むつ犬のおまぬけ日記
平成16年10月
10月31日 あめのちくもり
昨日の夜は、ついお間抜けなことになってしまった。日中の暖かさが夜まで続いて、夕ご飯の後、外でのんびりとくつろいでいたら雨が降り始めたんだ。そこで梅の木の根本にいってオシッコをしてから犬小屋に入ろうと思ってそこに行ったら、紐が木の切り株に引っかかって身動きがとれなくなってしまった。雨はどんどん激しく降ってくる・・・・お家の人はもう僕の所へはやってこないから助けでも呼ばない限り朝までこのままになってしまう。僕は、知恵を一生懸命絞って、出した結論は「しゅう〜ん、しゅう〜ん、しゅう〜ん」となるべく甲高く、なるべく悲しそうな鳴き声を上げて助けを呼ぶことだった。しばらくして僕の思ったとおり家から誰かがやってきた。なんと!!お母さんと御主人が二人でやってきた!!助けを呼ぶ鳴き声が真に迫っていて、ただごとではないと思ったに違いない。こうして僕はお母さんに紐をはずしてもらい、うれしさの余り。そこいら中を駆け回り、ついでにお母さんの車にオシッコをひっかけて感謝の気持ちを表したのだった。

10月30日 はれ
御主人は、朝早くからお仕事に忙しい。お米を遠くまで運ばなくてはいけないらしい。だから、僕の朝散歩はなかった・・・・10時までかかって、何度も何度もお米を積んでは何処かへおろしてくるらしい。帰ってくるたびに、お日様の暖かい日射しを浴びながらお昼寝をしていた僕は「じゃまだ!」と言われて大迷惑だった。でも、僕の方が御主人のお仕事をじゃましているわけだから文句も言えない。そういうわけで、御主人は朝散歩に行けなかったことに後ろめたさがあるのかどうかは知らないけれど、今日の夕方散歩は久しぶりに自転車散歩だった。僕は嬉しくなって、一杯走ったよ。でも・・・普段の運動量が少ないせいなのか、すぐ疲れが出てしまった。わずか4才にして寄る年波には勝てない飼い犬のムツになってしまうのか?・・・・

10月29日 はれ
今朝、初めて霜が降りたよ。一面真っ白になったよ。御主人が起きてきて、あわてて植木鉢を家の中に運び込んでいた。僕は北国原産の秋田犬だから、こんな霜なんか平気だよ。「早く散歩に連れて行ってくれないかなぁ」と、御主人が起きる前に外へ出て待っていたんだ。霜が降りた日は、良い天気でお日様もポカポカになるのは4年も生きてきた経験でわかっている。思った通り、だんだん暖かくなってきて、昨日よりも上天気だ!!、よし、今日もお日様の元で一杯お昼寝するぞ!!・・・・と、思っていたら朝から犬小屋の中に閉じこめられてしまった・・・お米を取りに来るそうなのだ。そして、御主人は何処かへお出かけ・・・最悪の一日だ・・・こうして僕は、半日以上犬小屋の中に閉じこめられたままお日様の暖かさに接することが出来なかったのだ。まさに、「日の目を見ない」とはこのことを言うのかと、今更ながら気付いたのだった。腹いせに、夕方の時報に合わせて遠吠えを思いっきりしてやろうと思っていたのだが、カメラを構えた御主人が僕の前に陣取って、遠吠えしている決定的瞬間を撮ろうとしている。御主人の写真機は動いている物も撮ってしまうので、うっかりしてはいられない。時報の音楽を気にしつつ、遠吠えしたくても出来ない僕は、ますますストレスを心の奥深くにため込んでしまうのだった。

