むつ犬のおまぬけ日記
平成18年2月
2月28日 ゆきのちくもり
「汽車を待つ君の横で〜僕は・・・・」、はっ!!これ以上歌うとまずい事になるので止めるけれど、決して僕の歌が下手だから止めるわけではないのをお断りしておく。僕は毎日、夕方5時に鳴る市役所のオルゴールメロディに合わせて遠吠えをしているから声には自信があるのだ。・・・・・いやいや、こんな事をお話ししたいのではない。つまり、今日は朝から「なごり雪」のような雪が降ったという事なんだ。御主人のイメージする「なごり雪」とは、こんな様な状態の事をいうのだそうだ。まず、風がない事。ふわふわした雪である事。地上に舞い落ちるとすぐ消えてしまう事。お日様の光が淡く降る雪にきらめいている事。等々である。犬から見れば「雪」は「雪」なのだけれど、人間という動物は物事を複雑に捉えようとする習性があるようだ。とにかく、犬の為に簡単に言うと(この日記を読んでいるのは人間ばかりとは限らない・・・のかも知れない?っていう事)、「今日は朝から、御主人が思っているような雪が降ったっよ。」って事なんだよね。・・・・ふぅ、やれやれ・・・・

2月27日 くもりのちゆき
やっぱり、僕の心配していた通りになった。雪が降ってきたんだ。朝散歩の時は北西の風が冷たくて、地面や田んぼ、水路などの水たまりは氷が張っていたんだけれど、そのうち「チラチラ」と強い風の中に雪が混じり始めて、たちまち辺り一面を真っ白にしてしまった。それが、日中は溶けたり、また積もったりと繰り返しが続いた。吹雪にならなかっただけでも良かったよ。これでは、白鳥さん達も、まだまだ北へ旅立つ事は出来ないだろうなぁ〜・・・えっ?、僕はどうしたのかって?、もちろんこんな寒い日は犬小屋の中でぬくぬく過ごすのが飼い犬の賢い「退屈な日常の過ごし方」って言うものなんだよ。

2月26日 あめがふったりやんだり
晴れの日が随分続いたと思ったら、今日は雨になってしまった。東よりの風がやや強く吹いている。今日は朝方、トラクターの下に潜り込んで引っかかってしまったというおまぬけな事以外は、犬小屋の中で一日を過ごした。だから、中でおまぬけな事をしても誰にも見られずにすむ。・・・・いや、すんだというべきかな?・・・・・えっ?、どんなおまぬけな事をしたのかって?、それは「個犬情報及び個犬の私的行動の漏洩に関する法律」に抵触するので勘弁願いたい。(注釈・・・このほど犬に対しても人間同様の法律が施行された。犬による犬のための犬の権利向上委員会の努力のたまものである。)
ところで、朝散歩の時、白鳥さん達が、19羽の編隊と18羽の編隊を組んで北の空へ飛んでいった。みんな元気な鳴き声を上げている。東よりの風が強いので、すこし西に流されながら飛んでいるように見える。きっと、大きな鳴き声を出し合って、お互いを元気づけているのだろう。今日は、何処でお休みするのだろうか・・・・

2月25日 はれ
もうすっかり春だ。あれほどうずたかく降り積もったり、除雪で出来た雪の山がここ2週間の間にすっかり消えてしまった。気候は春と言っても良いぐらいだ。ただ、この後の「なごり雪」が心配だ。なごり雪といっても歌にあるように「東京で見る雪はこれが最後ね・・・・」なんていう穏やかな降り方ばかりだとは限らない。真冬の吹雪を思わせるようなのもあるから、北国の「なごり雪」は用心しなければならない。
さて、今日もポカポカのお天気だったので、僕は自分の身体を布団を干すように地面に広げて、身体のあちらこちらにお日様が当たるように「ごろんごろん」と寝返りを打った。御主人は、あまりにお天気が良いので買い物がてら、街の商店街へお散歩に出かけていった。お天気が良いのなら僕のように地面に寝ころんで「ごろんごろん」とすればいいようなものだけれど、人間は、そんな事が出来ない習性なのか、プライドがあるのか、ふらふらと歩き回る「散歩」あるいは「うろつき」、「徘徊」というのが気晴らしになるようだ。ただし、僕の散歩と違うところは、好きなところを好きなだけ歩けるという点だ。まぁ、人間の気晴らしなどはどうでも良いけれど、御主人が帰ってくる頃になれば、僕の身体は表も裏も背中もお腹も、お日様の暖かさをたっぷりと吸い込んでふっくらと仕上がっている事だろうと思うよ。

