むつ犬のおまぬけ日記
平成17年12月
12月31日
とうとう、今年最後の日になってしまった。明日からは新しい年の第一日目になる。犬にとってはどうと言う事もないのだけれど、人間というのは、何でもかんでも「節目」というものをつけたがるので、一応今日が一念で一番最後の日という事になるのだという。そして、御主人達家族はおじいちゃんとおばあちゃん達と一緒に、何かおいしい物を食べるのだという。飼い犬の僕にもお裾分けがあればいいけれど・・・・僕はそれだけが心配なのだ。
でも、みんなはこの一年間「僕のおまぬけ日記」を読んでくれてありがとう!!こうして読んでみると、僕の成長ぶりがわかるでしょう。つまり、生きていく上で知恵が付いてきたって事なんだ。御主人は「こざかしくなった」と言っているけれどね。
でも、まあ、来年もよろしく頼むよ。身体に気をつけて、来年も懲りずにこの日記を読んでね。

12月30日 
冬になると、僕の食器の側には「氷割り棒」または「氷割り板」というものが常備される。これは何かというと、冬になって気温が下がってくると、僕の飲み水が凍ってしまう。その凍ってしまった飲み水の氷を割り、水を飲めるようにするものだ。僕達の地方では、よほどの事がない限り、器の水が全部凍る事はない。表面の氷を割ってやると中はとてつもなく冷たいけれど、飲める。この「氷割法もしくは板」なるものは、御主人の愛がしみ込んでいる。やさしい道具なのだ。喉が渇いて雪や氷を食べている僕を見かねて置いてくれたものなのだ。けれど、道具自体は、取り立てて道具などと呼べるような代物ではない。近くに落ちていた棒きれや、板の切れ端を拾ってきて、側に置いておき、飲み水が凍ってしまった時だけ使うだけの事である。ただし、僕が遊び道具にしようと、くわえて振り回せるようなものではない。約1メートルぐらいの長さがあるから、持ち出す事は出来ない。そこいら辺が飼い犬の行動(いたずら)を把握している飼い主らしい工夫だ。 

12月29日 くもりときどきゆき
またまた、謎が謎を呼ぶ「スズメのお宿事件」・・・・
何処からも入りようがない密室である小ハウスの中に入り込んだスズメたちは、集団でハウスの中の穀物を食料にして生活をしていた。
ところが、そこへさらに、いつの間にか大きな鳥であるキジが入り込んでいた。いったい、スズメたちやキジはどこから入り込んだのか?・・・これが第一の謎である。そして、今日・・・キジは大量の羽毛をハウスの中にちらばせて消失していた。・・・これが第2の謎である。
さて、この2つの謎を誰が解くのか!!もちろん、秋田犬のムツ、つまり僕である。僕達、犬は人間の警察捜査にも活躍していて、しばしば犯人検挙の役に立っているからね。さて、第一の謎を解いてみよう。これは、ええ〜と、つまり、その・・・・入りたいというキジの一念が神様に通じてハウスの中に入り込めたに違いない。・・・・わんわんわん!!!
さて、第2の謎であるけれど、猫が現れたんだ。ネコもキジと同じで、ハウスの中にキジが入っているのを見て、捕まえたくてしょうがなくなった。そこで神様にお願いしたら、いつの間にか中に入り込む事が出来たんだ。そして、キジを追いかけ回している内に大量のキジの羽毛が散らばり、あえなくキジはネコに捕まえられてしまったというわけなんだ。そして、またネコは神様の力でハウスを抜け出して、持ち出した鳥の体を腹の中に収めてしまったと、こういう推理だよ。これに間違いない!!
えっ?、一番肝心なのは、みんながどうしてハウスの中へ入ったり出たり出来たのかだって?・・・そんな事は、神様のみが知っている事だからね。世の中、理屈では解決できない事だったあるって事を肝に銘ずるべきだと思うよ。
うううっ・・なっ、なんか、みんな僕の事をにらんでいるみたいだ。僕の名推理に嫉妬しているのかなぁ・・・・?

