平成17年3月
3月31日 はれ
今日は晴れたけれど寒い一日だった。お日様が僕を照らしてくれても暖かくならないんだ。今日の僕は、一日中、ひとりぼっちだったよ。御主人は午前中から何処かへ行ってしまって、夜になっても帰ってこないんだ。やっとお母さんが帰ってきてご飯だけはもらったけどね。もちろん番犬のお仕事は、そこそこにやったよ。犬にとって番犬のお仕事は本能みたいなものだから、仕事がしたくなくても、人がやってくると条件反射で「わんわんわん」と吠えてしまうのだ。ご飯を目の前にした時によだれが流れるのと同じだよ。但し、「多くは吠えぬ事」というのが御主人と飼い犬との契約条項にあるので気をつけなければいけない。
とにかく、ひとりぼっちでつまらない一日だったよ・・・・
3月30日 くもりちらちらゆき、かぜつよし
今日も寒い一日だった。こんな寒空に御主人は、「外で誰か来るか見張っていろ」と命令するんだ。「言われなくても僕は番犬なんだから仕事はするよ。」って言い返したくなったけれど、そこは飼い犬の身分なのでぐっとこらえて、チラチラと雪が舞い散る外へフセの格好をして見張りに付いた。人間の子供が「今勉強しようかなぁ・・」と思っているところへ親から「勉強しろ」って言われると腹が立つのと同じで、いつもやっている「番犬の仕事」を今更ながら「やれ!!」と言われると僕も腹が立つ!!もっとも、今日は午後からボイラーの修理の人が来るという。僕の役目は小屋の中でお仕事をしている御主人に「わんわんわん」と修理の人がやってきた事をお知らせするのが目的だったんだよ。でも、今日は御主人の役に立って良かったよ。「お利口犬」って誉められもしたしね。
3月29日 くもり・・・ぼうふう
この所、暖かいなんて言う日には、とんとお目にかからない・・・いつもの春だと、たまに暖かくて気持ちの良い日が何日かあるものだけれど、今年は寒い日ばかりだ。最も僕は、この世に生を受けてまだ4年しか経っていないので知らないだけなのだろう。長い年月の間には、今年みたいに寒いだけの春の訪れもあったのかも知れない。こんな寒い春先に、先輩犬たちはどんな事をして過ごしていたのだろうか・・・・僕は、自慢の足の先の白い毛を舌先で毛繕いしながらコンクリートの床に敷いた汚い布団の上で、そんな事を思っていた。何もする事がないから、うつらうつらと居眠りをしたりもしている。御主人に「遊ぼう」と声をかけても、「寒いし、馬鹿に強い風が吹いているのでいやだ」と断られてしまう。もっとも、こんなひどい風の中でボール遊びなんかしたら、肝心のボールが何処かへ吹き飛ばされてしまう・・・僕と御主人はお互いの顔を見つめ合いながら「はぁぁ〜・・・」と深いため息をつくしかないのであった。
3月28日 はれのちあめ
朝散歩の時、白鳥さん達が50羽余りの編隊を組んで北へ帰っていくのを見たよ。もうすぐ4月になると言うのに随分のんびり屋の白鳥さん達だ。
ところで、朝散歩は「春は曙ようよう白くなりゆく・・・云々」って感じだったよ。僕達がのんびりと歩いているところへ白鳥さん達の群れと出会ったんだよ。ところが、午後からは「青天の霹靂」って感じだったよ。雨が降ってきたんだ。だから、僕の夕方散歩は中止になってしまったんだ。御主人が僕に「夕方散歩は無し」を告げようとするけれど、僕はそんな話は聞きたくない、聞きたくないと、そこら中をかけずり回るものだから、御主人は僕の両方のほっぺをぎゅっと握り「人の話を聞け!!」と叱りつけ、「いいか、今日の夕方散歩は無しだ!!」と、一方的に宣言されてしまった・・・
うううぅっ・・・飼い犬はつらい・・・・・
3月27日 はれのちあめ
僕が「ボール遊びをしよう」って御主人にいったのに「駄目〜」と、断られてしまった。午前中はお天気が良かったので、久しぶりに御主人に遊んでもらおうと思っていたのに・・・・御主人も、身体の方がまだ本調子じゃなさそうだったので、しつこくは誘わなかったよ。いつもだったら、御主人の側にまとわりついて、ボールが置いてあるところをじっと見つめるんだ。すると、ボールを取り出して遊んでくれるんだ。でも、今日はしょうがない、しょうがない・・・・・でも、明日も断ったら「がうん、がるるる〜!!」だからね。御主人!!!