2月24日 うすぐもり、ゆうがたからこさめ
今日は、昨日より暖かかったので外へ出て地面に一日中寝ころんでいた。おかげで「番犬」のお仕事をきちんとこなさなければならなかった。犬は怪しいと思われる物体を見ると「吠える」という習性がある。だから「見てしまったもの」を「見えなかった」ということにすることは出来ないのである。人間と違って、とても正直な習性なのだ。犬小屋の中に入っていれば、「何も見えない」ので、のんびりとお昼寝が出来るのだけれど、この陽気に犬小屋の中になんかいられない。お腹をいっぱいに広げて暖かさを毛皮の奥にまで吸い取るのだ。と、いうわけでまじめにお仕事をしながら、すこし淡いけれどお日様の光と暖かさを受けながらのんびりと一日を過ごしたというわけなんだ。

2月23日 はれ
今日は、晴れたけれど昨日より風が冷たかったので、僕は犬小屋の中で過ごした。御主人は、またまた朝からお出かけのようで、いつものように「お留守番」を言い渡された。この所、毎日のように「お留守番」を言い渡されるので、僕は気が大きくなってしまった。この前は、「一家の主代理」という気分だったのだが、今日は「単なる出城(犬小屋の事)の主」ではなく、「一国一城の主」、つまり殿様というか、王様と言った方が良いかも知れない。それに僕は秋田犬なので、日本犬の種類の中では一番大きい!!僕は、そんな事を犬小屋の中でうつらうつらと居眠りをしながら考えていると、もう日本全国を統一したような気持ちになってしまった。「やり放題し放題」、殿様や王様なら好きな事が何でも出来るんだ!!と、・・・・・・・・・そのうち、うつらうつらとしていた首が、がっくりと前に倒れ、僕は深い眠りに陥ってしまったのだった。やがて、目が覚めると、時は淡い日射しが地上を照らす午後の一時だった。まさに「一炊の夢」、「邯鄲の夢」とも言うべき淡くはかない夢かうつつか幻か・・・・なのであった。

2月22日 はれ
今日は、昨日にもまして良い天気。それに気温もぐんぐん上がって10度を超えたようだ。僕はあまりの気持ちよさに、地面の上に寝ころびながら背伸びをしたり、ゴロゴロと地面に身体をこすりつけながら何度もあくびをした。お日様はポカポカ、僕はぬくぬく。言う事無しの一日だったよ。
ところで、僕が地面に寝ころんでいるとトラックで何処かへ出かけていた御主人が帰ってきて、「どけ!!」という。僕がここに座っているとトラックを止められないのだという。仕方なく立ち上がり脇に寄ったのだけれど、それでもじゃまだという。僕は「どうして?」というように首をかしげて考えていたんだけれど、じれったくなった御主人は車を降りると、「もっと遠いところへ行くんだ」と僕の紐をつかんで、ほんとうに遠いハウスの入り口まで僕を連れて行った。そして、お座りをさせると「よし、と言うまでここにいるんだ!!」と命令した。こうして御主人は無事トラックを駐車場に入れる事が出来たが、僕は「黙って座っている」という命令が守れず、動いてしまったために叱られてしまう事になったのだった。ご主人のお叱りはクドクドと叱るのでじれったい。鼻先を一つ、ぽんとぶって、それでおしまいというのが僕としては理想的な叱られ方なんだけれど、そうもいかないところがつらい・・・・
と、言うわけで、夕方散歩は上のお兄さんと行く事になったのだった。行く先はもちろん、おじいちゃん、おばあちゃんの所である。「楽しみ、楽しみっ!!!」・・・・何かもらえるからだよ!!

2月21日 はれ
今日はとても良い天気になった。御主人は朝から出かけていった。僕に「お留守番」と言い置いてだ。もう、我が家には僕一頭だけだ・・・・そして、「お留守番」を任せられたからには、今日一日、家族の誰かが帰ってくるまで、僕がこの家の主代理である。何をどうしようと、この家の主だからかまわない事になる。早速、玄関から堂々と泥足のまま入り込んで、冷蔵庫や食物が入っている戸棚などを開けて食い散らかすとしようか、なって・・・・思ったのだけれど、よく考えたら僕は紐で太い鉄の柱につながれている身だった・・・・
御主人はなかなか帰ってこなかった。その代わり、早出のお仕事から帰ってきた上のお兄さんが散歩と御飯の世話をしてくれたんだ。御飯も食べ終わり、のんびり地面に寝そべっていると御主人が帰ってきた。そして、御主人がトラックから降りたその時だった。暮れなずんでいく空に白鳥さん達の声が聞こえ始め、やがて何百という数の群れが南の空から現れ、我が家の真上を北の空へと向かう光景が見えた。この行動は、「もうすぐ春がやって来ますよ」っていう白鳥さん達からのメッセージなんだよ。「もう、白鳥たちの北帰行なんだ。ムツ、白鳥さん達が帰って行くぞ。良く見るんだ。」と、御主人は僕に言ったのだけれど、僕は、さっきもらった御飯が少なかったので、盛んに器の中や廻りをペロペロなめて「もう少し食べ物をちょうだい」という意思表示をするのに夢中なのであった。