12月28日 くもりときどきゆき かぜつよし
朝散歩の時はひどい吹雪だったので、御主人は行こうか行くまいかと迷っているようだった。ハウスの中で走り回らせるという手段もあるけれど、中には昨日お話しした「猛禽類」、つまり肉食の鳥がいる・・・・僕がハウスの中へ離されると、鳥の餌食になってしまうのではないかと心配する御主人なのであった。でも、いくら僕が飼い犬でも「鳥に負けるはずがないと思うよ」って御主人に言ったら「おまえの考えは甘い!!」と言われてしまった。我が家の先代秋田犬である「まるさん」は、ネズミに鼻をかじられた。と言う事実がある。僕も耳をくちばしで突っつかれたり、悪くすると目の玉を突っつかれたりするかも知れない・・・と、言うのだ。御主人と僕はハウスの中へはいるのが恐くなったので、猛吹雪の中を田んぼの真ん中当たりまで散歩に出かけたんだ。「とても、とてもつらかった!!」と言うのは御主人だ。僕はどんな吹雪でも顔をまっすぐ風に向けて歩けるからね。
所で、ハウスの中の「肉食鳥」は、どうなったかというと、朝散歩の後、怖々とハウスの中をのぞきに言った御主人は、驚いたの何のって、筆舌に尽くしがたい・・・なんと、中にいたのは「猛禽類」ではなく「キジ」だったのだ・・・しかも雄のキジである。それを聞いた僕は、あまりのばかばかしさに「ヘナヘナ」と腰が抜けてしまった。「キジ」と言えば、僕達犬にとっては「桃太郎の鬼退治」以来の仲間である。怖がらないで、堂々と挨拶をすれば良かったと思うよ。一番悪いのは「肉食鳥」と「キジ」を見間違えた御主人だよ。「キジ」は僕と同じようにスズメたちを追いかけ回していただけなんだ。決して、食べたりはしない鳥だったんだよ。

12月27日 くもりときどきゆきかぜつよし
夕方散歩の時、僕達はまたまた小ハウスへ出かけた。出かけたと言っても御主人の足で20数歩ぐらい、僕の足では2倍だから・・・・ええ〜と・・・とにかく御主人の歩数よりは多い。何しろ犬は4本足で歩くからね。ハウスの中に入ってみて驚いた。先客がいるのだ。スズメたちは定宿にしているので先客とは言えない。その先客が、スズメたちを襲っていたのだ。そいつは大きな鳥だった。烏ぐらいの大きさだが、薄暗くてよくわからないけれど、褐色がかった羽色に灰色が混じっている。どうやら「猛禽類」という肉食の鳥のようだ。どこから入ってきたのだろうと不思議に思いながら、僕達は怖々とスズメが襲われている現場を眺めていた。「こいつめ!!僕の楽しみを奪って!!」と怒りを感じる一方、飼い犬である僕のようにストレス不足だ、散歩替わりだと言ってスズメを追いかけているのと違って、餌を求めて真剣に「狩り」をしている野生の鳥を目の前に見て、感動を覚えてしまったんだ。僕達は、そのまましばらく眺めた後、「そっと」ハウスを出た。ショックがあまりに大きかったので散歩は中止。そのまま御飯という事になってしまったのだった。

12月26日 もうふぶき
朝散歩に僕を連れ出しに来た御主人に「昨日、僕を写した写真を年賀状に使った?」と、聞いてみた。すると「使わなかった」という・・・僕が、あまりに憮然とした顔をしていたので、「おめでたくない顔」として、年賀状への使用は不可になってしまったらしい。
それで、8月17日に土のお山の上でポーズを取っている写真を使ったのだという。果たして、どんな写真なのか?、僕は犬なので、そんな昔に撮った写真の事は思い出す事が出来ない。出来る事なら、山形の親元や、僕の母親、そして兄弟達には良い格好を見せたいので、りりしくてたくましい姿が美しく撮れた写真を使って欲しいものである。

12月25日 
人間には、奇妙な風習がある。お正月に葉書を出し合うという風習だ。僕のご主人もそれにしたがっているようだ。しかも不精者の御主人が面倒くさがりもせず、年賀状を作る事を楽しんでいると言うから驚きである。今日は僕の所へやってきて「おまえの顔を山形の親元へ送るから、写真を撮らせろ」という。だけど、僕は「いやだ」と断ったんだ。何しろ、しばらくシャンプーもしていないし、毛皮のお手入れやお化粧もしていないから、見栄えのいい顔に写るはずがない。それに辺り一面真っ白な雪景色で、背景としてもおもしろくない。「最近とったので良い写真を使ったら」と、言ってやったら驚いた事に、僕の写真が8月のお盆過ぎあたりから1枚も取られていないという。「ふん、いいんだ・・・僕なんか、もう可愛くなくなったし、もう5歳だから大人になったんだよね。写真を撮られて無邪気に喜んでいるような歳じゃないんだ・・・」といじけてみせると、御主人は申し訳程度に2,3枚の写真を撮って早々に立ち去ってしまったのだった。

12月24日 くもりいちじゆき
今日は御主人の白い長靴を食い破ってやった。当然のように御主人に叱られてしまった。僕としては犬の手(口)の届くような所へ置いておくのが悪いと思っているのだけれど、御主人はそうは思わないらしくて、いつも僕が悪いんだ、と叱りつけるんだ・・・・雪がない季節だと、する事がいっぱいあるので、飼い犬は一日を過ごすための仕事(いたずら、穴掘りなども含む)には事欠かない。けれど、冬場ですることが無くて暇を持てあましている犬が、すこしいたずらをしただけで烈火の如く叱られるのは間尺に合わない。いたずらをされたくなかったら、御主人は、それなりの工夫や対策をするべきなのだ。でも、僕としてはそれをやられると退屈しのぎが無くなってしまうから困る事になるけれど・・・。要は、冬場の犬をいかに退屈させないかという事と、犬に、いかに退屈しのぎのいたずらを楽しくさせるかと言う事が飼い主の責務だと言っても良いのではないだろうか?

