平成18年3月
3月31日 くもりときどきゆき、かぜつよし
今日は雪は積もらなかったものの、強い風の中で雪がジルバを踊っている・・・・3月も今日で終わりだというのに、花のつぼみは引っ込んでしまうし、今が盛りの萌葱色だったふきのとうも、この寒さで「赤茶色」に枯れている葉っぱを見かける。「がうん、がるるるる〜」と、天に向かってうなっても、どうなるものではない。こんな時は、ひたすら耐え続けるしかないのだ。オオカミだった御先祖の時代から、そうやって様々な事に耐えて種族を繁栄させてきたのだ。だから僕も・・・・・だけど・・・「春よ、早く来い!!」
3月30日 くもりときどきゆき
ひぇぇぇぇ〜、朝起きて犬小屋を出たら、見渡す限り白一色の世界になっている。雪が降り積もったのだ。僕は恐ろしさの余り、身震いをして、今の景色を見なかった事にしようと犬小屋の中へ引っ込んだ。桜や梅の花が咲こうという、この時期に雪なんて信じたくない。そうだ!!まだ夢の中にいるんだ。そう心に堅く信じこませながら、中で横たわり、うつらうつらと「幽玄の世界」をさまよう僕なのであった。それにしても「寒い!!」
3月29日 くもりときどきゆき
風が強いのは相変わらずなのだが、おまけがくっついてきた。雪が降り始めたのだ。今頃になってまで雪なんか降らせなくても良いのに、・・・・僕の最大の楽しみである「日向ぼっこ」が出来ない。おまけに天気が悪いので、御主人が散歩に連れて行ってくれない。かろうじて御飯はもらっているけれど、その他はかまってくれないのだ。僕は、もう「すとれす」とやらがたまる一方なのである。「春よ来い!!」・・・・いやいや、春は来ているのだけれど、現在の春というヤツは、冬という仮面をかぶったまま正体を現さない謎の怪人みたいなものになっている。「もっと光を、もっとぬくもりをわれに与えたまえ!!」と、言った僕の心境だよ。
3月28日 うすぐもり
何だか風が強い。春先には良くある事だと御主人は言うけれど、「ゴウゴウゴウ」とうなりを上げて風が吹いてくるので少々恐い。
風は強いけれど気温は暖かで、僕は地面の上に「ごろん」と寝ころんだ。そして、シャンプーがしていなくて、ごわごわの毛皮に、それ相応に暖かさを取り込んだんだ。ふわふわの毛だったら、たっぷりと暖かさを取り込めて、舌を出すぐらいに身体が暑くなったのだろうけれど、季節柄仕方がない。今日は御主人も厚い毛皮(防寒具の事)を脱いでのお仕事だったよ。それでも、薄い毛皮(上着の事)は脱がなかったので、額にうっすらと汗をじませていたよ。「額に汗をして働く」ってこういう事だったんだね。と、人間のことわざの的確な表現を知った思いだった。今日は良い勉強をさせてもらったよ。犬も学習して賢くならなくちゃね。えっ?、賢くなる事と勉強する事は違うって・・・・なに、それ・・・?