10月28日 はれ
今日は久しぶりにすっきりと晴れた。地面をお日様がポカポカと暖めてくれたので、僕はごろんと横になってお昼寝を楽しんだ。毛皮を通り越して身体の中まで暖かさがしみ通っていくようだ。「はぁぁ〜気持ちが良い!!」ごろんごろんと身体を右左によじって気持ちよさを体中で表現して見せたよ。もちろん御主人に対してだよ。でも、余りにも暖かくて気持ちが良いものだから、舌を「はぁはぁはぁ・・・」と出さなければいけなくなった。それでも、久しぶりのお日様なので、そのまま寝ころんでいた。だって、これからの季節はお日様と顔を合わす機会なんてそんなにあるものではない。冬にでもなってしまうと春までお目にかかれないかもしれない。だから今の内にお日様の暖かさを身体で覚えておこうと思ったのだ。「お日様、ありがとう。また会おうね。」名残惜しさとお別れを兼ね、17時の時報サイレンに会わせて遠吠えを久しぶりにした。御主人が小屋の柱の影で僕の遠吠えを盗み聞きしていて、すこし恥ずかしかったけれど、お日様というお友達との惜別の歌と思えば、それもあまり気にはならなかったよ。それに、今日は空も晴れ渡り、お月様もまん丸で遠吠えするのには絶好の舞台が出来上がっていたからね。

10月27日 あめのちくもり
僕は興奮するとオシッコをしたくなる。たとえば、家族がみんな出かけてしまって僕だけ家の留守番をしなければならなくなった時はとても不安で寂しい。そんな思いでいるところへみんなが帰ってくると、僕は狂ったようにはしゃぎ、そこいら中を駆け回る。そして、それが終わると、決まった場所へオシッコをしに行くのだ。今日も、午前中は僕と一緒にお仕事をしていた御主人が、午後になるときれいな服を着て「お留守番」と僕に言い置いて出かけていってしまった。そして、夕方になって帰ってきた時、僕はこの行動をとったのだ。この行動は一般的な犬の習性なのか、僕だけの習性なのかはわからない・・・・いつか「比較犬類学研究所」をたずねて聞いてみようと思う僕なのだった。

10月26日 くもりのちあめ
御主人は一日中、小屋の中でお米を袋に詰めるお仕事をしている。僕は一日中、外に出て足を大地にしっかりと踏ん張って番犬のお仕事に励む・・・・はずだったのだが、ふとしたことで作業小屋に落ちていたお菓子の空き袋を見つけ、それを犬小屋の中へ持ち込んだ。そして、袋の中に残っているだろうと思われるお菓子のかけらを食べるために舌と口と手を使ってその袋の口を開けようと懸命の努力をした。それを、たまたま見つけた御主人が「浅ましい犬だ」と軽蔑するように言ったけれど、こっちは袋の口を開くのに忙しくてかまっちゃいられない。やがて、やっと中をなめることが出来たけれど、努力した割には人なめしただけで終わってしまった。そんなことに根気を費やしたので番犬の仕事はやめて、犬小屋の中で眠ってしまったよ。ちょうど雨も降ってきたしね。

10月25日 はれのちあめ
今日は、朝早くから犬小屋の中に閉じこめられてしまった。なぜかというと、この前、懸命にこしらえたお米を取りにやってくるからだ。僕は憮然とした顔で何処かへ出かけていく御主人をにらみつけ、しばらく犬小屋の中に立ちつくした。そして、お米を取りにやってきたのは意外に早く、御主人が出かけてから1時間もたっていない頃だった。なんと、その人達の中に御主人が居るではないか・・・・「わんわんわん・・・・わお〜ぅぅ」と一応、番犬の役目を果たすために力無く吠え立てた。御主人の居るところでは、何となく吠えにくい。この前、お米を取りに来た時は御主人が居なかったので、思いっきり吠え立てて、来た人達にうるさがられたものだけれど、今日は「何となく威勢が良くないな」と、僕自身も感じられる吠え方だった。米は、瞬く間に積み終わり僕はみんなの居る前で犬小屋から解放してもらった。解放してもらうと、もうこっちのものだ。今まで吠え立てたことなどすっかり忘れて、みんなが帰るのをお見送りしたよ。ついでに御主人も一緒に帰っていった。でも、御主人は何処へ帰るんだろう・・・・?帰るところはここしかないはずなんだけどなぁ?・・・・

10月24日 はれ
御主人は、良く僕にいろいろな物の匂いを嗅がせる。買い物袋のなかのおいしそうな食べ物の匂い、御主人が飲んでいるお茶の匂い、叔父さん宅の犬をナデナデしてきた手の匂い、こんなのだったらまだ良い・・・・問題なのは強くて僕の嫌な匂いも嗅がせるのだ。それも執拗に・・・蜜柑の匂い(ああ〜いやいや!!)、ネギの匂い(犬にとっては毒物、これは絶対いやいや!!)なんて物まで嗅がせるのだ。こんな事をされると犬の鼻は敏感なので鼻が曲がりそうになり、頭が痛くなってしまう。これはまさに、匂いによる暴力に他ならない。御主人は、知ってか知らずか、匂いによって飼い犬をいじめていることになるのだ!!