12月23日 くもりときどきゆき かぜつよし
冬の犬は元気である。何しろ、春まで体力を持たせるために皮下脂肪を体内にたくさん蓄えているのだ。従って体重も重くなる。深い雪の中を泳ぐように歩いたり、気温が零下まで下がっても平気なんだ。でも・・・、冬は、とてつもなく退屈な季節でもある。野生の犬たちは冬でも食料を取るために「狩り」をしなければならないから、退屈だなんて事はない。しかし、飼い犬の場合、冬はとてつもなく退屈なのである。犬小屋の中での昼寝に飽きると、小屋の中をうろつき廻り、退屈しのぎのネタを探すという行為を繰り返す事になる。今日は、この前叱られたばかりなのに、また僕の抜け毛の入ったゴミ袋の中身をぶちまけて遊んだよ。
はぁぁ〜・・・冬は遊ぶものが無くて困る。雪も、もうあきた。
「早く来い!! 春っ!!」

12月22日 くもり
今日の夕方散歩は、ちょっと変わった所へ行ってきた。「スズメのお宿」である。「スズメのお宿」なんて言うのは「舌切り雀」というおとぎ話にしか出てこないと思っているだろうけれど、実在したのである。しかも僕の家のすぐそばにである。なんと、そこは作業小屋の隣にある「小ハウス」の中にあった。「小ハウス」は秋になるとモミガラが山と積まれる。モミガラの中にはお米にならない屑米が含まれているので、スズメたちはそれを狙ってハウスの中に入り込むのだ。よほど居心地が良いらしくて、10羽ほどのスズメたちがたむろしている。さて、「小ハウス」にやってきた僕は紐から離されて自由の身になった。僕は、早速スズメたちを追いかけ回した。「狩りのお稽古」も兼ねてね。僕は飼い犬だから食事の心配はいらないので狩りをする必要もない。僕が「狩りのお稽古」をするのは、オオカミだった御先祖のたくましい生き様を忘れないようにするためだ。
でも・・・・空を飛んでいるすずめを捕まえるなんて犬には無理だった。僕は舌を「ハァハァハァ」と出しながら息を弾ませてハウスの中を行ったり来たりしただけだった。舌を出したのは夏の散歩以来だから久しぶりである。だけれど、このハウスの中の自由散歩は結構癖になりそうだ。しかし、この「スズメのお宿代替散歩行」には御主人の無精な魂胆が見え隠れしているのであった。

その1.歩きづらい雪道を歩かなくても良い
その2.寒くない。
その3.うんちの始末が楽である。
その4.御主人は飼い犬を見ているだけで良い。
その5.家の敷地内から出なくても良い
その他、数え上げればきりがないほどである。
でも、僕としても気に入っているので、当分はこんな感じで散歩の代わりをしても良いと思う。唯一の欠点は、ハウスの中が乾いているのでほこりっぽい事だ。すこしでも走り回ると埃が舞い上がってしまう。散歩前は水道の水をまくぐらいの配慮はして欲しいと思うな。さてと、いっぱい走ったし、狩りの緊張感も味わえたのでお腹が空いてしまったよ。おおっ!!今日の夕御飯メニューは「卵とキャベツの炒め物添えいつもの御飯リンゴデザート付き」の豪華版だったよ。

12月21日 くもりいちじゆき
僕・・・昨日の夕方に「大暴れ」をしたんだ。なぜかというと、話せば長い事になりそうなんだけれど、聞いてもらえるかなぁ?
今、僕達の住んでいる秋田県では「年末の交通安全県民総ぐるみ運動」というのをやっている。僕の御主人も交通安全に携わっているので、朝は小学生や中学生達の通学時の街頭指導をやっている。夕方は、交通安全広報に出かけなくてはいけない。すると、僕の世話がおろそかになってしまう事になる。
そこで、昨日の夕方の話になる。御主人は交通安全広報に出かけていってしまった。いつもだと、出かける時は「御飯」だけは僕に与えていくのに、今日はなんにも言わず何もしないで出かけてしまった。お母さんも帰りが遅い。僕はお腹が空いてたまらない。むしゃくしゃしてきたので、犬小屋の中で暴れながら、敷いてある断熱材を爪でひっかいて傷だらけにした。そして外に出て、ゴミ袋をくわえて引っ張り出した。それには夏の間中、毛がわりで抜けた僕の毛がいっぱい詰まっている。僕は、それを引きずり回し、中身をぶちまけた。こうして、僕は空きっ腹を「グウグウ」と鳴らしながら暴れ回ったのだった。やっとかえってきた御主人に発見されて叱られたのは当然の事だけれどね。僕はふるえながら御主人に謝った。と言うか、謝ったふりをした。御飯を目の前にして叱られているので、逆らったら御飯を取り上げられかねない。だから、ここは素直に謝ったふりをしようと考えたのだ。おかげで温かい御飯を腹一杯食べる事が出来たよ。
そこで、今日の一首
飼い犬に 反省の二字 
さらに無し、降り積む雪の 白き如くに・・・・禄食

