【原  告】
控訴人(原告) 株式会社大東貿易
控訴人(原告) 有限会社ハマ・コーポレーション
控訴人(原告) 株式会社フィールテック
【被  告】
被控訴人(被告) 富士写真フイルム株式会社(特許権者)
【主  文】
 本件控訴をいずれも棄却する。
 控訴費用は控訴人らの負担とする。
(第4部 裁判長裁判官 塚原 朋一、裁判官 田中 昌利、裁判官 佐藤 達文)
【発明名称】 レンズ付きフイルムユニット及びその製造方法
【本件公報】 B:H02-32615
【発明要旨】
 <本件特許発明>
 A 予め未露光フイルム21を内蔵し,このフイルムに対してシャッタ手段66,63を操作することにより,露光付与機構86を通して露光を付与するようにし,
 B 撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた?レンズ付きフイルムユニットにおいて,
 C 前記ユニット内のフイルム露光枠10の一方側に未露光フイルムロール23が配置され,フイルム露光枠10の反対側に回転可能な巻芯28を内部に有するパトローネ20が配置されており,
 D 未露光フイルム21の一端と巻芯28が予め固定されていること,
 E 前記パトローネ20内に回転可能に支承された巻芯28には,ユニットのフイルム巻取り操作手段60を連結させ,
 F 前記シャッタ手段66が操作された後に,前記未露光フイルムをパトローネ内に巻き込み可能?としていること,
 G 前記未露光フイルムロール23は,該ユニット1の製造工程で前記パトローネ20内に収納された状態から引き出されて形成されており,
 H 該フイルムロール23の中心部が中空状態で,未露光フイルムロール収納部11に装填されている
 E ことを特徴とするレンズ付きフイルムユニット。

(DB注:第3実施例(主に、本件公報(特公平02-32615号)明細書の第8図及び第9図参照。)で、対応すると思われる符合を、当DBにおいて、発明の分説中に加入した。
 本件公報明細書の従来技術の欄に、米国特許2933027号、実公昭39-33924号を引用して、「これらに示されるレンズ付きフイルムは、簡易な構造で組み立ても簡単にして安価に製作する必要性から、ユニットは撮影機構及びフイルムを収納する本体部と裏蓋とが接着されてできており、ロールフイルムの供給室と巻取室の構造は、これ等の間に位置する露光室の仕切りが本体部と蓋部に接続されただけの非常に簡単な構造になっている。そして、撮影済フイルムを取り出すには、レンズ付きフイルムユニットをこわすか分解して開くようになっていた。」と記載されている。
 また、本件発明の公開公報(特開昭64-544号)の6ページには、「これによりユニット本体1が部分的に破損されてしまうので、繰り返し使用の精度保障のないフイルムユニット本体1が再使用されるという事態を防止できるようになる。」と記載されている。また、本件公報には、裁判所摘示のように、「レンズ付きフイルムユニットを分解又は破壊しなくては、これを取り出せないような構造にしておくと、ユーザーには再利用ができず、」と記載されている。
 そうすると、構成要件A1ないしA5からなる本件発明1のクレームの前文Aは、点検及び修理することなしには繰り返し使用することができない、このような簡易カメラ(技術分類G03B17/00)の存在を前提とし、その改良に係る発明であることを規定する記載と解される。なお、特許要件を判断する局面において、不明確な特許請求範囲の記載を、明細書の記載を参酌して限定解釈する必要はない(クレーム優位の原則)から、例えば、撮影前に、カメラ販売会社が、その責任において、繰り返し使用の精度保障のない簡易カメラの未露光のフイルムを、パトローネ内に巻き戻して簡易カメラの外へ取り出し、それを画質に優れた他社製のフイルムと交換することまで、構成要件A4が除外しているとは解されない(実開昭48-4622号、実開昭53-127934号公報参照)。
 また、構成要件D1の「製造工程で前記パトローネ内に収納された状態から引き出されて形成されており」とは、「製造方法」に係る記述であって、「物」の発明の構成要件としては不適切であり、特許要件を判断する局面においては、「引き出され」た「時」は構成要件とされないと解される。同様に構成要件D3の「未露光フイルムロール収納部に装填され」た「時」は構成要件とされないと解される。
 構成要件C1記載の「フイルム巻取り操作手段」の下位概念としては、実施例記載の巻上げノブ60やフォーク16等が含まれるものの、1コマ定尺送りに関連した、撮影枚数表示板61やスプロケット65までは含まれないと思われる。(2007/11/15変更))
【判示事項】
第3 当裁判所の判断
 当裁判所も,控訴人らの本訴請求はいずれも理由がないから,これらを棄却すべきものと判断する。その理由は,以下のとおり付加するほか,原判決の「事実及び理由」中の「第3 当裁判所の判断」(ただし,22頁4行から23頁6行まで,及び28頁14行から25行までの各部分を除く。)のとおりであるから,これを引用する。

