平成17年10月
10月31日 はれたりくもったり
今日の御主人は何処かへお出かけのようだ。何でもお米の出荷が終わったので慰労会で温泉に行くのだという。だけれど温泉だけで終わるはずがない。何かおいしいものも食べてくるに違いないと言う疑いをあらわにしながら御主人を送り出した僕なのであった。
夕方、薄暗くなってかえってきた御主人は、思った通りおいしそうな匂いを身体にしみ込ませている。僕はやっとかえってきた御主人を迎えて「大はしゃぎ」をして、側に転がっていたボールを御主人に見せて「遊ぼう、遊ぼう」と催促をした。御主人はイヤイヤながらもしばらくボール遊びに付き合ってくれたよ。それから散歩へいったんだ。風がすこし冷たかったけれど、のんびりゆっくりといってきたよ。これで平和な一日が終わるのかと思っていたら、最後に重大な過失が発覚した。散歩が終わり、僕の食器を家に持ち帰った御主人だったのだが、僕の食事を作り終えたまま、僕の所へ持ってくるのを忘れてしまったのであった。おかげで僕は、忘れ去られて冷え切った御飯が届くまで、お腹を「グウグウ」と鳴らし続け、よだれを三斗ほど流したのであった。
10月30日 あめがふったりやんだり
今日は一日中、雨が降ったり止んだりの天気だった。朝散歩も夕方散歩も僕の4つの足とお腹は泥んこになってしまった。真っ白なのが自慢な足とお腹は、みっともない格好になってしまったよ。だいぶ前に、大長編スペクタクル映画「オオカミと七匹の子ヤギ」を制作するというので、準主役であるオオカミの役で出演依頼が来た事がある。見所は、オオカミが真っ黒な足に小麦粉を塗りたくって「お母さんが帰ってきましたよ」と真っ白な足を見せる所だ。そこに僕の真っ白な足を使いたいらしかった。それと、子ヤギたちを次から次と「ペロリゴクン、ペロリゴクン」と飲み込むシーンである。食い意地のはった僕にはうってつけの役だというのだ。だけど、白い足を出すシーンならまだしも、僕は赤犬だし、オオカミさんの灰色には似てもにつかない・・・それに、当時の僕は食い過ぎでお腹の調子も悪かったから、とても6匹の子ヤギは飲み込めそうもなかったので断ってしまった。今から思えば惜しい事をしたよ。この映画はちょっとした評判になって、結構な客の入りだったという。もっとも、犬の世界での事だけれどね。猫さん達の一部も見に来たらしいけれど、どうも猫さん達はこの映画の良い所を理解できなかったようで、猫の世界では不評のようだったらしい・・・・・・・・・・
10月29日 うすくもりのちあめ
今日も御主人に叱られた。一昨日の事ではない。いくら何でも一昨日の事など犬はうっすらとしか覚えていない。今日は、なぜ叱られたのかというと、御主人の外出用スニーカーを持ち出して、土のお山の上で咬んだりなめたりして遊んだからだ。しかも遊んだ後は、ほうりっぱなし・・・・(犬だから当たり前なのだけれど)、そんな風にしておもちゃにしたのだから、よだれベトベト、靴は泥んこ傷だらけである。そんに状態で御主人に見つかったものだから、僕はお山の上にあるスニーカーを取りに行かされた。口にくわえて、そのまま御主人の側から逃げようとしたけれど、紐をしっかりと握られてしまい、御主人の側にはいつくばる事になってしまった。例の如く汚れたスニーカーを僕から受け取ると、「くどくど」と叱り始めたんだ。犬だから、言葉を費やして叱っても右の耳から左の耳へ通り過ぎていくだけなんだ。犬はただただ「お叱り」の時間が過ぎていくのを黙って待っているだけなんだ。
ようやく解放された僕は、飛ぶように御主人の側から離れ、薄曇りだったけれど、淡く見えている太陽の光を受けて、ごろんと地面に横たわりお昼寝を始めたんだ。ところが・・・・・まもなく雨が降り始め、昼前には本降りになってしまったのだった。またしても、この秋の週末は天気が悪くなるという法則は今日もあたってしまったのであった・・・・・これって、天が僕に与えた罰なのかなぁ・・・?
