むつ犬のおまぬけ日記
平成17年11月
11月30日 くもりときどきふぶき
とうとう、今日で秋は終わりである。明日からは冬という事になる。秋らしい秋も感じる事もないままに冬に突入という事になってしまった。出来るならば、もっとお日様と一緒にのんびりとお昼寝がしたかったのだけれど・・・・でも、雪国に生まれた犬の宿命とでも言うのだろうか、毅然とした態度でこの冬を乗り越える決意を表明しないと、お座敷犬と同様になってしまう。なぜか僕はお座敷犬(家の中で飼われている犬)に敵愾心を燃やしているのだ。裏を返せば、いつも家族と一緒で、御飯の時などは一緒に食卓を囲んで食事のお余りをもらえる、と言う環境に「うらやましい」という気持ちが、嫉妬を呼び起こし、やがてねじれこじれて「尾座敷犬=敵」というぐあいになったのだろうか?ともかく、今日、雪が降ってきたという事は本格的な冬がすぐそこまでやってきているって言う事だ。「よし!気合いだ!気合いだぁぁ!!!」外犬(家の外で飼われている犬の事)の意地を見せるのは冬しか無いのだぁぁ!!お座敷犬なにするものぞ!軟弱かつ惰性に満ちたお座敷犬に、今こそ飼い犬の神髄を見せつけてやるのだ!!!はぁはぁはぁ・・・・・

11月29日 らいうのちくもり、ものすごいかぜ
今日の夕方散歩は、御主人が早く終わらせたいらしく、駆け足を始めた。僕は「ヤレヤレ」と思いながら足を速めた。御主人の駆け足は僕にとっては早足ぐらいの速度に過ぎない。しかも、走り出したと思ったら、もう息が上がってしまって普通の歩きに戻ってしまう。足音も「ドタドタドタ」とおまぬけな音を立てながらの走りである。なぜ僕のように「カッ、カッ、カッ(爪が地面にあたる音)」、「シュタッ、シュタッ、シュタッ(足の裏が地面を蹴る音)」と、この2つの音がハーモニーを奏でながら疾風のように走る事が出来ないのだろうか・・・・?。僕が思うには、まず最近2キログラム減ったと単純に喜んでいる73sある御主人の体重を自分の理想とする65から67キロぐらいの体重にもっと減らす事を考えるべきだと思うな。けれど僕は、もっと太らなくちゃいけないんだ。これから寒い冬を迎えて体内脂肪を蓄えなくちゃいけないからね。でも・・・なかなか太れないんだ。食事が貧しいものしか与えられていないのでね・・・・「御主人!!普段おいしい物を食べている分を僕に回してくれ!!そうすれば御主人はやせる事が出来るはずだ!!」


11月28日 はれたりくもったりのちあめ
今日の御主人は「大豆刈取機械」の泥落としをやっている。大豆畑の泥が足回りにびっしりと付いている。自分も泥だらけになりながらのお仕事だ。それを見ていた僕は、なぜか妙にうらやましくなってきた。なぜかって?・・・泥んこになる事がである。だから僕も泥と泥水が渾然一体となっている場所に足を踏み入れてみた。「どろどろ、ねちゃねちゃ」という感触が楽しく、気持ちが良い。御主人に「泥んこ犬になるから来るな」と言われ続けながら、その言葉を無視して何度も泥の中に入り込んだ僕は、とうとう本物の「泥んこ犬」になってしまった。こうなってしまえばもうこっちのものである。御主人もあきれて何も言わなくなってしまった。こんな気持ちは人間の子供も同じ事だと思う。泥の中に入って遊ぶのが楽しいという感覚は子供なら誰でも持っているものだ。はるか縄文時代の昔から泥田の中で稲を作り続けてきた農耕民族の血が脈々として流れ続けているに違いない。僕達、犬も縄文時代から人間のパートナーとして生き続けていたものだから、犬の中にもそういった血が流れているのかも知れない。
泥んこ犬になって満足した僕は、土のお山の上に昇り、辺りを見回しながら、なぜか妙に誇らしい気持ちになったのだった。

11月27日 あめがふったりやんだり
今日は昨日とうってかわり、一日中雨が降ったり止んだりの天気だった。こんな日は犬小屋の中でじっとしているしかない。どうせ僕の所へなど、こんな天気の日には誰も訪ねてこないんだから・・・
日曜日だというのに雨降り、これからは毎日こんな天気が続く事だろう。たまには休みの日にボール遊びなんかで付き合ってもらいたいものだ。おそらく今日の御主人は、今年の大豆の刈り取りが終わったので「ホッ」として家の中でくつろいでいるに違いない。今日の僕は一匹で独り寝の一日だったのであった・・・・ハァァァ〜(ため息)