3月27日 はれ
今朝は霜が降りた。それでも、めっきり春らしくなって桜は花芽と葉目の区別が出来るぐらいにふくらんだ。と言っても、まだ堅いつぼみである。クロッカスやフクジュソウなどと言った花は顔を出し始めている。もうすぐ花が開くだろうと思うよ。梅のつぼみは早いのになると、うっすらと紅色に染まり始めている。サザンカなんかは、雪が降る前に咲き始め、寒さに出会ってそのまま開くのを止めたつぼみが、今頃になって咲き始めている。とにかく、北国の花鳥風月は京都や東京のそれと違って、だいぶずれているのだ。それに比例して、犬の感覚も、だいぶずれているのだ。「春風駘蕩」と言うのか、のほほんと、その日その日を暮らしているのだ。まぁ、こんな生き方が、犬や人間に限らず、生き物本来の自然な生き方なんじゃないかと思うんだけれどね。
3月26日 くもりのちあめ
今日は、たいそう風が強かった。僕達は吹き飛ばされないように朝散歩へ行ってきたんだよ。でも、風が強かったおかげで「洗濯物が早く乾く」と、御主人とお母さんが言っていた。「残念ながら、今日はシャンプー日和じゃないな」といえ声も聞こえたので、僕は「ぎくり」と身を震わせた(僕はシャンプーという言葉に敏感に反応してしまうのだ)。幸いな事に、昼前から雨が降り始めてしまった。雨も降った事だし、昨日のお仕事(土入れのお手伝い)で、手いっぱい働いたので腰が痛い。だから、僕は犬小屋の中でのんびりと過ごす事にした。だけど、薄暗い犬小屋の中で一人で寝ているのもわびしいものだ。それに今日は日曜日というのに、家族の誰一人として僕の所へやってこない・・・来れば来で煩わしいし、来なければ寂しいし、複雑な心理状態でのお昼寝だったよ・・・・
3月25日 はれ
今日は、とっても良い天気で「僕のシャンプー日和」だった。だけど、今日の星占いに寄れば、僕は幸運に恵まれるとあった。それがみごとに当たった。シャンプーされるべき日和だったにもかかわらず、御主人とおばあちゃん、上のお兄さん達は、昨日お話しした箱に土を詰めるお仕事をしなければならなかったのだ。さらに幸運は重なった。この土入れは毎年恒例で、おやつが用意される事になっている。もちろん人間のだ。僕はいつも、そのお裾分けに預かる事にしているのだ。もちろんただではもらわない。この仕事が始まる、ずっと前にも仕事をしている。「この箱には土が入っていません」というチエックをするお仕事だ。土が入っていない箱はひとまとめにして「チェック完了」の印としてオシッコをひっかけてある。そして、今日は箱をくわえておばあちゃんに渡す事などもした。ただし、箱を口でくわえるのは重すぎるし、僕が口にくわえたものは僕のものという意識があるので、なかなか手(口)放せなくなってしまう。だから2,3回やって止めたよ。後は、みんなのお仕事を監督した。僕には、このお仕事が一番合うようだ。こうして僕は額に汗を流して・・・・いや、舌から汗を流して正当な報酬としておやつをもらったのであった。久しぶりに食べる「人間用のおやつ」はおいしい。味が濃いって言うのかなぁ・・・えっ?、何をもらったのかって、揚げパン、のど飴、納豆巻きをもらったんだ。中でも納豆巻きは、初めて食べたけど、とてもおいしかったよ。なんと言っても、納豆を食べなくちゃ日本犬(秋田犬)とは言えないよね!!
3月24日 あさ、ゆきがちらちら、のちはれ
近頃は作業小屋の中へ入れなくなった。自転車二台を横に並べて小屋の入り口を封鎖してしまっている。おかげで、僕は退屈しのぎで小屋の中をうろうろ出来なくなってしまったんだ。なぜ、そんな事を御主人がしたのかというと、小屋の中にはお米の種が袋に入れられて並べてあるし、それを播くための土が山盛り、又、その土を入れるプラスチックの箱がうずたかく積まれてある。そんなものへ、僕が小屋の中へ入っていってオシッコを引っかけようものなら大変な事になる・・・・らしい?(たかが犬がオシッコを引っかけたぐらいで大変な事になるなどとは、犬には理解しがたい事ではあるけれど・・・)。それに御主人は念の入った事に、「木酢液」という、ものを買ってきて、「犬よけ液」として使った。その液をオシッコをかけられたくないものにスプレーするのだ。さらに念の入った事には、その液を使う前に、僕にその匂いを嗅がせて、効果を確かめたのだ。僕は、それを一息かぐと、飛び跳ねて後ずさりをして、その場から逃げ去った。犬にとっては、それだけ強烈な匂いなのである。最も、人間にだってかぐわしい匂いとは言い難いと思うけれどね。おかげで、木屋の中のものは安全を保証されているって言うわけなんだ。