10月23日 はれたりくもったり
御主人は地図という物を見るのが好きだ。何でも地図という物は僕達が住んでいるところや、よその町を高いところから見たように紙に書かれてあるらしい。だから行ったことのないところでも、それを見ながら歩くと迷わないらしい。御主人はそんなことをして旅行を紙の上で楽しんだり、何処かへ行く時に迷わないように使っているようだ。だけど、犬にとってはそんな物は「ちゃんちゃらおかしい」と言いたい。犬は感と、どんなかすかな匂いでもかぎ分けることが出来る鋭い鼻を頼りに、どんなに知らないところを歩いても迷わず帰って来ることが出来、一度行ったことがある所なら確実に覚えていて、再びそこへ行くことが出来る。だから、犬の目から見ると、物というか、道具に頼り切らなければ生きていけない人間は不便で哀れとしか言いようがない。

10月22日 くものいちじどしゃぶりのあめ
御主人と小屋の中でお仕事をしていたら、突然、妙に強い風が吹き始めた。「雨が降ってくるな」とご主人は言って、僕に外へ出ないようにと言い渡した。だが、僕はその忠告を無視して外に出ると、いきなり、ものすごい雨が降ってきて僕はたちまちずぶぬれになってしまったよ。「人の言うことを聞かない犬」として評判の僕だけど、忠告という物はやっぱり聞くべきなんだね。その後、僕は御主人のお仕事を手伝う気も失せて、身体をブルブルンとふるわせて雨水を身体から払い落として犬小屋の中に入って寝てしまった。最もお仕事を手伝うと言っても、御主人がお仕事をしている側をうろうろしていただけだけどね。

10月21日 あめのちはれたりくもったり
今日は「台風が来るぞ」と、御主人に脅された割には雨がちょっと強く降っただけで、どうと言うこともなかった。どうも御主人の言うことは大げさでいけない。台風に対する気配りは欠かせないことだが、どうも人の言うことを信じすぎる(主にニュースやインターネットの天気予報)。おまけに天気図を自分の勝手な判断で読んで自分自身で予報してしまうから始末に負えない・・・・直接は犬である僕にはなんの影響もないのだけれど、自分の予報がはずれると僕に嫌味を言うのだけは勘弁して欲しい。それだったら自分の知識と経験の未熟さを嘆き呪うべきだと思う!!!(キッパリ!)
僕の独り言・・・これぐらいはっきり言わないと、御主人の参謀としての僕の名が廃るよ・・・
ご主人の談・・・参謀?・・・誰が?

10月20日 くもり
「今日の僕は忙しかった」だから紐が、この前のように切り株に引っかかってしまい、足が泥んこになってしまったのだ・・・・・と、何を支離滅裂なことを言っているのだと怒られるかもしれないけれど、これはみんな関係があるのだ。それこそ三題噺みたいなものなので、一つ一つ説明するよ。まず、僕が忙しかったのは、朝から大きな機械が我が家の前にやってきて人がたくさんやってきた。何をするのかというと家の前の道路を掘るらしい。大きな機械で掘るので僕の足で土を掘るようなのんびりしたものではない。何十頭分の僕の身体が埋まるぐらいの大きな穴をたちまち掘っていくのだ。まず、その人達と機械に「ワンワンワン」と、梅の木の根本から吠えていたら、その下にある切り株に引っかかってしまって身動きがとれなくなってしまったのだ。そして、最後は御主人が散歩に連れ出しにやってきて、僕が引っかかっているのを助けてくれたのだ。こうして僕は無事散歩に出かけることが出来たのだが、家の前にはまだ大きな機械が陣取っている。僕達は、仕方なく田んぼの中を通って散歩へ出かけ、そして田んぼの中を帰ってきたおかげで、足が泥んこになってしまったという訳なのだ。はぁぁ〜、こんな事をまどろっこしく説明するのは犬の性に合わないよ。これだけで、今日1日分の疲れの3倍以上は疲れてしまったよ。だから、今日は早々に犬小屋の中に入って寝ることにするよ。ちょうど雨もポツポツと降り始めたしね。

