平成17年2月
2月28日 ゆきがふったりやんだり
思えば、元旦からこの日記の内容と言えばお天気のことばかりだったような気もする。犬は人間と違って寒い時はストーブで暖まることは出来ない。せいぜい犬小屋の中に入って身体を丸くして寒さに耐えるぐらいのものだ。ましてや、人間のように暖かくした部屋の中で冷たい飲み物や食べ物を食べるなんて犬には理解できない。野生の犬たちは暖かい食べ物なんて生涯食べることはないんだからね。犬小屋もないから、岩陰や風の当たらない木の下なんかで眠るんだ。そんなことを思うと「あぉぉぉ〜ん、あぉぉぉ〜ん」と叫びたくなるぐらい悲しくなってしまう。飼い犬の僕には犬小屋がある。そして、今時の季節はご飯を温めてもらっている。夏は冷たい氷を入れてもらって食が進むようにしてもらっているよ。それはそれで、ありがたいと思うよ。でも、本当はこんな事は必要ないんだ。過剰な便利さや、過剰な食や物、情報・・・今の世の中はすかべからく過剰な物事で満ちあふれている。犬には満ち足りたい欲求とか、不便などと言う言葉はない!!あるがままに生き、あるがままに行動する動物なのだ。
よし!!、犬の生き方を人間の生き方と比較して、人間の考えを改めてもらおう。そうすれば、とても過ごしやすい世の中になるに違いない。人間と犬との共存共栄に限らず、あらゆる動植物が心豊かに暮らせる世の中になるに違いない。題して「犬の生き方に学べ!!」という本を僕が書いて人間世界で出版してもらう。
売れるだろうなぁ〜、たぶん・・・。そして、売れたお金でおいしい物をたくさん食べて、秋田犬のメス犬と結婚して、豪華な犬小屋を建てて・・・それから、それから・・・・
ハッ!!、これって、もしかして、すでに人間の考え方に毒されてしまっているの・・・・?
2月27日 くもり
また、夜の内に雪が10数センチ降り積もった。どうもこの冬の雪達は人や動物の意表をついて降り積もるのが好きなようだ。夜の内にこっそり降って、朝になってびっくりさせてやろうなんて思っているらしい。とっても「お茶目」である。僕は犬だから、雪が降ると習性としてはしゃぎ廻らずにはいられないのだが、こんなにも降り積もるとねぇ〜、そんな気力さえなくなるよ。「またなのか〜・・・」と一言つぶやいた後、絶句してしまうだけだ。だけど、「消えない雪は降った試しがない」と、昔から言われ続けているので、僕なんかは比較的のんびりと過ごしているけれどね。かわいそうなのは御主人だ。目の前に3月を迎えて、春作業の準備をしなくちゃいけないのに、見渡す限りの雪の原・・・・こりゃぁ、神様にでもお願いして、出来る限り雪消えを早くしてもらうしかないね。僕も手を合わせて祈ってみるよ。但し、僕は犬だから肉体的構造上、実際には手を合わせることは出来ない。それに、犬には神様というものがいないので、人間の神様に祈るしかないのだけれど、果たして、人間の神様が犬の願いを聞いてくれるのかどうか、はなはだ疑問が残る・・・・(落語の「元犬」って言う噺は、人間になりたい犬の願いを聞いた神様が犬を人間にするって言う話だから、まんざら絶望的ではないかもね?)
2月26日 おおゆき
今朝、犬小屋から出てみて驚いた。なんと、一晩で20から30センチぐらいの雪が積もっている。だから朝散歩の時なんか大変だった。僕のお腹のあたりまで雪に埋もれながら歩かなければいけなかったんだ。御主人の履いた長靴の中にも、もう少しで積もった雪が入り込みそうなほどの積雪だったよ。朝散歩が終わると御主人は、早速トラクターで除雪を始めた。僕はいつもの通りトラクターの音でパニックにならないように犬小屋の中で待機を命ぜられた。こんな時は退屈だ。犬小屋の中でじっとしていなければいけない。眠っていればいいじゃないかという人もいるけれど、トラクターの大きな音で眠れないし、第一恐ろしくてそれどころではない。ふるえながら、じっと時の過ぎるのを待っているだけなんだ。出るのは「ふぁぁぁ〜」と、あくびばかり・・・・(犬は不安や緊張したりするとあくびが出る)。今日は雪が一杯降ったので除雪に手間取り1時間以上もかかってしまった。除雪が終わり、犬小屋の中から解放される気分は何とも言えない。我慢に我慢して耐えていたオシッコを放水する時の気分のようだ。僕はその如く、除雪で新しく山と積まれた雪の上にオシッコをしたよ。
「黄梅の真白き雪に咲きにけり・・・禄食」って感じだったよ!!