11月26日 かいせい
今日は珍しく「快晴」になった。本当に雲一つ無い青空が広がり、まさに「小春日和」の一日だった。でも、今日も僕はひとりぼっちでお留守番である。御主人は朝から「大豆の刈り取り」だし、お母さんは仕事と称して出かけていってしまった。上のお兄さんはお休みでお家にいるようだったけれど僕とは遊んでくれない。そのうちに何処かへ出かけてしまったよ。と、言うわけで、僕は晩秋の日射しを身体いっぱいに受けながら地面に寝ころんでお昼寝をしたんだ。
夕方になって、大きな機械が轟音を立てながら我が家に入ってきた。「怪しい物体」である。こんな時は「わんわんわん」と吠えなければいけないと「番犬服務規程」にあるのだけれど、僕は恐くて恐くて、ただうろたえながら逃げ回った。しかし、その機械から降りてきたのは御主人だった。「大豆の刈り取り」が終わったので機械を我が家に持ってきたんだ。我が家の「稲刈り機械」より一回りも二回りも大きなそれは音もまたすさまじい・・・
こうして、今日の僕は一日を終えようとしていたんだけれど、最後に「大豆の刈り取り」のお手伝いをしたんだよ。といっても、御主人が「大豆刈取機械」に乗ってきたので、トラックが田んぼに置きっぱなしになっているんだ。それを夕方散歩のついでに取りに行って来ただけなんだけれどね。

11月25日 はれたりくもったり
人間というのは「火」を見ると落ち着くらしい。逆に僕達、四つ足の動物は「火」を極度に怖がる。これはお互いの遺伝子の中に埋め込まれた本能なのだと思う。太古の時代、人間は火を使う事によって発達し、文明を繁栄させ、今や動物界の王様のような気になっている。一方、僕達のような動物は、あのころの時代、火は雷、その他による自然発火が原因の森林火災の中で恐怖におびえながら逃げまどった記憶が血の中に受け継がれている。かつては人間達など、僕達と何ら変わる事がない動物だったのに、火を使う事によって動物世界に君臨していったのだ。僕は人間以外の動物たちに問わなければいけないと思う。人間は人間の事しか考えていないのではないか、動物たち全体の幸せと環境を考えているのだろうか?、いや、自分自身の事しか考えていないのではないだろうか・・・・・・
「うう〜ん、この後はどう結論づけようかなぁ」・・・えっ?何を言ってるのかって?、来週の金曜日に犬新聞社の論文大会があってね。僕が発表しないといけないんだ。どうも言う事が支離滅裂なんで、困っている所なんだ。「誰か助けてぇぇぇ〜!!!!」

11月24日 おはなしするのもおそろしいてんき・・・
今日の天気はすさまじがった。昼前に空が真っ黒になり夕暮れのような暗さになったかと思うと、「ゴロゴロゴロ・・・」と不気味に空が鳴り響き、「ドド〜ン」と雷の落ちる音。そして真っ白なつぶつぶのあられが耳が破れるような音を立てて降ってきた。御主人も小屋にいてお仕事をしていたのだけれど、僕は恐くて恐くて、ふるえていた。「大丈夫だよ」と御主人が僕に声をかけたらしいけれど、僕は何も聞こえなかった。ただ、もう恐くて恐くて・・・・。その後、何度かそんな事があって、僕は犬小屋の中に避難するという余裕もなく、いや、そんな知恵が浮かばないほど狼狽しつつ、ただ呆然と降りしきるあめやあられを眺め続けたのであった。

11月23日 はれのちあめ
今日は人間の世界で言う「勤労感謝の日」というので、お母さんはお休みのようだ。お兄さんはお仕事で朝早くから出かけていった。御主人はたくさんある植木鉢を家の中に入れる作業に汗を流している。所で、「勤労感謝の日」とはなんなのか、御主人に聞いてみた。すると、日頃忙しく労働しているのに感謝して、今日一日はゆっくり休みなさい。と言う日なのだそうだ。そういわれてみると、僕なんかも毎日、労働している。「番犬」という労働だ。これは一日たりとも休む事が出来ない。今日は日曜だからと言って、怪しい物体や人が来ると犬の習性で「わんわんわん」と吠えてしまう。だから、今日一日はゆっくり休もうと心に決め、秋の日射しの中で「ごろん」と横になってお昼寝をした。さすがに夏のようにお腹を出して寝るには、少々寒い。こうして、僕は毛皮全体にお日様の暖かさを取り込みながらのんびりとお昼寝を楽しんだんだ。けれど、やっぱり完全なお休みとはならなかった。犬の習性で「わんわんわん」とやってしまったからね。「番犬」という仕事も因果なものである。いっそ「お座敷犬」になってペットに徹した方がよほど楽なように思われる。

