折り畳み式正十二面体カレンダー

ある数学関連の書物に,火・地・空気・水など宇宙を構成するとして,5つの正多面体(正四面体・正六面体・正八面体・正十二面体・正二十面体)がギリシャ時代に発見されたと言うことが出ていた。正三角形を4枚合わせると正四面体,正四角形(つまり正方形)6枚合わせると正六面体,正三角形を8枚合わせると正八面体,正五角形を12枚合わせると正十二面体,正三角形を20枚合わせると正二十面体が構成されるというのである。簡単な例は正四面体と正六面体である。正四面体,正六面体は誰しも小学校できっと作ったことがあるに違いない。よくそのイメージがわく。また,今でこそ数学者が論理的に筋道を立てて証明しているが,実は正多面体はこの5つしかなく、正二十面体以上の正多面体が存在しないということがギリシャ時代に既に解っていたというらしい。何とも興味深い話しである。ところでこの中の正十二面体は,正五角形の面が連なって構成される一番球に近い格好になると言う。そう言えば正十二面体は,いろいろな空間方向から見て確かに球に近い綺麗な形になり安定感もあるような気がする。

そんな綺麗な形の12面を持つ正十二面体で一年に当たる12か月分のカレンダーを各面に配置してみればどうだろうか?ちょっとおもしろい立体型カレンダーができるかも知れない。

そんな思いもあり,実際にCADで正十二面体の展開図を設計し展開図データを紙用サンプルカッターで切断し正十二面体を作ってみた。条件として,(1)紙製品の良さとして何回も折り畳んだり組み立てたりできること(糊付けして固め正十二面体という立体にしない)(2)誰もが組立を容易にできること,等の重点を置いた。ここでは,全部差し込み式にして立体を組み立てることとした。展開図設計から,組立手順,十二面体各面に貼り付けるカレンダーのレイアウト,折り畳んだ荷姿等について紹介する。

1.正十二面体の組立

正十二面体はコートボールPCグリーン230g(単紙)を使用した。(相当厚手の紙でない範囲でコートボール350gぐらいまでは組み立てやすい。)

@正十二面体の展開図設計

写真1に正十二面体の展開写真(表面)を示す。正十二面体は正五角形が12個連なって構成される。正五角形の周辺には差込部とフラップを適宜設け組み立てたとき形が崩れないように工夫を施した。正五角形のどの辺を繋げて多面体を構成するかは様々であるが,写真1に示すように帯状に正五角形を6枚繋ぎその帯の片側に正五角形を3枚繋げ,帯の反対側に正五角形を3枚繋げるようにした。表面から見て,正五角形周辺に付いたフラップと差込の折り目は全て写真のような山折りである。帯の端にA 部とB部を設け,A部とB部とを挟んで正五角形の帯リング(写真で赤枠で示す)を作れるようにした。正十二面体のそれぞれの面には写真に示すような12か月分のカレンダーを貼り付ける。それぞれカレンダーの向きは組み立てたとき月が繫がるように振り分ける(詳細は2.カレンダーのレイアウトに後述する。)

写真2にその裏面を示す。

写真1 

写真2  

AA部とB部の嵌め込み,及び帯の片側面の嵌め込み

写真3にA部とB部をロックし帯リングを構成した写真を示す。ロックは穴に通すやり方と異なり比較的簡単にできる。またA部とB部がロックされれば帯リングが完全に固定され簡単に離れない。

写真4に帯の片側の正五角形3枚分の嵌め込み手順を示す。@,A,B,Cの順に差込をフラップの間に差し込んでいく。差込とフラップの固定は,キャラメル箱方式(サック方式)とし差込の切込みがフラップの端に引っかかるようにした。誰しもキャラメルの箱の閉じ方を良く知っているので簡単に閉じられる。これにより差込とフラップがしっかり固定される(正五角形の面を押しても面が落ち込まない)

写真3 

写真4 

写真5に帯リングの部分に片側の正五角形3枚分をを差し込み終えた写真(表面から見た写真)を示す。写真から判るようにキャラメル箱方式でフラップと差込を閉じることにより正五角形が隣同士でシャープに繫がり見栄えが良い。

写真6に裏面を見た写真を示す。片側の正五角形が閉じられた部分でフラップと差込は全て内壁面に固着しており,フラップが上手く効いているのが判る。              

写真5  

写真6 

B帯の反対片側面の嵌め込み

写真7に帯の反対片側面の嵌め込みを示す。前述の正五角形3枚分の嵌め込みの手順と同じように差込をフラップの間に差し込んでいく。

写真8に差込を完了した正十二面体を示す。全て正五角形の周辺が繫がった立体ができる。

写真7

写真8

2.カレンダーのレイアウト

写真9,写真10に上期のカレンダーのレイアウトを示す。ここでは西暦年号の入った1月のカレンダーを上面に配置し(写真9)2月〜6月のカレンダーを1月のカレンダーのすぐ下の側面に左回りに5個配置 (ただし月の表示は上側に高さが同じになるように配置) した。これにより,1年の上期のカレンダーを水平回転させて眺められる。

写真9

写真10

写真11,写真12に下期のカレンダーのレイアウトを示す。7月のカレンダーを一月のカレンダーの対向面に配置し(写真11)8月〜12月のカレンダーを7月のカレンダーのすぐ下の側面に左回りに5個配置 (ただし月の表示は上側に高さが同じになるように配置) した。これにより,下期のカレンダーを水平回転させて眺められる。

写真11

写真12

3.正十二面体の折り畳み(荷姿)

正十二面体を組み立てた手順と逆に差込をはずしていくと,写真1のように立体を平面にすることができる。さらに適当な位置の折り目で曲げて畳んでいくと小さく纏めることができ持ち運びが容易になる。写真13に折り畳んだ一例の荷姿を示す。

 

写真13