2月25日 はれのちくもってゆき
ひえぇぇぇ〜、やっと暴風雨が去ったと思ったら、今度は大雪だ!!まったく、コロコロと変わる「犬の気持ち」のようだ。人間世界のオペラの中に「風の中の羽のように、いつも変わる○○心〜」と歌うのがある。僕は雄犬だから○○の中に、なんという文字が入るのかは恐くて言えない・・・
とにかく、朝はキリリンと御主人の肌が痛いぐらいに冷え込んだのだったが、午前中から柔らかいお日様の光が降り注ぎ、それに向かってお腹を向けて寝ていた僕だったのだが、午後になると向こう先が見えないぐらい雪がモソモソと降ってきた。今頃の季節は、いつも冬と春のせめぎ合いを見せつけられるんだけれど、見ている方はやきもきしてしまう。「ええ〜い、すっぱりと春なるなら早くなってしまぇ!!」と、北国に生まれた人や動物なら怒鳴り声の一つも上げたくなるって言うものだ。でも、だんだんこんな事を繰り返しながらも春になっていくんだよね。これが、この前お話をした「三寒四温」って言うものなんだ。
2月24日 はれたりくもったり
ふぅ〜、やっと暴風雨は去った。今日は朝方、風が強かったものの、日中は寒いけれど穏やかな天気になった。お散歩も久しぶりに土の感触を僕の足の裏のプニュプニュしたところで確かめたよ。やっぱり、雪の上を歩くのと違って気持ちが良い。
ところで、僕はお散歩に行く時やご飯をもらう時などに「あわてんぼ犬」とか「せっかち犬」などと呼ばれる。なぜかというと、早く食べたくてしょうがないからつい焦ってしまうのだ。それなのに御主人は、「犬の気持ち」も知らず、非情にも「早い、早すぎる」だの「待て」という命令をかけ、ややしばらく僕をじらす・・・僕は、早く次の行動(散歩へ歩き始める、食べる)に移りたくてうずうずしているのに御主人はそれを許さない。飼い主に対する服従訓練だと言ってしまえばそれで終わりだけれど、もっと犬の習性って言うのか、犬の気持ちをわかってよ。御主人はいつもこう言っているじゃないか。「ものを考える時は、常に自分中心に考えてはいけない!!」ってね・・・・・・
2月23日 ぼうふうせつ
今日は驚いたよ!!吹雪なんてものじゃない。台風並みの風が吹いて、西側においてあった植木鉢が吹き飛ばされ、いくつか割れてしまった。いったいいつまで続くんだろうと思うと気が気じゃない。犬小屋の中で恐怖におびえ神経をすり減らしている。おまけに、午後から御主人が小屋の中の整理を始めたので、そっちの相手もしなければならない。(時々、僕にちょっかいを出したりするので付き合ってやる)これも又、神経を使う。「ハッ!!」と、気が付いてら、疲れてしまって、いつの間にか犬小屋の中でぐっすりと居眠りをしてしまっていたよ。やれやれの一日だったよ。・・・・・
2月22日 くもりときどきゆき
昨日の夜、何処かへ出かけて遅くに帰って来た御主人が「今夜から明日の朝にかけて大雪が降るぞ。大雪警報が出ているんだ。50cmは積もるぞ!!」と僕を脅した。おかげで僕は一晩中、犬小屋の中で、大雪に襲われ雪犬だるまになってしまった夢を見てうなされ続けたのだった。ところが、一晩経った今朝、御主人が朝散歩に行こうとやってきたので犬小屋から外へ出てみると、雪なんて積もっていない。夕べとなんにも変わらない。ただ表面にうっすらと雪が積もり、一面真っ白な世界になっているだけだ。僕は腹が立ったので「御主人の嘘つき!!」と心の中で叫びながら、やってきた御主人に身体ごとぶつかっていった。はぁぁ〜、人間世界でも犬世界でも同じ事が起きているんだ。情報に振り回されて右往左往するって言うのはこのことなんだなって、今更ながら気付かされた僕なのであった。でも、きっと大雪は僕達の頭の上を飛び越えて山沿いの町にたくさん降ったんだろうなぁ〜
2月21日 ゆきがふったりやんだり
昨日まで、道路の雪も大部消えて、歩きやすくなったと喜んでいたら、今朝は一面真っ白に覆われてしまっていた。冬の初め頃に御主人が「二月の末ぐらいになれば雪も大部消えるよ」と言っていたのだけれど、これじゃぁ、まだまだ冬のままのようだね。後一〇日ぐらいで三月になると言うのにね。早く乾いた地面に寝っ転がり、お腹をお日様に向けてお昼寝がしたい・・・そんな、ささやかな僕の夢も大部遠のいてしまった。こればっかりは、僕如きが「ガウン、ガルルルル〜」と唸り声を上げて怒ってみてもしょうがないことなのだ・・・・夢を奪われ、張り合いを失った僕の頭の中に子犬の頃、御主人から聴いた童謡が壊れたレコードのように響き渡る。