 1 原判決の認定判断の誤りをいう主張について
 (1) 本件においては,原告製品が本件発明の技術的範囲に属し,形式的には,原告製品が本件特許権を侵害しているとの限度では,控訴人ら自身が認めるところであり,争いがない。
 そこで,本件発明を含む本件特許出願日が平成62年8月14日,本件考案の実用新案登録出願日が平成62年1月19日であることから,被控訴人が,平成5年法律第26号による改正前の特許法42条の2に基づき,本件発明(甲1の特許請求の範囲第1項に記載された発明)について,優先出願Bを「先の出願」として優先権を主張し,本件発明(のうち,いわば全体)が「先の出願(優先出願B)の願書に最初に添付した明細書又は図面(乙3)に記載された発明」として,優先権主張の効果を有し,本件発明の出願が「先の出願」(優先出願B)の時である昭和61年10月17日にされたものとみなされるか否かが,本件発明についての特許の有効性に関する争点となる。
 そこで,被控訴人が主張する優先権主張の効果が認められるか否かを判断するには,本件発明の要旨を認定した上で,これと優先出願Bの願書に最初に添付した明細書又は図面に記載された発明との関係を検討する必要がある。
 (2) 本件発明の要旨認定
 (2-1) 発明の要旨認定は,特段の事情のない限り,特許請求の範囲の記載に基づいてされるべきであり,特許請求の範囲の記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情がある場合に限って,明細書の発明の詳細な説明の記載を参酌することが許されるにすぎないものというべきである(最高裁平成3年3月8日第一小法廷判決・民集45巻3号123頁)。
 そこで,本件発明についての特許請求の範囲第1項の記載をみるに,次のとおりである(甲1。なお,括弧内のアルファベットは,原判決において構成要件を分説する際に付された符号である。)。
 「(A)予め未露光フイルムを内蔵し,このフイルムに対してシャッタ手段を操作することにより,露光付与機構を通して露光を付与するようにし,(B)撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされたレンズ付きフイルムユニットにおいて,(C)前記ユニット内のフイルム露光枠の一方側に未露光フイルムロールが配置され,フイルム露光枠の反対側に回転可能な巻芯を内部に有するパトローネが配置されており,(D)未露光フイルムの一端と巻芯が予め固定されていること,(E)前記パトローネ内に回転可能に支承された巻芯には,ユニットのフイルム巻取り操作手段を連結させ,(F)前記シャッタ手段が操作された後に,前記未露光フイルムをパトローネ内に巻き込み可能としていること,(G)前記未露光フイルムロールは,該ユニットの製造工程で前記パトローネ内に収納された状態から引き出されて形成されており,(H)該フイルムロールの中心部が中空状態で,未露光フイルムロール収納部に装填されている(I)ことを特徴とするレンズ付きフイルムユニット」
 上記の特許請求の範囲の記載を検討すると,その記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情は見当たらない。

(DB注:「レンズ付きフイルムユニット」とは、「フイルムユニット」ではなく、シャッター、絞り、ファインダー等も具えた簡易カメラのことであり、特許請求の範囲には、そのような「物の発明」である簡易カメラの「製造方法」についての記述も存在し、「その記載の技術的意義が一義的に明確に理解することができないとか,一見してその記載が誤記であることが明細書の発明の詳細な説明の記載に照らして明らかであるなどの特段の事情」がある。(2007/12/28変更))
(関連事件;東京地裁平成8年(ワ)16782号、東京地裁平成15(ワ)15702号、東京地裁平成17年(ワ)第15327号事件)
【判決資料】 実用新案登録第2564847号(本件考案)、@米国特許3896467号公報,A実願昭46−0903号(実開昭48−46622号)のマイクロフィルム,B実公昭34−16432号公報,C特開昭48−7734号公報,D特開昭49−57833号公報
【査定資料】 特開昭59-218433、実開昭53-127934、実開昭48-46622、実公昭52-43303、英国特許558515、英国特許558516、オランダ公開特許6708486、日本経済新聞社昭和61年5月28日付朝刊第14版8頁
【技術分類】 G03B  【事例分類】 593判断遺脱、不尽  【参照条文】 特許法17条の2、特許法29条2項、特許法36条、特許法39条、特許法104条の3
【審判官】 審判長審判官 松本 悟、審判官 今 勝義、審判官 瀧本 十良三