3月23日 あめがふったりやんだり
朝散歩の時、小雨の中ながら白鳥さん達が真南から真北へ10羽の編隊を組んで飛んでいったよ。
ところで、今日は雨降りと言う事もあり、犬小屋の中で寝て暮らした。退屈だった。防寒用に犬小屋をすっぽりとシートで覆っているので昼でも中は真っ暗なのだ。陰気くさくていけない。春になったのだから、そろそろはずしてくれても良いと思うんだけれどなぁ。ちょっとぐらい零下の気温に下がっても僕は大丈夫だからね。この頃、御主人にそういってはいるのだけれど、「まだ、寒い日が続く!!」と言って聞いてはくれない。御主人ったら、いつまでも僕を甘やかすんだから・・・・いくら自分が寒がりだからと言って、犬の性質や体質って言うものを、もう少し考えて飼い犬の飼育をするべきだと思うんだ。
3月22日 はれ
夕方散歩で農道を歩いていると、80羽ばかりの白鳥さん達が編隊を組んで南西の空からやってきて、北東の空へ飛んでいった。白鳥さんともなると優雅に飛ぶものだと感心をする。スズメや鴨のように無様な飛び方はしない。
ところで、今日の夕方散歩は自転車で行ってきたのだけれど、アスファルトの道路に来ると、御主人は自転車のスピードを上げて、僕に「走れ!!」と命令をする。僕はのんびりと散歩を楽しみたいのだけれど、命令だから仕方がない。何しろ、のろのろと歩いていると自転車に引きずられてしまう・・・だけど、全速力疾走は止めて欲しいんだ。何しろ、僕と来たら冬の間中ゴロゴロしていたので身体がなまってしまっているんだ。だから、いきなり全力疾走させられると厳しい。走る前は、バラード調で心臓がゆっくりと脈打っていたのに、走り始めたら激しいサンバのリズムになって、心臓が今にも「はじけ飛びそう」になった・・・今の季節は止めて欲しいなぁ、こんな散歩は・・・。夏になって身体が慣れたら走っても良いよ・・・・・っていいたいけれど、夏の暑さは犬にとって大敵だし、やっぱり止めて欲しい。「じゃぁ、いったい、いつなら良いのか!!」と御主人はイライラして聞くけれど、優柔不断な僕としては、「うう〜ん・・・?」と考え込んでしまう質問なのである・・・・
3月21日 はれ・・・さむし
「春は別れと出会い」とやらで、転勤、就職、卒業、入学と人間の世界では色々と忙しいようだ。犬は・・・と、言えば犬も忙しい。最も、僕に限って言えばの話ではあるけれどね。何が忙しいのかと言えば、我が家の北隣にある2棟のアパートは今、人の出入りが盛りである。理由はさっき言った通りだ。それで、運送屋さんのトラックが出たり入ったりしている。僕はそのたびに「わんわんわん」と吠えなければならないのだ。僕だって「番犬」のお仕事に誇りを持って励んでいるので、余りいい加減な仕事は出来ない。それに、今日はお彼岸とやらで、墓地も我が家の近くにあるので人の往来が途絶える事がない。それに休みとあって色々な人が、我が家を始め隣近所にやってきたりする。はぁぁぁ〜、目が回るような忙しさだ。だから、少し手抜きをする事にした。どうせ家には御主人とお母さんがいるのだから、最初だけ「わんわんわん」と吠えて警告を発する。いわば、僕は自動呼び鈴みたいなものだ。後は無駄に吠えないようにする事にした。知らない人や車がやってきてから帰るまで吠え続けていたら、喉が枯れてしまう。「これぐらい吠えたから、マァ、良いか・・」という感じでお仕事をしたんだ。「番犬のベテラン」になると、手抜きをしながらすばらしいお仕事をするものなのである。・・・・
3月20日 はれたりくもったり