10月19日 はれのちくもり
僕達、秋田犬の出世頭である「ハチ公」が銅像として秋田犬のふるさとである大館市って言うところ立った。正しく言うと復活したって言うのかなぁ。大昔に戦争があって、ハチ公の銅像が鉄砲の弾や爆弾を作るために利用されたらしい。それが、今度同じような銅像を造って完成したらしいのだ。「御主人に忠実な犬」、「飼い主が死んでも忠誠を尽くす犬」・・・・これが秋田犬の真骨頂だ。まさに、僕の行動そのままじゃないか!!!・・・えっ、何処がだって?「がうん、がかるるるる〜(怒)」僕の名前はハチ公の名前にあやかって付けられたんだぞ!!僕の由来が乗っているホームページをもっとよく見て欲しい!!「ハチ公」ならぬ「ムツ公」として後世に名を残すからね。今の内に僕のサインをもらっておいた方が良いと思うよ。最も、サインと言うより足形だけどね。

10月18日 はれ
午前中は作業小屋でまじめにお米を袋に詰めるお仕事をしていた御主人だったが、午後になるときれいな服を着て布きれで首を絞めて何処かへ行ってしまったよ。僕は緊張した。いつも我が家に僕一匹で残されると不安が募る。誰かが家にいないと不安なのだ。そのくせ、誰かが家にいるとうっとおしいと思う。矛盾した不思議な感情が僕の中で交錯している・・・・そして夕方になって・・・御主人がお母さんと一緒に帰ってきた。出かける時は別々だったのにどうして一緒にかえってきたのかわからないけれど、とにかく僕は、やっとご飯にありつけると思って「お帰りの踊り」を踊り、御主人に飛びついてキスをした。ありがたい、ありがたい、「いつもご飯をもらえる幸せ」、「いつも家族と会える幸せ」

10月17日 かいせいっ!!
久しぶりにすっきりと晴れた。「秋日和」って言うにふさわしい一日だったよ。何しろこの所、雨降り続きで、晴れていても西の空から黒雲が広がってきて、ひとしきり雨を降らしていくものだから、稲刈り中の御主人は気が気じゃなかったらしい。今日の上天気は僕としても嬉しい。秋もそろそろ半ばを過ぎて、やがて冬がやってくるとこんな天気なんか滅多にお目にかかれない。たまに晴れても寒くて腹を出して外に寝ることなんか出来なくなるだろう。だから今日は一日中、腹を出して地面にごろんと横たわってお昼寝をしたよ。お日様の光がこんなにまぶしいなんて思わなかったよ。それに、今日は御主人がボール遊びの相手をしてくれたんだ。しばらく動くと息が上がって舌をハァハァと出してしまったよ。お日様と一緒にお昼寝したり楽しいボール遊びをしたり、そうそう、御主人に毛をくしけずってもらったりもしたよ。今日はとっても楽しい一日だったよっ!!

10月16日 はれ、いちじあめ
我が家の稲刈りが、やっと終わったよ!!!
ところで、僕が散歩の時にたびたびだだをこねることはこの日記で何回と無くお話をした。僕がだだをこねる理由は、主に2つ、「もっと遠くまで行きたい」、「違う方角へ行きたい」だ。これが夏の暑い盛りになると「暑いからもう歩きたくない」が加わる。僕がだだをこねるたびに、御主人に鼻を軽くたたかれたり、にらみつけられたり、紐を強く引っ張られたりしたものだ。ところが近頃の御主人は僕の、この行動に対処する方法が変わってきた。僕が足を踏ん張って、だだをこね始めると、朝散歩の場合は「ムツ、お母さんがおやつを持って待ってるよ」と言い、夕方散歩の時は「むつ、さぁ、早く帰ってご飯を食べよう」というのだ。ご飯、おやつという言葉には敏感に反応する僕はこの言葉を聞くと、大地に太い根が生えたように踏ん張っていた足の力を緩めて、軽い足取りで御主人の思う方向に歩き始めるのだった。御主人の知恵恐るべし!!犬の信念貧弱なり!!・・・・まさに「飴と鞭」、イソップ童話における「太陽と北風」の逸話を巧みに飼い犬のしつけに取り入れるなぞは、御主人、あなたは侮りがたい!!!僕も何らかの対策を考えないと御主人の言いなりになってしまいそうだ・・・・