3月26日 ゆきがふったりやんだり
今日の僕は張り切っている。何しろ一家総出でお仕事なんだ。何をするのかというと、お米の種をまく箱に土を入れる作業なんだ。約1000枚仕上げなくちゃ行けない。御主人と上のお兄さん、そしておばあちゃんとおじいちゃんだ。僕は、作業しているみんなの間を行ったり来たりしながら、お仕事の進みぐあいを見守る役目なんだ。別に命令されたわけじゃないけれど、自然にこういう役目になっていたんだ。お仕事もいっぱいしたし、おやつも人並み・・・とまでは行かないけれどもらったよ。最初から張り切りすぎていた上に、お昼休みもしないで仕上げたので僕は疲れてしまったよ。後もう少しで出来るって言う時になって、地面に寝そべって居眠りをしてしまった。「仕事の監督」って言うお仕事もなかなか大変なものだね。
3月25日 ふぶき・・・
今日の僕は一日中お利口さんだったよ。いたずらも、悪い事もなんにもしなかったよ。なんと言っても、一日中吹雪の天気じゃ、何もする事が出来ない。御主人は午前中、犬小屋の廻りをうろうろして何かを運んでいたようだ。僕は、こんな天気なので犬小屋の中でじっとしていようかと思ったのだけれど、御主人が忙しそうに「働いて」いるので、じっとしてもいられなくなった。しかたなく、犬小屋を出て、御主人の廻りをうろうろと「動いて」いたよ。僕は犬だから「働く」事は出来ない。「働く」という漢字には人という字が付いているので、人間だけが出来るもの。犬にとって「働く」という事は無縁なのである。だから、「動いている」と言ったんだよ。ふぁぁぁ〜、今日みたいな天気の日には、大きなあくびをしながら、こんな言葉遊びぐらいしか暇つぶしの方法はないようだ・・・・
3月24日 はれ
今日も又、こっぴどく叱られてしまった。昨日より激しくである・・・・何をしたかというと、午前中の事、犬小屋の上に置いてあった「犬用耳掃除薬液状タイプ」の入ったプラスチックの瓶を持ち出して、「カミカミ」して穴を開けてしまい、使い物にならなくしてしまった事、この時は言葉だけのお叱りで済んだ。そして、夕方・・・犬小屋の上に置いてあった「犬用耳掃除薬粉タイプ」の入ったプラスチックの瓶を持ち出して、「カミカミ」して穴を開けてしまい、使い物にならなくしてしまった・・・これはもう、言葉だけのお叱りでは済まないのは長い飼い犬暮らしで経験上わかっている。どんなお叱りを受けたかというと、まず、怒鳴りつけられて、僕は地面にはいつくばる。そして、御主人は、なぜか、手に持ったペットボトル1.5リットルの空き瓶で僕の頭をポンポンと殴りつけるんだ。僕はいつものようにふるえながら許しを請い、ひたすらご主人のお叱りが終わるまで耐えていたのだ。やっと終わって解放された時は「ホッ」としたよ。しかし、一日の内に二度も叱られるなんて新記録だね!!!