今日は、馬鹿に風が強い。台風並みの風の強さだ。小ハウスのビニールをおさえている紐が20本以上も風のために切れてしまったので、御主人は忙しそうに修復をしている。僕はと言えば、この大風の中で寝転がっている。ホコリ混じりの風が体中に吹き付けてくる。鼻の頭なんかホコリがくっついて泥色になってしまったよ。ただけど、お日様が顔を出しているので、こんな風の日でも寝転がらないわけにはいかない・・・・最も、暖かいとは言い難いけれどね。ところで、今日は午後から御主人がお出かけしてしまったので、お仕事が早く終わって帰ってきた上のお兄さんにおじいちゃんとおばあちゃんの家へ散歩がてら連れて行ってもらったんだよ。僕はウキウキとした足取りで歩いたよ。そして、お兄さんは家の中に入っていったんだけれど、僕はしばらく玄関先で待たされた。ところがおばあちゃんの温情で家の中に入れてもらえる事になったんだ。僕は素足のまま家の中に入って驚いた。なんと御主人が居るではないか・・・・何しに来たのか聞けば良かったけれど、「飼い犬がよけいな事を聞くんじゃない」と、言われそうなので黙っていた。これでも、色々と気を遣いながら過ごしたんだよ。それに犬には、ちょっとストーブが暑すぎたしね。でも、色々な食べ物をもらって、とっても楽しかったよ。
3月19日 あめのちゆき
朝は雨降りで散歩へ行けなかった。そうこうしているうちに、雪がチラチラと降ってきたので驚いた。ここのところ暖かい日が続いていたので、すっかり安心してしまっていたのだ。それが今日になって手痛いしっぺ返しを食らうとは思っても見なかった。冬から春になるまでの過程を「三寒四温」などと言って、3日の寒さがあれば、4日の暖かさがあって、だんだん暖かくなっていくものだ。と、御主人に教えてもらったものだけれど、なかなか暖かくはならない。最も、僕は「3」までしか数を数える事が出来ないので、寒い日が3日あったのは数える事が出来るけれど、暖かい日が4日以上になると訳がわからなくなるので、はたして、本当に「三寒四温」という言葉通りに春に向かっているのかはわからない・・・とにかく、今日はうっすらと野山が雪化粧したので、僕は犬小屋の中に引きこもったきりだったのだ。幸いな事に夕方散歩は雪がちらつく中を連れて行ってもらったけれどね。御主人なんか真冬と同じ格好での散歩だったよ。
注・・・むつ犬は「犬用ビスケット」を毎朝、おやつに3枚もらっているので、これ以上の数を数える事が出来ないのだ・・・
3月18日 あめのちはれ
今日は、久しぶりに叱られた。何をしたかというと、御主人が並べたお米の苗を作るプラスチックの箱900枚にオシッコをかけたのだ。それも、あちらこちらにである。御主人は怒ったね。「オシッコ犬!!」ってね・・・・僕は頭を押さえつけられて、いつものようにはいつくばって「お叱り」が終わるのを待った。クドクドとお叱りが続いたが、僕は隙を見て逃げ出した。追いかけられて捕まるのかと思っていたら、追いかけてこなかった。どうやら「いつもの犬の習性」である「オシッコかけ」に御主人も、少しあきらめかけているのかも知れない。反省のない犬、楽天的な犬である僕は「また、オシッコかけをしてもいいのかな?」と思った。そう思った途端、何だか気分がウキウキして、暖かい日射しの中へ横になり、気持ちよさそうに「ごろんごろん」と寝返りを打つ僕なのであった。
3月17日 はれのちあめ
山の下のため池に散歩へ行くと、「ふきのとう」が所々にうす緑色に開いている。僕達の地方では「ばんけ」という言い方をしているけれど、同じ秋田県でも、ところによっては呼び方が違うそうだ。僕は、山形県庄内地方生まれの秋田犬だけれど、「ふきのとう」が、そこではなんと呼ばれているかは知らない・・・御主人は「ふきのとう」の写真を撮っているけれど、本当はつみ取って「ふきのとうの天ぷら」にしたいと考えているようだ。ところが、ご承知の如く御主人は面倒くさがり屋なので、つみ取っていっても天ぷらにするのが面倒だと思い、いまだにつみ取って家に持ってきてはいない。僕は犬なので「天ぷら」なる食べ物は知らないし、見た事もない。ふきのとうの天ぷらはほろ苦くて、「早春の味」がしてとてもおいしいらしい。だけど、飼い犬の僕は一生口にする事はないと思う。少し興味はあるけれど・・・・・犬には、なんと言っても「お肉」だよね!!!