10月15日 あめのちはれたりくもったり
今日は紐が3度ほど物に引っかかった。何にかというと、一度目は梅の木の根本にある切り株、二度目は小屋の中にある機械の角、三度目は、又1度目と同じ処だった。「懲りない犬めっ!!」と、叱られつつ、あきれられつつ御主人に三度とも助けてもらった。後戻りしてみると巻き付いた紐がはずれる、と言うこともあるらしいけれど、犬は後戻りなど考えない動物だ。身体的構造を言えば、犬は後戻りできる。だけど、精神的、本能的頭脳構造は、犬に後戻りをさせないような仕組みになっているらしい。だから、熊狩り犬だった秋田犬の先祖達は勇敢にクマに向かってひるむことなく追いつめていけたんだね。だから僕も後戻りなんか絶対しないぞ!!開拓者精神!!「前進は犬にとって大いなる力と知恵の象徴であり、後退はおまぬけ度をより深く人間に認識させ犬としての誇りと名誉を失墜させるものである。」・・・・と、この頃、格言にこっている僕なのだった。

10月14日 はれ、よるになってかみなりあめ
「スポーツの秋」などと人間の世界では今頃の季節をこういう。「食欲の秋」とも言うけどね。でも、今日は食欲の話じゃないんだ。いくら僕が食欲旺盛な腹ぺこ犬だからと言って、そんなに食べ物の話ばかりしているわけにもいかない。第一、そんなことをしたら秋田犬としての品性を疑われてしまう。ああ〜・・・言い訳していたら何を言いたいのかわからなくなってしまったよ。つまり、今日の話は「運動」についてのお話だ。今頃の季節は暑くも無し、寒くも無しで運動には最適なんだ。これは、何も人間に限ったことではなく、犬にとってもそうなんだ。ただ、犬がする「運動」と言えば、ほとんどお散歩だ。その他の運動と言えば、たまに山に連れて行ってもらい、自由にされると狂ったように走りまくるぐらいだ。だから、普段の飼い犬は散歩以外の運動をする事はまれだ。ところが、たまに、ものすごく運動がしたい衝動が突き上げるようにわいてくることがある。今日がその日だった。・・・・稲刈りに出かけた御主人がモミを運んでくるたびに狂った様に辺りを駆けずり回り、土のお山を上り下りする・・・お仕事が終わった御主人が「散歩だよ」と言えば、狂ったようにはしゃぎ、かけずり回り、なかなか御主人が僕に散歩紐を付けられない状態だった。普段、「眠り犬」だの「寝ぼすけ犬」だのと言われている僕としては、こんな僕自身の行動がどうも理解できないでいる。・・・・・・

10月13日 あめのちくもったりはれたり
実は、今まで内緒にしていたけれど犬小屋の前に大きな土の山が出来ている。この山の上に昇って遙か彼方を見渡すのが僕の密やかな楽しみでもあり、番犬のお仕事には誠に有利だ。この土のお山は何かというと、来年のお米の苗を育てる時に使うものなのだ。9月の初め頃、大きなトラックがやってきて、僕の目の前で土をおろし、たちまち大きな山を作ってしまった。その量は10トンという・・・・10トンと言われても犬の僕には理解できないが、少なくとも豚が10頭分の量よりは多そうだ。その山については、御主人から「登山禁止」のおふれがでてしまっている。僕が山に登って、何か秘密のものを埋めたり、オシッコをしたりするのを防ぐのが目的のようだ。しかし、見晴らしがよい!!、とっても気持ちが良い!!
格言に曰く
「なんのために山に登るのか?」
「そこに山があるからである!!」
僕は、これからも、あえて禁令を破ってまで登山にチャレンジするつもりだ!!
(登山ってほどの高さじゃないけどね。・・・)