3月23日 くもり
今日の夕方散歩の時に、久しぶりにこっぴどく叱られた・・・理由は命令違反だ。順を追ってその時の状況をお話するよ。でも、その前に、僕には「散歩へ出かける前の作法」があるのを知っている人がいるかも知れない。知らない人のために、今ひとたび説明しよう。御主人に「散歩へ行くよ」と声をかけられると、僕はあまりのうれしさに、そこら中をかけずり回る。そんな僕を御主人はなだめながら、お座りをするように命令する。やっとの事で落ち着いてお座りをした僕は、右の前足と、左の前足を交互に「お手」と、御主人に差し出さなければいけないしきたりになっている。そして、やっと散歩紐を付けてもらえるのだ。さて、いよいよ散歩に出かけれわけなのだけれど、ここで自分勝手に立ち上がり、歩き始めてはいけない!!・・・早く散歩にでかけたいとはやる心を抑え、「よし!!」という御主人の命令が出るまで、じっと我慢していなければ行けないのだ。ところが、僕はたびたび、ここのところで失敗してしまうのだ。今日もそれで叱られたんだよ。「よし」と言われる前に立ち上がり歩き始めてしまうんだ・・・御主人の命令は軍隊の命令と同じで絶対服従だ。昔だったらこれに違反しようものなら「軍法会議にかけられた上に銃殺刑」にもなりかねない・・・幸い僕の場合は、鼻先をポンポンとぶたれただけですんだけどね。でもこれだけでも恐怖だ。身体を震わせて許しを請い、反省し、やっとの事で散歩へ連れ出してもらったんだよ。散歩時間は短かったけどね。でも、病気の御主人の事だから、仕方ないと言えば言えるけどね・・・・
教訓その1.命令には絶対服従の事
教訓その2.君(御主人)に忠義を尽くし、
卵の黄身は食い尽くす事
教訓その3.要求をせず、要求に応える
3月22日 うすぐもり
暖かな一日だったよ。今日は僕達の住んでいるところに乾燥注意報が出ている。御主人は、洗濯物は良く乾くし、田んぼもどんどん乾いていくので喜んでいる。でも、僕としては、鼻の頭は乾くし、ほこりが目に入って目ヤニが出てくる。そして全身ほこりだらけだ。「誇り」を全身に浴びている犬なら誇らしさもあるけれど、「埃 ホコリ」を全身に浴びて、よれよれの汚い毛皮を着て赤犬やら灰色犬やら、わからないようでは、胸を張り、表だって歩けないような状態になってしまう。
ところで、今日から御主人がお仕事に復帰した。まだ本調子ではないようだったけれど、風邪をひく前にやりかけたお仕事を無事終わらせる事が出来たよ。お仕事が一区切り付いた事を祝して、僕はきれいに盛られた土のお山へオシッコを引っかけてあげた。その途端、「オシッコ犬めっ!!」と、怒鳴られて外へ追い出されてしまった。飼い犬のホンのささやかなお祝いの気持ちだったのに・・・・
3月21日 はれ
この所、風邪をひいてふらふらの状態なご主人である。昨夜から今朝にかけて悪夢にうなされたらしい。高熱がまだ抜けきらず頭がぼーっとしている状態なのだから無理はないのかも知れない。どんな悪夢なのかというと、寄席の高座が次から次と廻り灯籠のように表れて、咄家の出囃子が鳴りやまず頭の中に突き刺さるように響いてくるのだったそうだ。出囃子というのは落語家が高座にあがる時に鳴るもので、人それぞれ違う出囃子を持っている。御主人の頭の中に響いた音は誰の出囃子ともしれず、三味線や笛、太鼓を使った音でも無し、まるで口三味線の様な音だったという・・・なぜ、こんな夢というのか幻聴を聞いたのかというと、原因ははっきりしている。熱がありながら本などを読んで寝たからだ。しかも「落語の本」をだ・・・
ちなみに、犬も夢を見る。寝ながら、口をもぐもぐさせてみたりする時は、何かおいしいものでも食べている夢を見ているに違いない。時には、「わぉ・・わぉん」などと、間抜けな声で寝言を言う事もある。もちろん、犬は人間のように記憶力は悪いので自分の見た夢を覚えている事ない。どうせ覚えていたって、夢の中で見た大きなお肉の塊が現実に食べる事ができるわけじゃないしね・・・・
3月20日 はれのちくもり
今日はとっても良い天気になったよ。すっきりと晴れ渡って、北へ帰っていく白鳥さん達の白さが青空にくっきりと映えていたよ。とても美しかった。僕は、地面にごろんと横になりお腹をお日様に向けて、思う存分お昼寝を楽しんだよ。僕と逆なのが御主人だ・・・風邪のため、カーテンを閉め切った薄暗い部屋の中で布団に横たわり、時々襲ってくる激しい咳き込みと頭の痛さに耐えながら、一日中「寝ては夢、起きてはうつつ幻の・・・」の状態だったようだ。さいわい、夕方散歩は上のお兄さんが行ってくれて、ご飯もいただいたので文句はない。でも、いつまで続くの、こんな状態・・・うまいものをしっかり食べてしっかり寝て早く直してよね。御主人!!