「は〜るよ、こい、は〜やく、こい、あ〜るきはじめた」・・・・
2月20日 くもりときどきゆき
おかしい!!絶対におかしい!!今日もおかしい!!夕方散歩がこんなに早いなんて何かある。日曜日だというので御主人が気まぐれを起こしてのんびり散歩でも楽しもうと僕を連れ出したのでは決してない!!だいたい超寒がり屋の御主人が零下の気温の中での散歩を楽しもうなんて考えられない。
そして、夕方散歩が終わり、しばらくすると・・・・・「ほらっ!!やっぱりみんなでお出かけだ!!」いつも、みんなでお出かけをして帰ってくるとおいしそうな匂いをぷんぷんさせてくる。間違いない!!おいしい物を食べに行くのだ。昨日、上のお兄さんがお仕事でいなかったので、今日はその埋め合わせをするのだろう・・・ようし、そっちがその気なら、こっちにも考えがある。今夜お土産を持ち帰らなかったらそれ相応の覚悟をするがよい!!・・・・と、悲壮な思いを胸に秘め、みんなが乗った車を見送った僕であった。やがて、ややしばらく独り寝をしていると御主人達が帰ってきた。「むつ!、お土産だよ」という声に飛び起き、犬小屋の外へ転がるように出て行った。なんと、お土産は大きなトンカツが二切れだったよ。ペロリゴクンと戴いた。ちょっとソースが付いていて、いやだったけれど、トンカツはとってもおいしかったよ。これだったら、毎日出かけていっても良いよ。但しお土産を忘れたら、それ相応の・・・・・
2月19日 くもりのちあめ
おやおや、雨が降ってきてしまったよ。これで積もった雪もいくらか消えてくれるはずだ。実は、春先に雪が解ける条件というのは、いくらお日様が暖かく地上を照らしても雪消えは進まない。雨が長く降ることによって、だんだん消えて行くんだよ。「雪は雪によって増量し、雨によって減量する。」って事なんだね。
所で、今日の夕方散歩は、いつもの時間より大部早かったので、察しの良い僕は「また、何かおいしい物を家族で食べに行くに違いない」と思った。下のお兄さんが春休みで帰ってきているのでみんなでお食事に行くようだ。おじいちゃんとおばあちゃんも一緒のようだったよ。しばらくして、僕に「お留守番だよ」と言い残して出かけていった。上のお兄さんはお仕事で行かれなかったらしいけどね。しばらくして、御主人達はお魚の匂いをぷんぷんさせて帰ってきた。今日のお食事は、お魚中心の和食だったようだ。こうして、みんなの匂いをチエックして、やっと「お家に帰って良し!!」と言って解放してやった。本当は、何かお土産をもらうまで、家族にまとわりついて離れないでいるのだけれど、今日は、いつもより夕ご飯をたくさんもらったので満腹だったから、あっさりと解放してやったんだよ。
2月18日 はれたりくもったり
今日は春先のような天気だったよ。この前、この日記に書いたような気持ちよさだったよ。こんな風に吹雪の日があったかと思うと、春のような陽気になったりする今頃の気候のことを「三寒四温」というらしい。でも、なぜ三と四なのかわからない。3割が寒くて4割が暖かいのなら後の3割はどうなんだと言いたくなる。だけど、僕は犬で、ろくに数も数えられない動物だから、これは御主人が言っていることをそのままみんなに伝えているに過ぎない。
ところで、陽気が良くなり家の前の雪がシャーベット状態になって歩きにくくてしょうがない。だから御主人がトラクターで除雪をした。トラクターで雪をすくい上げると、だらだらと水滴がこぼれ落ちる。僕は除雪が終わった地面の上に座り、あたりに山と積まれた雪を見ながら「この冬は随分積もったなぁ〜」と感慨にふけった。しかし!!油断は出来ない。冬はまだ終わったわけではない!!2月が過ぎて3月になっても時々降る!!、そして、いい気になった冬を甘やかしたままでいると4月の桜の咲く頃になっても雪を降らせたりするのだ。!!気をつけろ!!
