むつ犬のおまぬけ日記
4月30日 はれ
きょうは、退屈な一日だった。でも家には、誰もいなかったから比較的安楽な一日を過ごすことが出来たよ。御主人は僕を朝散歩に連れて行ったきり、家を出て行って夜まで戻らなかった。お母さんは午前中はお仕事に出かけていったのだけれど、午後になっても戻ってこなかった。上のお兄さんはお休みだけれど何処かへ出かけていったようだった。僕はひとりぼっちになってしまった。雨の日や雪の日にひとりぼっちは心細いけれど、今日みたいな暖かく晴れた日などは気楽で気持ちが良い。ごろんと地面に身体を横たわらせてゆっくりぐっすりな、お昼寝は格別だ。いくら寝ても寝たりる等と言うことがないのが不思議で、大変に気持ちが良いものだ。結局は夕方散歩は上のお兄さんと行ってきたよ。

4月29日 はれ
今朝の雷と、突然の雨には驚いてしまった。マァ・・・でもたいしたことが無く行き過ぎてしまったので良かったよ。
ところで、今日の夕方散歩は、「白犬の尻尾ならぬ赤犬の尻尾」だったよ。それは何かというと、白犬の尻尾は尻尾も白い、だから「尾も白い(おもしろい)と言うことになる。けれど、赤犬のしっぽは尾も赤い。白くなくて赤いから・・・・・「尾も白くない(おもしろくない)」ということになる・・・どうしておもしろくないかというと、御主人達は家の中にいるのになかなか夕方散歩へ連れ出しにやってこないのだ。あたりが薄暗くなって、やっと出てきたので「今まで、何をしていたんだ!!」と怒ると、テレビを見ていたという・・・「よっぽど、デザインの良いテレビだったんだね。」と、皮肉を言うと、「テレビの機械自体を見ていたわけじゃない。映像を見ていたんだ。」と、御主人はきまじめに言い訳をするのが白犬の尻尾だった。でも、散歩の時間とご飯の時間が大幅に遅れてしまったのが「赤犬の尻尾」って言うことなんだ・・・・これなんだよ、僕が言いたかったことって言うのは!!でも・・・僕は赤犬なんだけれど、尻尾は白色なんだ・・・

4月28日 はれのちくもりかぜすこぶるつよし
「人の話を聞かない犬」と言われ、最近は急速にその評判を落としている僕なのであるが、これでは「アニマルセラピスト」としてのもう一つのお仕事にも差し支えが出てくる。この仕事は人の話を聞いて慰めたりしてあげるのが目的だ。それが人の話を聞かずに一人ではしゃいだり、そこいら中をかけずり回っていたら仕事にならない・・・・今日もそうだった。御主人は僕に一生懸命、話しかけてくるんだけれど、僕は一刻も早く御主人の側から離れたがって、その隙をねらっているのだ。幸い・・・御主人にとっては幸いでも僕にとっては不幸にも首輪をがっちり握られ、ほっぺをつねられながら御主人の話を聞かされてしまったのだ。けれど、そのお話は軽やかな春風のように右の耳から左の耳へ通り抜け、すこし強すぎる南東の風と一緒になって北西の方角へ通り過ぎていってしまったのだった。なぜ、人の話を聞かないのかと言うことについて自己分析をしてみると、「自分のことで精一杯で人のことに関わり合っている余裕はない」、「好奇心が旺盛すぎて、次から次へと目新しいものに興味を持ってしまう」、「落ち着きがない」・・・等々である。それに僕は性格分析学的には「猫型の犬」なのだ。人間にも「猫型」、「犬型」とあると思うけれど、「猫型は自由奔放、我が道を行くタイプ」、「犬型は滅私奉公、御主人に忠実タイプ」なのだそうだ。僕は犬だけれど、どちらかと言えば猫に近いタイプらしい・・・・・