3月19日 はれたりくもったり
御主人の身体は相変わらず良くならない・・・・38度から熱が下がらないというのだ。「それなのにこんな日記を書いていて大丈夫?」と聞くと、寝ていても退屈だし、本を読んでいると目が回るのだそうだ。そんな状態で僕のご飯も作ってもらって申し訳ないような気がする。ここで、僕が何かおもしろい話でもしてやれば御主人も気が紛れるのだろうけれど、生憎、犬にはそんな芸当はできっこない・・・・と、言うわけで、僕の代弁者である御主人をこき使って病気が長引いたりしたら大変なので、ここら辺で失敬するよ。
3月18日 あめ
いま、僕達の住んでいるところでは「インフルエンザ警報」なるものが発令されている。犬の僕達には、ほとんど関係ないのだけれど、人間達が大変だ。これは一種の病気らしい。どんな病気なのか興味があったけれど目に見えるものではないらしいので、残念ながらあきらめていた。ところが、御主人にそれが表れたらしい!午前中は、作業小屋でお仕事をしていたのだけれど、なんだか身体がだるそうだ。そして、とうとうお昼にならないのに家に引き上げてしまった。聞くところによると、熱が38.6度にもなって咳もひどいようだ・・・僕は38.6度という熱がどんなものかは体験した事がないのでわからないけれど、真夏の暑い盛りの気温よりは格段に高いって事は何となく理解できる。そんなものだから、夕方散歩は無しって事でご飯だけもらったよ。でも御主人、僕の事なんか気にしなくても良いから養生した方が良いよ。
3月17日 はれのちあめ
今日は色々な事があった・・・まず、朝散歩に出かけると南の空から数百羽の白鳥さん達が、それぞれに編隊を組みながら南西の空から北東の空へ元気な声を上げながら飛び去っていったよ。中には遅れてしまったのか、3羽だけで飛んでいくのもある。さすがに単独飛行というのはなかったなぁ〜。それから、朝は晴れていたのにお昼前から雨が降り始めて、午後には本降りになってしまった・・・僕は小屋の入り口に敷いた毛布の上で、降る雨を眺め、毛繕いをしたりうたた寝をしたりした。それでも退屈なので小さなボールを見つけてきて、毛布の上でジャンプしながら「狩り」のお稽古をやった。ボールは獲物の代わりだ。これはすごく興奮しておもしろかったけれど、御主人から「こらこら、何をしている」と声をかけられると、急速に興奮は冷めてしまい、それを止めてしまった。そしてそして、極めつけは、あまりに雨が激しく降るので小屋の中でお仕事をしていた御主人から「今日の夕方散歩は中止!!」と言い渡され、腹立ち紛れにトラクターにオシッコを引っかけてやったら、御主人に頭を押さえつけられ、はいつくばりながら鼻の頭をポンポンとぶたれた。「ふん!!そんなもの痛くもかゆくもないよ!!こちとらぁ、だてに毛皮を着ているんじゃないよ!!」と毒づきたかったが、反省したふりをして、じっと耐えていた。でも、後で御主人は僕のおやつの煮干しとビスケットを買ってきてくれたよ。本当は朝散歩の後にもらうんだけれど、今日は特別に2個だけ夕方にもらったよ。まぁ、犬にも人間にも良い事もあれば悪い事もあるって言うのが、今日一日の僕の行動に凝縮されたようなものだね。
3月16日 はれ
「雪解け」というものは、そんなにきれいなものではない。降った時には真っ白に見える雪も、実は中に泥やほこりなど様々な汚物が入っているのだ。おまけに雪の下からは泥や砂利などが、これまた様々出てくる。中には、冬の間に僕が小屋の中から口にくわえて持ち出した手袋やタオル、ソフトボールの球などが出てきたりする。ニンジンの尻尾もあったよ。何処から来たんだろうね?僕が持ってきたとは思えないけれど、犬の記憶は揮発性メモリーのように瞬間的に消えてしまうから当てにはならない。
と、いうわけで、お日様が地上をあまねく照らしてくれたおかげで雪も大部少なくなった。そして、土色をした雪の塊があちらこちらに見え始めた。さっき言ったように雪の中に混じっていた汚れたものが、目立つようになってしまったんだ。やがて雪はみんな消えてしまうんだけれど、雪は消えても土や砂利、等々も一緒に消えてしまうわけではない。じゃまな、こいつらを片づけるためにお掃除をしなければいけないから大変だ。別に僕が「お掃除」をするわけじゃないのでどうでも良いのだけれど、僕がいる場所にこんなものがあったら、気持ちよくお昼寝する事が出来ないので、しっかり掃除をしてもらいたいものだね。御主人!!