10月28日 はれ
昨日の「逃亡劇」のことで、朝から御主人にくどくどと小言を言われ続けている僕であった・・・・「猿でも反省するのに、なぜ犬は反省しないのだ!!」という。実は僕の「逃亡」は前科2犯なのだ。
この前の事に懲りず、またやらかしてしまったというわけだ。「猿」は反省すると言うけれど、「猿は2足歩行が出来るし、手もちゃんと使えるから反省するんだもん。犬は4足歩行だし、だいたい手と足の区別なんか無いんだもん」等々と色々ないいわけを思いつくままに述べて反論する僕ではあったけれど、とうとう「犬小屋」の中に閉じこめられてしまった。「ふん!犬小屋の中のほうが快適だもん!!」とうそぶいてみたけれど、外は秋日和・・・・本当はお日様の光を浴びながらお昼寝がしたい僕なのであった。そして、犬小屋の中に閉じこめられてからしばらくたった頃、農協から僕の家のお米を取りにやってきた。「そうか!!昨日の罰で犬小屋の中に入れられたのじゃなかったのか」と、お米をトラックに積み込んでいる人達に「わんわんわん」と吠えながら、すこし安心した僕なのであった・・・・
10月27日 はれ
日刊「犬新聞」夕刊
すでに街の噂でご存じの方もいると思うが、本日、午前7時過ぎ秋田犬「睦号」、通称「ムツ」は飼い主の手から「逃亡」した。飼い主が「おやつ」といった言葉に過剰に反応して、瞬く間に走り去ってしまったのだという。直ちに「むつ犬捜索隊」が結成され、家族や親類を巻き込んでの捜索が開始された。目撃者情報に寄れば、小学校へ行く子供達と一緒にバイパスの信号を渡って、ついて行ったらしい。一緒に学校へ行って勉強でもするつもりだったのだろうか。しかし、一緒について行った子供達はバス通学の子供達であった。犬だから乗車券を持っていないのでバスには乗れない。だから、おきざりにされてしまったらしい。しかたなく「おじいちゃんの家」へ行うと足を向けたムツではあったが、うろ覚えの道をあっちをうろうろ、こっちをふらふらと、歩き回ったあげく完全に迷ってしまったらしい。最後は「おじいちゃんの家」と道一本隔てた通りで飼い主に尻尾を捕まれて捕獲されてしまった。こうして、逃亡時間45分の逃避行は幕を閉じた。トラックに乗せられ家に護送される途中、迷惑をかけた人達の家にお詫びに廻った。そして、わびている飼い主の側に、のほほんと涼しい顔をしてあくびをしているムツの姿があった。
解説・・・飼い主は不注意に「おやつ」という言葉を言ってしまったため、食い意地の張ったムツは「軽い脳みそ」の中の中枢神経を異常に刺激し、「逃亡」という行為に走らせたものと思える。「おやつ イコール おやつをもらえる場所」という連想が働き、その場所へ行こうという思いが行動につながったものと推測する。
10月26日 はれ
穏やかな小春日和の一日だった。残り少なくなったこんな日々を満喫しようと、僕は地面に横たわりお腹をお日様に向けて死んだように眠った。
夢を見た・・・・きれいなお花畑の中で僕はチョウチョさんと戯れている。「あはははは」と笑いながら僕はチョウチョさんを追いかける。心地よい風が吹いて、色とりどりの花がゆれ、甘い匂いを辺り一面にただよわせる。そこへ突然、蜂さんが現れて、僕を「ちくん」と鋭い針で刺すんだ。僕が余りにもチョウチョさんと楽しく遊んでいるものだから、ねたんだ蜂さんが意地悪をしたんだね。「痛い!!何をするんだ!!」と叫んで飛び起きると、こっそりと、忍び寄った御主人が僕のお尻を指で「つんつん」と突っついていた・・・・せっかく気持ちの良い夢を見ていたのに台無しになってしまったよ。御主人は、今日一日、小屋の中で「もみすり」をしていなければいけないはずだ。今日中に「もみすり」を仕上げてしまわなければ、明後日の出荷に間に合わないからだ。それなのに僕にちょっかいを出しに来るなんて、なんて怠け者の御主人なんだ。「がうん、がるるるる〜!!」
10月25日 はれたりくもったり
昨日の夜の雷雨は恐かったよぅ〜・・・何度も何度も、ぴかぴか光って、その後すぐに「がらがらどど〜ん」だからね。僕は恐くて恐くて犬小屋の中でふるえていたんだ。すると、夜中の0時とおぼしき頃、御主人が僕の様子を見にやってきた。「やれ、ありがたい」と尻尾を振って出迎えたよ。御主人の言う事には、ぐっすりと寝入っていた御主人はお母さんにたたき起こされて、「ムツが泣いているようだから様子を見てこい。紐が何かに引っかかって家にはいる事が出来なくて鳴いているんだろう」等々と言われてきたんだそうだ。でも、僕は泣いてなんかいなかったし、紐も引っかかっていなかった。恐くて犬小屋の中でじっとしていただけなんだ。お母さんの勘違いか、幻聴だね。けれども、このことで、僕は飼い犬を思う飼い主の真心を見たような思いだったよ。僕はありがたさに心の中で手を合わせた。(何度も言うが、犬は肉体的な構造上、生物学的あるいは物理学的に両手を合わせる事は不可能である。)