4月27日 はれ
今日は午前中に家に誰もいなくなったので、思う存分お昼寝をさせてもらった。お日様もポカポカと暖かく照らしてくれるので熟睡してしまったよ。本当は「お留守番」のお仕事に精を出していなくちゃいけないんだけれど、、飼い犬になって早四年余り。お仕事に対して適当な手抜きを覚えてしまった。だいたい、責任のある仕事を任されても(僕の場合は番犬)、張り切って一生懸命やるのは最初の1年か2年ぐらいのものだ。そのうち、手抜きをする、さぼる等々、楽なことばかり考えるようになる。これは人間もそうだと思うよ。なぜそう思うかって?、「僕だって伊達に人間と4年余りをくらしていたわけじゃないよ。人間の良いところ悪いところ、酸いも甘いも見てきたおあにいさんだ。そんなこたぁ、とんとお見通しだよ。」・・・・と、威勢の良い啖呵を切ったのは良いとしても、犬の僕も人間界の習性というのか、性質というのか、そんなのに染まってしまって、お仕事に対する手抜きを覚えてしまったと言うことになる。そして、とどのつまりは、帰ってきた御主人に「ちゃんとお留守番していたか?」と聞かれると「はい!!、早朝より歩哨任務に就き、本日天気晴朗なれど風強し、なれど、怪しき人がけ、物体も発見せず、平穏無事に一日の任務を終了いたしました!!」と・・・・こう答える僕なのであった。

4月26日 うすぐもり
春も、そろそろ晩春という頃になると温かい日と肌寒い日の間隔が短くなってくる。昨日は暖かかったなって思っていると、次の日は防寒具が必要なぐらいの寒さになったりする。僕達の住んでいるところは、今頃桜が満開になるはずなんだけれど、今年はやっと花が開き始めたって言うところだ。桜の花が咲いているのへ、雪がうっすらと降り積もるなんて言う年もあるけれど、そう珍しいことではない。幸い今のところ無いけれどね。
それで、こんな季節になってくると、僕のシャンプーのことが頻繁に話題になってくる。何しろ、僕は外犬(屋外で飼われている犬)で、身体が大きいものだからシャンプーをしても自然の風で毛皮を乾かさなければならない。だから暖かい日を選んで「むつ犬のシャンプー記念日」を設定しなければいけないのだ。今朝も、僕のシャンプーのことで上のお兄さんと御主人が相談していたのを、僕は脇で黙って・・・・いられないので少々暴れながら聞いていた。「近々、シャンプーをしなくちゃならないなぁ」、「その時は耳の内側の伸びた毛を切り取らなくちゃいけない」、等々と僕を押さえつけながら耳をいじったり中に指を入れたりする。これじゃあ暴れたくもなろうというものだ。暴れようとして暴れたのではなく、御主人達から逃げようとして暴れたんだからね。そこら辺のことを誤解しないように!!!

4月25日 はれのちあめ
今日は、ちょっと複雑ないたずらをしてしまった。いたずら自体が複雑なのではない。いたずらに至る経過が複雑なのだ。僕は犬だから余り複雑なことは説明できないけれど、僕が関係しているので一生懸命お話ししてみるよ。
ことの起こりは、昨日だった。ハウスに使うバケツを御主人が小屋に探しに来たことから始まった。バケツを見つけた御主人は中に入っている物を取り出して側の台の上に置いた。それは上のお兄さんがバイクの鞄に入れていた物やバイクの掃除に使ったりする物、等々だった。そして、今日・・・御主人が置きっぱなしにしていった様々な物を僕が物色していると、小さなプラスチックボトルを見つけた。「これはカミカミして遊ぶのに最適だぞ」と思いくわえて持ち去り、おもちゃにしてカミカミペロペロと楽しんでいると、中からどろりとした肌色の液体がこぼれだした。僕の歯がプラスチックのボトルを貫通したからだ。その液体がボトルを押さえ込んでいる足にも流れてくる。試しにぺろぺろとなめてみる・・・まずい!!大急ぎでボトルを放り出して水を大量に飲んで吐き出してしまったよ。後で御主人に「これはなんだ」と聞くと、御主人はボトルに書いてある文字を読んでくれた。すると、「日焼け止めスキンミルク」と書いてある。よくわからない。ミルクと付くからには食べ物のようだけれど、あんな物は食べられた物ではない。よくよく聞いてみると「化粧品のような物だ」と言った。まったく!!僕の近くに変な物を置かないでよね!!、この前も耳の薬のボトルをいたずらして口の中に入ってしまったんだからね!!!