11月22日 くもり、はれまもあり、あめもあり・・・・
今日の御主人は八面六臂の活躍だった。朝は「僕の御主人」の役を演じ、午前中は「農協の米運びのお手伝いさん」の役、午後からは「大豆の共同刈取作業でコンバインのオペレーター」の役、夕方は、またまた「僕の御主人の役」、と言うわけで、叱られてしまったよ。なぜかというと、御主人の靴を持ち出して「土のお山」の上でいたぶってやったんだ。それはもう、こっぴどく叱られた。「何度も同じいたずらをするな!!」だって・・・「反省」という言葉が存在しない犬にとっては、それが無理な話である事は御主人も重々分かっているはずなのに、なぜか僕が、いたずらをするたびに「反省というものがないのか!!」と連呼する。だからぁ〜、反省なんて元々無いんだってばぁぁぁ〜・・・・もうっ!!

11月21日 はれのちあめ
御主人とお母さんは朝になっても帰ってこない。何処かに泊まりに行ったのだから当たり前なんだろう。今日もひとりぼっちである。退屈で退屈で大きなあくびをかみ殺して、残り少ない秋の日射しを浴びてお昼寝していた僕だった。すると、そんな僕に幸運が訪れた。なんと、僕をつないでいるフックがいつの間にか首輪からはずれたのだ。いとも簡単に・・・!!。このフックはこの前の「逃亡劇」を演じた時のものと同じ物だ。あれほど僕を捜し回るのに苦労した御主人なのに、生来の不精者なので、まだフックを取り替えていなかったのだ。昼頃になって、やっと温泉から帰ってきた御主人とお母さんは、僕がいないのにびっくりして、随分探したらしいけれど僕を見つけられなかったという。しかし、なんと!僕はおじいちゃんに捕まってしまったのだ。自由散歩を楽しんでいると、僕の名前を呼ぶ声がするので振り向いてみるとおじいちゃんがいた。おじいちゃんに見つかってしまっては、どうにもならない。素直に「縛について」御主人の所へ護送されてしまった。えっ、何処で捕まったのかって?、僕の家からほど近い、踏切の側にあるケーキ屋さんの前だよ。実はここのケーキ屋さんの裏側からは、とても良い匂いがいつもただよっていて、「犬には禁断のお菓子」である。ケーキを食べたような気分が味わえる。本当は食べてみたかったけれど、犬はお金を持っていないし、たとえ持っていてもお金の使い方も買い方も知らないので買って食べる事は出来なかったよ。でも匂いだけでも満足したよ。
あっ、その後、御主人は今日の事に懲りて、早速新しいフックを買いに行ったようだったよ。

11月20日 くもりときどきあめ
今日は朝から御主人とお母さんが出かけてしまった。お母さんの両親と横浜の姉夫婦、それに叔父さんとで、温泉に泊まりに行くのだそうだ。僕は朝散歩に連れて行ってもらったきり、またまた一日中ひとりぼっちで過ごす事になってしまった。お兄さんはお仕事だし・・・・夕御飯がどうなるのか朝から心配な僕だった。幸い、お兄さんが手回しをしてくれて、おじいちゃんが御飯を作りにやってきた。おかげで僕は「飢え死に」をする事もなく、ぐっすりと眠る事が出来たのであった。

11月19日 くもりときどきあめ
今日はお母さんの実家の結婚式である。だから僕は一日中「お構いなし」の状態になってしまった。何しろ朝から家中の人が誰もいなくなってしまったのだから・・・気楽と言えば気楽だけれど、何だか寂しい・・・今日は天気も悪い事だし、「ぼろぼろシーツ」を枕に犬小屋の中で寝ていた。幸い「わんわんわん」と吠えるような怪しい物体は来なかったし、いや来たとしても僕は熟睡していたので知らない・・・・
家族が帰ってきたのは、あたりが真っ暗になり、僕のお腹が「グウグウ」となり始めた頃だった。お母さんの車のエンジン音がしたので、僕は飛び起きて犬小屋から出て「ぴょんぴょん」飛び跳ねながら、尻尾を千切れんばかりに振って出迎えたんだよ。みんなは僕の出迎えに満足したようで、僕の御飯がすぐさま用意された。もう御飯さえもらってしまえばこっちのものだ。やっぱり愛想は振りまいて見るもんだね。何ごともスムーズに進むよ。僕、これからは「愛想のない犬、睦号」という称号を返上できるように努力してみようと思うよ。