2月17日 くもり
昨日、僕が「この吹雪を何とかしろ!!」と御主人に怒鳴ったので、御主人は何とかしたようだ。おかげで、今日は曇りでお日様も時々顔を出す一日になったよ。これからの世の中は飼い犬も耐えてばかりいないで、時々は飼い主を怒鳴りつけるようにしないと駄目だなってつくづく思ったよ。
さて、夕方散歩の話になるが、たんぼ道を歩いていると、向こうのたんぼ道を叔父さんの家のワンコが歩いているのを発見した。僕がいつも気になるワンコだ。けれど、何しろ向こうとの距離はおよそ100メートル・・・しかも御主人が早く家に帰りたがって僕の散歩紐を引っ張る。仕方なく、僕はずっとそのワンコの方を見つめ続けながら歩いたんだ。つまり、顔を横に向けながら歩いたんだ。横を向きながらまっすぐ歩けるって言うのが犬のすごいところだ。けれど、前に電柱なんかがあったら確実にぶつかっていたところだね。御主人だって「危ない!」なんて注意はしてくれないと思うよ。いつぶつかるかと、わくわくしながら僕の行動を見ているだけなんだと思う。御主人ってそんな人なんだ!!「がうん、がるるるる〜!!」
2月16日 くもりのち・・・ふぶき!!
今朝は大部冷え込んだ。御主人の話だと、「日中にかけて、だんだんプラスの気温に変わっていくよ」と言うことだったけれど、とんでもない!!朝と変わらない冷え込みが一日中続き、おまけに午後になったら雪が降り始めて吹雪になってしまった。「御主人が、暖かくなるって予報したんだから責任をとれ!!」と言ってみたけれど、御主人はのほほんとした顔で、「こりゃぁ、吹雪がひどくて夕方散歩へは行けないかも知れないぞ」などと、のたまう始末だ。「がうん、がるるるる〜!!」と唸り声を上げて「何とかしろ!!」と言ったら、渋々夕方散歩に連れて行ってくれた。まったく天気予報に関しては懲りない御主人である。やれやれ・・・
2月15日 ゆきのちくもり
僕は、身体の裏の部分、つまり下あごの先から尻尾の先まで白い毛で覆われている。反対に上の部分は一面、赤毛になっている。大日本帝国海軍の戦闘機などは下の部分が灰白色で、上の部分が暗緑色に塗装されている。秋田犬もそれと同じ仕様になっている。クマと戦うための戦闘犬になるべく改良された犬種なのだ。だから、深い雪の中で、じっと獲物を待っている時などは白い腹を出して雪の上に寝ころんでいると、雪と同化してしまうので敵から発見されにくい。そして、狩猟期間の始まる11月には、枯れ葉の散った山の中に伏せると、赤毛が落葉の色と同化して、これまた敵に発見されにくい。便利なことこの上ない。だけど・・・・雪が降って、辺り一面真っ白になってしまった時、白色の毛を持っていると、ウサギさんに間違われやすい。特に僕はそうだ。僕は、良くぴょんぴょん跳ねる。自分でもおかしいぐらいはねる。自分自身で、ウサギさんの生まれ変わりではないかと思うぐらいだ。どういう風にはねるかというと、
「ご飯が運ばれてきた時にはねる。」
「散歩へ出かける時にはねる。」
「知り合いの人やワンコが来た時にはねる。」
だから、ちまたでは、こんな唄が流行っているそうだ。
「むつ犬、むつ犬、なに見てはねる。大盛りご飯を見てはねる。むつ犬、むつ犬、なに見てはねる。散歩紐をば見てはねる。むつ犬、むつ犬、なに見てはねる。惚れたメス犬見てはねる。」・・・・・だってぇ〜、なんだかねぇ〜・・・・?