4月24日 はれ
今日は、昨日とうってかわって晴天になった。昨日は雪が降ってきそうなぐらいの寒さだったけれど、今日は平年並みの暖かさだったよ。ところで、昨日のパソコンが動かなくなった事件は、結局「ウイルスソフト」のアップデートの不具合が原因だったらしい。大手の新聞の朝刊にも大々的に取り上げられたらしい。御主人も、それと同じソフトを入れていたんだね。「治ったよ」って御主人に言われた時は、いつもながらガッカリする。復旧が早すぎるのだ。いっそのこと、1週間ぐらい治らないでくれたら、生まれてから今までに考えついたいたずらを実行できるのに・・・なんて思ったりする。
ところで・・・今日は、我が家の前代犬「まる」さんの命日だよ。僕が生まれる2年ほど前に死んでしまったんだ。まるさんは、御主人に対しては絶対服従の犬だったらしい。だから御主人もひとしお愛着があるようなんだ。僕と正反対の性格らしいけれど、僕は僕でそれなりに飼い犬としてのつとめを果たしていると思っているので、まるさんに嫉妬は感じないよ。先代の飼い犬として尊敬しているよ!!

4月23日 くもりときどきあめ
僕がそれを聞いたのは夕方散歩の時だった。御主人のメインパソコンが動かなくなってしまったというのだ。午前中は事務仕事をなんの障害もなく使っていたそうなのだけれど、午後になってスイッチを入れたら、もう動かなくなったのだという。ウイルスが入ったんじゃないかとか、システムが駄目になったのじゃないかと色々考えて、色々試したそうだけれど結局、ますます深みにはまっていきそうなのであきらめたのだという。そこで、いつものように喜んだのは僕だ。パソコンが動かないと言うことは「むつ犬のおまぬけ日記」が更新されないと言うことなのだ。だから、今の内に好き放題なことをやってしまおうと思っている。でも、飼い犬のすることだから、たかが知れているけどね・・・・

4月22日 はれたりくもったりあめがふったり
もう、今日は大変な天気だったよ。晴れていたと思ったら急に曇ってきて大粒の雨が降ってくるんだ。でも、僕の大嫌いな雷が鳴らなかったので良かったよ。
ところで、僕のお食事は、一件豪華そうに見える。「牛肉とたっぷり野菜にチーズ入り」、「たっぷり野菜と小魚和え」、「牛肉とたっぷり野菜」と、犬用缶詰だけでもこれである。これが、10日から14日ごとに入れ替わる。ドッグフードは、「日本犬用、魚と牛肉のミックス」だ。こっちの方は365日同じ物だけどね。これに「新鮮牧場牛乳」などと銘打った牛乳が入る。名前だけはたしかに豪華だけれど、みんなみんな、安売りの物なのだ。だからといって僕の栄養にならないわけではないのを前もってお断りしておく。要するに僕が言いたいことは、本物のお肉が食べたいと言うことなのだ。お肉のかたちをして咬みごたえのある物を食べたいのだ。犬用の缶詰に入っている「牛肉」と称する食べ物は、みんな人間用に切り取ったあげくの余り物、人間が食べない物なのだ。だから牛の肉には違いないけれど、何処の肉なのか皮なのかわかったものじゃない!!!
飼主の談・・・犬に肉を与えると、丸飲みをするので与えもつまら       ない・・・・

4月21日 くもり
今日の夕方散歩は「菜の花や月は東に日は西に」って言う感じだったよ。西には春霞で黄色く見えるお日様が沈もうとしているし、東には月が淡いかたちで未だ中天に到らずっていう風景だったんだ。でも・・・肝心の菜の花が咲いてないのが寂しい。今年は冬の寒さを未だに尾を引きずってるようで、花の咲きようが遅い。菜の花どころか桜もまだ咲かない・・・花がいつまでたっても咲かないから、13日から始まった城址公園の花見がどんどん延びていく。5月の初めまで伸びたようだ。「こんな長い花見は今まで無かったことだ」と御主人が言っていたよ。だけど、今まで無かったと言うけれど御主人は忘れているだけなんじゃないかと思うよ。たぶん・・・・

4月20日 くもりのちあめ
今日は雨降りになってしまったので犬小屋の中で熟睡していた。御主人は、午前中に田んぼをトラクターで耕していたのだが、午後になって雨が降ったのでお仕事が中止になってしまったらしい。そこで・・・・暇になった御主人は、僕にちょっかいを出しに来る。僕の耳を手で隠しては「アザラシ犬」だの「トド犬」だのと呼ぶ(その格好がそっくりだというのだ)・・・そうかと思うと、「期待犬」とも呼んだ。それは、買い物へ行っておやつやビールを買ってきたのを僕がめざとく見つけて、御主人すり寄っていったからだ。お裾分けを期待していると思われたらしい。でも、違うもん!!!僕は散歩の時間が近づいたので御主人が帰ってくるのを期待して待っていただけなんだもん!!!