2004/02/26 東京地方裁判所・特許
【事件番号】 平成15年(ワ)第15702号 特許権差止請求権不存在確認等請求事件
【原  告】
原告 株式会社大東貿易
原告 有限会社ハマ・コーポレーション
原告 株式会社フィールテック
【被  告】
被告 富士写真フイルム株式会社(特許権者)
【主  文】
 1 原告らの請求をいずれも棄却する。
 2 訴訟費用は原告らの負担とする。
(民事第46部 裁判長裁判官 三村 量一、裁判官 大須賀 寛之、裁判官 松岡 千帆)
【発明名称】 レンズ付きフイルムユニット及びその製造方法
【本件公報】 B:H02-32615
【発明要旨】
 <本件特許発明>
 A 予め未露光フイルム21を内蔵し,このフイルムに対してシャッタ手段66,63を操作することにより,露光付与機構86を通して露光を付与するようにし,
 B 撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた?レンズ付きフイルムユニットにおいて,
 C 前記ユニット内のフイルム露光枠10の一方側に未露光フイルムロール23が配置され,フイルム露光枠10の反対側に回転可能な巻芯28を内部に有するパトローネ20が配置されており,
 D 未露光フイルム21の一端と巻芯28が予め固定されていること,
 E 前記パトローネ20内に回転可能に支承された巻芯28には,ユニットのフイルム巻取り操作手段60を連結させ,
 F 前記シャッタ手段66が操作された後に,前記未露光フイルムをパトローネ内に巻き込み可能?としていること,
 G 前記未露光フイルムロール23は,該ユニット1の製造工程で前記パトローネ20内に収納された状態から引き出されて形成されており,
 H 該フイルムロール23の中心部が中空状態で,未露光フイルムロール収納部11に装填されている
 E ことを特徴とするレンズ付きフイルムユニット。

(DB注:第3実施例(主に、本件公報(特公平02-32615号)明細書の第8図及び第9図参照。)で、対応すると思われる符合を、当DBにおいて、発明の分説中に加入した。
 本件公報明細書の従来技術の欄に、米国特許2933027号、実公昭39-33924号を引用して、「これらに示されるレンズ付きフイルムは、簡易な構造で組み立ても簡単にして安価に製作する必要性から、ユニットは撮影機構及びフイルムを収納する本体部と裏蓋とが接着されてできており、ロールフイルムの供給室と巻取室の構造は、これ等の間に位置する露光室の仕切りが本体部と蓋部に接続されただけの非常に簡単な構造になっている。そして、撮影済フイルムを取り出すには、レンズ付きフイルムユニットをこわすか分解して開くようになっていた。」と記載されている。
 また、本件発明の公開公報(特開昭64-544号)の6ページには、「これによりユニット本体1が部分的に破損されてしまうので、繰り返し使用の精度保障のないフイルムユニット本体1が再使用されるという事態を防止できるようになる。」と記載されている。また、本件公報には、裁判所摘示のように、「レンズ付きフイルムユニットを分解又は破壊しなくては、これを取り出せないような構造にしておくと、ユーザーには再利用ができず、」と記載されている。
 そうすると、本件発明のクレームの前文Aは、点検及び修理することなしには繰り返し使用することができない、このような簡易カメラ(技術分類G03B17/00)の存在を前提とし、その改良に係る発明であることを規定する記載と解される。なお、特許要件を判断する局面において、不明確な特許請求範囲の記載を、明細書の記載を参酌して限定解釈する必要はない(クレーム優位の原則)から、例えば、撮影前に、カメラ販売会社が、その責任において、繰り返し使用の精度保障のない簡易カメラの未露光のフイルムを、パトローネ内に巻き戻して簡易カメラの外へ取り出し、それを画質に優れた他社製のフイルムと交換することまで、構成要件Aが除外しているとは解されない(実開昭48-4622号、実開昭53-127934号公報参照)。
 また、構成要件Dの「製造工程で前記パトローネ内に収納された状態から引き出されて形成されており」とは、「製造方法」に係る記述であって、「物」の発明の構成要件としては不適切であり、特許要件を判断する局面においては、「引き出され」た「時」は構成要件とされないと解される。
 構成要件C記載の「フイルム巻取り操作手段」の下位概念としては、実施例記載の巻上げノブ60やフォーク16等が含まれるものの、1コマ定尺送りに関連した、撮影枚数表示板61やスプロケット65までは含まれないと思われる。(2007/11/15変更))
【判示事項】
第3 当裁判所の判断
 1 争点(1)(本件特許権には二重特許禁止の原則に反する無効事由があるか)について