この出来事の後、御主人は目がすっかり覚めてしまい、しばらく眠る事が出来なかったそうである。たたき起こしたお母さんは、御主人が家に帰ると、すでに寝入ってしまっていたとの事である。やれやれ・・・・である。
10月24日 はれたりくもったり
今日の僕は一日中犬小屋の中に閉じこめられた。10月6日の日記を読んでくれた人はわかると思うけれど、我が家にお米を取りに来るからだ。作業する人が僕を怖がって小屋に近づけないと困るので、御主人と朝散歩へいって、おやつをもらった直後に犬小屋の中に閉じこめられた。僕は毎年の事なのでなれている。オシッコをしたいのを我慢すれば、そんなに苦痛ではない。「番犬」のお仕事はしなくて良いし、中で好きなだけ寝ていられる。後は一刻も早く御主人が帰ってきて、僕を解放してくれるのを願うだけだ。ところが・・・・御主人はしばらく帰ってこなかった。買い物しなければいけないので、すっかり僕を犬小屋に閉じこめた事など忘れてしまっていたのだった。御主人は、僕に「ごめん、ごめん」と謝ったけれど、ちっとも気持ちのこもっていない謝り方だった。犬に対する気持ちのこもった謝り方というのは、「何か気の利いたおやつ」でも持ってきて謝るものなのだ。そういう事を御主人は僕がこの家に来てから一度も実行した事がないっ!!!(キッパリ!!)
10月23日 あめ
今日は雨。僕をシャンプーする話はぷっつりと途絶えた・・・・何しろ、この1ヵ月間は週末というと天気が悪くなるんだ。これは、シャンプーされたくない僕に神様が味方をしてくれたとしか思えない。僕は、神様に心の中で手を合わせた。(犬は肉体的な構造上、両手を合わせる事は不可能である。)
もうここまで秋が深まってくればシャンプーされる事はないだろうと思っている。ただ、すこし心配なのは今年の秋は暖かいという事なんだ。いつもの年だと朝晩はめっきり冷え込んでくるのだけれど、それが少ない。もしかすると、これからの週末に、とんでもなく暖かい「小春日和」の日があると危ない!!シャンプーされてしまう危険性がある。たかだか30分間、全身に温湯を浴びせられ、身体を拘束されるぐらい我慢すればいいじゃないかと思うかも知れないけれど、「嫌な物は嫌だ」、御主人も面倒くさがり屋なので、本当は僕のシャンプーなんかしたくないと思っているに違いない。僕は御主人の気持ちを思って「シャンプーなんかしたくない」っていっているんだ。はぁぁ〜、僕って、なんて飼い主思いの犬なんだろう・・・それに僕は「猫タイプの犬」だから自由を奪われるのを嫌う。誰か、簡単に身体の隅々まできれいになる方法を考え出してくれないかなぁ〜・・・・
10月22日 はれ
今日はお母さんのお友達が二人やってきた。そして僕を見て誉めてくれたよ。「足が長いねぇ〜」って・・・「だって秋田犬だから」と御主人言う。僕は家に女の人が来ると、滅多に吠えない。それがどんな理由なのか御主人には理解できないようだ。でも、犬と人の違いはあるけれど、僕だって雄犬だから、女の人にはそれなりの礼儀を尽くすのが男だろうと思う。それが本当の男って言うものな
さっ!!それと、「おとなしいね」って誉めてもくれた。僕がフセの格好で、黙って御主人達の話を聞いていたからだ。でも、この日記を読んでくれている人なら知っていると思うけれど、僕は結構活発に動く。「わんわんわん」と吠え立てるし、大はしゃぎをしてかけずり回るし・・・だけど女の人を前にした男(雄犬)は寡黙なのが一番だ。それが男って言うものだ。でも、本当は、今日の僕は「猫をかぶっておとなしくしていたのだ」近所の猫さんから毛皮を借りてかぶっていた。これが結構暑い・・・・犬の毛皮の上に猫の毛皮をかぶったものだから、舌を「ハァハァハァ」と出してしまったよ・・・・・。
10月21日 はれ
今日の僕は力が余りすぎて、夕方散歩の時に御主人の乗った自転車を「ぐいぐいぐいっ!!」と、引っ張ったんだよ。御主人は、ただ自転車に乗っているだけで良いんだ。「これこそ究極の省エネ乗り物だ」と喜んで乗っていた。だけれど、いくらガソリンや軽油が高くなったとはいえ、犬の食べ物よりは高くないだろうと思うよ。いくら犬でも、何か食べないと生きてもいけないし、力も出ない。それにくたびれてくるからね。「究極の乗り物」って言うのは、御主人自らがこぐ自転車だと思うよ。汗を掻きながらこぐ自転車はたまりすぎたエネルギーの捨て所になるからね。つまり「ダイエット」とやらになるからね。御主人は現在73キロほどある体重を60キロ台にしたいらしいからね。飼い犬に自転車をぴっぱらせてよろこんでいるような場合じゃないと思うよ。御主人!!!