12月20日 くもりときどきゆき
吹雪は、やっと治まり、小ハウスのビニールを押さえていた紐が2本切れただけで目立った被害はなかったようだ。でも、御主人は僕にこう口説いた。「12月にこんなに雪が降るなんて、思っても見なかったので、畑の野菜が何処に何が植えてあったか雪の下になってしまって取り込めなくなってしまった。」・・と。僕だったら、雪の上からでも埋もれてしまったものの匂いをかぎ当てる事が出来るから簡単なんだけれどね。でも・・・雪の下の匂いをかぎ分けても、野菜の種類も知らないし、犬は余り野菜を食べる習慣がないから、その匂いがなんの野菜かまではわからないんだよね。ネギの匂いだったら、時々、御主人が嫌がらせのように僕に嗅がせたりするので覚えているんだけれど、カブや大根なんかはわからないなぁ・・・・?

12月19日 ふぶき
今日も吹雪である・・・・雪はものすごい風で山沿いの地方に流されていってしまい、積雪量はそれほどでもないのだけれど、あちらこちらに「吹きだまり」が出来ている。御主人の家の玄関も吹きだまった雪に埋もれてしまっているので朝散歩から帰った僕がおやつをもらいに行くためには、その雪をかき分けて玄関に向かわなくてはいけない。でも、雪をかき分けてきたかいがあって、昨日の夜、主人とお母さん達の忘年会でもらってきたお肉をいただく事が出来た。それも牛肉である。僕は、それを「ペロリゴクン」とひとのみにしてしまったんだ。まだまだ大量にありそうなので、「もっとくれないかなぁ?」と、玄関先で粘ってみたけれど、今朝は一切れしかもらう事が出来なかった。たぶん夕御飯の上に乗って来るだろうと思い、あきらめて自分の家へ帰る事にした。しかし、玄関から犬小屋までのわずかな距離を歩くのも難儀をするぐらいの吹雪である。またまた、全身「雪だるま」状態になりながら、やっとの事で我が家(犬小屋の事)にたどり着く事が出来た。朝散歩の定番である、「最後のおやつ用、犬ビスケット」3枚をもらって、早々に「犬小屋」の中へ潜り込む僕なのであった。

12月18日 ふぶき
この所、僕達の住んでいる地方は「大寒波」のまっただ中にある。毎日のように吹雪や大雪が続き、まるで冷凍庫の中に閉じこめられてしまったようだ。僕のすみかである犬小屋も防寒対策がされていると言っても、外の気温に比例して、「冷凍室」とまでは行かないけれど、冷蔵庫で言えば「チルド室」と言ったぐらいの室温である。
今日も朝散歩は吹雪の中を雪だるまになりながら行ってきたんだ。夕方散歩は今朝以上に吹雪が激しくなって一寸先も見えないぐらいのひどさだったので行く事が出来なかった。無理して出かけようものなら深い排水路に落ち込んではい出せなくなってしまうおそれがある。だから僕は一日中犬小屋の中でじっとしていたんだ。「森の熊さん」と同じで、冬眠状態と言った所だね。

12月17日 みぞれ
僕は雷様が恐い・・・。僕達の住んでいる地方は夏も雷様が多いけれど、冬はもっと多い。ハタハタという、ここら辺で食べられているおいしいお魚は「雷様」といっょに海岸にやってくると言われている。あのおいしいお魚を食べるために、人間に限らず僕達飼い犬もこの季節を待ち遠しく思っていると言っても過言ではない。「はぁ〜、あのおいしさは他の食べ物にはたとえようがない」ああっと、よだれがたらたらと・・・・
いやいや、僕はこんなお話をするために雷様を持ち出したわけではない。実は今日の夕方、雷が鳴り出したので散歩が中止になったのだ。僕は恐いので犬小屋を出て、コンクリートの床の上で不安を隠しきれず尻尾を下げていたのだ。御主人は僕が尻尾を下げるのを嫌う。それはなぜかというと、「犬はクルンまたはクルクルン(一重か、二重の事)と巻いていなければいけない。」という信念に凝り固まった人だ。だから、尻尾を下げているといつも注意されるのだ。「むっ、尻尾は?」ってね。
このまま雷様が収まらないと、僕は寒い中をうろたえながら、一晩過ごさなければならないのだろうか・・・・?早く犬小屋の中でゆっくりしたいんだけれどなぁ・・・・