10月12日 あめのちくもり
犬は背が低い。低いからものや風景も低く見える。当たり前の話をさも最もらしく話し始めてお茶を濁そうというわけではない。実は、「犬の視野の狭さと犬の世間知らずに関する考察」という論文が犬類研究所から発表された。視覚的に世間を広く見ることが出来ない犬は、精神的にも思考的にも視野が狭く、大局的な見地に立ってものを考えることが出来ないのではないだろうか?というのが、その論文の骨子だ。だが、人間達の中にはなるほどと思う人がいるかもしれないけれど、犬たちは鼻も引っかけないだろう。なぜならば、犬は本能を優先する動物なのでものを考えるなんて事はあり得ないからだ。ただ、背が低ければ、アリさんやキリギリスさん達とはお近付きになりやすいけれど、空を飛ぶ鳥さん達とはとうてい仲良しにはなれないなって思うだけだよ。

10月11日 くもりときどきあめ
今日も雨降りで、御主人とお母さんは小屋の中でお米を袋に詰めるお仕事をした。そして、時々僕の寝ている犬小屋へやってきては「犬は良いなぁ〜」とため息混じりに言うのだ。「えっ?、どうして?」と聞くと、犬は日中でもごろんと横たわって寝ていられるからだという。「がうん、がるるる〜!!」そんなことを言われると腹が立つ!!寝るのも犬の仕事の内だと言ったのは御主人じゃないか!!犬はいつも番犬として五感六感をとぎすまして24時間、見張りに当たっていなければいけないのだ。しかしそれでは肉体的にも精神的にも疲れ切ってしまうので、暇な時は寝させてもらっているのだ。レーダーのように四六時中見張っていられる機械ならばいいけど、僕は犬という動物なんだぞ!!!!!

10月10日 くもり
近頃、おなかが減って、おなかが減って、どうにもたまらない。ご飯をもらっていないからと言うのではない。冬が近くなってきたので、「身体に脂肪をためてすこし太らなければいけない」と、本能が要求しているのかもしれない。近頃、あちらこちらで冬眠を前にした森の熊さんが里へ下りてきて食べ物をあさっているというニュースを聞いた。きっと台風なんかの影響で山に食べ物が無くなったからなんだね。僕の場合は飼い犬なので、食べ物がなかったら家の人にねだればいい。いつも朝散歩に行ってくると僕はお母さんからおやつをもらう。それをむしり取るようにして口の中に放り込むのだ。「受け取るのが早すぎる」と御主人には叱られるのだけれど、お腹が空いている僕としてはそんなことはかまっちゃ居られない。とにかく食べられるだけ、おなかに詰められるだけ食べ続けたい今日この頃の僕なのだった。

10月9日 あめ
今日は雨降りだったので御主人も暇らしく、僕の処へ頻繁にやってくる。いつもの雨降りだったらこんな事はないのだけれど、昨日、稲刈りをしたモミが乾燥されているのでそれを見に来ながら僕にちょっかいを出していくのだ。「なでなで」されるのもうっとおしいというのに、今日は僕が寝ている犬小屋の中にまで入り込んできた。僕の小屋は広い。およそ畳2畳よりわずかに狭いぐらいだ。僕ぐらいの犬なら三頭ぐらいは中で暮らせる。チワワだったら何十頭でも大丈夫かもしれない・・・そんなところへ御主人が入り込んできて寝転がったものだから、狭いのとうっとおしいのとで僕の機嫌はたちどころに悪くなった。幸い、ちょっと居ただけで出て行ったのでほっとした。しかし、その後、僕の処へ頻繁に現れては、太平の眠りを覚ましていったのは歴史的な事実である。御主人は幕末の黒船にも匹敵するのだ!!!

10月8日 はれのちくもり
朝、御主人がやってきて「今日は犬狩りをするぞ!!」と言ったので、僕は「ビクン」と身体を震わせた。「犬狩り」・・・・ご近所に飼い犬は多い・・・でも、野良犬はここいら辺には居ない・・・何処の犬を狩るのだろうかと、戦々恐々として辺りを「おどおど」と見渡す。昔々、鎌倉という時代に馬に乗った侍達が戦の訓練のために、囲いに離した犬を弓矢で射殺すというのをやっていたそうだ。 御主人も、そんなことをするのかな、と、ふと思ってしまった。しかし、問題はいったいどの犬が狩られてしまうのかと言うことだ。
やがて、御主人達が朝ご飯を終えて外に出てきた・・・・「いよいよ、犬狩が始まるのか」と、御主人の行動を油断無く見ていた僕なのだったが、御主人は稲刈り機械のエンジンをかけると、そのまま田んぼへ行ってしまった・・・・後で良く聞いてみると、「犬狩」は、「稲刈り」といった言葉を僕が聞き違えただけだったのだ。まったく、御主人ったら発音が悪いんだからぁ〜・・・・無駄な心配をしてしまったよ。「がうん、がるるるる〜!!」

