|
大型フロアSPディスプレイ |
|
|
筐体の側面が円錐曲面で形成される大型フロア用SP(販売促進)ディスプレイを製作した。紙を丸めて円錐曲面を形成したディスプレイである。特徴は,1)商品を展示する部分が円錐の切り口の楕円平面上にある。2)円錐は下が小さく上が大きい形状(すなわち逆円錐),3)円錐の側面は折り目をつけない形状である。円錐の切り口が円形であれば,別に難しいことではない。円錐の切り口が円の場合,紙を展開すれば扇型(円弧の一部)になるのを誰しも経験して知っているとおりである。 しかし,ここでの条件に対しては,いくつか難しい作業が必要となる。1)先ず切り口が楕円の場合,その展開図は複雑な曲線となりもはや扇型でない。この場合,三次元実体としての円錐を描き切り口の楕円を二次元に投影して展開図曲線を得なければならない。これが設計作業の難しい第一点である。2)次に円錐の下が小さい,つまり頭でっかち(商品重量が上に分布)のディスプレイをどのようにして紙だけで固定するかという設計である。円錐下部をギチギチに固めてフロアに固定してしまうのであれば問題が解決されるが,ディスプレイ自体を折畳んで運搬しなければならないので,この方法は最初から使えない。3)さらに円錐の側面に折り目をつけないようにするため,円錐面に使われる紙を折畳めないということである。しからば,紙一枚そのものを折畳まないで伸ばしたままに運搬しようとしても,あまりにも大きく無理である。この点から円錐面の紙は繋がなければならない。そうすると繋ぎ目をどうするのか? 繋ぎ目の機能面だけでなく外観上の美的な面からの検討が必要となる。 ここでは,こうした問題点を工夫を施しながらクリアしディスプレイを製作した。以下に手順を示し紹介する。 |
|
|
1.円錐型SPディスプレイの製作 |
|
|
図1に設計した円錐型ディスプレイのスケッチ図(斜視図)を示す。
図1 設計した円錐型ディスプレイのスケッチ図
前述の問題をクリアするために,以下のことを実施した。図1に基づいて説明する。
■楕円切り口を持つ円錐筐体カバーの二次元展開図への投影について 1.3次元CADを立ち上げ,円錐筐体カバーの三次元図を構築 2.円錐筐体カバーの所定位置に設計した楕円切り口を作成し,楕円曲線を分割 3.楕円曲線の分割点と円錐頂点を結ぶ線分を二次元平面に投影(これを全分割点について実施) 4.二次元平面で線分の端点をスプラインで繋いで円錐筐体カバーの展開図を作成
■ディスプレイの下部固定について 1.円錐筐体カバーの内側に縦リブ1と縦リブ2の二本を入れる。(縦リブ1と縦リブ2は図1のように直交させる。) 2.縦リブの裾と円錐筐体カバーの間に図1のような穴開き円板を一枚挟む。そして縦リブ1および縦リブ2の裾を床に接するように穴開き円板中心から放射状に開かせ折り曲げる。これにより,ディスプレイが倒れようとする方向で,リブの裾でかしめられた穴開き円板が床からの反力を受け転倒防止できる。
■円錐筐体カバーの繋ぎ合わせについて 1.円錐筐体カバーは二枚の紙(コートボール)を接続して作ることにし,繋ぎ目はディスプレイの正面から見て左右の円錐側線上に設ける。 2.繋ぎ目は不連続が目立たないようにオスメスの鍵型のフックで連結させる。
|
|
|
円錐型SPディスプレイの主な特徴は・・ 1.軽い。 2.下部が小さく上部が大きい円錐の形状であるが,衝撃に対して復元力が発生し倒れることがない。 3.円錐筐体カバーの側面には線状の切込みが出るが,ある程度距離を置くと目立たない。 4.ディスプレイは全て分解して畳んで持ち運びができる。 5.ディスプレイは縦リブと横リブを配しているので頑丈である。円錐筐体カバーは簡単に押し潰れない構造である。 6.量産が可能
用途例 1.ディスプレイの商品台座のところに目録などを重ねて置く。会場などの案内用ディスプレイとして使用 2.ディスプレイの商品台座のところにアンケート箱を嵌め込む。商品台座の深さを深くすることでアンケート箱が台座から倒れることはない。 3.レストラン,飲食店などで日替わりメニューなど一品を商品台座に載せアピールする。洒落た宣伝用のディスプレイとして使用
|
|
|
2.円錐型SPディスプレイの製作手順 |
|
|
円錐筐体カバー,および看板の曲面部はコートボール270g(単紙),平面部はBフルート(肉厚3mmの段ボール紙)を使用することにした。 |
|
|