11月18日 あめがふったりやんだり
今日、機械屋のおじさんが来た。何でも家のトラクターの具合が悪いらしくて入院するそうなんだ。僕と、このおじさんは顔なじみである。いつだったか、おやつをもらってから親近感を覚えるようになった。僕は久しぶりに会えたのでうれしくなって、この前見つけた「おもちゃ」を口にくわえておじさんに見せたんだ。おもちゃと言っても、御主人に買ってもらったものではない。プラスチックで出来た桶の縁がL字型に欠けてしまったのを僕が見つけておもちゃにしたって言うわけなんだ。
今日は雨が降ったり止んだりで退屈だった。だから、その「おもちゃ」を使って「狩り」の稽古をしたりして遊んだよ。ぼろぼろのシーツは、くわえて「びりびりびり」と引き裂く。プラスチックのおもちゃは獲物そのものと見立てて、シーツを引き裂くのは、獲物の肉を食いちぎる感覚を味わっている。いわば「ばーちゃるりありてぃ?」の世界に僕は知らず知らずのうちに入り込んでしまっていたんだ。飼い犬は、特に猟犬ではない限り「狩り」なんてする機会なんか無いんだもんね。だから、番犬程度の飼い犬は「見立て」といって、こんな事をしながら、御先祖だったオオカミの血筋を忘れないように努力しているんだよ。

11月17日 くもりときどきあめ、ゆきもあり
御主人は飼い犬の僕に対して横暴だ。弱い犬(僕の事)に飼い主の権力を振りかざす。僕はそのたびに嫌な思いをしなければならない・・・・命令や指示などは横暴ではない。犬はそのことに対して本能とも言える反応をするからだ。「伏せ」だの「お座り」だの「待て」などという小うるさい事ではない。僕が嫌がっているのは、無理矢理に身体をナデナデして「ネコっかわいがり」ならぬ「犬っかわいがり」をするのだ。僕が逃げ出しても執拗に追いかけてナデナデをする。困ったものである。お愛想に「ぺろん」と顔でもなめてやろうか・・・?いやいや、そんな事をするとよけい図に乗ってしまう。「がうんがるるる〜」と唸り声を上げたら「忠誠心が足りない」と言われ、毎日服従訓練に明け暮れる事になる。とどのつまりは、「飼い犬の受難」と、あきらめるより他にないのだろうか・・・?
ふぅ〜、やれやれ・・・・・である。

11月16日 ゆきのちくもりときどきあめ
朝散歩から帰ってきて、のんびりしていると、突然「ザザザザザーッ」というものすごい音がした。驚いて外に出てみると、雪というのかあられというのか・・・それがすさまじい勢いで降ってきて、地面を真っ白に染めてしまった。「もう冬が来てしまったのか・・・」と思いながら、しばらく真っ白になった地面を見ていた。御主人が大あわてで飛んできて、トラックとお母さんの車を冬用のタイヤに取り替えた。その間わずか30分・・・のんびり屋の御主人にしては驚異的な早さだ。そして、御主人は朝ご飯を食べる暇もなく何処かへ出かけてしまうのであった。たまには朝ご飯を食べないのも良い教訓になるはずだ。朝ご飯を食べさせてもらえない僕の身の上を思い知ると良いのだ!!

11月15日 くもりときどきあめ、あられあり
今朝の僕は、僕自身が気付かないうちに自由の身になっていたんだ。
いつの間にか僕の首輪にしっかりと引っかかっていたフックがはずれてしまっていたんだ。僕はそれを知らずに、いつものように紐が届く所までしか動いていなかったんだよ。長年つながれたままでいると、動ける範囲はだいたい勘でわかってくるからね。僕の紐がはずれているのを発見したのは御主人だった。この前の「逃亡劇第2部」のようになっては大変だと思ったのだろう。僕を興奮させないように、「そっ」と近寄り、首輪をしっかりとぎったよ。そこで僕は「ハッ」と気付いたんだ。「僕って今まで自由のみだったんだ」とね。なぜ首輪にしっかりと引っかかっていたフックがはずれたのかは、いまだに謎だ。しかし、大元の原因ははっきりしている。御主人のせいだ。犬のフックを買う時に安いものを買ってしまったのでこういう結果になったのだ。「因果応報」とはこのことだね。「けちくさい事をすれば、すべて自分自身に降りかかってくる」って事かなぁ・・・?犬なりの解釈によればだけれどね。