12月16日 おおゆきのちくもり
御主人が「除雪」を終えると、僕は急いであちこちに出来た雪のお山に結界を張る。魔法使いや陰陽師が結界を張る時は「呪文」を唱えたりするけれど、僕の場合は後ろ足の片方(主に左後足)を高く上げてお山にオシッコをかける。つまり、「ここら辺は僕の領地であって、みだりに入り込んできた場合は、警告を発し、なおかつ侵入しようとするものに対して迎撃する。」という意味の結界である。この結界が除雪するたびに崩れるものだから、僕としては大変だ。いつクズされるかわからないので、オシッコをためておかなければならない。でも、なかなか「除雪」が行われない時はオシッコを漏らしそうになるので、仕方なく、この前張った結界の上に振りまいてやる。なかなか「飼い犬」というものは大変なのである。いつも「お昼寝」ばかりしているようだけれど、人間の見えない所で、様々やる事があって結構忙しいのだ。

12月15日 ゆきがふったりやんだり
今日の御主人はうるさかった。外は雪なので犬小屋の中で寝そべっていたら、御主人がやってきた音がする。出迎えようと犬小屋を出た。すると「せっかく犬小屋から出てきた所を悪いけれど、もう一度犬小屋の中に入れ。」という。除雪するのだそうだ。僕は、こうして、無理矢理犬小屋の中に押し込められてしまった。やがて時がたち、除雪が終わり、御主人は僕を解放しようと犬小屋の扉を開けたんだけれど、僕は出て行かなかった。「こら、なぜ出てこないんだ」と、御主人は怒るけれど、出ていきたくないものはしょうがない・・・だいたい、さっきは自主的に出て行ったのに閉じこめられるし、今度は出て行きたくないのに「出てこい」と言われる。僕はため息をつきながら飼い犬の悲哀をかみしめ、「出てこい」という御主人の声を聞かなかった事にしてお昼寝を始めたんだ。雪は綿のようになって降り続く。こんな雪は降り積もる事請け合いの雪質だ。明日の朝、目を覚ました時、あたりの風景はどのようになっているのだろうか、それが心配な僕なのであった。

12月14日 ふぶき
きょうも雪・・・しかも吹雪である。一寸先も見えないぐらいの荒れ模様である。あたりの風景は、何処が道路で何処が田んぼなのか見境が付かなくなってしまった。それだけ雪が降り積もったという事なんだ。庭の植木達も雪の綿帽子を重そうにかぶり続けている。植物は自分で動く事は出来ないので、自らに積もった雪が重いとわかっていても振り落とす事が出来ないかわいそうな存在である。その点、僕は雪がすこしでも降り積もると、身体を「ぶるぶるぶるん!!」とふるわせて雪を払い落とす事が出来る。ここが動物と植物の違いなのだ。最も、余りにも雪の降り方が激しすぎると、僕も雪だるま状態になってしまうので、油断は出来ない。機能も言った通り、犬小屋の中で吹雪が行き過ぎるまで無難な日々を過ごすのが賢明な策というものだ。最も、御主人が帰ってきた時や、散歩に連れて行ってもらえる時、あるいは、待ちかねた御飯がもらえた時はその限りではない。積極的に犬小屋の中から出ていって、降りしきる雪の中で、うれしさの余り「ぴょんぴょん」と、飛び跳ねてしまうのだ。これは、まあ飼い犬の習性なので仕方がない・・・・

12月13日 ゆきがふったりやんだり
毎日雪である・・・・こうなると飼い犬は犬小屋の中で寝ているしかない。うっかり外へ出ようものなら、たちまち身体に雪が降り積もり、雪だるまになってしまう。中身が僕だとは知らない誰かが、炭の目や鼻をくっつけたりするかも知れない。だから犬小屋の中が一番安全で快適なのである。お座敷犬(屋内で飼われている犬の事)なら、コタツへ潜り込んだりストーブで暖まった部屋の中でお腹を広げてお昼寝しているかも知れないけれど、何しろ、僕は外犬(屋外で飼われている犬の事)だ。犬小屋の中は外より暖かいとは行っても、せいぜい2度や3度ほどだ。家の中は20度から25度ぐらいだというのにお寒い限りである。「でも、僕は北国の犬、秋田犬だもん!!、寒さについての愚痴は言わない事にしているんだもん!!」・・・・などと言いながら、しっかりと愚痴をこぼしてしまっている僕なのであった。

12月12日 ゆきがふったりやんだり、
昨日から降ったり止んだりしていた雪は、今朝になって15センチにもなった。僕は、早速「犬は喜び庭駆け回り・・」という唱歌を実践した。とにかく「北国の犬」なので雪が降ると楽しくてしょうがない。そこいら中を駆け回ったので。辺りの雪の上は僕の足跡だらけになってしまった。さて、そこで問題が生じた。「除雪」である。いつもいっている事だけれど、僕はデーゼルエンジンの音が恐い・・・除雪を始めようとしていた御主人は、一昨日のようにトラクターの廻りをうろたえながら右往左往した僕を早速犬小屋の中に閉じこめてしまったんだ。その中でいつものように、お座りをしながら悲しそうにトラクターの動きを見つめていた。やがて除雪が終わり、犬小屋の中から解放された僕の廻りは、黒いアスファルトの地面がむき出しになってしまっていた。あの白い雪はあちこちにうずたかく積まれてしまっていた。「しゅう〜ん・・・」僕は雪の降り積もった中で、寝ころんだり、駆け回ったりしたかったのに・・・僕は「秋田犬の性」である、雪への執着を台無しにしてしまった御主人に、わずかなる憎しみを覚えたのであった。