2月20日 あめのちくもり
今日は穏やかで暖かい一日になった。日中の気温が8度まで上がったので、僕は一日中外で寝ころんで「番犬」のお仕事に汗を流した。そんな事で一日の大半の時間は流れていったのだが、もっと効率よく見張りが出来るようにと、雪が消えた庭木の方へ足を踏み入れてしまった。問題の「梅の木」があるところだ。梅の木のある場所は、僕にとって禁断の場所、鬼門とも言うべきところなのだ。ここへ足を踏み入れると必ず紐が引っかかってしまう。人間世界にもこんな場所があるという・・・「ばみゅーだ海域」とかいって、そこに立ち入ってしまった、ありとあらゆるものは、もう二度と帰ってこないのだという。僕も「梅の木」の場所は、誰かが助けてくれない限り二度と犬小屋へは戻れないから、「なんとか海域」と似たようなものだ。それで、引っかかってしまった僕は、「ふせ」も「ねる」も出来ない状態になってしまい、「おすわり」の姿勢で誰かが助けに来るのを待ち続けた。その間、何人かが我が家に来たり通りすぎたりしたので「わんわんわん」と吠えなければならなかった。こんな格好でお仕事をするなんて、強制的に働かされているようなものだった・・・・・

2月19日くもりのちあめがふったりやんだり
僕は、久しぶりに「だだ」をこねた・・・・それをくわしくお話しする。雪がだいぶ消えて、田んぼがある農道へ行く事が出来るようになったので、僕達の夕方散歩は、こちらのコースを歩く事にした。農道には雪が全くなくなっている。僕はとても良い気分になって、足取りも軽く歩いていたのだ。しかし、大学の駐車場のところまで来ると、雪が吹きだまっているところがある。僕は難なくその雪の上を歩いていけそうな気はしたんだけれど、御主人は「もう帰るぞ」という・・・そこで僕は、足を大地にしっかりとふんばり、「だだ」をこねた。僕も御主人もお互いにらみ合って一歩も引かない構えを見せたのだけれど、結局、僕の方が負けてしまった。こうして、僕は尻尾を下げて、つまらなそうに後ろを何度も振り返りながら、そこから家へ引き返す事になってしまったのだった。久しぶりに「だだ」をこねたので、気合いの入れ方が十分ではなかったようだ。それに、久しぶりという事で、御主人との駆け引きの勘が取り戻せなかったのも敗因の一つである。これからは、時々「だだ」をこねて、勝負強い犬になるように訓練しなければいけないぞ!!

※「だだをこねる」とは、普通は人間の子供が欲しいものがあったりする時に床に寝ころんで身をよじり、泣いたりわめいたりして自分の要求を伝える事をさすが、犬の場合は、御主人の命令や要求に対して、不服だった場合、声も出さず、動かず、じっとそのままの姿勢で、ピクリとも動かない状態をさす・・・・

2月18日 くもりときどきゆき
やはり、僕の思った通りになった。雪は夜の内に舞い降りて、見渡す限りの風景を、またまた白一色に彩ってしまった。しかも、朝になったらぴたりと止んで青空になってしまっていたのだ。律儀な天気だ・・・青空が広がったという事はお日様も顔を出したという事だ。それでも暖かくはならず、雪も消えず、風景は一日中、白一色のままだった。朝の内は晴れていたのだけれど、やがて、お日様の淡い光が差しているにもかかわらず、雪が舞い降りてきた。僕はため息をつき、朝一番に浴びたまぶしいお日様の光を心の中に大事にしまい込み、犬小屋の中へ潜り込むのだった。
そこで一句
「風花に 淡き日射しの 彩えり」・・・禄食 