11月14日 あめがふったりやんだり
今日は久々に叱られてしまったよ。えっ?「おまえはしょっちゅう叱られてばかりいるじゃないか」って・・・・そういわれてみれば、ついこの間もボロホロの靴をくわえておもちゃにして叱られたような気もする(それは御主人の靴だった)。でも、犬の記憶はすぐ消えてしまう「揮発性RAM」の様なものだから、叱られても叱られても「反省」というものがない。所で、今日は何で叱られたのかというと、小屋の中の機械にオシッコを引っかけてやったのだ。御主人が居ない、ちょっとした隙を見計らってね。それを見つけた御主人は怒ったね。手を振り上げてひっぱたくまねをして見せた。僕は恐くなって「きゅいん、きゅいん」と鳴いて「止めてくれ」といったんだ。すると御主人は、僕を地べたにはいつくばらせて、くどくどと小言を言い始めた。これが、今日の1回目・・・・えっ?まだあるのかって、「もちろん!」だって犬には「反省」というものがないからね。
時は夕方散歩が終わり、御主人が御飯食器を手に取った時だった。僕は側に落ちていた洗車用スポンジをくわえ、「食いちぎっては捨て、食いちぎっては捨て」と遊び始めたんだ。側に御主人が居ながらこういう事をしているんだからね。御主人は、すぐさま「こら、止めろ」といってスポンジを取り上げてしまったんだ。僕は、「もうすぐ御飯が食べられる」というウキウキした気分を表現したくて、こんな事をしたんだ。そこの所を御主人はわかってくれない・・・・・まぁ、今日の「むつ犬の叱られ日記」じゃなくて「むつ犬のおまぬけ日記」はこう言った所かなぁ。・・・

11月13日 くもりのちあめ
今日は雨降り・・・一日中、犬小屋の中で寝ていたよ。所で、僕が寝る時に手放せないものがある。それは「ボロボロで薄汚れたシーツ」である。以前は真っ白で、僕をシャンプーした時の水気を吸い取ったり、散歩に出かけた時に身体が泥んこになったのを拭き取る役目をしていたのだけれど、ある時、僕がおもちゃ代わりにくわえて、振り回したり、「びりびり」と引き裂いたりしたものだから、御主人は、このシーツを「用済み」と見なして見向きもしなくなってしまった。それを今度は僕が手放せなくなってしまったのだった。犬小屋の中で寝る時は必ず側に置き、日中お昼寝する時はコンクリートの床の上に敷いて、その上で寝ている。なぜそうするのか僕もわからないけれど、そうしていると安心して寝る事が出来るような気がするんだ。人間の子供が「人形」なんかをいつも持っていると安心するというあれに似ているのかも知れない。僕は犬だから「生まれて50日目」で母犬から引き離された。いつも兄弟と一緒に母親のお腹の中に潜り込んでいた頃の気持ちよさと安心感がシーツだの毛布だのと言う「よりどころ」を求めるのかも知れないなぁ〜
御主人が「じゃまだ」といって犬小屋の上に上げたり、近くのものの上にのせたりしても、僕は必ず、ぼろぼろシーツをくわえて引きずりおろしてしまうんだよ。「捨てる」なんていったら、「がうん、がるるるる!!」だからね。御主人!!

11月12日 はれたりくもったりいちじあめ
今日は、余り天気は良くなかったけれど、御主人は「モミガラ運び」、僕は「土のお山の上で番犬のお仕事」、上のお兄さんは「バイク洗い」、お母さんは「お仕事」とみんなそれぞれバラバラだったけれど、平和な一日だった。僕は「わんわんわん」と二度ほど警戒信号を発して、人や物が近づいてくるのをお家の人に知らせた。時々、「パラパラパラ・・・」と雨が降ってきたが毛皮をまとっている僕は濡れてもたいしたことはないので、感心にも、そのまま土のお山の上で仕事を続けた。(誰も誉めてくれないので僕自身を誉めてみた。御主人に誉めろといっても、当たり前の事をしているだけじゃないかと言われてしまうから・・・・でも、犬は当たり前の事でも誉めてもらいたい時があるんだよね。成犬と言っても、知能や感情は人間の幼稚園児ぐらいしかないんだからね。)
と、言うわけで、今日の我が家の近辺は一日中、平和だった。と、言うよりは、僕がここら辺一帯の平和を守ったと言うべきなのかもしれないな。