10月20日 はれ
昨日も今日も、御主人は小屋の中でもみすりのお仕事だ。忙しそうにしている割には、すこしの時間を見つけては、僕にちょっかいを出しに来る。頭をなでたり腹をなでたりして「おまえはお昼寝ばかりしていて良いなぁ」と僕をうらやましがる。僕は御主人がやってくるたびに何をされるかわからないから警戒をし、緊張をする。そして、すぐに逃げられるような体制をとるのだ。お日様はポカポカ、人間にはすこし肌寒いけれど、犬にはちょうど良い風が吹いてくる。こんな「秋日和で気持ちの良い一日」を御主人のちょっかいのために台無しにはしたくない。そこで僕は土のお山の上に昇る事にした。さすがの御主人も、このお山の上まではあがってこない。この土のお山は、来年になってお米の苗を作るのに必要な物だ。御主人は昇ったりして、余り土を踏み固めたくないらしい。ここなら安心してお昼寝をする事が出来るぞ!!犬の世界のことわざに「犬の昼寝をじゃまするヤツは馬に蹴られて死んじまえっ」って言うのがあるんだ。人間の世界では、このことわざの言い回しは、すこし違うらしい。「人の恋路をじゃまするヤツは馬に蹴られて死んじまえっ」って言うらしい・・・・だから、あんまり僕のお昼寝をじゃますると馬に蹴られちゃうぞ。御主人!!
10月19日 はれ
僕達の街では、市会議員の選挙運動が盛りだ。朝の八時から夜の八時まで、ひまなく宣伝カーが廻ってきて、自分の名前を叫んでゆく。中にはスピーカーの具合が悪いのか、猛スピードで通り過ぎていくためかわからないけれど、何を言っているのかさっぱりわからないのもある。犬から見ればおかしな行事でもあるし、おかしな行動でもある。僕達の街も1市7町が合併とやらをして、130何人もいた市会議員が今、選別というのか淘汰というのか・・・?されるらしい。立候補者は定員30人に対して60人のようだ。競争率は2倍である。僕の場合の競争率は6倍の高倍率だった。えっ?なんの話をしているのかって?、僕が赤ちゃんだった頃、兄弟達と食べ物を巡っての競争率の事だよ。僕の兄弟は僕を入れて6匹。雄犬が2匹に雌犬が4匹なんだ。その中でも、僕は元気の良い方だったから、他の兄弟達よりいくらか多く御飯を食べる事が出来たんじゃないかなぁ?、えっ、誰だ?「そのせいで食い意地が汚くなったんだろう」って言うのは・・・・・
10月18日 はれ
10月18日付「犬新聞」論評
「犬は犬の上に犬を作らず、犬の下に犬作らず」というのが、我が犬属の根本的理念である。犬はすべからく平等の元に生まれ、生活をし、そして死んでゆくのである。そして、また「犬は人間と平和的な共存をなし、相争う事の無いようにしなければならない。」とも謳ってある。紙面の関係上、すべての宣言文を書き連ねるわけにはいかないけれど、これらを総称して「犬権宣言」という。世の中のすべての犬は、この「犬権宣言」を忠実に守り、世界を平和に導いていかなければいけない使命を持っているのだ。
どうも、最近の犬新聞は硬い記事ばかりだから、肩がこるよ。しかし・・・はぁぁぁ〜、僕は犬だから「お気楽」な暮らしをしていればいいのかと思ったら、こんな理想を常に頭の中に置いて行動しなければならないなんて、いやだなぁ〜。でも、理想と現実は違うから、そんなに力を入れて「犬権宣言」を意識する必要はないと思うな。なんと言っても、犬は「ほどほど」とか「適当に」と、言うのが信条だからね。
「空高し 鰯にみえし鱗雲 僕のよだれは 時雨呼ぶなり
・・・禄食」
はぁぁあ〜、我ながら浅ましい・・・
10月17日 はれ
僕が、この家にやってきたのは「平成12年9月16日」だった。僕は生まれて、まだ50日だった・・・・90日たった5年前の今頃の季節になっても、まだよちよち歩きだったんだ。まだこの家のかってがわからなくて、まごまごしていたんだ。おもいだすなぁ〜。それが今では、御主人の言う事を聞かない、反抗はするし、食べ物をねだってくれるまで動かない・・・等々、わがまま放題の僕である。この家の主は「僕だ!」みたいな気持ちでのさばっている。でも・・・・やっぱり人間がいないと僕達犬は生きていけないんだ。本当は、御主人達家族に感謝しているんだよ。心の中では両手を合わせて拝んでるんだ。・・・・・あっ!!御主人そこにいたの?、ええっ!!僕の今の独り言を全部聞いていたの!!はずかしい・・・・