2月17日 くもりのちゆき
この所、暖かい日が続いていたのでうっかりしていた。そういえば季節は、まだ「冬」だったのだ・・・雪もだいぶ消えかかっていたので油断をしていた。すると、途端に今日のような天気だ。朝から風があって、水たまりや水路は氷が張っていて寒い。僕達は朝散歩の時、うっかりと氷が張ったところに足を踏み入れて転ばないように細心の注意をして歩いた。雪がすこしでもあれば転んでもいくらかはクッションの変わりになるのだけれど、今は表面が堅く凍った土がむき出しになっている。午前中は何とか曇り空だったが、午後から「雪」がチラチラ舞い降りてきたと思ったら、たちまちあたりが見えないぐらいの降りようになってしまった。今夜は積もるのかなぁ・・・・・

2月16日 くもり
僕は飼い犬なので、御主人や家族に向かって「御飯が少ないぞ!!」などと、あからさまに文句は言えない立場にある。だから、日頃の不平不満は態度や動作、行動で表す事にしている。「むつ犬が、あの動作をしたから、こういうぐあいにしてもらいたいのだ」と、はっきりと理解させる行動だから、毎回その動きが決まっていなければいけない。たとえば、「御飯が少ないぞ!!」といった場合は、御飯を食べ終わったカラの食器へ顔をつっこんで、ペロペロと未練たっぷりに底をなめてみせる。反対に、「今日の御飯は満足であったぞ」といった場合は、プラスチックの植木鉢をくわえて尻尾をフリフリして踊ってみせる。ただし、その他のうれしい時もこれをするので、その場の状況を見ながら御主人や家族は僕が、どうして「ご機嫌麗しい」のかを判断する事になる。
飼い犬だからと言って、何も不平不満を言えずにいると、肉体的にも精神的にも不健康だからね。飼い犬だって言う時は言うんだもんね。しかし、不平不満の動作をしたからと言って、御主人や家族達が、必ずそれを取り上げて解決してくれるわけではないという事を肝に銘ずべきなのだ・・・・ああぁぁ〜飼い犬・・・・
そのうちに「飼い犬エレジー」とでも題して歌でも仕上げようかと思っている僕なのであった。

2月15日 くもり
2,3日、雨が続いたので雪がだいぶ消えた。道路の雪はすっかり無くなった。一面、雪の原だった田んぼは区画がはっきり見えてきたし、所々は地表も見えている。こんな状態なので散歩に出かける僕のお腹も泥んこになってしまう。今日も暖かいので、曇り空ながら、僕は外へ出て横になってみた。横になったとは言っても、お日様が出ていないから、お腹を広げたわけではない。フセのような格好で、地面の感触を味わってみただけなのだ。御主人も、春が近くなって、地面が見えてくるとうれしくなると言う。それだけ、雪はうんざりするものなのである。
そこで一句「春泥に 雪ひとひらの 化粧かな・・・禄食」

2月14日 くもりときどきあめ
御主人は午前中に何処かへ出かけていった。夕方散歩の時間になっても帰ってこない。僕は冷たい雨に打たれながら帰りを待ちわびていた。やがて、あたりが真っ暗になってしまった頃、御主人のトラックが家に入ってきた。僕は大喜びでお出迎えをした。トラックから降りてきた御主人は「折り詰め」と言ってごちそうがいっぱいは言っている箱を僕に見せた。おいしそうな匂いがただよってくる。トラックで出かけていったのでお酒は飲めず、お茶ばかりを飲んで4時間ほど宴席にいたのだそうだ。しかも、なんと「折り詰め」の中身にはぜんぜん手をつけていないというのだ。僕なんかだったら、ごちそうが出されれば、たちまちの内に平らげてしまうのだけれど、御主人は我慢強い人だ。食べたくないわけでもないらしい。もし、食べたくないのだったら、全部とは言わないけれど、僕にお裾分けを必ずくれるはずだ。僕は、そのお裾分けをいくらか期待したのだけれど、御主人は「折り詰め」を、そのまま家に持ち帰ってしまったのだった。「ふん!!良いんだもんね。僕なんか、とっくに上のお兄さんから御飯をもらってお腹いっぱいなんだもん!!」と、よだれを流しながら、強がりを言い、去っていく御主人の背中をにらみつけるのであった。