4月19日 はれ
この所お天気が良くて、乾燥しているので鼻の頭が乾いてしまってしょうがない。僕の自慢は、真っ白な足と真っ黒な鼻だ。真っ黒と言っても、色々な言い方があるけれど、日本女性の黒髪を言い表す言葉に「髪はカラスの濡れ羽色」というのがある。僕の鼻の色は、ちょうどそんな感じなんだよ。だから、つややかな?鼻の色を常に保持するには、時々舌でぺろぺろと鼻の頭をなめてやることが肝心なんだ。ゴミや埃を取るって言う目的もあるしね。
そんなわけで、犬は自分の容姿を保つためにたいそう努力をしているんだよ。

4月18日 はれ
やっと梅の花が開き始めたよ。でも、桜の花はまだなんだ。椿の花はもう散り始めている。冬になる前に咲いていたサザンカだったけれど、咲き遅れたのが多くあったらしくて、今頃になって咲いている。僕達の地方の花々は、皆いっぺんに咲くから、それはもうにぎやかで、一つ一つ花を愛でるなんて言う余裕はない。あれもこれもと春の花が咲き乱れるのをめまぐるしく鑑賞するのだ。もっとも、花を愛でるなんて言うのは人間のすることで、食べ物でもないものを見て楽しむなんて言う変な趣味は犬である僕にはない。梅の香りがほんのりと匂っているようだったけれど、僕は日増しに暖かくなってくる日射しを全身に浴びながらお昼寝をしていた方がよっぽど良い。今日は暖かかったので、つい熟睡してしまったよ。これで御主人が時々、僕にちょっかいを出さなければ極楽なんだけどなぁ・・・・

4月17日 はれ
昨日からインターネットがつながらないと御主人が言った。僕はそれを聞いた時「しめた!!」と喜んだ。今までさんざん僕のおまぬけぶりや、いたずらなどを「むつ犬のおまぬけ日記」等というものに書き込まれ、僕の赤恥を全世界にさらしている。おかげで、僕の事があちらこちらで噂になって僕の耳にもとぎれとぎれに届いてくる。せっかく、昨日のシャンプーで身も心もきれいになったというのに「悪い噂」で性根が汚いだのみっともないだのと噂されてしまってはたまったものではない。ここで、誤解を解くために改めて宣言しようと思う。
「秋田犬のムツ、当年とって4才の雄犬、ここに[さわやかスマイル、身も心もクリーン宣言]をする!!」・・・えっ?、何を言っているのかさっぱりわからないって?・・・・そりゃぁそうだと思うよ。言っている僕自身が、何を言っているのかさっぱりわからないんだからね・・・・
(注)飼い主の談・・インターネットが復旧したことをムツに告げると、自らのおまぬけぶりをさらすことをおそれてか、普段の行動が慎重になったように思える。

4月16日 はれ
週間天気予報では、今日は雨だったはずなのだが、なぜか晴れた。朝は、まるで辺り一面に濃いミルクを流したような霧がかかり、一寸先も見えないぐらいだった。「これは、ひょっとして天気が悪くなるのかな」と期待していたのだ。なぜ期待していたのかというと「シャンプー」だ。今日当たり天気が良いとシャンプーされてしまう。ところが、生憎なことに気温もぐんぐん上がって雲一つ無い快晴になってしまった。御主人が僕を朝散歩に連れ出しにやってきた時の第一声は「ムツ、ぴかぴかの秋田犬にしてやるよ」だった。最初はなんのことかわからなかったけれど、「シャンプーをしてやるぞ」という意味だったのだ。あえて「シャンプー」と言わないところが底意地か悪く、後から、じわじわと恐怖がひろがってくる・・・・
かくして、4月16日午前9時30分45秒(快晴)に僕はシャンプー場に引きずられるよう連れて行かれた。はじめは抵抗して逃げようとしたのだけれど、逃げられないのは分かり切っている。かたちばかりの抵抗を示してから、あっさりと捕まってしまった。そして、僕と御主人は30分間の激闘を経て、一冬分の垢やホコリ、泥をすっかり落とし、ようやく「ぴかぴかの秋田犬」に仕上がったのであった。
「はぁぁぁ〜、気持ちいい〜!!!」