3月15日 はれたりくもったり
今日はとても穏やかだったけれど、風が冷たかったようだ。御主人にはね・・・僕?、僕は地面に横になって時々お腹を出して寝ころんでいたよ。この前みたいにお日様の日射しが暑くて日陰に入らなければならないほどじゃなかったよ。
ところで、僕は家族に対しては愛想が悪いと言われている。その反対に、お客さんには愛想が良い。気に入ったお客さんは徹底的に歓待する。まず尻尾を振りながらまとわりつき、離れないのだ。その他のお客さんには、「わんわんわん」と吠えるけれど、向こうが僕を怖がらずに近づいてきてくれると、その人の匂いを嗅いで覚え込むから、この次に家に来た時はお友達になることが出来るんだ。僕は「人畜無害の飼い犬」だから、怖がらなくても平気だよ。おやつさえくれたら誰とでもお友達になってしまうこと請け合いだよ!!
3月14日 くもりときどきゆき
まるっきり冬である・・・・日中は向こう先が見えないぐらい雪が降ってくる。雪が降ると、途端に僕の話題は少なくなる。犬は雪が降ると「喜んで庭をかけずり回る」事ぐらいしか、することがないからだ。することがないと言うより何も出来ないって言った方が良いのかなぁ?。御主人が最近急がしそうだって事も理由の一つだ。犬である僕の通訳兼代弁人の御主人が忙しいと、飼い犬、つまり僕の観察がおろそかになる。(僕としてはその方が気が楽なんだけれどね。)
今日も背広姿にネクタイって言う首に紐t(僕の首輪と同じだね)のようなものを巻き付けて忙しそうに何処かへお出かけだよ。そこで一句詠んでみたよ。
「背広着て うんざり顔している 主かな・・・・禄食」
3月13日 くもりときどきゆき
やっぱり、心配したとおりになってしまった。朝、犬小屋から出てみると一面雪景色だ。何もかも冬に逆戻り・・・・・あきれ果てながら「はぁぁ〜」と、ため息をついてしまったよ。そこで一句詠んでみたよ。
「春遠し 麓の里は 雪3尺・・・禄食」
3月12日 くもりときどきゆき
昨日は「最近、暖かくなってきた」と言ったのだけれど、今日は雪が降ってきた。幸い積もらないで、地上に舞い降りた途端に消えてしまった。夜の内に降り積もらなければいいけど・・・・
ところで、今日はなんにもなく、とてつもなく平凡で平和な一日だったよ。そこで、一句詠んでみたよ。
「淡き芽にまだ薄寒き春の風・・・禄食」
3月11日 くもりいちじあめ
最近は暖かくなってきたので犬小屋の中から敷物を引っ張り出して、日中はその上に寝そべっている。だだし、今日なんかは一日中、御主人が作業小屋の中でお仕事をしているものだから、僕ものんびりとお昼寝しているわけにも行かない。時々、起き出しては行ける範囲をうろうろしたりしている。いくらかでも忙しそうに御主人に見せているわけなんだ。時々は外へ出たりして、人や車に「わんわんわん!!」とお義理に吠え立てて見せたりもした。要するに暇なのである・・・・最近はお日様も顔を出さないので僕としては、寂しい限りだ。春がやってきているんだから、時々は顔を見せてよね。お日様っ!!黒雲なんかあっちへ行けっ!!がうん、がるるるる〜」
ところで、朝散歩の時に「白鳥さん達の北帰行」を見たよ。最初は30羽の編隊で、すこし遅れながら20から10羽ぐらいの編隊が二〜三ぐらい飛んできたよ。合わせて、七〇羽ぐらいもいたのかなぁ〜?・・・・ところが、おやつをもらってしばらくのんびりしていたら、こんどは20羽ばかりの白鳥さん達が北の方からやってきて南の方に飛んでいってしまった。あれって、朝散歩の時に北へ飛んでいった白鳥さん達だったのかなぁ〜?、何しに戻ってきたんだろう・・・ほ乳類である犬には鳥類である白鳥さん達の行動は、とんと理解しがたいのだった。
3月10日 くもり
野山の雪も大部消えてきた。あちらこちらにブチ犬の毛並みのように雪が消え残っているだけだ。たんぼ道も乾いていて、散歩の時にお腹が泥だらけにならないので喜んでいる。
ところで、最近はお腹が空いてしょうがないというお話をしたよね。それで、御主人が気を利かせて最近、ご飯を大盛りにするものだから、今度はお腹の調子が悪くなったみたいなんだ。だから雪の下に生えている草を食べては胃薬の代わりにしているんだよ。犬は本能で薬になる草と、毒になる草を知っているんだよ。誰からも教わったわけでもないのにすごいよね。・・・・って御主人が言っていたよ。