12月11日 ゆきがふったりやんだり
今日の僕は、午前中は「飼い犬」状態。午後は「捨て犬」状態になってしまった。どういう事かというと、お母さんは友達の家の結婚式でいなくなり、お兄さんはお仕事、家にいるのは御主人ただ一人だった。午前中は御主人も僕の所へ顔を出して、ナデナデしたり、ちょっかいを出したりしていたのだけれど、午後になると何処かへ行ってしまった。深々と雪が降る中に僕は置き去りにされてしまったのだ。捨て犬になってしまった僕は、夕方5時の時報に合わせて「哀しみの遠吠え」を上げた。すると、何処かの親切な人が車でやってきて、僕に御飯を食べさせてくれたんだ。僕はその人を思わず拝んでしまったよ。「すこし早いサンタクロース」はたまた、お釈迦様の再来かと思ったね。けれど、よく見ると、それは御主人だった。夜遅くまで帰らないものと思っていたけれど、僕に御飯を食べさせに帰ってきてくれたんだ。「ありがたい!!」と思ったのもつかの間、御主人は、またまた何処かへ出かけていってしまった。やがて・・・・しばらく時が経ち、やっと帰ってきた御主人は僕の所へやってきて「ただいま」といった。僕は御主人の身体に染みついた匂いを嗅ぎ、「今日は何と何を食べてきたんだな」と、推測した。御主人は、しきりに僕を「ナデナデ」するけれど、「お土産を持ってこない御主人」には用はない。冷淡にあしらう僕に失望したのか、御主人は早々に家に帰っていったのであった。

12月10日 ゆき
朝、目を覚ましたら「山も野原も綿帽子かぶり」状態になっていた。つまり雪が降り積もっていたって言う事だ。5センチぐらいも積もったのだろうか。僕は嬉しさが込み上げてきた。何歳になっても新雪の上を歩いて「ポツポツ」と僕の足跡が付いていくのを見るのはとても気持ちが良いものだ。そこで、朝一番の日課になっている「オシッコ」をした。これもまた気持ちが良い。「さて、後は御主人が出てくるばかりだな。」と思いながら、朝散歩の時間を待った。やがて、やってきた御主人は顔が見えないぐらいの防寒対策だ。
さて、これからが問題だ。「初積雪」となったので御主人が張り切ってトラクターに乗り込んだ。「トラクター除雪今冬初出動」である。エンジン音も高らかに瞬く間に雪を寄せていくのは良いけれど、デーゼルエンジン音の苦手な僕は、除雪しているトラクターの廻りをうろたえながら右往左往するものだから、業を煮やした御主人は僕を犬小屋の中に閉じこめてしまったんだ。こうして僕は犬小屋の中から除雪風景を見つめ、終わるのをひたすら待ち続けたんだよ。
めでたし、めでたし・・・・でも、御主人にとってはめでたい結末だけれど、僕にとっては、ちっともめでたくなんかないよ!!朝から「鳥になってしまったんだからね!!」・・・
つまり、「籠の鳥」って言う事だよ。

12月9日 はれのちゆき
朝、目を覚ましたら左後足が痛い。ちょっと引きずるようにしないと歩けない。そういえば夢の中で、大草原を駆け回り猛獣と格闘したような気がする。その時にでも怪我をしたか、ひねってしまったのだろう。僕のそんな様子に朝散歩に連れ出した御主人が気付いた。散歩から帰ってくると「今日は一日、ゆっくりと休養しても良いぞ。」と言うんだ。僕、そんな事を言われたのは初めてだったのでうれしかった。それで、僕は午前中はお日様の下でお腹を出して寝たり、午後は犬小屋の中で寝たりしていたんだ。「番犬」のお仕事はいっさいしなかった。だから「わんわんわん」とは一度も吠えなかったよ。もっとも、夕方散歩へ行く頃になったら足もだいぶ良くなっていて、普通に歩けるようになっていた。でも・・・もう少し足が痛いふりをしたら、明日も「番犬のお仕事」を休む事が出来るかなぁ〜・・・・