2月13日 くもりのちあめ
なんと!!今日は一転して雨降り天気になってしまった。昨日まで「カチンカチン」の地面が「グズグス」になってしまったよ。「雪が多い」とか「寒い」、等々と冬の悪口ばかり言っている僕達だけれど、なんだかんだと言われても、季節という一種の生き物のようなものは確実に春という場所へ僕達を誘ってくれているようだ。「三寒四温」という言葉があるけれど、今はまだ「五寒二温」みたいだ・・・
この雨では、僕の夕方散歩もどうなる事かわかりはしない・・・出かけていってもお腹が濡れて冷たくなるばかりだし、ビニールハウスの中を駆け回るのはほこりっぽいし、つまらない・・・犬小屋の中で、僕のおもちゃでもある「プラスチックの植木鉢」を相手に「狩り」のお稽古でもしていた方がよほどましというものかも知れない。

2月12日 くもりときどきゆき
今日の朝散歩はひどい雪で、僕は久しぶりに「雪犬」になって散歩に行ってきた。雪犬とは、僕の身体一面に雪が降り積もり、真っ白になってしまう事だ。「ぶるぶる、ぶるん」と身体を震わせて払い落とせば落ちてしまう雪ではあるけれど、そんな事をいちいちやっても、後から後から雪は僕の身体に降り積もってくるだけだ。
やがて、あたりが薄暗くなって夕方散歩の時間がやってきたけれど、午後から出かけていった御主人は、まだ帰ってこない。僕は御主人を待ちわびて、深々と降り積もる雪の中で身体に降りかかる雪のかすかな重みを感じ、僕の身体が白一色の風景と同化したように地面に立ちつくすのであった・・・しかし、御主人は来ない・・・・
そこで一句
「春たちて、降り積む雪の なお白し・・・・禄食」

2月11日 くもりのちゆき
今朝は、昨日の暖かさでぐすぐすのシャーベッド状になってた雪道が凍ってしまっていた。僕達は滑って転んだりしないようにおっかなびっくりと言った腰つきで散歩に行ってきたんだよ。午前中は僕も凍り付いた地面に寝ころんだりしていたんだ。すると御主人がやってきて、昨日の暖かさで屋根の雪がせり出してきているのをたたき落としてくれた。それは良いのだけれど、僕が真下にいると言う事を忘れてもらっては困る。たたき落とされた雪が僕のすぐ近く、30センチも離れていないようなところへ落ちてくる。あんな雪の塊が僕の頭にあたったら大変だ。脳しんとうを起こして、頭の中で蝶々やきらきら星が飛び回り、一足春が来たような幻想を見てしまいそうだ。だけど、運が良くそんな事態には至らなかった事は幸いだった。しかし、午後からはまた深々と雪が降り積もって来て、辺り一面は白一色の風景・・・僕達たちは今、白い幻想の世界にいるのかと錯覚してしまいそうだ。春はまだ、白一色の幻想の遙か彼方にあるようだ・・・・。

2月10日 くもりときどきあめかみぞれ、かみなりあり
近頃、不満に思っている事を箇条書きにしてみた。近々、この書状を御主人に突きつけて、直談判したいと思っているのでみんなもそのつもりで聞くように。
1.最近の散歩時間が短い。約10分
2.御主人は僕に御飯を与えると逃げるように家に帰っていく。
3.御飯の量が、毎日多かったり少なかったりする。
4.雪の上のボール遊びを認めて欲しい。
5.ハウスの中での「代替え散歩」は止める事。
6.朝にもらう「犬用ビスケット」は3個から4個に増やす事
7.お母さんがくれるおやつが貧弱なので豪華なものにする事

今のところ7条あるのだけれど、御主人の考えよう一つで、さらに増える可能性もあるので、僕の飼い主である御主人は心して、この要求を認めるべきだろうと思う。これを、犬暦で言えば今年、つまり戌年のさむさむノ月おなかなでなでノ日(人間の暦でいえば、今年の2月中旬頃の日の事)に御主人に要求するのだ。これを名付けて曰く「7条の御請求文」と言う!!!今なお歴史に名を残す「五箇条のご誓文」の向こうを張ってやるのだ。これは犬の歴史上に名をとどめるに違いないのだ!!!