 (8) 上記によれば,特許法42条の2第2項により,本件発明についての特許法39条3項の適用については,国内優先権主張の基礎とされた優先出願Bの出願時である昭和61年10月17日が基準とされることになる。そうすると,本件実用新案の出願日は昭和62年1月19日であるから,本件発明が先願ということになり,本件発明に特許法39条3項に違反して特許された無効事由があるということはできない。

 2 争点(2)(本件特許権には新規性・進歩性を欠く明白な無効事由があるか)について
 原告らは,@米国特許3896467号公報,A実願昭46−0903号(実開昭48−46622号)のマイクロフィルム,B実公昭34−16432号公報,C特開昭48−7734号公報,D特開昭49−57833号公報の各公知文献に照らせば,本件特許権は新規性あるいは進歩性を欠く無効事由がある旨を主張する(もっとも,原告らはこの点について,これ以上具体的な主張をしていない。)。
 しかしながら,本件全証拠によっても,本件発明が新規性あるいは進歩性を欠くことを認めるに足る事情を見いだすことはできない。
 すなわち,本件発明は,「撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた」ものであることが要件であるところ,実願昭46−0903号(実開昭48−46622号)のマイクロフイルム(上記A,甲9),B実公昭34−16432号公報(上記B,甲10),特開昭49−57833号公報(上記D,甲12)に記載された技術的事項は,いずれも,ユーザが組立分解をしたり,フイルムを入れ替えて再使用することが可能な構造のカメラを前提としたものであるから,本件発明と同一の発明が記載されているということはできないし,また,上記の各公報等に記載された発明から本件発明が容易に想到できるということもできない。また,特開昭48−7734号公報(上記C,甲11)には,発明の詳細な説明として,「予め装填されたフイルムの一箇のロールが使われてしまった後に棄ててしまう積りのカメラに応用できる」との記載があるものの,同記載は撮影済みコマ数の計測及びフイルムの錠止技術に関して記載されているものであって,具体的にユーザにおいて組立分解できないようにされた構造のカメラに関する技術が記載されているものとはいえないから,上記公報において「撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた」構成を有するカメラに関する技術が開示されているとはいえず,本件発明と同一の発明を記載しているということができないし,上記の公報等に記載された発明から本件発明が容易に想到できるということもできない。米国特許3896467号公報(上記@)との関係で,本件発明の新規性あるいは進歩性を疑わせるに足りる証拠も存在しない。
 上記によれば,本件特許権に無効事由があることが明らかであるという原告らの上記主張は,採用できない。

(DB注:従来から知られている、「撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされた」簡易カメラも、そうでないカメラも、それらを製造している会社は、一般に、カメラ製造会社であり、使用されている技術も、カメラ製造に係る技術であって、両者は共通する技術分野に属すると解される(技術分類G03B17/00)。そうであれば、一方の技術を他方のカメラに適用することについて、動機付けがあると推定される。また、一方の技術を他方に適用することについて、格別の阻害事由があるとは認められない。(2007/11/15変更))
(関連事件;東京地裁平成8年(ワ)16782号、東京高裁16(ネ)1563号、平成17年(ワ)第15327号事件)
【判決資料】 実用新案登録第2564847号(本件考案)、@米国特許3896467号公報,A実願昭46−0903号(実開昭48−46622号)のマイクロフィルム,B実公昭34−16432号公報,C特開昭48−7734号公報,D特開昭49−57833号公報
【査定資料】 特開昭59-218433、実開昭53-127934、実開昭48-46622、実公昭52-43303、英国特許558515、英国特許558516、オランダ公開特許6708486、日本経済新聞社昭和61年5月28日付朝刊第14版8頁
【技術分類】 G03B  【事例分類】 593判断遺脱、不尽  【参照条文】 特許法17条の2、特許法29条2項、特許法36条、特許法39条、特許法104条の3
【審判官】 審判長審判官 松本 悟、審判官 今 勝義、審判官 瀧本 十良三