2月14日 くもりときどきゆき
昨日の穏やかだった天気は夢幻の如く去り、今日は厳しい冷え込みと時々吹雪く空模様に戻ってしまった。天気なんて言うものは人生・・・いや、犬生の如くはかなく移ろいやすいものだ。「犬生は一炊の夢」はたまた、「犬生は、3日見ぬ間の桜かな」、それとも、「犬生、十有余年、下天の内をくらぶれば〜、夢幻の如くなり〜」・・・・なんだね。犬はせいぜい生きて、人間の4分の1、短い犬の一生をどう生きるかが僕達、犬にとって哲学的課題だよ。それに犬には宗教というものがないから、高次元的にすがりつくものがない。あるいは信じるというものがない。低次元で言うならば信じるもの、すがりつくものと言えば御主人であり家族である。
だから、御主人及び家族は飼い犬にとって神という存在に等しい。この人達の気持ち次第で飼い犬は幸せにもなり不幸にもなる。そして、生死をも司ってしまうのだ。御主人達、心すべし、神という存在にも似た飼い主という存在をおろそかにすべからず。だから、時々は高級牛肉を食べさせるべし・・・・!!
2月13日 くもり、はれまあり
久しぶりに吹雪が収まり、寒さも和らいだので、今日は御主人か、家族に遊んでもらおうと期待していた。ところが、御主人は黒い服を着て何処かへお出かけのようだ。「ねぇ、ねぇ何処へ行くの?」って聞いたら、おじいちゃんの実家で法事とやら言うものがあって出かけるのだそうだ。僕は、今日一日の生活設計が水泡に帰したことを知りガッカリした。残りの家族は誰も僕を相手に遊んでくれない・・・・家族から見えるように雪の上に寝ころんで、僕はここにいますよって言うパフォーマンスを行った。こうしていると誰かが気まぐれに遊んでくれるかも知れないと思ったのだ。だが、その期待もむなしく、雪の上にしばらく寝ころんでいても誰も遊んでくれない。終いには身体が冷たくなってきたので馬鹿馬鹿しくなって犬小屋の中に引っ込んだ。午後も3時を廻った頃、やっと御主人が帰ってきた。僕は嬉しくなって「お帰りの踊り」を踊った。黒い服から、いつもの服に着替えた御主人は、僕としばらくボール遊びをしてくれたよ。夕方散歩もいつもよりは長く歩いてくれたよ。最後にやっと楽しいことが出来た。これを人間世界のことわざで言うと「残り物に福がある」っていうのかなぁ〜・・・・?
(注)飼い犬は人間世界のことに疎いため、あるいは関心がないためにたまたま、いや頻繁に人間世界の風習、文化などをとんちんかんな覚え方をする!!
(比較犬類学研究所白書2003年度版より抜粋)
2月12日 ふぶき
今朝は気分がむしゃくしゃしていたので、犬小屋の中に敷いてあったカーペットを外にひきづり出してやった。朝散歩に行こうとやってきた御主人がそれを見つけて、僕は叱られてしまった。「せっかく、暖かく寝て欲しいと思って中に敷いてやったのにひきづり出すとは何事だ!!」って言うんだ。たしかに御主人の温情はありがたいよ。でも、僕はストレスを発散できるのがこれぐらいしかないんだ。雪がなかったら、もっといろいろなストレス発散方法もあるのだろうけれど、今はこれだけ!!なにしろ飼い犬って言う存在は、ずいぶんとストレスがたまるものなのである。この家の家族の一員になった途端、番犬という仕事が自動的に割り当てられ、御主人に気を遣い家族の人達にまで・・・・はぁぁぁぁ〜
「野生の犬の自由は不自由さと一対をなし、飼い犬の自由は義務というものと双璧をなす」これって、犬の世界でことわざなんだって・・・・
2月11日 ふぶき
この季節は天気のことぐらいしか話題がない。それが何となく情けない・・・・けれど、何処を見渡しても一面真っ白な雪に覆い尽くされてしまっているので仕方ないのだ。口を開ければ喉の奥まで雪が吹き込んでくるし、歩けば雪が足にまとわりつき、鼻で道ばたの匂いを嗅ぐには雪の中に鼻をつっこんでやらなければいけない・・・「やれ、やれ・・・」である。
ところで、この前、御主人が僕の寒さよけになるように犬小屋の出入り口にタオルケットをカーテンのように掛けてくれた。僕はそれをかいくぐって出入りするわけだ。なるほど、なにもないよりは、よほど暖かく感じる。でも、この前の幾分暖かかった日には、このカーテンが外からの光を遮り、「暗くて、うっとおしい」と思っていたのだが、今日みたいな一日中氷点下3度以下の気温の日にはありがたく思う。でも、ちょっと暖かくなったら、カーテンを開けて中を明るくしてね。僕、これじゃあ、まるで平安時代のお姫様みたいに御簾越しに御主人と対面って事になってしまうからね。・・・・?