10月16日 はれ
今日は昨日と違って秋日和の一日となった。御主人とお母さんは「サツマイモほり」をしている。僕は小さめのサツマイモを生のままもらったので、かじってみたけれど、あんまりおいしくなかった。サツマイモで思い出すのは、僕が赤ちゃんの頃、ここの家にやってきたときのことだった。地面に広げて干してあったサツマイモを盗んで、ボリボリ食べた事がある。あんまりおいしくもなかったけれど、子犬というのは、何にでも噛みつきたくなる性分なのだから、手近にあった物をおもちゃ代わりにして遊んだのかも知れない。大人になった僕は、噛みつき癖も御主人の躾でなくなったし、何よりもおいしい物が食べたい僕にとっては、生のサツマイモはごめん被りたい。出来れば、焼いたり、天ぷらにしたサツマイモをごちそうになりたいと思う今日この頃なのである。今まで一度も食べた事がないからね。
10月15日 あめのちくもりのちあめ
朝方、たっぷりと降った雨は僕が朝散歩に行く頃になってあがり、午前中は曇りの天気になった。前々から計画されていた「僕のシャンプー」は、今日も取りやめになってしまった。雨降りなのにくわえ、御主人がご用で何処かへ出かけなくてはならなくなったからだ。身体にだいぶ垢が付いてきたし、匂いも臭くなってきた・・・・と、御主人は言うのだけれど、僕はいっこうに平気だ。野生の犬はシャンプーなんてしないし、一生涯、することもないだろう。たまに川に入って身体を冷やしたりするぐらいなものだ。御主人は、冬が来る前に、もう一度僕のシャンプーをしたいらしい・・・・僕はしなくても良いと思っているけれど、飼い主がそう思っているなら、そうしても良いよ。出来れば、したくないけど・・・・
10月14日 はれのちくもり
朝晩は、めっきりと肌寒くなってきた今日この頃ではあるけれど、今日の夕方散歩は毛皮を着ている僕達犬属にはすこしきつかった。なにがって?、低気圧が近づいてきているせいか夏のような陽気で暑かったからだ。御主人なんか、ティシャツ一枚で自転車をこいでいる。それでも額に汗のつぶつぶがいっぱい浮いている。こんな散歩の後に飲む水はまた格別にうまい。僕の水は飲み放題なので、なんの気兼ねもいらないけれど、御主人の呑む水分(ビール及び、ペットボトルのお茶)はお金がかかるので、幾分気を遣いながら呑まなければいけないので大変だ。
明日は、一日雨の天気になるらしいので、犬小屋の中で寝ていなければいけないなぁ〜。明日は退屈な一日になりそうだぞ・・・・
10月13日 はれ
今日は「秋日和」の大変気持ちの良い一日だった。僕は穏やかで、少し暑いぐらいの一日をあくびをかみ殺しながらのんびりと過ごしたよ。幸い、家には誰もいないし、僕の好き勝手に出来る。地面の上に「ごろん」と寝そべったり、土のお山の上で辺りを見回したりと、それなりに色々とする事があって、楽しい一日だったよ。午後もしばらく過ぎて御主人が帰ってきた。僕を「ナデナデ」する暇もなく稲刈りに出かけていってしまった。何でも、この前、壊れた乾燥機が直って、稲刈りが出来るようになったらしい。御主人は張り切って出かけていったんだよ。何しろ、今日で今年の稲刈りが終わるかどうかって言う瀬戸際だからね。幸い、2時間ぐらい経った頃、稲刈りは終わり、稲刈り機械が帰ってきた。まずは、「めでたし、めでたし」、って言ったところだね。後は新米を思う存分食べるのだけが、僕の唯一の楽しみだ。えっ?去年のお米が、まだ75キロぐらい残っているの?・・・・・しゅう〜ん・・・それじゃぁ、新米を食べる事が出来るのは、もうしばらくおあずけって事かも知れないね。
10月12日 はれ