4月15日 くもり
今日は「水攻め」にあってしまった。攻撃したのは御主人だ。なんの恨みがあってこんな事をしたんだと言ったら、「水は低きに流れる」と、こういった。たまたま僕が水の流れていくところに座っていたのが悪いのだという・・・事の経過はこうだ。僕がお気に入りの場所である大きな石によりかかってのんびりしていると、御主人が昨日の種蒔きに使った道具を洗い始めた。その水が僕の方へ流れてきて、僕の廻りを水浸しにしてしまったのだ。右の前足に水がひたひたと押し寄せてきて濡れてしまった時「これはもう駄目だ」と、撤退を決意して、遠回りで安全なところへ逃れた。まさか戦国時代じゃあるまいに、と思ってみたけれど、御主人のやる事には逆らえない・・・腹立ち紛れに2リットルの空きペットボトルがあったので、それを蹴飛ばして、じゃれたり噛みついたりして鬱憤を晴らしたんだよ。

4月14日 くもりのちはれ
今日は、家族総出でお米の種蒔きだったよ。僕はおじいちゃんもおばあちゃんも、みんなみんな勢揃いしたので嬉しくて、精一杯愛嬌を振りまいたよ。でも・・・・ほんとうは「おやつをもらいたい」という下心があるのだ。しかし、そんな事は、みんな先刻ご承知なので、僕は適当にあしらわれ、邪魔者扱いされてしまった。そんなものだから、いつもは「監督者」という立場でお手伝いをするんだけれど、今日は、一日中寝てばかりいた。家族がたくさんいるので番犬のお仕事もしなくて済むし、こんな楽な事はない。しかも、おやつの時間には、しっかりと人並み以上にたっぷりもらったので、僕は大満足の一日だったよ。

4月13日 あめのちくもり
今日は、とてもすばらしいおもちゃを手に入れた。一昨日昨日と風がすこし強かったので、どこからやってきたのか藍色のプラスチックで出来た植木鉢が僕の目の前に「からからから」と音を立てて転がってきた。つい、この前に愛用していた植木鉢が、家族の自家用車三台に挽きつぶされて、あえない最期を遂げてしまいショックを受けていた時だった。そんなところへ、その植木鉢が転がってきたので、僕は神様が哀れな僕へプレゼントしてくれたものだと思った。植木鉢は、以前のものより二回りほど大きくて、僕の顔がすっぽりと入り込んでしまうほどの大きさだ。でも軽いから、くわえて持ち運んでも苦にはならないよ。植木鉢では色々な遊びが出来る。御主人に蹴ってもらい、僕がそれを追いかけてくわえてきたり、胸の中に抱え込んで、なめたりかじったりする事も出来る。風の強い時は外に置くと、ひとりでに動き回るので便利だ。それを「ぼ〜っ」と何も考えずに見ているのも、又おもしろいものだ。おもちゃと言うものは犬にとってオアシスといえる。人間にとってもそうなのかも知れないけれど、人間の場合はおもちゃというオアシスがありすぎて、そのありがたみが犬より希薄なのかも知れないよ。

4月12日 うすぐもり
今日、犬小屋の目と鼻の先にある場所に堆肥のお山が出来た。御主人の仕業である。堆肥というのは有機質肥料で、主に牛さんや豚さん、鶏さんの体内からの落とし物を完全に腐らせて出来たものだ。それを田んぼや畑にばらまいて作物を作ると、大変おいしいものが出来ると言われている。食い物に意地汚い僕・・・・違う、違う、食欲旺盛な僕としては、誠に結構な事なのだけれど、「不満なのだ!!」なぜかというと、僕がいつもオシッコをする場所、つまりトイレとして使っている松の木への通り道が堆肥を置いた事によってふさがれてしまったのだ。オシッコをするためには堆肥の山を踏み越えて行かなくてはならない。すると、毛皮が汚れる・・・後は、堆肥の山に向かってオシッコをするか別の場所を探すしかない。ところが別の場所となると、僕の紐が引っかかりそうなものばかりあるので二の足を踏んでしまう。やっぱり、あそこが僕にとっては最良の場所だったのだ。やれやれ・・・・