※解説・・・犬暦(犬がわかりやすいように人間に合わせた暦の事
、犬の身体の部位によって、1ヵ月の日にちが頭から胸、お腹、尻尾まで別れている。人間で言えば、やく1週間ごとに別れているのだ。なお、月の名前は、1月や2月ではなく、その月の印象的な事柄を名称として用いている。たとえば2月は1年で最も寒い時なので、寒寒月だ。犬属の習慣で、同じ言葉を繰り返して一つの意味を持たせているのが特徴である。)

2月9日 くもりときどきゆき・・ってゆーかぁ、ふぶきにちかい
夕方、買い物に行った御主人が帰ってきた。夕食の買い出しらしい。何でも、今日は御主人が夕御飯を作るのだそうだ。いつもは僕の御飯だけしか作らないので、人間が食べる御飯なんか作れるのかなぁ?って思ったけれど、作れると思ったからこそ、材料を買ってきたのだろう。それは、まぁ良いのだけれど、御主人はトラックから降りると、(トラックは犬小屋の出入り口を半ばふさぐように止めてある。)僕の目の前で、買ってきたものが入っている箱を開けて、中身をいちいち僕に見せるんだ。しかも僕の鼻先に持ってきて、「ほら、良いだろう。牛肉だぞ。お菓子だぞ」ってね・・・まったく何を考えているんだか・・・僕がその気になりさえすれば、目の前でちらついている牛肉の入ったパックなんか、すぐさま奪い取って食い散らかす事も出来るんだ。でも、僕がそんな事を絶対しないという確信があるからこそ、御主人は嫌みったらしくこんな事をするんだ。・・・・・そうなんだ。僕は御主人の手にあるものは「よし!」という命令があるまで、絶対に口を付けられないんだ。もし、誤って口を付けてしまったら、この跡恐ろしい事になる・・・だから僕は牛肉のパックに手を出す事なんて出来ないんだ。
「三つ子の魂百まで」とは人間世界のことわざにあるけれど、子犬の頃「しつけ」られた事とはいえ、何とも奥深く恐ろしいものだと思う。はぁぁぁ〜、あこがれの牛肉!!食べたい!食べたい!!・・・・ちなみに、今日の人間家族用のメニューは「ハヤシライス」なるものだった。なお・・・僕の御飯は、いつものメニューだった・・・

2月8日 はれたりくもったりのちゆき
今日は御主人のお誕生日だ。そのせいかどうかは、わからないけれど、御飯をいつもより100グラムほどよけいにもらったので、夕方散歩が終わり、御飯を食べ終わってからも雪の中で「番犬」としてのお仕事に励んだ。いつもなら、御飯を食べ終えてしまえば犬小屋へ入ってしまい、「番犬」のお仕事は終わりなんだけれど、100ラムほど御飯をよけいもらったという義理があるので事務的に「お仕事終わりました」、「はい、そうですか。」というわけにはいかくなってしまった。なにしろ「犬は3日飼えば恩を忘れず」ということわざが人間世界に広く知れ渡っているので、いまさら、不義理な事も出来ない。何しろ、信用を得るためには長い年月が必要だけれど、信用をなくすのは一瞬だからね。しかも犬属全体の信用にも関わってくる。「むつ犬が人間の信用をなくした!!」なんて言う事が犬社会に広まってしまうと、犬属から村八分になってしまいかねないから、日頃の行いだけは品行方正を心がける事にしている僕なのであった・・・・あっ!!また誰か来たみたい・・・「わんわんわん、わおぉぉ〜ん!!」

2月7日 みぞれ
今日は気温が高くなった。と、言っても4度ぐらいのものだけれどね。それで雨のようなみぞれのようなものが一日中降り続いた。おかげで、道路の雪が溶けて「ぐずぐす」になってしまった。
ところで僕は今日、おやつをもらおうとして滑って転んでしまったんだ・・・話は、今朝にさかのぼる。みぞれの降る中を散歩から帰った僕は、いつものように玄関に入り込んで、御主人から「犬用煮干し」をもらった。その後は、お待ちかねの「お母さんからの秘密のおやつ」をもらう番だ。ところが、お座りをしてお行儀良く待っていてもなかなかやってこない。僕は、とうとうしびれを切らして、「禁断の領域(御主人達の家の中の事、子犬の頃は家の中で暮らしていたので、勝手知ったる家の中というわけなんだ。)」へ足を踏み入れ、台所へ侵入した。そこを御主人に見つかり、「何をしている!!」と、怒鳴られたので、僕はあわてて玄関へ戻ろうとしたんだ。すると、今まで雪がグズグズになった道路を歩いてきたものだから足が濡れている。おまけにツルツルする廊下だ。僕はその廊下で「つるん、すって〜ん、ころりん」と転んで横倒しになり、そのまま玄関へ転がり落ちてしまったのだった。痛かったぁぁぁ〜・・・でも、おやつを食べたいという執念は恐ろしいもので、僕はすぐさま起きあがり、お座りをしてお母さんからおやつをもらったのであった。ちなみに、今日のおやつは「鰹の削り節」であった。僕は「猫さん」じゃない!!