11月11日 あめがふったりやんだり
犬小屋に防寒対策がなされた。僕としては、まだ寒くはないんだけれど、御主人の体感温度に合わせて行ったようなんだ。なにで犬小屋をおおったのかというと、だいぶ前に使わなくなった「お米の苗芽だし器」で使われていた保温カバーである。御主人は、およそ1時間もかかって犬小屋にかぶせてくれた。1時間というのは保温カバーをかぶせるために要した時間ではない・・・・僕がこの家に来てから掃除をした事がない、犬小屋の屋根の上にのせられている、様々なガラクタやゴミ等々を掃除するために要した時間がその大部分なのだ。御主人は保温カバーを犬小屋全体にかぶせ終わると、まず自分が犬小屋の中に入っていって、暖かいかどうか確かめた。そして、「ムツ、来い!!」と僕を呼び、犬小屋の中へはいるように命令をした。入ってみると、なるほど暖かい、床には発泡スチロールの板が敷かれていて、これもまた暖かい。「これで冬は安心だね」と、御主人は言うけれど、冬の間中、床暖房にエアコン、さらに灯油ファンヒーターでぬくぬくと暮らしている御主人は、本当の秋田の海岸沿いの冬というものをまだまだ理解していないようなのだった。
11月10日 はれっ!!
今日の御主人は珍しく一日中働いた。僕にちょっかいすることもなく脇目もふらずに働いたのだ。トラックでモミガラを田んぼに運ぶお仕事だったよ。大地からの恵みで余分になったものは大地に戻してやるというのが農業の基本であり理想だ。稲わらも、モミガラも今では人間が利用しなくなったので、みんな田んぼに戻している。僕は暇だったので、ちょっとは御主人が遊んでくれるかなと期待したのだけれど、一日いっぱい、まじめに働いたから驚きだ。夕方になって、モミガラを積んだトラックに乗った御主人が「今日はこれで終わりだから、ムツ、車に乗ってお散歩へ行こう」と誘ってくれた。僕は大喜びで助手席に乗り込み、やがてトラックはモミガラをうずたかく積んである田んぼに到着し、僕は薄暗くなったたんぼ道に降り立った。そして、まだ夕焼けの名残を薄紅に残した西の空を眺めながら散歩を楽しんだんだよ。

11月9日 あめ
実は、僕・・・今まで知らなかったけれど、実は僕って「猫」だったんだ。今までは「猫さん」を毛嫌いしていたけれど、本当は同じ種族だったんだね。これからは「猫さん」を好きになれるように心がけるよ。
えっ?、いきなり何を言い出すのかって?・・・・「僕は猫だった。」って言いたいの!!日本犬、つまり秋田犬を初め、柴犬、北海道犬、紀州犬、等々は「ネコ目イヌ科、学名Canis
familiaris、体高30から70センチメートル」と御主人の「日本犬」という本に書いてある。僕は犬なので、何を言っているのかさっぱりわからないけれど、「ネコ」って所だけわかるんだよね。・・・・・
と、言うわけで「氏素性」がはっきりとわかった。これからはキッパリと行いを改めて、習性をネコに近づけるように努力するつもりだから、みんなもそのつもりでね。御主人も「猫用のおもちゃ」なんかを買って来てくれるとうれしいなぁ〜「猫じゃらし」なんか良いんじゃないかなぁ〜、あっ、キャットフードも食べてみようかなぁ?

飼い主談・・・むつ犬はすぐその気になってしまう性質の犬です。しばらくほっておくと沈静化すると思うので、皆さんも相手にならないようにお願いします。


11月8日 はれのちぼうふうう
今日はおかしな天気だったよ。午前中は晴れていて、僕は、冬に向かってだんだん日射しが衰えていくお日様と会話をしながら、「ごろん」と地面の上に横たわっていたのだ。すると西の空が真っ黒になって雨が「ポツポツ」と降り始め、風が強くなってきた。その風も台風並みの風なものだから僕は恐くなって尻尾を下げてしまったよ。小屋の中でお仕事をしていた御主人は「ムツ、雨が降ってくるから犬小屋へ入れ」というのだけれど、僕はすさまじい強さの風に吹かれて頭が「ぼ〜っ」としてしまい、真っ黒な西の空を見続けていたんだ。午後からは激しい雨と雷が鳴り始め、僕はやっとの事で犬小屋の中に避難したんだ。それからは、風は相変わらず暴れているけれど、雨が降ったと思えば、お日様が顔を出したりする不思議な天気になってしまった。そして、夕方散歩は物々しい格好での出陣と相成った・・・僕の事ではない。御主人の事だ。御主人は、まるで真冬の時の散歩の格好だったんだ。防寒具を身にまとい、なるべく素肌が露出しないような格好だったよ。それでも、くしゃみを10回ぐらい連発しながら僕の散歩に付き合ってくれたんだよ。今日の御主人は「あっぱれ!!」と誉めてあげたいぐらいだったよ。でも・・・・あんまり飼い犬が飼い主を誉めると、つけあがるからね。今日は御主人には、なんにも言わなかったんだよ。