4月11日 はれ
今日は僕にとって、恐ろしく平凡で退屈な一日だった。でも、ちょっとスリリングな場面もあったけれどね。スリリングと言っても、この日記を読んでいる、みんなが胸をときめかせてわくわくするほどのスリリンクってわけじゃないけれどね。実は・・・・御主人がトラクターのエンジンをかけたんだ。それで僕がビクビクしたって言うだけの話だよ。「そんな話は毎度聞いているよ」という人は、考えを改めた方が良い。何度聞いてもトラクターのエンジン音というものは恐ろしいものなのだ。これは恐怖を覚えた人(犬もそうだけれど)にしかわからない、とてつもなく恐い音なのだ!!!!
それから、もう一つスリリングな事は、御主人が「犬用シャンプー」を買ってきた事だ。これで僕は、いつシャンプーをされてもおかしくない状態に置かれてしまった。出来る事ならば、熟睡している内にシャンプーが済んでくれればこんなありがたい事はないし、御主人も暴れる僕を相手にしなくても済むので、よほど楽に違いないと思う。しかしながら、そんな事は「ありえなぁ〜い、ありえない!!」

4月10日 うすぐもり
今日は僕達の町内のお祭りだったよ。遠くから笛や太鼓の音が聞こえてきて楽しそうだった。町内のお祭りは、まず先達が門々をお払いして、獅子頭がやってくるんだ。その後に御輿や山車がやってくるんだけれど、僕の家は町内の端なので御輿と山車はやってこない。獅子がやってくる。僕は恐かったので「わんわんわんわん」と吠えた。獅子は神様のお使いなので本当は吠えちゃいけないんだけれど、犬の習性で吠えてしまう・・・・先輩犬のまるさんは、この獅子がやってくると、ぶるぶる震えだしてオシッコを漏らしてしまった。と、御主人が懐かしそうに話していたよ。まるさんはメス犬で、神経が細かかったそうだけれど、僕は雄犬だから、盛んに吠え立てたんだ。僕がオシッコを漏らすのは、とっても嬉しい時だけなんだよ。御主人は朝からお祭りの警備にいったので、僕はほのぼのと暖かな一日を寝そべって過ごしたよ。やがて、夕方になってかえってきた御主人が、散歩に誘ってくれたけれど、どうも今日は寝過ぎたせいかお腹が空いて散歩へ行きたい気分じゃない・・・・それで、だだをこねて途中で帰って来ちゃったんだ。御主人にとって僕の行動は「最大最悪のわがまま」って事になるね。

4月9日 はれ
今日はすこし風が冷たかったけれど、お日様がポカポカなので一日中、地面の上に寝ころんでいた。ビニールハウスの中は34度という気温になっていると御主人が言っていたよ。
ところで、その御主人だが、陽気が良くなってくると「シャンプー、シャンプー」と僕を脅し始める。最初の内こそ「ビクビク、オドオド」していたのだけれど、最近では腹も据わってきて「何、こんな風の冷たさじゃ、シャンプーなんかするわけがないもん。ふぅ〜んだ!!」と寝転がったまま御主人に毒づく有様だ。と、僕がそう言い切れるのには、もう一つわけがある。それは「犬用シャンプー」の買い置きが無いのをちゃんと知っているのだ。だから、僕を洗う事など出来るわけがないのだ。去年の末に僕を洗った時、1本のシャンプーの瓶を使い切ってしまったのを僕は忘れてはいなかった。「犬は物忘れが激しい」と言われているけれど、それは自分にとって都合の悪い事は覚えていないという事で、自分の身に降りかかってくる事は、いつまでも執拗に覚え込んでいる。「僕へのシャンプー」は、まぁ、今週1週間は大丈夫だろうと思うけれど、来週の土曜、日曜当たりが危ない・・・出来る事なら、今日並みの天気と気温になって欲しいと願っている僕なのであった。