2月6日 ゆきのちくもり
今日は、御主人が「ムツ、お留守番だよ」と言い置いて何処かへ出かけてしまったので、午後からはひとりぼっちになってしまった。散歩の時間になっても帰ってこないので、上のお兄さんと散歩に行った。行った先はおじいちゃんの家だ。お兄さんと散歩に行くと、ここへ連れて行ってくれるのでわくわくする。そして、家でもらうおやつとは違って、ものすごく豪華なおやつがもらえるのも楽しみの一つだ。今日は、牛肉をもらったよ。牛肉なんて我が家では滅多にもらう事が出来ない・・・こうして僕はおばあちゃん達に愛想を最大限に振りまきながら長い散歩を終えて帰ってきたんだ。帰ってくると御主人のトラックがあった。やっと帰ってきたんだと思って犬小屋の脇を見たら、御飯と水がおいてあった。おばあちゃんの家でもらったおやつではお腹がいっぱいにならなかったので、早速食べ始めたら、冷え切ってしまっていたのだった・・・・ヤレヤレ・・・である。

2月5日 はれ、ふぶき、それのくりかえし・・・
今日の天気は、日付の側に書いた通りだ。お日様が照って、「気持ちが良いなぁ〜」と、外へ出ると、もう吹雪になっている。それが一日の内に何度か繰り返しがあった。僕は、もう馬鹿馬鹿しくなって、ずっと犬小屋の中へ閉じこもってしまった。
ところで、今日は、御主人が我が家(犬小屋の事)を訪問してくれた。いつもは玄関先(犬小屋の入り口の事)で声をかけたり入り口をめくったりする(防寒シートが犬小屋にかけてあるので、それをめくる事、決してドアや引き戸の事ではない。)だけなんだけれど、今日は、なんと犬小屋の中まで入り込んできたんだ。別に犬小屋の中に御主人が入り込んでも、我が家(犬小屋の事)は、まだ秋田犬の成犬が、もう1頭ぐらいは入る余裕がある広さだ。それで、御主人は犬小屋の中へ入り込んで、僕に色々話しかけるんだ。よっぽど、自分の家にいられない事情があったに違いないと思い、僕は御主人の相手をしていたんだけれど、そのうち僕のほっぺをつねったり、毛を抜いたりし始めたので、僕はいやになって犬小屋を出た。つまり、飼い主に我が家を追い出されたわけなんだ。理屈から言えば、大家は御主人なんだけれど、仮にも僕は一国一城の主だ。ましてや、借り物とはいえ犬小屋は僕の城、住みかだ。いくら大家(御主人の事)といえども、かってに、横暴にも店子(僕の事)を追い出しても良いという法律はない!!(でも〜家賃を払っているわけじゃないんだけれどね。その代わりとして番犬のお仕事をしているって事なんだ)
しかし、これは〜・・・・「がうん、がるるるる〜!!」って事だぞぉぉ〜

2月4日 ふぶきがふいたりやんだり
今日は「立春」。昨日言ったように、今日は春になる日である。今時の言葉で言えば「お正月」にでもあたるのかなぁ?。
でも・・・・今日も吹雪・・・結局、春にはならなかった・・・
御主人は朝から大量に積もった雪をトラクターで除雪している。吹きだまったところなんかは30センチ以上もある。ところで、僕はこの頃「おりこう犬」になったので、トラクターが動き始めたからと言って、うろたえたりしなくなった。除雪が終わるまで、じっと犬小屋の中で待機しているのだ。そしてトラクターのエンジン音が止まると外へ出て、新しく積もった雪の山にマーキング(縄張り)をする。この前の雨降りでだいぶ少なくなったと思った雪山が、また以前のように高くそびえている。
朝散歩も大変だった。風雪に顔をさらし、顔と言わず足と言わず、体中雪まみれになりながら所々に吹きだまった雪を泳ぐようにかき分けての散歩だったよ。歌謡曲にあるという「風雪流れ旅」と言ったところだ。こんな厳しい吹雪の中の散歩だったけれど、僕はのんびりしたものだ。あちらこちらの匂いを嗅ぎ廻り、オシッコを引っかけたり、時々立ち止まっては、遙か彼方を見回し、他のワンコも散歩に出ていないかと思いを巡らせたりする。御主人は寒いのか、早く帰ろうと言うけれど、散歩は僕にとってストレス解消であると共に、唯一の運動でもあるので、そうそう早く帰るわけにはいかない。悠々と色々な事をしながらゆっくりと家に帰ったんだよ。僕の場合は、これを称して「風雪ながら旅」というんだ・・・・・