3月16日 はれ
今日は風も穏やかで、気温が11度にもなった。僕は大喜びで、少しホコリっぽい地面に寝転がったんだ。寝転がっている僕の身体を御主人がなでてくれる。これも、また気持ちが良いものだ。あまりの気持ちよさに僕は何度も何度も、「ごろん、ごろんと」寝返りを打った。ここで突然だが、バナナの好きな人はいるだろうか・・・?僕は食い意地が張っているけれどバナナだけは苦手だ。と、言っても犬にとって危険な食べ物ではない。2、3度、御主人に無理矢理、口の中につっこまれてお腹の中へ入れた事はあるけれど、あの味、あの匂い、あの形・・・苦手だ。なぜ、こんなお話をしたのかというと、今日の10時頃、御主人が何かを持ってきて、寝ころんでいる僕に見せた。僕はすぐさま、それがバナナだなと悟り、飛び起きて御主人の側から逃げ去った。半径3メートル以上はバナナを持ったまま近づいて欲しくなかったので、御主人が近づくたびに僕は後ずさりをした。なぜなら、バナナの匂いが僕の敏感な鼻の穴に入り込んでくるからだ。。出来れば、「バナナ」は、この世に存在して欲しくないものである。ところで、御主人はバナナが大好きなのかって?・・・そんな事はないと思うよ。きっと僕に嫌がらせをするために、時々バナナを買ってくるのじゃないかなって僕はそう疑っているんだけれどね・・・・
3月15日 うすぐもり
やっと雪が降り止んだ。もはや積雪はない。今日は薄日は射したものの風が冷たい。これでも気温は8度もあるのだと御主人は言うけれど、機械で測った気温など当てにはならない。犬は常に自分の肌で感じ取ったものだけを信じるのだ。これが自然な生き方というものなんだ。ところで、今日は久しぶりに陽気が良くなったので(と言っても大して良くもないのだけれど)、外へ出て寝ころんでみたよ。前にも言った通り風が冷たいので、早々に犬小屋の中へ引き上げたけれどね。だけど退屈だった。時々、犬小屋を出て作業小屋の中でお仕事をしている御主人を眺めたり、近くにあるものを観察したり、いじってみたりしてみる。そのたびに「ムツ、駄目!!」と、御主人からお叱りの声が発せられる。これでは暇つぶしもできやしない・・・仕方なく、僕はプラスチックの植木鉢を転がしたり、くわえたり、はたまた噛みついたりして、暇つぶしを兼ねて、心の中にたまったうっぷんをはらすのであった。
3月14日 ふぶき・・・
今日も朝から吹雪だった。僕達の朝散歩は雪だるま状態になりながらの散歩だったんだよ。それでも、昨日よりはまだましな方だ。このまま天気が回復してくれるとありがたいのだけれど・・・今日の僕は、春になったというのに雪の日が3日も続いたので、馬鹿馬鹿しくなって犬小屋の中へこもってしまったんだ。作業小屋の中で御主人が仕事をしていようがかまわない。要するにふてくされてしまったのである。こんな雪の日が3日も続くなんてあんまり聞いた事がない。僕は、たかだか5年ほどしか犬として生きていないけれど、こんな事はなかったように思う。御主人も「こんな事は、未だかつてなかった」と断言している。ただ、御主人の場合は過去の記憶を忘れてしまっている可能性もあるので、この言葉だけで100%は信じる事が出来ない・・・まぁ、今日は、こんな調子の僕ではあったのだけれど、午後になると、いくらかお日様も顔を出したので、外へ出てお座りやフセをしてみた。けれど、地面が濡れているので、寝そべってみても、そんなに気持ちが良くない。おまけに僕が犬小屋から出た途端に、御主人が僕をおもちゃにするものだから困ってしまう。つまり、なでたり、つねったり、等々されてしまったのだ。とにかく、早く春らしい日の光の下で「ごろん」とお腹を出してお昼寝がしたい僕なのである・・・・