4月8日 はれ
今日の御主人は、とても忙しいらしくて、僕の朝晩の散歩はなかったよ。そこで、僕はふてくされて犬小屋の中で死んだふりをして見る事にした・・・・やがて、御主人がやってきて、犬小屋の中で腹を出して横たわり、ピクリとも動かない僕を発見し、驚いて僕の身体を揺するんだ。すると、僕はおもむろに、顔を上げ「なぁに?」とあくびをしながらいったんだ。その時の御主人の顔のおもしろかった事、こんないたずらはたまらないよ!!(実際は「完全に熟睡していたんだろう」と、御主人は言っているけれどね)
ところで、今日は1年に一回ある「狂犬病の予防注射の日」だ。集合場所には、色々な犬たちが集まっていたよ。それを見ている内に、僕はすこし興奮して、こらえきれなくなってしまい。時々、散歩の時に出会う黒犬に「うぅぅ、わおん」と飛びつきそうになった。もっとも、御主人同士もお友達なので事なきを得たけれど・・・・注射される時は「お座り」をさせられて、おとなしくしていた。ちっとも痛くなかったよ。なんと言っても、僕は「お利口犬」と評判の犬だからね。でも、時と場合にも寄るよ。今日の僕は「おりこう犬」と「こらえ性のない犬」が渾然一体となってしまった一日だったよ。

4月7日 くもりのちあめ かみなりあり
今日の、夕方散歩の時に、田んぼのところに砂のお山が出来ていたので、ちょいとオシッコを引っかけてきたよ。砂のお山って言うのは珍しいので、気持ちよくする事が出来た。そこで、一つ短歌を詠んでみたよ。「東海の小島の磯の白砂に我喜々として小便ををする・・・禄食」なんて、かの有名な歌人である石川啄木さんを彷彿させるような名歌だね。
ところで、昨日から「春の交通安全運動」が始まっている。御主人は立場上、この活動をしなければいけないので、僕の朝散歩はほぼ半減する。夕方散歩は2,3回は確実に中止になりそうだ。でも、しょうがない、生姜ない・・・?「御主人のボランティアは飼い犬のボランティアと心得よ!!」だからね・・・・人間に奉仕するのも飼い犬の役目だから、散歩に行けないぐらい、じっと我慢しなくちゃね・・・・

4月6日 はれ
今日は、馬鹿に強い風が吹いた。まるで台風のようだったよ。でも気温はぐんぐん上がって18度とやらになったらしい。外に寝ころんでいると、余り暑くなりすぎるし、ホコリや砂が飛んできて、僕の毛皮の中に入り込んだり目に入り込んだりして困ってしまう。
ところで、今日は期間限定のお遊びをしたよ。この前、ビニールをかけたハウス(100坪)の中に僕は放たれ、自由の身になった。ハウスの中を思う存分に走り回る事が出来たんだ。その中でボール遊びを御主人としたんだよ。余り激しく走り回ったので、舌を「ハァハァハァ」と長くのばしたよ。とっても楽しかったよ。こんな遊びが出来るのも、明日か、明後日までだね。それ以後は「ハウス内犬立ち入り禁止」の禁令が出される。今日のボール遊びの様子は近々、ビデオで公開するから待っていてね。あまりにめまぐるしい動きなので、目を回さないように気をつけて見てね。

4月5日
3日の日から「春の火災予防運動」が始まっている。夜の8時になるとサイレンが鳴るので、僕も一緒に「うお〜ん、うお〜ん、うお〜ん」と防火宣伝をしているんだよ。飼い犬も人間から恩恵を受けているだけじゃ申し訳ないので、何か人のためになる事をしなければいけないと思って遠吠えをしているんだよ。「出来る事からボランティア」って言うからね。で、「毒のあるのがタランチェラ」・・・・「釣り銭もらってタランチェラ」・・・・・
あっ、あのねぇ、最後のくだらないシャレは最近、落語にはまっている御主人が勝手に書き込んだんだからね。ぼっ、僕は知らないからね。さようなら・・・・・