というわけで、今日はお腹の調子が悪いので、これで失礼するよ。あっ!!、余談だけれど、今日の夕御飯も朝のおやつも残さずしっかり食べたからね。
3月9日 くもり
今日は、とても寒い一日だった。時々、雪がチラチラと降ってくるんだ。昨日とは大違いだったよ。
ところで、長い間「憩いの場所」あるいは「安住の地」として親しんできた「土のお山」が壊されて小屋の奥深くに運び込まれてしまったよ。いよいよ春作業が始まったんだ。この土はお米の苗を作るのに使われるんだよ。この土のお山には様々な思い出がある。山裾には、さんざんオシッコを引っかけたものだった。そして、トラクターの音が恐いと言ってはお山の上に逃げるようにして駆け上がったものだった。一番新しい思い出は、昨日の夜の事だった・・・突然、風雨が荒れ狂ったように僕達の住んでいるところを襲い。おまけに雷様が「ピカピカ、ゴロゴロゴロ〜ン!!!!」となり出す始末だ。僕の雷嫌いはみんな知っていると思うけれど、この日も恐ろしさにふるえながら、いつもの避難場所であるトラクターの下に潜り込もうとしたんだ。ところが、トラクターは小屋の奥に移動してあって僕はそこまで行くことが出来ない・・・・しかたなく、僕は雷が鳴るたび、光るたび、土のお山を登ったり降りたりしてうろたえ続けたんだ。「土のお山、懐かしく悲しく、そして、お間抜けな思い出をありがとう・・・」
3月8日 あめのちはれ
昨日から今日の午前中に雨が降ったので、雪が大部消えてしまった。いよいよ春の到来って言ったところだね。でも、何度かは雪の降り積もる日があると思うよ。そう易々と春にはなってくれないのが雪国の特徴だ。御主人なんかは、早く雪が解けるように雪の山をスコップで突き崩していたよ。ほっておけば自然に消えてしまう物に無駄な労力を使わなくても良いじゃないかとも思うけれど、春が近づいてくると、早く土肌にお目にかかりたい、その雪の下で浅黄色の草の芽が出ているのを早くみたいと思うのが北国の人や動物の心情だ。せっかく消えた雪なのに、又一面真っ白な雪が降り積もったりすると、ガッカリする。今年は、そうなら無いことを祈っているけれど、やっぱり降るんだろうなぁ・・・?
それから、早春と言えば、白鳥さん達が北へ帰っていくのを見ることが出来る。僕の住んでいるところは、どうやら白鳥さん達がやってきたり帰ったりする通り道になっているらしい。でも今年は、まだ見ない。やっぱり、いつもと違って寒いので北へ帰るのが遅くなっているのかなぁ?。いずれ、元気な鳴き声を上げながら飛んでくると思うので、僕は今からわくわくして楽しみにしている。
と、いうわけで「春を待ちわびる犬」である僕がお送りしたよ!!
3月7日 くもり、おやっ?、あめがぱらぱら
「ついに」と言うのか「やっと」と言えばいいのか、御主人が本格的に動き出した!!春作業のスペースを作業小屋の中に確保するために、機械や道具をあちらこちらと移動させ始めた。まるでパズルのようだったよ。御主人も時々、手を休めて考え込んでいるようだ。おかげで、僕は居場所がない・・・「犬小屋の中に入っていればいいじゃないか」と言われても、トラクターや田植機のエンジン音が僕をおびえさせて、あっちへうろうろ、こっちへうろうろという状態だ。そして、やっと安住の地を見つけたよ。それは、土のお山の上だ。その上から御主人のお仕事ぶりを見学したんだ。時々、御主人は「おまえも手伝えよ」って言うけれど、僕は肉体的構造上、人間と同様の肉体労働は出来ないことになっている。ただ、御主人の仕事ぶりを眺めながら「御主人がんばれ、がんばれっ!!」と励ますことぐらいしかできない。僕は、いわばサポーターって言うべき存在なのかも知れないね。
やがて、僕の応援のおかげで小屋の中はすっきりと片づいて、広いスペースを確保することが出来た。これからは、様々な機械や道具の音が響き渡り、僕の安眠(惰眠?)を妨げることになるだろう事は容易に想像できる・・・・
3月6日 はれっ!!