3月13日 ふぶき
朝から吹雪なのである。寒いのである。辺り一面雪景色なのである!!!。天気は日を追うごとにだんだんひどくなっていくようだ。3月も中旬になって、雪の降る日は珍しくもないけれど、いきなり吹雪になるとはルール違反だ。だいたい、この前、最高気温が10度か11度だったのに、今日の気温はなんだ!!最高気温がマイナス1度だ!!御主人なんか、小屋の中で仕事をしていて「寒い」と言いながら犬小屋の中に入ってくる始末だ。そして、「思ったより犬小屋の中は暖かいなぁ」などと、のんきな事を言っている。それはそうだ。僕の体温と、犬小屋をすっぽりと覆っている断熱材のおかげだ。それと、もう一つ忘れてはいけないのが、僕が常に身にまとっている毛皮のおかげだ。御主人も今日は防寒具で身体をすっぽりと覆っているので、風が入らない犬小屋の中が暖かく感じられたのだろう。一方、犬小屋に入られた僕としては大迷惑だ。耐えきれず外へ出てみると、真冬の吹雪とは何処か違う。辺り一面真っ白で何も見えない世界ではあったけれど、空が明るいのだ。真冬の鉛色をした雲とは違う雲が雪を降らせ風を呼び寄せているような気がする。こんなのを「春らしい吹雪」って言うのかなぁ〜・・・・?
3月12日 ゆき
昨日の雨が今朝になって雪に変わってしまった。辺り一面がうっすらと雪化粧し始めている。おかげで朝散歩へは行けない。御主人が、僕のところへそのように言ってきたのだ。その時、僕は大はしゃぎをして、御主人と遊べるものだと思っていた。でも・・・御主人は僕の身体を「ナデナデ」しただけで家の中へ入っていってしまった。あれから一日中、僕は独りぼっちで犬小屋の中で寝て過ごした。雪が降っているので何もする事が出来ない・・・・こんな日は、時々でも良いから御主人がやってきて、僕と遊んで欲しいものだ。すこしでも相手をしてくれたら、飼い犬はうれしいものなのだ。それなのに、誰もやってこない。「雪は降るぅ〜、あなたは〜来ない〜、雪は降るぅ〜・・・」という歌でも歌い出したくなってしまう。このようにして鬱々たる一日を暗い犬小屋に閉じこもって過ごしたって言うわけなんだ・・・・
3月11日 はれのちあめ
昨日の夜、春めいた風が甘く感じられたので、「もしかすると、明日は良くない事が起きるかも?」と思っていたのだが、幸い晴れて、暖かい陽気になった。「土干し」も昨日で終わったらしくて僕の家(犬小屋の事)の前は広々としている。何処でも好きなところへ寝転がる事が出来る。僕は今日一日、そんな春めいた空の元で思う存分お昼寝をする事が出来ると思っていた。しかし・・・・良くない事はやはり起こった!!・・・・・こっぴどく僕が叱られてしまったのだ。原因は、御主人の作業用帽子を僕がくわえだして、泥んこにしてしまったからだ。犬は、あたりにあるものが気に入ると見境無く、くわえておもちゃにする習性がある。でも「そんなところへ大切なものを置く方が悪い!!」という犬側の論理は飼い主には通用しない。飼い犬の立場はすべて「従」なので、たとえば御主人が白いものを「黒」だと言えば、「それは違います」とは言え無い立場なのだ。だから、こっぴどく叱られた。そうしたら、夕方頃になって雨が降り始めた。きっと、この雨は、飼い犬のつらい立場に同情した天の神様が降らせた情け深い慈悲の雨だろうと僕は思っている・・・・