12月8日 はれたりくもったり
今日は天気も良かったから、一日中、昨日の宝物の見張り番と、「番犬」のお仕事をした。今日は、いつもよりたくさんお仕事をしたので、ご褒美に夕方散歩はいつもと変わった場所に連れて行ってもらったよ。まず、僕は御主人の運転するトラックの助手席に座って出発だ。この軽トラックは助手席を跳ね上げる事が出来る。僕が座るには少々狭いけれど、尻尾をお腹の下に押し込んでやれば何とかお座りの体制で座る事が出来る。御主人は犬を乗せるためにこんな仕組みの軽トラックを買ったらしい。もうだいぶ前の事だけれどね。さて、トラックが行った先とは、東の山裾にある溜め池である。あたりは薄暗くなったというのに「がぁがぁがぁ」と鴨さん達がにぎやかだ。もしかすると僕達を警戒しているのかも知れない。そして、そこいら辺を600mほど散歩をして帰ってきたんだ。所で、お楽しみである今日の夕御飯は「ウサギの耳風ちくわ添え、いつもの御飯りんごデザート付き」という豪華なメニューだった。僕はよだれをだらだら流しながら待ちかまえた、「よし」の命令で「敵陣」につっこむような勢いで御飯を食べ始めたんだよ。「満足、満足!!」

12月7日 はれたりくまもったり
実は昨日、こっそりと松の木と南天の木の間に「宝物」を埋めたんだ。そして今日・・・埋めた宝物が無事かどうか確認している所を御主人に見つかってしまった。僕が同じ所でしばらく動かないでいるものだから、不審に思った御主人が「むつ、何をしているんだ。」と声をかけた。僕は急に落ち着かない気分になり、しきりに宝物を埋めた所を気にし始めた。すかさず、「むつ、何か埋めたのか」と御主人の誘導尋問が・・・。僕はその場所をひっかいたりしながら御主人の行動を牽制した。犬は「正直者」なので、たったこれだけの行動で、「家の飼い犬は土の中に何か埋めたんだ。」という事がばれてしまったのだった。
いったい何を埋めたのかって?、宝物ってなんだ?、そういった疑問にはいっさいお答えできない!!。だって、僕だけの秘密の宝物なんだ。御主人もなんなのか知らないんだからね。

飼い主の談・・・そういえば、蒸かしたサツマイモをあげた事があったから、たぶんそれなのではないかと思っている。

12月6日 はれのちいちじあめ
今日は、朝方「キリリン」と冷え込んで霜が降りた。「薄氷」も初めて張ったよ。とても寒かったんだ。けれど日中は、とっても良い天気だったんだよ。僕も犬小屋を出て、外であくびをしながら大きく背伸びをして地面に「ごろん」と横になったんだ。お腹をお日様に向けて寝ころんだよ。あんまり気持ちが良いものだから「ごろん、ごろん」と、身体を地面にこすりつけたんだ。それを見て御主人が「むつ、気持ちよさそうだなぁ」とうらやましがりながら、僕の身体を「ナデナデ」してくれた。こうして僕の幸福な時間はお昼過ぎまで続いたのだった。15時を過ぎたとおぼしき頃、空が真っ暗になって「あられ」混じりの雨が降ってきた。お日様の光で、とってもよく乾くであろうと思われた洗濯物は犬小屋の真上に取り込まれた。ここからが僕の運の無さの始まりである・・・いつもの癖で、洗濯物に飛びついて引きずりおろした僕は、とても満足していた。たとえ、この後に御主人に見つかって「お叱り」を受けようとも、洗濯物を引きずりおろす快感は何物にも代え難い。洗濯物を泥まみれにして満足した僕は、番犬のお仕事に精を出していた。今日は、取っても忙しかったんだよ。しばらくして、当然の如く泥まみれになった洗濯物は御主人に発見されてしまった。そして、当然の如く御主人に「お叱り」を受けた。いつものように僕は身体を震わせながら「お叱り」が頭の上を通り過ぎていくのを待った。そして、またまた、「お叱り」が終わると、何事もなかったように振る舞う僕なのであった・・・

12月5日 くもり
昨日の夜までの暴風はなんだったのだろうか、と思うほど、今日は曇ってはいるものの穏やかな天気になった。僕は時々、外に出て寝そべったりしてみたけれど、やっぱり寒い・・・・やっぱり御主人が防寒対策を施してくれた犬小屋の中でお昼寝をする事にした。それでも退屈なので、時々、外へ出てみたりした。そして・・・・・
今日は、久しぶりに梅の木の根本の切り株に紐が引っかかってしまい、身動きがとれない状態になってしまった。御主人が忙しそうに僕の目の前を行ったり来たりしている。どうやら、僕が引っかかって身動きがとれない状態だって言う事に気が付かないようだ。それもそのはず、僕は引っかかっているというそぶりすら見せていない。5歳にもなってこんな状態になって困っているようじゃ笑われてしまう。「秋田犬イコール賢い」という評判を落とさないためにも、ここはなんとしても自力で自分自身を解放するしかない・・・・ところが思案すればするほど、動き回れば動き回るほど、紐は切り株にからみつくのであった。長い間、僕が梅の木の根本から動かないのを不審に思った御主人は、やっと僕が、がんじがらめの状態になっている事に気付いたのであった。こうして、解放してもらった僕は何事もなかったように犬小屋の中へお昼寝をしに入っていくのであった。