2000/08/31 東京地方裁判所・特許
【事件番号】 平成八年(ワ)第一六七八二号 特許権侵害差止等請求事件
【原  告】
原告 富士写真フイルム株式会社
【被  告】
被告 ケーアンドジェー株式会社
被告 株式会社バトリーノンノン
【主  文】
 一 被告ケーアンドジェー株式会社は、別紙目録(一)ないし(三)記載のレンズ付きフィルムユニットを輸入し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
 二 被告株式会社バトリーノンノンは、別紙目録(二)及び(三)記載のレンズ付きフィルムユニットを製造し、販売し、又は販売のために展示してはならない。
 三 被告ケーアンドジェー株式会社は、原告に対し、金五〇〇万円及びこれに対する平成九年五月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 四 被告株式会社バトリーノンノンは、原告に対し、金二三四二万八〇九六円及びこれに対する平成九年五月三一日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。
 五 原告の被告株式会社バトリーノンノンに対するその余の請求を棄却する。
 六 訴訟費用は、原告に生じた費用の五分の一と被告ケーアンドジェー株式会社に生じた費用を被告ケーアンドジェー株式会社の負担とし、原告に生じた費用の一〇分の七と被告株式会社バトリーノンノンに生じた費用を被告株式会社バトリーノンノンの負担とし、原告に生じたその余の費用を原告の負担とする。
 七 この判決は、第三項及び第四項に限り、仮に執行することができる。
(民事第46部 裁判長裁判官 三村 量一、裁判官 和久田 道雄、裁判官 田中 孝一)
【発明名称】 1)2)3)4)レンズ付きフイルムユニット
【本件公報】 B:H02-32615
【発明要旨】
 <本件発明>
 A 予め未露光フイルム21を内蔵し,このフイルムに対してシャッタ手段66,63を操作することにより,露光付与機構86を通して露光を付与するようにし,撮影後にフイルムを取り出したのちは再使用できないようにされたレンズ付きフイルムユニットにおいて,
 B 前記ユニット内のフイルム露光枠10の一方側に未露光フイルムロール23が配置され,フイルム露光枠10の反対側に回転可能な巻芯28を内部に有するパトローネ20が配置されており,未露光フイルム21の一端と巻芯28が予め固定されていること,
 C 前記パトローネ20内に回転可能に支承された巻芯28には,ユニットのフイルム巻取り操作手段60を連結させ,前記シャッタ手段66が操作された後に,前記未露光フイルムをパトローネ内に巻き込み可能としていること,
 D 前記未露光フイルムロール23は,該ユニット1の製造工程で前記パトローネ20内に収納された状態から引き出されて形成されており,
   該フイルムロール23の中心部が中空状態で,未露光フイルムロール収納部11に装填されていること
 E を特徴とするレンズ付きフイルムユニット。

 <本件考案1(本件考案2及び3の掲載省略)>
 D’ 前記未露光フィルムロール23は、該ユニットの製造工程で前記パトローネ20内に収納された状態から引き出されて形成されており、
   この未露光フィルムロールの収納部11、42には、その内壁面の上下部分のみに未露光フィルムロールの最外周巻き面と接するように隆起した案内面を形成したこと 