2月3日 はれのちふぶき
今日は「節分」だというのに大雪になってしまった。午前中はお日様が出て、夜の内に5センチほど積もったふわふわの雪の上で寝ころび、日向ぼっこをしていたんだけれど、午後になったら風が強くなり、雪も激しく降った来たので犬小屋の中へ引きこもる事にしたんだ。御主人が言うのには、明日は「立春」と言って春になる日だと言うけれど信じられないね。だいたい、御主人自身が、2月になってしまったのも忘れて、いまだにこの日記の日付を書く時に1月と入れてしまうぐらいだ。それに御主人の部屋にある2つのカレンダー(雑誌の付録である風景写真と、わざわざ買ってきた500円の仏像写真のもの)は、いまだに一月のままだ。このように、御主人が日付(季節)をはっきりと認識していないから、明日から「春」だと言われても信用できないわけだ。
それにこの雪・・・・何処に捨てたらいいのか御主人は悩み始めている。家の敷地の中は雪の山になってしまっている。犬の僕も手伝えればいいのだけれど、前足で雪を堀り返すぐらいしかできない。それと、喉が渇いた時に氷の塊をほんの少し食べるぐらいだ。これじゃぁ、除雪した事にはならない・・・
「冬来たりなば春遠からじ」とはよく言われる言葉だけれど、
北国には合わない言葉である。下のお兄さんがいる「東京」とやらは日中の気温が15度もあるという。ここら辺だったら、4月の上旬から中旬ぐらいの暖かさだよね。まさに「しんじらんないぃぃ〜っ!!」ってところだよね。

春遠し 雪の花咲く 枯れ野かな  ・・・・禄食

2月2日 ふぶきのちくもり
はぁぁ〜、又やってしまったよ。・・・えっ?、またトラクターの下に潜り込んで引っかかってしまったんだ。しかも、外は大吹雪の早朝にね。僕は引っかかったまま、寒さに耐えながら「ボーッ」と、突っ立っていなくちゃならなかったんだ。朝散歩に行こうとやってきた御主人は、僕の姿を見つけるとあきれ果てたのか、無言で僕を解放してくれた。そして、トラクターの潜り込める部分に障害物を置いた。それが終わると、ゆっくりと僕の方に向き直り、いきなり
両方のほっぺを思いっきり左右に引っ張られて「ウマシカ(馬鹿)犬!!」と罵倒された。「おまぬけ犬」を通り越して、「ウマシカ犬」に出世したというわけだ。今日からこの日記は「むつ犬のウマシカ日記」と呼ばれる事になるかも知れないなぁ・・・御主人は、僕を「ウマシカ犬」と4度も呼び、「このことを日記に書いて、声高々と大恥を全世界にさらすのだ!!。いくら犬は反省をしないと言ってもほどがある。こうすればこうなるという学習ぐらいはするものだ!!」と、厳命されてしまったよ。・・・・と、言うわけで、僕の大恥をこうして全世界に公表しているって言うわけなんだ。
「しゅぅぅ〜ん・・・」
そこで二句
ウマシカと 罵倒されたり 馬十頭・・・禄食
それならば 鹿は何頭 下等かな・・・禄食

2月1日 くもりのちゆき
あ〜ぁ・・・、また雪が降ってきたよ。それも深々と・・・昼前から降り始めて夕方になってもまだ降り続けている。いくら犬でも、雪が降るたびに喜んで庭中を駆け回る事も出来ない。第一、くたびれる・・・。だから雪国の犬が庭を駆け回るのは、初雪が降って、ややしばらくの間だけという決まりになっている。「犬新聞社北国支社」では、「雪が降るたびに喜び勇んで庭を駆け回ると、あなたの健康を損なうおそれがあります。」という広告が冬の初めに出るぐらいだ。しかし、これは犬の習性なので、完全に駆け回るのを止めさせる事は出来ないでいる。僕も、時々、雪が降ってきたりすると、外へ出て、プラスチックの植木鉢にじゃれてみたり、ぼろぼろのシーツを引きずり回して駆け回りたくなる衝動に襲われる。12月までは、そうだった。何とか理性で押さえてはきたのだけれどね。ところが、1月になって、こんなに雪が降ってくると、もう「雪が降る」という現象に鈍感になってしまい、犬の習性(本能)が麻痺してしまったように駆け回る事をしなくなってしまう。本当は、犬の習性が麻痺するって言うのは犬である事を止めるって言う事になってしまうんだけれどね。飼い犬も、だんだん人間になっていくのかなぁ・・・・?