10月7日 はれ
今日は2度、大喜びをした。1度目は、久しぶりにおじいちゃんが顔を見せたので大はしゃぎをして、僕は精一杯の愛想を振りまいた。でも・・・僕がお座りをして「おてっ」と右前足を差し出しても受け取ってくれないんだ。犬の礼儀作法を良く理解していないのかもね。二度目は、午前中から何処かへ行ってしまった御主人が、夜遅くなって帰ってきた時に大喜びをした。大はしゃぎをして、そこいら中を駆け回り、御主人の顔に飛びついて「キス」までしてしまったよ。ちょっとはしゃぎすぎたかなぁ・・・・?

10月6日 くもりのちはれ
今日は朝から犬小屋の中に閉じこめられた。別に僕が悪いことをしたわけではない。でも、御主人は閉じこめたわけを説明することもなく出かけていってしまった。犬小屋の中ではすることもなくただ寝ているばかりだ。そして、昼近くになって、やっと閉じこめられたわけがわかった。今日はお米の出荷日で、たくさんの人達が僕の家の小屋にやってきてお米をトラックに積んでいったのだ。僕は閉じこめられた腹いせも手伝って、「ワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワンワン!!!」と、お米を積み終わり、みんながいなくなるまで吠え続けたのだった。これでいくらか気分がすっきりしたよ!!

10月5日 くもりのちあめ・・・
また、雨が降ってきたよ。随分しまりのない天気だ。犬のオシッコのようにぴたりと止めて欲しいものだ。そんなわけで雨降りでは何もすることが出来ないので一日中犬小屋の中にいた。でも、結構番犬の仕事が忙しかったんだよ。朝から大きな車が僕の家の前を出入りして、たくさんの人達がやってきた。向かいの空き地に何か建てるらしい。「わんわんわんわんわんわん・・・」と一杯吠えては見たものの、最後には喉が痛くなってきた。そこで僕はすばらしい思いつきを実行した。つまり、向かいの空き地にいる作業員の人達を見なかったこと、居なかったことにすればいいのだ。それを実行するためには犬小屋の中に入って行けばいい・・・そうすれば見えなくなってしまうのだ。こうして僕は安心して眠りについた。そうすると、今度は農機具屋の人達がやってきた。この人達は顔見知りなので吠えなくてすむ。こうやって僕は午前中一杯を犬小屋の中でのんびりと過ごしたのだった。だが、午後からはそういうわけにはいかなかった。午前中、何処かへ行っていた御主人が小屋の中でお仕事を始めたからだ。御主人が仕事をしていると飼い犬の僕はのんびりとはしていられない。番犬の仕事をするフリをして用もないのにあちこち歩き回っては見たんだけれど結局、柱に紐がぐるぐる巻きになってしまっただけだった。御主人に助けてもらったけど、かえって御主人の仕事を増やしたみたい・・・

10月4日 くもり
今の季節は夕方の5時半や6時になると、もう辺りは真っ暗になってしまう。真夏の6時頃、お日様はまだ空高くにあってカンカンでりに僕達をあぶりつけていた。僕はあまりの暑さに「嫌だ、嫌だ。暑いから散歩に行きたくない!」と、良くだだをこねたものだ。あれも今から思い出してみると懐かしい思い出になってしまった。今のこの時間、僕はもう散歩を心待ちにしている。散歩の時間になって御主人が僕の処へやってくると、夢中になってかけずり回る。御主人が散歩紐を付けるのに苦労するぐらいだ。「時の移ろいと犬心の移ろいは鴻毛の如し」とはよく言ったものだと、この年になって(4才)、しみじみと感じ入ってしまう。えっ、そんなことわざは聞いたことがないって?・・・・・僕は知ってるよ。犬の世界で使われる言葉かもね!!!・・・・?