今日は本当に良く晴れた。僕は、乾いた地面の上に身体を横たえてお日様にお腹を出してお昼寝したんだよ。ところが、お日様の日射しが犬の僕には強すぎて、時々、日陰に入らなければならなかったぐらいだ。あんまり暑いので、舌をハアハア出したりしたんだ。御主人はこれでも「寒い、寒い」と言っていたよ。今日のお日様のおかげで大部、雪も消えて、お散歩道も所々、土肌が見えてきたよ。
所で、僕がなぜ今頃の季節になるとお腹が空いてたまらないのかというと。「春だから」だ。春は、野山の動物、草や木に限らず、植木鉢の植物たちも、葉や根が動き出す季節だ。これから暖かくなって活動をしなければいけないから栄養をたくさんとらなければいけないんだ。だからお腹が空くんだよ。僕なんか、ご飯の時の「おあずけ」の命令で「しゅう〜ん、しゅう〜ん」と泣きながら、よだれが1リットルほど出てしまったよ。
3月5日 はれときどきくもり、ゆきがちらちら
今日はお日様が穏やかに地上を照らしてくれたよ。僕は念願だった「お日様にお腹を向けてお昼寝をする」を実行することが出来て嬉しかったよ。そして、御主人が僕の身体をナデナデするたびにお日様の暖かさが毛皮のおくまでしみ通っていくんだ。とっても気持ちが良かったよ。
ところで、昨日のお話の続きだけれど、僕の食事は一日一回だ。このお話は、昨日した。なぜ1回だけなのかもお話ししたよね。これからが本題だ。でも、その前に一言、言わせてもらいたい。だいたい、僕はおしゃべりな犬でもないし、普段から物静かな犬だと言われているので、よけいなおしゃべりはしない建前になっている。だけど、この日記に関しては、日頃の不平不満が鬱積しているので、ついおしゃべりしたくなってしまうんだよね。それで前置きが長くなってしまうんだ。ことわざに「犬には犬の夢があり、人には人の夢が有り」と言うけれど、人の夢は90%の努力と10%の幸運があればかなうんだけれど、犬の夢は、ほぼ100%の幸運がないと実現しない。何しろ飼い犬は飼い主を選べないし、野生の犬は生きていくのにせいっぱいだ。飼い犬の場合、飼い主が犬をどう扱うのかによって犬の人生・・・犬生が決まってしまう。それに住むところも選べない・・・犬は、飼い犬、野生、どちらにしても、じっと耐えるしかない動物なのだ。つまり、犬という動物は・・・・
あれれっ?、僕は何をお話ししようとしていたんだっけ?・・・・ご飯のこと?。はぁぁぁ〜、又、前置きが長くなってしまって肝心なお話が出来ないでしまった。明日は、きちんとお話しするからね。お約束だよ!!
つまりは、一日一回のお食事に慣らされてしまったけれど、なぜ、今頃の季節は妙にお腹が空いてたまらないのかって言うことを、僕なりに考察してお話しするよ!