2月10日 ゆきのちくもり
又、雪だ・・・雪がモソモソ降っている。この前、立春を迎えたばかりで春がやってきたものとばかり思っていたのだけれど、御主人が言うには、ここら辺は2月が一番寒い月なんだと言うではないか!!自然に任せて行動している犬には、自然と一致しない暦に従って行動している人間は何とも不可解だ。今日だって、立春というのに雪が降って寒い。朝なんか、御主人が散歩に連れて行ってくれるのを外でじっと待っていたら、全身が雪の衣を着たようになってしまった。まるで「雪犬だるま」だ。身体が重いので「ぶるぶる、ぶる〜ん!!」と思いっきり身体を振って雪の衣をはじき飛ばしてやった。ところが・・・・散歩から帰ってくると、又雪だるま状態になってしまったのだ。僕は散歩から帰るとおやつをもらうことになっているのは知っているよね。今の寒い時期は玄関に入って、それをもらうことになっている。でも、雪の衣を羽織ったままじゃ、我が家の顔ともいえる玄関には、はいるにも入れない。そこで又、「ぶるぶる、ぶる〜ん」・・・・・はぁぁ〜、又、「ヤレヤレ・・・」とため息ばかりつかなければいけない雪の日が続くのかなぁ・・・?
2月9日 くもりのちあめ
今日の御主人は、さっぱりした顔をしている。「どうしたの?」って聞くと「決算処理が、ようやく終わった」のだという。犬には、とうてい理解できない処理のようだけれど、御主人も根本的には理解していない処理のようである。しかし、これをやらないと「税務署」とやらからお叱りを受けて罰を受けるのだという。御主人も僕のようにいけないことをした時に叱られたりするのかと驚いた。それと同時に安心もした。なにも僕だけが叱られて罰を受けている訳じゃないんだなって思ったんだ。だけど御主人達、人間が僕みたいに毎日のように叱られたり罰を受けている訳じゃないんだよね。罪の大小にもよると思うけど、悪いことをするのは一部の人達だけだと思うんだ。僕は犬だから人間の世界の良いことと悪いことは理解できない。だから毎日のように叱られたりするのだと思う。だいたい、犬の行動を人間の尺度で考えて犬に当てはめようとするから、こんな事になるんだと思う!!「犬の権利を守る会」及び「犬の基本的自然行動を優しく見守る会」では、いったいどういう見解を示しているのだろうか、知りたい・・・・知りたいっ!!!
2月8日 くもり
今朝は、空気がなんだか春めいて感じられた。どことなく柔らかで、かすかに甘くさえ感じたんだ。光の色も優しく柔らかく感じた。どこがどういう風にとは言えないんだけれど、たしかに空気と光は春を感じさせてくれている。僕は犬だから、自然の動きには敏感なんだよね。野生だった、ご先祖の血が本能として、それを感じ取っているのかも知れないね・・・・
所で、今日は午後から買い物に出かけていった御主人ではあったが、僕はそれを良いことに大はしゃぎをして、紐があちこちに絡まってしまい身動きがとれない状態になってしまった。「しっ、しまった!!」と思った時はもう遅い。たいがいはそんなものだと思うけれど、これじぁ、御主人が帰ってくるまでなにもすることが出来ない。出来る事と言えば、冷たい雪の上に座って、ただひたすら耐えることだけだ。そして、御主人が夕方の5時前になって帰ってきた。それで、ようやく解放してもらったのだった。実は、さっきからオシッコがしたくてたまらなかったんだよね。まさか近くにしてしまうほど僕は不作法犬じゃないので辛かったんだ。解放されて、心おきなくいつもの石の所へ長々とオシッコをしたよ。「はぁぁ〜、気持ちが良い〜!!」