11月7日 あめのちくもり
今朝は随分暖かだった。今頃の季節で16度もある。いつもの年だと5度か6度ぐらい、あるいは、もっと下がって霜が降りるような季節なのだ。だけど、霜は今まで一度も降りていない。この前も、この日記に書いたと思うけれど、僕は、今年は冬をのけ者にして、これから春になって夏に向かうんじゃないかと思っている。
ところが・・・午後になって冷たい風が吹いてきた。毎日、天気図や予報を見ている御主人の話に寄れば、日本は確実に冬に向かっているそうなんだ。「やれやれ・・・」である。僕は北国の犬で、いくら寒さに強いからとは言っても、季節としては春か秋が好きである。暑くもなく寒くもなく、シャンプーが出来るぐらいの季節が一番良い。ちなみに、御主人は入道雲がもくもくとわき上がる暑い夏が好きだという。僕としてはとんでもない事である。この世の中に夏などいらないとさえ思っている。はぁぁ〜、夏のない国へ行きたいよ・・・えっ、夏のない国は、冬が想像できないぐらい厳しいの?・・・・それもなんだかなぁ・・・渡り鳥さんみたいに、暑くなったら涼しい所へ犬もいけたらいいのだけれど・・・・
犬も進化して羽をもてるようになり、飛ぶ事が出来たらいいなって思う犬の僕なのであった。

11月6日 はれ
今日から秋の火災予防運動が始まった。朝6時、運動開始のサイレンが鳴り響き、僕も高らかに遠吠えをして運動展開の意気込みを見せた。「うお〜ん、うお〜ん」と澄んだ声は冷え込んだ朝の空気をふるわせて隣近所に聞こえたに違いない。そのうちに消防団の人達が巡回に来ると思うけれど、敬意を持って出迎えなければいけない・・・・と、わかっているものの、ついつい「わんわんわん」と吠えてしまうんだよね。でも、僕は番犬だから仕方がない、怪しい人や物体に吠えるのは番犬としての使命上、「バンヤムヲエナイ?」行動というものだ。それと、もう一つ、僕は玄関に付いている呼び鈴と同じで、「わんわんわん」と吠えると、家の人が「あっ、誰か来たな」と察するような役目も担っている。
ともかく、僕は「火災予防運動」、「防犯運動」などには積極的に参加しているって事を言いたいのだ。今晩から毎晩8時には、僕の遠吠えが聞こえるからそのつもりでね。えっ、うるさいだろうなって?、そんな事を言っちゃ駄目だよ。僕は明るい社会、住みよい社会作りに貢献をしているんだから!!!

11月5日 はれ
御主人達一家は僕の夕方散歩もしないで、御飯を投げ与えるようにして何処かへ行ってしまった。僕の推測では、おじいちゃんとおばあちゃんと待ち合わせて何処かへおいしいものでも食べに行くのではないかと思う。さっき、一家と言ったけれど、僕も一家の一員である事は間違いがない。けれど、犬はお座敷へはあがれないので置き去りにされたわけなんだ。
ややしばらく立ってからかえってきた御主人とお母さんはお肉の匂いをぷんぷんと体中から匂わせて車から降りると「ムツ、お土産だよ」と言った。僕は今までの不平不満が吹き飛び、尻尾を振って出迎えた。だけど・・・すぐお土産を出せばいいのに「ムツ、お土産はお母さんと、俺と、どっちが持っている?」なんて言い始めたものだから、僕は「どっちかなぁ・・・?」と考えながら二人の間を行ったり来たりしたんだ。結局は匂いで「お土産はお母さんが持っている」って事がわかったので、後は御主人を無視!!お母さんは袋の中からお肉の塊をとりだして僕にくれたんだ。ぼくは「ぺろりごくん、ぺろりごくん」と4,5個のお肉を丸飲みにしたんだよ。「へぇぇ〜、これがビーフステーキというものなのか」と思いながらね。えっ?、味はどうだったのかって?・・・・丸飲みしたんだから味なんかわかるわけ無いじゃないの。犬は「お腹を満たす事を本領とする」だからね。