3月4日 いちにちゆき・・・
僕の食事は一日一食だ。これは、我が家で代々飼われていた秋田犬たちもそうだったらしい。このしきたりは脈々と引き継がれているらしい。そもそもの起源をたどると(御主人のお話によるとだが)、遙か昔、御主人が中学生だった頃にさかのぼる。その頃、我が家では6,7頭の秋田犬が飼われていた。御主人の母方の叔父さんの家の犬である。叔父さんの家を改築するので我が家で預かっていたらしい。付き添いで御主人のおばあちゃん(今のおばあちゃんのお母さん・・・・?)がつきっきりで秋田犬の世話をしていた。朝散歩に夕方散歩、6,7頭の犬は散歩紐を付けられて一斉にお散歩だ。御主人も散歩のお手伝い(御主人の秋田犬好きはここから始まったのかも?)・・・それはそれは壮観だったという。そして、ご飯は一日、2回だった・・・・えっ?、どうして、どうして昔は犬のご飯が一日二回だったのに、今は1回だけなの・・・?それには、御主人の思いこみと、単純さがそうさせていた。御主人は「秋田犬の飼い方」という本を熟読して、「犬の食事は、一日二回、つまり朝と晩に与えるか、あるいは一日一回、夕方、あるいは朝に与えるようにする。但し、一日の総量は同じであること。」の項目を見つけて、面倒くさくない、一日一食の方を選んだらしい。ただし、僕が子犬の時は、一日3食もらっていたよ。
はぁぁ〜、前置きが長くなってしまったけれど、僕が本当におしゃべりをしたかったことは別のことなんだ。でも、前置きにエネルギーを使いすぎたので、もうここら辺で寝させてもらうよ。「きゅい〜ん・・・」
3月3日 くもりときどきゆき
今日は、「おひな祭り」といって、お人形を飾って春を祝う女の子のお祭りなんだそうだ。僕は、散歩からの帰り、おやつをもらいに毎朝のようにお家の玄関に出入りしているけれど、この季節はお母さんがおひな様を玄関先にいつも飾る。僕は犬だし、オスだからお人形のかわいさなんかよくわからない。だけど、春らしさは何となく感じるよ。
所で、のんびり屋の御主人も3月の声を聞くとじっとしていられないようだ。春作業の準備の準備を始めたよ。作業小屋のじゃまな物やゴミなんかを移動したりし始めたんだ。僕は犬小屋の中でお昼寝をしていたんだけれど、御主人が忙しそうにしているので寝ているわけにもいかない。仕方なく外へ出て御主人のお手伝いでもしようと、ゴミが入ったビニール袋をくわえて外へ引っ張り出したら「こら!、駄目!!」って言われてしまったよ。せっかくお手伝いをしようとしていたのに・・・と、文句の一つも言いたくなったけれど、飼い犬の本分は「番犬にあり」と悟って、僕本来の仕事に集中することにしたよ。雪のお山の上に昇って、フセの格好であたりの見張りをしたんだ。高いところからの見張りは人や車の動きがよく見えるので「わんわんわん」と吠えたりして結構忙しかったよ。
3月2日 くもりときどきゆき
はぁぁ〜、3月も早2日になったというのに、この寒さはいったいどうしたことだ。降り積もった雪もいっこうに減る気配を見せない。山奥の町や村では積雪が3メートルを超えたなどという噂が飛び交っている。僕達の所では、せいぜい数十センチと言ったところだから、余所から比べたら比較にもならないぐらい良い環境と言える。ただ、家の廻りに御主人がトラクターで除雪した雪の山が最大で2メートルにもなっている。果たして、春はやってくるのか?、現在の状況では『マァ、無理でしょう』と言うしかない・・・・何しろ今日の最高気温が0度なんだから、憂鬱や腹立たしさを通り越してしまうと、笑いにいたってしまうような心境だ。
「いつもと違う春・・・2005」なんて言う物語の題名にでもなりそうな、今年の3月の始まりである・・・・
3月1日 ゆきがふったりやんだり
僕は、猛烈に怒っている!!。なぜそんなに怒っているのかというと、夕御飯を食べることが出来なかったからだ。御主人は、午後から何処かへお出かけだ。しかし、夕方になっても帰ってこない。あたりが真っ暗になっても帰ってこない。お母さんも下のお兄さんも帰ってこない・・・・不安とお腹がすいたのと合わさり、僕はやたらと犬小屋の廻りをうろうろし始めた。最後には心細くなって、『うぉぉぉ〜ん、うぉぉぉ〜ん」と鳴き声を上げてしまった。夜の9時頃になると、上のお兄さんが帰ってきたけれど、僕が「ご飯を食べてしまったんだ」とばかり思いこんでしまってお家の中に入っていってしまった。10時頃に帰ってきたのがお母さんだ。お母さんも又、上のお兄さんと同様、すぐお家の中に入ってしまったよ。最後に帰ってきたのが御主人だった。「御主人のばかぁぁぁ〜」と僕は叫び、身体ごと御主人にぶつかっていった。すると御主人は、僕がご飯を食べていないのを察したらしく、しばらくして温かいご飯を持ってきてくれたよ。さすが、御主人だね。飼い犬の無言の訴えがすぐ理解できるんだね・・・・・って、誉めている場合じゃないよ。こうなった原因は、とりもなおさず家族間の意思疎通が欠如した結果である。さらに、ペットであるという既成概念を捨て、飼い犬は家族の一員、しかも小さな子供であるという認識を持たなければいけない!!・・・・・・頼むよ。家族のみんな!!