所で、今日は御主人の誕生日だよ!!、犬の僕には数えることが出来ないぐらいの歳を重ねたようだ。
2月7日 はれたりくもったり
やっと、やっと穏やかな日が訪れた。あのひどく寒い吹雪の日が、もう何日続いたのか記憶にはない(犬だから)・・・・でも、やっと今日止んだ。日中は、雲の間からお日様が時々顔を出してくれたよ。「いない、いない、ばぁ〜」なんて感じで遊んでいるみたいだ。僕は、地面の上に腹を出して寝ころんでいたら御主人に笑われた。「冷たくないのか?」だって・・・犬の毛皮はぬくぬくあったかなので、こんな所でも平気なんだ!!と大見得を切って見せたものの、ちょっと冷たい感じもする。だから、小屋の中にある土のお山の上に昇って、ここでお昼寝をすることにした。ここの土は、冷たい風に吹きさらされて、表面が乾ききっているから寝ころんでも気持ちが良いんだ。でも・・・・「はぁぁぁ〜、お日様久しぶり!!」、かくの如く、久しぶりに至福の時を過ごした僕なのであった。
2月6日 くもりときどきゆき
今日も吹雪が吹いたり止んだりの悪天候だったよ。御主人が、又除雪を始めた。どうやら一晩で10センチも降ったらしい。ここいら辺では一晩で10センチと言えば多く降ったと言われる。そんなものだから家の廻りの雪の捨て場がどんどん埋まってしまい狭くなってきている。このまま降り続けると大変だ。
ところで、除雪し終わった外をうろうろとしていたら、雪のお山の隙間から遠くが見える。そこに、僕が恋いこがれている、御主人の叔父さん家のワンコが散歩をしていた。僕は、急に落ち着きを無くし、そわそわし始めた。そんな姿を御主人がもの影からそっとのぞき込んで笑っていた。それは、それは恋しいけれど、恥ずかしいので、さすがに「きゅう〜ん、きゅう〜ん・・・」とは泣き叫びはしなかったけれどね。日本版「冬のソナタ」・・・って感じだよね!!!
2月5日 くもりときどきゆき
まったく、最高気温が零下の日がいつまで続くんだ!!いくら僕が寒さに強いからって、これじゃぁ気が滅入ってしまうよ。かわいそうなのは、寒さが一番の苦手な御主人だ。僕と散歩の時は、いつも顔がまったく見え無いぐらいに上半身を覆って、風に顔を背けるように歩いている。そして、いつも「早く帰ろう」と僕をせき立てる。今日の夕方散歩でも、久しぶりにだだをコネ、雪の大地に足をしっかりと踏ん張って不動の体勢を取ったら、かんしゃくを起こした御主人は、僕の紐をぐいっと引っ張り無理矢理、帰り道の方向に歩き始めてしまった。家に帰ってきてからも大変だったよ。いつもは夕方散歩が終わると、すこし経ってからご飯が出されるんだけれど、今日は40分以上も待たされてしまった。おかげで、吹雪の雪の上にフセの格好をしながら「今か、今か」と待たされる羽目になってしまった。御主人は、まだ僕がだだをこねたことを怒っているのだろうか・・・?それとも、僕にご飯をやることより大事なことをしなければいけなかったのだろうか・・・・?