11月4日 はれ
今日の夕方散歩は過激だった。いつもは、僕が自転車をぐいぐいと引っ張るんだけれど、今日は御主人が自転車をぐんぐんとこいで僕を引きずるように走るんだ。そうなってしまったのには、今日の御主人は強引だったのと、最近の散歩が「のんびり散歩」または「手抜き散歩」ばかりだったので、僕の体力が衰えていたからだ。どちらの原因にしても責任は御主人にある。僕は帰ってくると、ものも言わず、御主人の「待て」の命令も無視して水の入ったお椀の前に駆け寄り、夢中になって水を飲んだのだった。舌はもうこれ以上は長くのばせないぐらいのばして、息は冬の日本海の荒波のように激しかった。「よし、今度は御主人を引っ張ってみせるぞ!!」と決意しつつも、「もっと御飯が多く食べられたらこんな事にはならなかったのに・・・」という思いもわき上がってきた。でも・・・こんな事を言うと、「おまえは食い過ぎると、すぐお腹の調子が悪くなる癖に。」と言われるに決まっているからなぁ・・・

11月3日 はれ
今日は人間世界の行事「文化の日」という事で、僕の身に危険が迫った日でもあった。どんな危険なのかというと、危うくシャンプーされそうになってしまったって言う事なんだ。今日は、昨日と比べて幾分暖かい風が吹いていた。御主人は僕と会話を楽しんでいる時、ふっと「犬のシャンプーでもしようかな」と思いついたらしい。「むつ、シャンプーしようか?」という言葉に、僕は首をかしげながら「どうして?」と聞き直した。「あたたかいじゃないか」と言う御主人に僕は考えの甘さを徹底的に指摘した。
至適その1.暖かいけれど小春日和の暖かさではない
至適その2.シャンプーは温湯だが、洗い終わった後、犬の身体は      冷えてしまう。
至適その3.いくら北国の犬でも毛皮の内部まで濡れては、体中冷      え切ってしまう。
至適その4.その結果飼い犬が風邪を引いて重い病にかかった場合      はどうするのか?
等々、指摘する事項はさらにあったのだけれど、ここまで言った僕の指摘事項に御主人も考え込んでしまった。そんな所へ神風が吹いた!!なんと、冷たい風が「さわさわ」と吹き始めたのだ。「やっぱりシャンプーは止めよう」との御主人の鶴の一声で、僕は水難(シャンプー)を逃れたのであった。めでたしめでたし!!!

えっ?、「文化の日」とシャンプーとどういう関係があるのかって?・・・・でも、僕は「文化の日」ってなんなのか知らないんだ。犬だから・・・・
結局は同じ日に僕は水難を逃れたって言う事なんだね。つまり・・・・

11月2日 はれ
今日の夕方散歩は「トラックに乗っていこう」と、御主人に誘われ、僕はトラックの助手席に乗り込んだ。「ほら、尻尾がはみ出ているぞ」と注意されたけれど、このトラックの助手席は、僕には狭すぎる。身動きすら出来ない。でも、ドアを閉める時に尻尾が挟まれると痛いので、どうにか身体を奥の方まで押し込んでやった。
さて、トラックが向かった先は、川の側の大豆畑だった。これから始まる大豆の刈り取りの下見にやってきたというわけなんだ。僕としては、山へ出かけていって、思いっきり走り回りたいと思っていたのに残念である。大豆の下見を終えた僕達は、川の畔に行って、暮れていく夕日、そして橋の外灯が川面に映って揺れている風景を眺めた。鴨さん達も「がぁがぁがぁ」と鳴き声を上げながら元気に泳いでいる姿も見られたよ。遠くには、頂上にうっすらと雪化粧をした鳥海山も見えた。
こうして僕達は平和を実感できた一時を過ごして帰ってきたというわけなんだ。でも、散歩の時間が短かったのがすこし不満だったけれどね。


11月1日 はれ
御主人が僕に対して、時々「服従訓練」を強いるのはみんなもよく知っていると思う。たとえば、散歩の時「待て」とお座りをさせておいて紐をぐいぐい引っ張る。それにつられて立ち上がって歩き出そうとするものなら、たちまちお叱りを受ける。「まだよしと言っていない」というわけだ。御飯の時は毎日である。「おすわり」、ふせ」、「たっち」、「よし」、この4つの言葉がワンセットになって「服従訓練」が行われ、僕はよだれを垂らしながら、これに従っているわけなんだ。この「服従訓練」だが、最近厳しくなってきた。原因は僕にある。この日記にも書いたけれど、数日前の逃亡事件がきっかけだ。あの時、紐がはずれて走り出そうとした僕に、御主人の「待て!!」の声が飛んだのだけれど、僕はそれを無視して走り去ってしまったからだ。「命令不服従の罪」により、僕の再教育を始めようと御主人は思い立ったに違いない。毎日、毎日、先に書いたような、嫌がらせのような訓練が繰り返され、僕は、僕はもう・・・・・・・・お腹がぺこぺこなのである。
冬を迎えるために体力をつけなければいけないこの時期の犬に、身が細るような「服従訓練」は絶対やるべきではないと僕は思っている。