輝度質感の画像補正

 

被写体が金属製の物であると,ストロボを当てることにより強い反射光が発生し部分的に白く飛んでしまうことがよくある。輝度が強く出てしまったと後悔をする。そしてこの輝度を弱くするため,写真を撮りなおしたり写真屋さんに補正をお願いしたりする。

この強輝度の部分を画像処理で補正できないだろうか? これまで強輝度の部分に対して, 画像処理ソフトAdobe photoshop LEを用い,色調補正のハイライトとシャドウと中間色を調整,あるいはトーンカーブを調整して補正することを試みてきた。しかし,これらの方法では,真っ白に飛んだ部分を補正しても平面的な灰色に塗られるだけで(白っぽい灰色から黒っぽい灰色の変化はあるが),金属の質感や量感をうまく表現できないことが判った。それは,光を反射した金属には艶があるためである。これがまた金属らしいと感じるところである。

今回,そんな質感,量感を保持し強輝度の部分を補正することを試みた。この補正には,ノイズを加えるという方法を用いる。ノイズにRGBカラーを選択しガウス分布のノイズを加えると,赤青黄などの三原色を持ったピクセルが原画像の色情報(光の情報)を基に確率的に分布される。そして質感,量感が現れる。ここでは,これを用いた輝度質感の画像補正の手順について示す。

 

Step1 

          原画(下の写真)で白く飛んだ輝度の強い部分をチェックする。原画は蒸気機関車(かつて満州で客車アジア号を牽引して走っていた機関車でパシナ号と呼ばれた)のアルミ製模型をディジカメで撮った画像である。

          ディジカメのストロボが機関車の中央部に強く当たって白く飛んでいる(写真に引き線で示したボイラー,運転台,歩み板,従台車,線路の部分)。これらを補正していく。

 

 

Step2 

・原画を拡大する。

・ボイラーの白く飛んだ部分をマグネット選択ツールで取り囲む(写真の点線部分のように囲まれる)。

・点線部分の境界をぼかす。ぼかさないと補正を加えた場合に周りからくっきり浮き立ってしまうため。下の写真の境界をぼかすダイヤログボックスでピクセル半径を設定する。ここでは半径5ピクセルを選定した。

 

Step3

・マグネット選択ツールで囲んだ枠内で,前処理としてハイパスを掛け(コマンドメニューからフィルタ→その他→ハイパスを選択する),ボイラー右側の色とほぼ同じような色を出す。下の写真のハイパスダイヤログボックスのスライダでピクセル半径が変えられる。半径を大きく選ぶと色が濃くなる。ボイラー部右側の色と同じ色となるようにスライダで調整することがポイントである。

ここでは,ハイパスを掛けるピクセルの半径を34ピクセルとした。写真から判るように,この段階では白い部分は抑えられるが,平面的な灰色となるだけで,金属の量感,質感が得られない。

 

Step4 

・ハイパスを掛けたボイラー部分にノイズを加える(コマンドメニューからフィルタ→ノイズ→ノイズを加えるを選択する)。

・下の写真のノイズを加えるダイヤログボックスで,ガウス配列を選択し,ノイズの量をスライダで選択する。グレースケールノイズにチェックを入れると,灰色の分布しか得られないので,チェックを必ずはずしておく。

・ノイズの量のスライダを右に移動すると分布させる色が濃くなる。ボイラー右側の質感と比較しながらスライダを調整する。ここでは15に選択した。

・写真には,細かな赤とか青とか黄色の三原色のピクセルが分布する。光の反射が表現される様子が判る。

 

Step5

・ノイズを加えた部分が多少ボケたりするので,アンシャープマスクを選択し(コマンドメニューからフィルタ→シャープ→アンシャープマスクを選択し),下の写真のアンシャープマスクダイヤログボックスを開き解像度を上げる。しかし必ずしも必要ではない。ノイズのピクセルが荒い場合などの結果による。

 

 

 

 Step6 

         次に歩み板と運転台の白く飛んだ部分をを補正する。

         白く飛んだ部分をマグネットツールで写真の点線のように囲みハイパスを掛ける。

         歩み板の右側部分の色と比較し,同じ色となるようにハイパスの半径を調整する。ここでは36ピクセルを選定した。

 

 

 Step7 

         ハイパスを掛けた部分にノイズを加える。ガウスの配布にチェックを入れる。

         歩み板右側と質感がかけ離れないようにノイズの量のスライダを調整する。ここでは15と選定した。ボイラーは質感が違うので比較対象とならない。

 

 

Step8

次に従台車の白く飛んだ部分をマグネットツールで囲みハイパスを掛ける。右横の動輪と掛け離れない色となるようにハイパスの半径を選ぶ。ここでは,31ピクセルに選んだ。

 

Step9

         ハイパスを掛けた従台車にノイズを加える。右横の動輪の質感とは当然異なるがあまりかけ離れない質感となるようにノイズの量を選定する。ここではノイズの量を15に選定した。

 

Step10

         ノイズを加えた従台車にアンシャープネスを掛け解像度を上げる。最後に残った線路部で白く飛んだところで,これまでと同様な処理を行う。 

               

 

Step11 

         輝度と質感の補正された画像の出来上がり