今は「食欲の秋」という事で、僕は猛烈にお腹が空いている。御飯の時間が待ちきれなくて、御主人に「早く散歩へ行こう」と催促する始末である。なぜ、お腹が空くと「散歩を催促」するのかと言えば、散歩が終わると「御飯」なり「おやつ」なりがもらえる事を知っているからだ。そして、御飯をもらうと「がつがつ」と早食いしてしまう。こんな食べ方をすると「お腹の調子」が悪くなるのはわかっているのだけれど、こればかりは犬の習性で止める事が出来ないでいる。そして、これでもまだ足りないようなそぶりを御主人かお母さんに見せつける事もある。夏の頃、暑くて暑くて食欲がなく、よく御飯を残して御主人に捨てられてしまった。あの時の御飯が、今更ながらもったいなくて、今頃になって「夢を見てうなされる」事がある。「食い物の恨みは恐ろしい」とは、人間の世界でも言われているようだけれど、僕達犬の世界では人間の世界よりも、食べ物に対して、もっと深い恨み辛みがあるのだと言う事を飼い主達覚えておくべきだと僕は思うのである。
10月11日 はれ
御主人は、元消防団員だったので「防火」には関心を持っている。僕は、この人の「飼い犬」なので、当然、防火思想の普及には一役買わせてもらっている。防火週間は終わってしまったようだけれど、僕達の町内では夜なると「消防団員」が消防車で10日に一度、町内巡回をする。消防車の広報の音が聞こえてくると、僕も「防火思想の普及」の一助をになおうと思って「うおぉぉぉ〜ん、うおぉぉぉ〜ん」と、遠吠えをする。すると、御主人が家の窓を開けて、僕が遠吠えをしているのを黙って聞いているのだ。僕はそれに気付くと、恥ずかしくなって「遠吠え」を止めてしまう。恥ずかしがり屋である「秋田犬」は、人に見られてしまうと「アリア」を歌うのを止めてしまうのであった・・・・
「ちょっと、僕の防火宣伝のじゃまをしないでくれる?」
10月10日 くもりのちはれ
今日の御主人は、よほど悪運につきまとわれているらしい・・・昨日の稲刈りは順調すぎるほどだったのだが、今日は、乾燥機に入れたもみが仕上がらず、昼過ぎに、やっと仕上がってモミを入れる場所に開けようとしたらモーターというものが壊れてしまって駄目・・・・今日中に今年の刈取が終わるはずだったのも当然駄目になってしまった。後、トラック三台分刈り取れば終わるはずだったのに・・・「イライラ・・・」とした鬱憤のやりどころのない御主人は、妙に僕に優しかった。本当は、このイライラを僕に当たり散らしたいのかも知れないけれど、まさか飼い犬に暴力をふるってまで、自分の鬱憤をはらす御主人でもないだろう。でも・・・「妙にやさしい」ってところが、少々気味が悪くもあった。ともかく、今日の御主人の運勢は、目を覆いたくなるほど悪いらしいので、出来れば僕は御主人に近づきたくないのであった。運の悪さが移るから・・・
10月9日 はれ
今日は日曜日である。御主人やお母さんにとっては「お休み」の日なのである。と、言う事は、僕にとっても「お休みの日」になる。お家には誰かいる事になるのだから「番犬のお仕事」をしなくてもよい事になる。僕は尻尾を千切れんばかりに振って喜んだ。さて、のんびりとお昼寝をしようかな・・・思ったその時!!御主人とお母さんは田んぼへ出かけていってしまったのだった。今は「農繁期」、稲刈りの真っ最中だったのを僕はすっかり忘れてしまっていたのだった。日曜日も祝日もあったものではない。僕をナデナデする暇も「お留守番だよ」と言いつける暇もなく大急ぎで出かけていってしまったのだった。それから2度ほど、僕は「わんわんわん、わおぉぉ〜ん」と、番犬としての職務を忠実にこなしたのであった。やれやれ・・・である。
10月8日 あめがふったりやんだり
今日は一日中雨降り・・・御主人は作業小屋の中で「もみすり」のお仕事で忙しそうにしている。僕は犬小屋の中で「お昼寝」である。寝るのに飽きると、御主人の仕事ぶりなどを見学に行ったりする。しばらくお昼寝した後、作業小屋の中に入ろうとしたら「入るな!!」と御主人に言われてしまった。「床をよく見てみろ!」とも言う。なんだろうと、下を向いたら床に「犬立ち入り禁止!」と黄色いチョークで大きく書かれてある。もちろん、僕は犬だから、黄色い色も文字も読めはしない。御主人の態度や言葉遣いで、何となく「小屋の中に入ってはいけないんだな」と察する事が出来た。「犬立ち入り禁止」をよくよく思い出してみると、この前、この日記でお話しした事件に思い当たった。「飼い犬による出荷米オシッコ汚濁事件」である。僕の専有物であると思いこんだお米の袋にオシッコをかけた事件だ。あの後、袋は取り替えられ、御主人は紙袋2枚分、約160円の損害を被ったようだ。そして、今日・・・・あの事件の再発をおそれた御主人によって、この「犬立ち入り禁止」の文字が書かれ、僕は、今年の「もみすり作業」が終了するまで作業小屋へは立ち入り出来ない身体となってしまったのだった。でも、御主人の隙を見て侵入するもんねぇ〜