えっ?、御主人がなんか言い訳をしているよ・・・・「なんだってぇぇぇ!!!見たいテレビがあったから僕にご飯をやるのが遅くなったんだってぇぇぇ!!!」しかも、お宝なんでも鑑定団・・・・を見ていたなんて・・・・・腹が立つ前にヘナヘナと全身の力が抜けていってしまいそうな理由だ。しかし、ここは飼い犬の立場としてはっきりとした態度を御主人に示さなくてはならない。
「がうん、がるるるるる〜、わんわんわんわん、わお〜ん、!!!!!」
2月4日 くもりときどきゆき
朝散歩も終わり犬小屋の中でのんびりしていると外がやけに騒がしいのであくびをしながら犬小屋から出てみた。すると、「珍客」が我が家を訪れていた。それは犬だった。その犬の御主人も一緒だと思っていたら、僕の御主人の知り合いに保護された「迷い犬」だという。真っ白な毛並みがすこし汚れてはいるものの秋田犬である。間違いない!!秋田犬の僕が言うのだから間違いない!!。僕はびっくりして「わんわんわん!!」と吠え立てた。家の御主人の知り合いだと言うその人は「ムツに似ていたので、ここに連れてきた」というのだ。「だって、家の犬と毛色が違うじゃないか」と僕の御主人が言うと「ムツって呼んだら近寄ってきた」というのだ。こっ、この犬は僕の名前を詐称しているのか!あるいは僕と同じ名前で呼ばれているのだろうか・・・・?。「そんなはずはない!!そんなはずはない・・・」御主人は、町内にいる秋田犬で心当たりを思い浮かべてみたけれど、どれも確実ではない。妙におとなしいこの秋田犬は吠えもしなければ、暴れもせず、ただおとなしく、慎ましやかにひっそりと立ちつくしているのだった。自分自身が「迷子犬」であると言うことを自覚して、不安におののいているのか、元々おしとやかな犬であったのか、はたまた、鈍感な犬なのか・・・とあれこれ想像をたくましくする僕ではあったのだか、結局、その秋田犬の正体は知れず。御主人の知り合いに紐を引かれ、静かに我が家を去って行ったのであった。「今頃、自分の家に帰っていてくれればいいのだが。」、と人事ながら・・・いや、犬事ながら心配している僕なのであった。
2月3日 くもりときどきゆき
やっと、やっと、雪降りの峠を越したと思える今日この頃ではあったのだが、午後になって御主人が除雪を始めると、またひとしきり激しく雪が降り始めたのであった。・・・・・ヤレヤレ、と思う僕は馬鹿馬鹿しくて、もうこんな事を話す気力もない。すべての筋肉が脱力状態である。御主人も「ヤレヤレ」と思っているのかもしれない。あるいは、「なぜ、俺が除雪しようとすると雪が降り始めるのだ!!」と怒っているのかもしれない。それは、もう僕のあずかり知らぬ事だ。こんな御主人の間の悪さというのか運の悪さに関わり合っていると僕にまで累が及びそうだ。ここで、すっぱりと話題を切り替えようと思う。
昨日の、朝散歩後のおやつは豪勢なものだった。大きな焼き豚が1枚と、煮干しにソーセージ、そして犬用ビスケット3枚である。僕は大喜びで尻尾を振りながら、おいしく戴いたよ。ところが、今日はいつもの煮干しとビスケットだけだ。それも、ビスケットを食べる時、僕が余り急いで「パクリ!!」と食いつくものだから、御主人から「早すぎる。もっとゆっくり!!」などと言われて、何度もやり直しをさせられ、やっとビスケットを食べる事が出来たんだ。これも「ヤレヤレ」って感じだったよ。結局「ヤレヤレ」って言う愚痴に終始しなければいけないんだね・・・・「ヤレヤレ」・・・
2月2日 おおゆき
御主人の天気予報はたしかに当たった。但し、2日遅れで・・・・その上、大荒れじゃなくて、静かにたくさんの雪が降ってきたことだけが当たっている。けれど、冒頭に天気予報が当たったと言ったけれど、よく考えてみたら2日遅れで当たるなんて、もはや予報とも言えないんじゃないかなって思う。この季節はいつ雪が多く降ってもおかしくないんだし、予報というのはリアルタイムのものじゃなければいけない。2日も遅れて当たったと喜んでいる?、御主人の気が知れない。もちろん、こんな脳天気な御主人には天罰が当たるのは当然なことだ。その後主人は午後から除雪にかかりっきりになっている。僕は、いつものようにトラクターの音でパニックにならないように紐を短くされてうろうろ歩けないようにされてしまった。いつもの倍以上の時間をかけて除雪をし終えた御主人ではあったが、御主人に対する天罰はその後に起こった!!。除雪が終わって、わずか3時間ほどの間に、除雪した雪の量だけ、また降り積もってしまったのだった・・・・・どうする、御主人!!
2月1日 くもり
昨日、御主人が予想した「天気予報」は、無事にはずれ今日は一日、風は冷たいものの比較的穏やかだった。でも、御主人の名誉のために言っておくけれど、昨日の夜は、風がすこし強かったよ。「ぴゅゅゅ〜」と、風が泣いていたし、雪も、まあまあ降った。だから、御主人の予報もまんざらはずれてはいないけれど、「大荒れで、雪もたくさん降るらしい」って言うのはどうもねぇ〜・・・・まぁ、大筋で「予報がはずれた」って言った方が良いようだね!!これからは、あんまり天気予報はしない方が良いと思うよ。さもないと、「おおぼらふき」って噂されちゃうよ。御主人!!