4月4日 はれ
今朝も白鳥さん達が100羽ぐらい、3つの編隊を作って北の方に帰っていったよ。それを僕と御主人、それにお母さんも一緒に見たよ。なぜみんなと一緒に見たのかというと、御主人達は、まだ暗い内からハウスにビニールを張るお仕事を始めたんだ。僕も寝てはいられないので一緒にお手伝いをしたよ。お手伝いと言っても、監督だけれどね。じっとお座りの格好でビニールがきちんと張れるか見張っていたんだ。・・・・(本当を言うと、御主人達のお仕事を軽い気持ちでのぞきに行った帰りに紐が松の木に引っかかって身動きがとれなくなってしまっただけなんだけどね)・・・・ともかく、無事ビニールも張り終えた頃、元気な鳴き声を上げながら白鳥さん達が南西の空から飛んできたのを見たんだよ。今年はいつになく寒いので白鳥さん達も北へ帰るのを遅らせているようだ。

4月3日 あめのちはれ
今日は、又寒くなって夜明前から雨が降り始めてしまった。おかげで、今朝は御主人のお仕事(ハウスへビニールを張る)が出来なくなってしまい、朝散歩へ行く事が出来たよ。すこしでも寒いのが苦手な御主人は、またまた完全防寒装備だ。
ところで、だんだん暖かくなってくると「僕のシャンプー」の話が持ち上がってくる。御主人は、よほど僕をシャンプーしたいらしく、顔を合わせるたびに「シャンプー、シャンプー」と僕を脅す・・・・その言葉を聞くたびに、恐ろしさで「ビクビクン」と身体を震わせてしまうんだ。たしかに自分自身でも身体が汚れているなと、気になっていたけれど、いざシャンプーされるとなると気後れがする。いっそ、さっぱりとシャンプーしてもらって「ぴかぴかの秋田犬」として4月という新年度をスタートしたいという気持ちが30%・・・うすよごれた身体で廻りの風景と渾然一体となり、お昼寝をしていたい気持ちが60%・・・・(こっ、これは・・・犬の哲学的理論なので人間にはとても理解できない。つまり野生の犬はシャンプーなどしなくても一生を自然の中でくらしていたって言う事)じゃあ、後の10%はなんだと言われると頭の巡りの悪い犬には説明不能だ。強いて言うなら、人間から強制的に何かされるという不満というのか、あきらめというのか・・・でも、なるべくならシャンプーは後のばしにしたいものだと思う。だから、当分は薄ら寒い日が続く事を願っている僕なのであった。

4月2日 はれ
今日は春のような・・・・いや、もう春になっているのだから「春らしい」といった方が良いのかも知れない。何しろ今までが寒すぎたからね。お日様がポカポカとあまねく地上を照らし、草木を照らしてくれたよ。今朝のご主人は風がないのを良い事にハウスにビニールをかけようと奮闘していたようだった。ところが屋根のてっぺんまでビニールを上げたのは良いけれど、風がそよそよと吹き始めたのであきらめ、続きは明日って言う腹づもりのようだよ。おかげで、今日の朝散歩は無しって事になった。事に寄ったら明日もそうなるかも知れない。
ところで、御主人が今年になって初めて散歩の時の完全防寒を止めた。つまり、防寒具を脱いだんだ。その夕方散歩の帰り、近所の奥さんに「大きいね」って誉められた。僕は恥ずかしかったので知らんぷりしていたら、「こらっ、無視するな」って叱られてしまった。だけど、純情で少年のような心を持った雄犬は、やたらと恥ずかしがるものなんだよ・・・!!

4月1日 はじめはゆきがちらちらのちはれ
今日は風が寒かったけれど、お日様がポカポカと僕を暖めてくれたよ。おかげで僕の毛皮はぬくぬくになったよ。御主人はお仕事している間中も、僕と散歩へ行く時も完全防寒スタイルだ。真冬の時とぜんぜん変わっていない。でも、僕は御主人が気付かない、ある事に気付いている。それは・・・・毎日毎日寒い日が続いているけれど、だんだん暖かくなってきているという事だ。冬には、いくら長い道のりを散歩しても身体が温かくならなかったけれど、今の季節は、すこし長い距離を歩くと「ハァハァハァ」と舌を出すようになった。これだけでも季節は春になっているなってわかる。これは自然と共に生きている犬ならばこそわかる事なのだ。人工的に暖かくしたり涼しくしたりする人間達には、この季節の微妙な温度変化なんか、わかりっこない。「人間よ、自然に帰れ!!犬に生き方を学ぶべし!!!」
平成17年4月