10月7日 はれのちくもり
昨日は一日中、犬小屋の中に閉じこめられていたので、今日は広々と辺りを見回す事が出来る「土のお山」の上に陣取って、お仕事兼お昼寝をしたんだよ。空は澄み切って青く、ガラスのように透き通った風が吹いてくる。この前まで青々と重い稲穂が風の吹くままに揺れていた田んぼが、刈り取られて物寂しい風景に変わりつつある。
「ふぁぁぁ〜」と僕は大きなあくびをして、フセの格好で寝そべり、両前足の上にアゴをのせて、自然に両方のまぶたが仲良くなるのを待っていた。こんな時間が僕にとっては「至福」とも言える時間だ。やがて僕は夢の中へと没入して、僕の精神はいっさいの束縛を離れて自由となるんだ。「はぁぁぁぁぁ〜、たまらない気持ちよさだ、たまらないうれしさだ!!!」
そこで一句「風蒼く 心にしみる 秋日和・・・禄食」
10月6日 はれ
今日はとても良い天気だ。まさに「秋日和」と言っても良い天気だったよ。そこで僕は、外へ出て地面の上に寝ころび、残り少ない日射しとぬくもりを感じながらさわやかな風に吹かれていたんだ。今日は一日中、こんな風にして「お昼寝」を思う存分楽しむはずだったんだ。ところが・・・、僕は朝から御主人に「犬小屋」の中に閉じこめられてしまった。「何をするんだ。がるるるる〜」と、文句を言ったのだけれど、犬小屋の戸は非情にも閉じられ、フックをかけられ、さらにご丁寧な事に「赤い組紐」で扉が開かないように堅く縛られてしまったのだ。「憮然とした顔」でいる犬小屋の中の僕に、御主人は「今日は農協で米を取りに来るから犬小屋の中でお留守番だ」と言い渡した。「ただし、いつ取りに来るかはわからない」という・・・・御主人は僕にそういって、何処かへ出かけてしまったんだ。僕は、家族の誰かが帰ってくるまで犬小屋の中で過ごさなければならなくなってしまったのだった。そして、御主人は・・・・夜遅くになってやっと帰ってきたのだった。
10月5日 はれ
今日の夕方散歩は上のお兄さんと行ってきたよ。御主人は田んぼで稲刈りだ。僕は、またまた忙しそうにしている御主人とコンバインを横目に、のんびりゆっくりと東の山の下まで行ってきたんだ。そして、御主人の所へ帰ってくると、もうお仕事は終了と見えて、御主人は僕の身体をナデナデしてくれた。その時!!田んぼの向こうのあぜ道を歩いているワンコを発見した!!僕が大好きな御主人の叔父さん家のワンコ(メス犬 推定年齢1歳・・・かな?)。僕は、ナデナデしてくれている御主人をうるさそうに振り払うと、そのワンコの方に「突進」しようとしたんだ。だけど、お兄さんに引き留められてしまった。結局、御主人達のお仕事は終わり、僕はお兄さんにトラックの助手席に乗せられ、家に帰らなければいけなくなったのだった。御主人はコンバインを家まで持って帰るようだ。かくの如く、僕とメス犬ワンコは、お互いに遭遇する事もなくすれ違ったのであった。大昔、ラジオで「君の名は」という連続ドラマがあって「すれ違い恋愛ドラマ」などと言われていたそうだけれど、僕達の場合は、まさにこれと似ているよね。但し、ラジオドラマの場合は「相思相愛」なんだけれど、僕達の場合は「相思相愛」とは限らない・・・・僕の一方的な思いこみだけなのかも知れない・・・・「きゅう〜ん・・・わおお〜ん・・・」
10月4日 あめ
今日は一日中雨だった。御主人は夕方5時頃になって帰ってきた。僕は「一緒に散歩へ行こう行こう」と、はしゃいだのだけれど、