12月4日 ゆきがちらちら、のちはれ
今朝方は雪もちらほら舞っていて、今日も雪模様の天気かなぁ・・・と思っていたのだけれど、昼前からお日様が顔を出してくれた。僕があんまりお日様の事を恋しがるものだからお日様も僕の事を心配して顔を出してくれたんだね。僕は風が冷たいのもなんのその、外へ出てたっぷりお日様の光と暖かさを毛皮の中に取り込んだよ。御主人と行く夕方散歩は久しぶりに夕焼けを見る事が出来てうれしかったよ。御主人もカメラを持ち出して夕日の写真を撮っていた。それよりも何よりも僕が嬉しかったのは、久しぶりに自転車散歩が出来た事だ。思いっきり走ったよ。風を切り裂くように走ったよ。「はぁぁぁ〜、久しぶりに気持ちが良い日を送る事が出来た!!」
そこで一句「冬枯れの 野山に温し(ぬくし) 日の光」・・禄食

12月3日 ゆきがふったりやんだり、ぼうふう
朝、目を覚ますと辺り一面の景色が一面うっすらと雪化粧だった。「とうとう来るものが来たか・・・ヤレヤレ」といった気分だ。僕は平気だよ。寒くても吹雪でも良いんだ。問題は極度な寒がり人間である御主人だ。僕と散歩へ行くのにも顔が見えないぐらい完全防寒体制である。南極や北極にいるわけでもないのに犬から見れば「なんと大げさな!!」とあきれてしまう。でも、御主人の着ている防寒具は僕の毛皮より薄いようだ。なんと言っても安物だし、10何年も着ているからね。それに比べたら僕の毛皮は高級感あふれるものだから防寒対策は完璧な代物だ。最も、夏の暑さ対策がどうにもならないのが唯一の欠点だ。
今日の夕方散歩も御主人は先に書いたスタイルで行ってきた。僕は風があろうと、雪が吹き付けてこようと平気だったよ。御主人に見せつけるように風に向かって堂々と歩き続けたんだ。それに雪の降る中で「フセ」をしながら御飯がくるのを待っていたよ。こんな風にして北国の犬である「秋田犬」の名を汚さないように日々の生活の中で気をつけなければいけないんだ。なんと言っても僕達、秋田犬は「日本国天然記念物第1号」だからね。えっ?普段いたずらばかりしていて御主人に叱られてばかりいるのは「秋田犬の誇り」とは関係ないのかって?・・・
あっ、あれはつまり「無邪気な犬の戯れ」って言う事だと思うよ。
「じゃぁね。ぼっ、ぼく、急ぎの用があるので失礼!!」・・・・

12月2日 くもり
犬というのは「嘘」をつけない動物である。これは御先祖である「オオカミ」の血を受け継いだものだ。たとえ「飼い主」が飼い犬にだまされているなと感じても、それは誤解である。犬は正直なのだ。ただ忘れっぽいし、反省というものがないので、自分が何をしたのか忘れてしまい、結局御主人に真相を話す事が出来ないというわけなんだ。いたずらをしてもおおっぴらにする。今日もそうだった。僕は、また御主人の靴をくわえてもてあそんだんだけれど、遊びあきるとそのまま放りっぱなしである。そして、いつものように叱られる。何億年も繰り返し続いてきた波の満ち引きと同じである。変に隠そうとしないのが犬の偉い所である。「正直者の頭に福宿る」とは人間世界の言葉だが、犬の世界にも当てはまるのかも知れない。でも・・・・福・・幸福って事かなぁ。僕は幸福なのだろうか?人間の家族に囲まれてかわいがってもらえるから幸福なんだろうと思う。出来るならば、一日一食じゃなくて「3食昼寝付き」という境遇にしてもらったら「この上もない幸福」って事になるのじゃないだろうか?・・・・

12月1日 はれたりくもったり、ゆきがちらほら
僕が8月のお盆の頃から慣れ親しんできた「土のお山」が無くなってしまった。御主人が、冬を迎えて小屋の中に土を全部入れてしまったんだ。小屋の中に、また「土のお山」が出来るわけなんだけれど、見晴らしが良くない。これは「番犬」としての僕の仕事上、マイナスになるのは必定だ。御主人はそれがわかっていながらの今日の作業である。しかし、「泣く子と地頭には勝てない」ということわざがあるように、飼い主に文句を言う事は飼い犬にとって出来ない相談である。。僕はなくなってしまった土のお山を偲び、在りし日の懐かしい思い出にふけった。来年の8月には、また新たなお山が出来るのだけれど、今まであったものがなくなるという事は誠に寂しいものである。退屈な冬に向かって楽しい事や憩いの場所が無くなってしまうというのは犬にとっては命に関わる事でもある。今のところは「ぼろぼろシーツ」に噛みついたりして遊んでいるけれど、雪が降り積もって犬小屋から出られなくなったらどうしようか、今から心配している。「森の熊さん」のように冬眠でもしたいぐらいである。