@縦リブの切り出し 写真1に縦リブ1, 写真2の縦リブ2を切り出したものを示す。縦リブ1と縦リブ2のそれぞれに長手方向に半分ずつ切込みを入れ,この切込みにリブを差し込んでリブを開いたとき水平断面が十字型となるようにする。縦リブ1,縦リブ2に商品台座を受けるため,直方体の台座の幅と長さに応じたカットを入れる。カットの深さは商品の取り易さを考え,また抜け落ちない程度に決める。縦リブ1に看板ホルダーをつけるためカットを入れる。縦リブ1に横リブ(半円板形)を差し込むため写真1のような切込みを入れ,縦リブ2に横リブのホゾ(後で形状明示)を差し込むため写真のようなホゾ穴を設ける。 |
|
|
写真1 縦リブ1 |
写真2 縦リブ2 |
|
A横リブの切り出し 縦リブ1に差し込む横リブ1を切り出したものを写真3に,横リブ2を切り出したものを写真4に示す。横リブは半円形のもの2枚あわせて円形となるようにし,円錐筐体カバーの水平断面が円形を保持できるようにする。 |
|
|
写真3 横リブ1 |
写真4 横リブ2 |
|
B商品台座,台座敷き板,看板ホルダ,リブと円錐筐体カバーに挟む穴開き円板の切り出し 写真5に商品台座,写真6に台座敷き板,写真7に看板ホルダー,写真8にリブと円錐筐体カバーに挟む穴開き円板を示す。
|
|
|
写真5 商品台座 |
写真6 台座敷き板 |
|
写真7 看板ホルダー |
写真8 縦リブ裾と円錐筐体カバーの間に挟む穴開き円板 |
|
C縦リブ1へ看板ホルダーを取り付け 縦リブ1へ看板ホルダーを取り付けたものを写真9に示す。写真から判るように商品台座を受ける上側の部分が細くて弱いので,それを補強することも兼ねた形の看板ホルダーとした。看板ホルダーの糊代は写真のように多めに取り貼り合わせて丈夫な構造となるようにする。実際には,楕円の長軸をもっと長く選び楕円の台座を広くすれば強度が増すが,楕円の台座を取り巻く円錐筐体カバーの面積も増えるのでコスト的な面の制約がある。それで商品台座の寸法は商品の直方体横枠よりあまり大きくしない範囲で選んでいる。
写真9 縦リブ1の上部に看板ホルダーを糊付け
|
|
|
D縦リブ1,縦リブ2,横リブ1,横リブ2の組立 写真10に縦リブ1,縦リブ2,横リブ1,横リブ2の組立を示す。先ず,縦リブ1と縦リブ2を組み合わせ,横リブ1と横リブ2を挟んでいく。そして組み合わせた縦リブ1と縦リブ2を開いた状態で,水平断面が十字形になるようにし,横リブ(半円形の部分)を回転させる。そして,横リブのホゾ部分を縦リブ2のほぞ穴の部分にはめ込んでいくと,写真のような横リブが円板型となるリブ構造が完成する。写真において縦リブ下部の裾は後で穴開き円板を嵌めこんで固定するため4枚に分かれる。 |
|
|
|
|
|
写真10 縦リブ1,縦リブ2,横リブ1,横リブ2の組立 |
|
|
E切り抜いた円錐筐体カバーの組立
切り抜いた円錐筐体カバーの組立を写真11に示す。円錐筐体カバーは二枚繋いで全円錐面を形成させる。繋ぎ目が目立たないようにオスメスの鍵状フックで接続した。高さ方向に2箇所である。このようにオスメスで繋ぐと接続部分はがっちり締まるので隙間が見えない。
|
|
|
|
|
|
写真11 円錐筐体カバーの切抜きと組立 |
|
|
F円錐筐体カバー,リブ,穴開き円板の結合
写真12に円錐筐体カバー,リブ,穴開き円板の結合を示す。組み立てたリブの裾側を円錐筐体の楕円切り口に通し,穴開き円板を縦リブの裾に通す。そして縦リブの裾(四枚)を床に水平に折り曲げる。 |
|
|
|
|
|
写真12 円錐筐体カバー,リブ,穴開き円板の結合 |
|
|
G商品台座,台座敷き板のはめ込み 写真13に商品台座と台座敷き板を縦リブカット部にはめ込んだ写真を示す。商品台座は深さ30mmとした。また商品台座の周りの円錐筐体カバーの高さは20mmである。
写真12 商品台座,台座敷き板のはめ込み |
|
|
H看板のホルダーの差込み 写真13に看板を看板ホルダーに差し込んだ完成写真を示す。看板は,背面をBフルート平板で構成し,これにコートボールを貼り付け正面側へ丸く出した看板にした。写真で板チョコを台座に乗せているが,実際にはボール入りのガムが乗る。
写真13 看板を看板ホルダーに差し込んだ完成写真 |
|
|
3.商品を商品台座に載せてチェック |
|
|
製作した円錐型SPディスプレイに比較的重い重量物を箱に入れ商品台座に嵌め,ディスプレイの真横から力を加えてみた。復元力が発生し,元の形状を保持することが判った。ディスプレイの下が細いのでどうしても横方向の変形は避けられないが,速やかに復元し商品台座の品物がバラけることは先ずない。紙に備わった振動吸収効果もあるようである。もし筐体と下の穴開き円板をプラスチックなどでギチギチに固めた構造とすると一体となって転倒するかもしれない。 |
|