御主人は小屋の中に入っていき、「もみすり」のお仕事を始めてしまったんだ。お散歩に早く行きたいのだけれど、お仕事をしているのをじゃまするわけにも行かない・・・・。やがて、あたりは真っ暗になってしまったよ。しばらく時間が過ぎて、不意に機械の音が止んだので、そっと小屋の中をのぞいてみると、どうやらお仕事が終わったようだ。僕は喜び勇んで「散歩に行こう」と声をかけたんだ。けれど・・・・「真っ暗になったからお散歩は無し」って言われてしまったよ。真夏は真っ暗でもお散歩に出かけたのに・・・
しゅぅぅ〜ん・・・・結局、御飯だけもらって今日はおしまいという事になってしまった。それでも御飯を御主人が持ってきた時は、ぴょんぴょん跳びはねてうれしがったけれどね。何しろ、飼い犬の楽しみは「散歩」と「食事」につきるからね。
10月3日 はれ
今日は、御主人から「京都銘菓 生八つ橋あん入り 秋の限定販売品」というお菓子を食べさせてもらった。京都銘菓だからと言って、誰かが京都とやらへ行ってきてお土産を買ってきたわけではないらしい。すべての本質は、昨日の昼頃に御主人とお母さんが僕に内緒でおいしい物を食べに行った事から始まる。なぜ「僕に内緒で行った」のに僕が御主人達の行動を知っているのかって?・・・それは犬の鋭い勘と嗅覚で、帰って来た時に御主人達の身体に付着した匂いをかぎ分けるからなんだ。飼い犬は御主人達が帰ってきた時は必ずまとわりつく。うれしくてまとわりつくのはもちろんだが、飼い主の行動などを匂いでチエックする行為も含まれている。その時に「京都物産展」で「生八つ橋」を買ってきたらしいのだ。まぁ、そんな事はどうでも良いのだ。今日の本題は、「なぜ、甘い物禁止の飼い犬がお菓子をもらったのか?」と言う事なのだ。察しの良いみんなは「なるほど」と合点がいった事と思う。そうなのだ、1ヵ月に1回の「フィラリア」の薬を飲まされる日が今日なのだった。御主人は、フィラリアの薬を「生八つ橋」の中にくるみ込んで僕に与えたのだった。しかも半分だけ・・・・八つ橋の一切れを半分は自分が食べて、もう半分を僕にくれたのであった。なんと「けちくさい」御主人なのだろうか・・・なぜ!!なぜ一切れ全部を僕にくれなかったのだ!!なにも、お菓子の箱を丸ごとくれといっているのじゃないのに〜!!!!!
10月2日 あめ
僕が「散歩」という言葉を聞くと、非常に興奮して、辺り構わずかけずり回るのはみんなも知っていると思う。僕がつながれたまま走り回ると、御主人はさらに僕をあおる。「それ、散歩だ!」とか「散歩に行くぞ!」などと言う・・・・あおられるたびに、僕は夢中になって走り回るものだから、舌を「ハァハァハァ」と出してしまう。そんな僕を見て「どうだ、散歩代わりになっただろう」と、御主人が言うんだ。あのねぇ〜、僕は散歩に行けるといううれしさからはしゃいでいるだけなんだよ。これじゃぁ、まるで、ごちそうを食べる前におやつで満腹したようなものじゃないか!!ちゃんと散歩に連れて行ってよね。がうん、がるるるる〜!!
10月1日 あめ
今日は朝から雨だ。つまらなそうに犬小屋の中で寝ていたら、御主人がやってきた。今日は「もみすり」という作業を小屋の中でするそうなのだ。「もみすり」というのは、田んぼから刈り取ったモミの中からお米を取り出す作業である。その作業は毎年、僕も楽しみにしている。いよいよ「新米」が僕の口にはいるのだと思うと「腹ぺこ犬」である僕はわくわくする。あまりに興奮してしまったので、僕は出来上がったお米の袋に「オシッコ」をかけてやった。もちろん、物に「オシッコ」をかけるという行為は「自分の専有物である」という証なのだ。だけど、御主人に怒られた・・・このお米の入った袋は僕の専有物ではなく御主人の専有物だったのだ。僕は「御主人の物は僕の物、僕の物は僕の物」という意識で日々、暮らしているから何とも思わなかったのだけれど、こっぴどく叱られてしまったよ。およそ、10分間も頭を押さえつけられたり、鼻先をぶたれたりして、くどくどと叱られてしまったよ。僕は、ただただ地面にはいつくばって「お叱り」が終わるのを待つだけだった。でも、そんな「お叱り」なんか、すぐ忘れてしまったもんね。僕の頭の中にあるのは、いつになったら「新米」を食べる事が出来るのかという事だけだもんね。
そこで一句、「犬だから 性懲りもなく 繰り返し・・・禄食」