10月3日 あめのちくもり
この所、しばらく御主人に反抗していなかったので今日の夕方散歩の時に反抗した。人間もそうだけれど、何でも人の言うことを「はい、はい」と聞いているとストレスがたまる。我慢しているうちは良いのだけれど、たまりにたまると、いつ何時おかしな爆発の仕方をするやもしれない。だから僕は時々ガス抜きのようにストレスの発散をすることにしている。この所、御主人に「右に曲がれ」と言われれば右に向かい。「左に行け」と言われれば左に足を向ける散歩形態が続いていた。しかし!!・・・と、ここで別に強く言わなくても良いのだけれど、今日は違った。散歩の分かれ道で僕は足を踏ん張って「あっちへ行きたい!!!!!」と主張したのだ。だが・・・・力強い自己主張も御主人の横暴にはかなわず、ストレス発散の抵抗もむなしく終わって、逆にストレスをため込んでしまった今日の僕なのであった。・・・・

10月2日 あめ
朝散歩に行ったら雨が降り始めた。東の空にはお日様がでているのに、西の空は真っ黒・・・その空にきれいな虹が出た。僕達はそれを眺めながら家路についたのだった。
日中、御主人は小屋の中で昨日の続きのお仕事、僕は犬小屋で居眠り・・・・昨日は今年初めてのお仕事とあって余裕がなかったようだけれど、今日はちょっとの時間を見つけては僕の処にちょっかいを出しに来る。ぐっすり寝入っているところへ、そっと忍び寄ってきて大きな音を立てて僕を起こす。「うるさい!!」と唸り声を上げたいけれど御主人に対してはそうも行かない。泣く泣く我慢をして尻尾の一振りもしてやると御主人はそれだけで満足して帰っていく・・・・でも、何度も何度も、そんなことをするので終いには無視をした。すると、今度はそっと忍び寄ってきて僕がぐっすり眠っている姿を眺めていく。気配で気付いた僕が、御主人に気付かれないように薄目を開いて逆に様子を見ていると、小屋の方で「ぴぴぴぴぴ〜」と機械の音がする。お米の袋が一杯になったことを知らせる警告音だ。御主人はその音を聞くと、急いで飛んでいく。まるで犬が口笛で呼ばれて飛んでいくようだ。どうも、御主人は機械の奴隷で、絶対服従のようだね。最も、僕なんか御主人に口笛で呼ばれたって飛んでなんか行かないもんね。おやつをくれるって言うんなら何をさておいても飛んでいくけどね。

10月1日 はれ
今日は台風一過の青空が広がったよ。御主人は、午前中は何処かへ出かけていったようだけれど、午後から「もみすり」という作業を小屋の中でやり始めた。これは籾に包まれたお米をむいて玄米というのを取り出す作業だ。そうやって出てきたお米は選別されて袋の中に詰められて売られていく。その一部が僕のおなかの中にもやってくるって訳なんだ。なかなかくわしいでしょう。僕だって農家の飼い犬を4年もやっているのだから、くわしくもなろうというものだ。
ところで、今日は犬の予防薬を飲まされる日だ。蚊が媒介する恐るべき寄生虫を退治するための大切な薬だ。そして、今日のこの一粒3千円の薬が今年の呑み納めとなる。5月から六ヶ月間毎月欠かさずに呑まされてきた。「呑め!」、「嫌だ!!」とにらみ合ったこともある。そのたびに御主人は手を替え品を買え、僕にその薬を飲ませようとしてきたのだが、今日は、薬をとびっきりのお菓子の中に包んで僕をだました。そのお菓子の名前は「生クリーム入りどら焼き」、まさに甘いもの禁止の犬にとっては「究極の禁断お菓子」だ。それを御主人は薬の呑み納めである今日使ったのだ。それこそ奥の手と言っても良いだろう。今まで薬を飲ませるたびに僕に拒否されてきた御主人にとっては、そんな手を使うしかなかったのだろう。僕が御主人だったらやっぱりそうするだろうと思う。要するに、結局、とどのつまり、詰まるところ、僕はなんの疑いもなく一口でその薬を飲み込んだのだった・・・・