(DB注:第3実施例(主に、本件公報(特公平02-32615号)明細書の第8図及び第9図参照。)で、対応すると思われる符合を、当DBにおいて、発明の分説中に加入した。なお、本件考案1の構成要件A,B,C,Eは本件特許発明と同じであるので掲載を省略した。
 本件公報明細書の従来技術の欄に、米国特許2933027号、実公昭39-33924号を引用して、「これらに示されるレンズ付きフイルムは、簡易な構造で組み立ても簡単にして安価に製作する必要性から、ユニットは撮影機構及びフイルムを収納する本体部と裏蓋とが接着されてできており、ロールフイルムの供給室と巻取室の構造は、これ等の間に位置する露光室の仕切りが本体部と蓋部に接続されただけの非常に簡単な構造になっている。そして、撮影済フイルムを取り出すには、レンズ付きフイルムユニットをこわすか分解して開くようになっていた。」と記載されている。
 また、本件発明の公開公報(特開昭64-544号)の6ページには、「これによりユニット本体1が部分的に破損されてしまうので、繰り返し使用の精度保障のないフイルムユニット本体1が再使用されるという事態を防止できるようになる。」と記載されている。また、本件公報には、「レンズ付きフイルムユニットを分解又は破壊しなくては、これを取り出せないような構造にしておくと、ユーザーには再利用ができず、」と記載されている。
 そうすると、本件発明1の構成要件A、即ち、クレームの前文は、本件発明1がこのような「繰り返し使用の精度保障のない」簡易カメラ(技術分類G03B17/00)の存在を前提とし、その改良に係る発明であることを規定する記載と解される。なお、特許要件を判断する局面において、不明確な特許請求範囲の記載を、明細書の記載を参酌して限定解釈する必要はない(クレーム優位の原則)から、例えば、撮影前に、カメラ販売会社が、繰り返し使用の精度保障のないカメラの未露光のフイルムを、パトローネ内に巻き戻してカメラの外へ取り出し、それを画質に優れた他社製のフイルムと交換することまで、構成要件Aが除外しているとは解されない。
 また、構成要件D、D'の「製造工程で前記パトローネ内に収納された状態から引き出されて形成されており」とは、「製造方法」に係る記述であって、「物」の発明の構成要件としては不適切であり、特許要件を判断する局面においては、「引き出され」た「時」は構成要件とされないと解される。同様に構成要件Dの「未露光フイルムロール収納部に装填され」た「時」は構成要件とされないと解される。
 構成要件C記載の「フイルム巻取り操作手段」の下位概念としては、実施例記載の巻上げノブ60やフォーク16等が含まれるものの、1コマ定尺送りに関連した、撮影枚数表示板61やスプロケット65までは含まれないと思われる。(2007/11/05更新))
【判示事項】
第三 当裁判所の判断
 一 争点1(被告製品の特許権@の充足性)について
 特許権@に係る明細書の特許請求の範囲1項及び2項には、「撮影後にフィルムを取り出したのちは再使用できないようにされたレンズ付きフィルムユニット」の記載があるが、同明細書の詳細な説明には、従来技術の問題点を解決する試みの例として「レンズ付きフィルムユニットに三五ミリ幅のフィルム(一三五フィルム)を用いる試みがなされている。また、この三五ミリ幅のフィルムとして、国際標準規格(ISO:一〇〇七ー一九七九年版)で規定されたパトローネ付きのものを用いて、レンズ付きフィルムユニットを分解又は破壊しなくては、これを取り出せないような構造にしておくと、ユーザーには再利用できず、フィルム現像所では現行の現像処理システムを使用することができるレンズ付きフィルムユニットが考えられる。」との記載があり(特許公報(甲四の二)4欄39行〜5欄5行)、また、本件特許発明の実施例の説明として、「裏蓋3は、本体基部2に超音波溶着などによって固着され、ユーザーはこれを取り外すことができないようになっている。」との記載がある(同特許公報8欄15行〜17行)。これらの記載に照らせば、特許請求の範囲1項及び2項における「再使用できない」というのは、レンズ付きフィルムユニットを購入した一般消費者によって再使用できないという意味である。

 別紙目録(一)ないし(三)の記載によれば、被告製品は、前カバー10と裏カバー11が本体9に前後から一部はフック13で連結された後に遮光性粘着テープで固着されるなどの構成をとるものであって、一般消費者がフィルムを露光させることなく詰め替えることが困難な構造となっているから、撮影後にフィルムを取り出した後は再利用できないものというべきである。したがって、被告製品は、特許請求の範囲1項及び2項における「撮影後にフィルムを取り出したのちは再使用できないようにされたレンズ付きフィルムユニット」という構成を充足するものであり、特許権@の発明の技術的範囲に属する。

(DB注:被告らは、本件特許及び本件考案1ないし3の特許又は登録無効の主張をしていない。)
(関連事件;東京地裁平成15(ワ)15702号、東京高裁16(ネ)1563号、東京地裁平成17年(ワ)第15327号事件)
【判決資料】 なし
【査定資料】 特開昭59-218433、実開昭53-127934、実開昭48-46622、実公昭52-43303、英国特許558515、英国特許558516、オランダ公開特許6708486、日本経済新聞社昭和61年5月28日付朝刊第14版8頁
【技術分類】 G03B  【事例分類】 (ワネ)その他不明瞭な記載  【参照条文】 特許法1条、特許法70条
【審判官】 審判長審判官 松本 悟、審判官 今 勝義、審判官 瀧本 十良三