3月10日 はれ
今日も昨日と同じ状態だった。辺り一面に土が広げられて僕の居場所はなかった。だから昨日と同じ所にいた。そして、一日中、お座りやフセの状態で「番犬」のお仕事に汗を流した。何しろ、御主人が小屋の中や外で忙しく働いているので、僕としてはのんびりと地面に横たわってお昼寝しているわけにもいかない。それにのんびりする場所も土によって占領されてしまった。だから「お仕事」をするしかない状態に追い込まれてしまったと言って良い。だけど、時々は「ごろん」と横になってお昼寝もしたよ。本当は「番犬」、「見張り」などと言うお仕事は一時も気を抜く事が出来ないものなんだけれど、そうそう一日中気を張って勤めていたら気が変になってしまう。だから、時々は横になってお昼寝をするんだ。御主人だって、一日中、働きずくめだったら疲れるに違いない。その証拠に、お仕事の合間を縫って、僕にちょっかいを出しにやってきたんだ。僕は、ほっぺをつねられたり、頭をナデナデされたり、身体を触られたり等々と、けっこう、煩わしかったよ。
3月9日 はれ・・・とはいうものの
午前中は、おかしな天気だったよ。晴れているのに雪がひとひら、またひとひらと舞い落ちてくるんだ。まるで、桜の花びらが舞い散るような美しさだった。今日は、そんなに暖かい一日とは言えなかったけれど、お日様が顔を出したので、僕はのんびりと外でお昼寝でもしようと思っていた。ところが、御主人がそれをじゃましてしまった。春作業の準備を始めた御主人は、僕の心のよりどころである「土のお山」をトラクターで突き崩した他に、その土を普段から僕が寝ころんでいる場所に広げ始めたのだ。「少々、湿っている」から、お日様に乾かしてもらうのだそうだ。おかげで僕の居場所が無くなってしまった。仕方がないので、僕は禁断地帯に足を踏み入れた。つまり、いつも引っかかってしまう「梅の木のある場所」である。今日は幸いな事に引っかからなかったけれど、こんな状態なので、ここしか居場所がないのだ。せっかく晴れの一日だったのにのんびり出来なかったよ。ヤレヤレ・・・である。
3月8日 あめのちはれたりくもったり
僕の食事作法が厳格に定められているって言う事は、この日記でも何度かお話をした。まず、御飯と水が入った食器がトレイ(お米の苗を作る時に使われる箱で代用している)の上に置かれる。御飯の入った器は僕から見て、左側に置かれ、飲み水の入った器は右側に置かれる。これも決まっている。「おすわり」の命令か、または「犬の作法は?」という問いかけで僕はきちんと正座(足を崩さないお座りの事)をする。それから、たまに「おて」が何度か要求される事もあるけれど毎日ではない。「おて」の命令が下ると、早く御飯を食べたい僕が、かならず泣くからだ。「きゅん、きゅん、きゅん」と・・・・そして、「ふせ」の命令があり、「タッチ(立てという命令)」の声がかかると、再びお座りの姿勢に戻る。これで、ようやく「よし」の命令で御飯にありつく事が出来るのである。ところが、この行儀作法なるものが、最近、さらに厳しくなった。「ふせ」の状態でいる時に、よだれを3滴以上こぼさないと「よし」の命令が出なくなった。これは「腹ぺこ犬」にはつらい条件だ。御主人、飼い犬にストレスを与えるのは良くないと思うよ。そのうち犬が反抗的になって「旦那、闇夜は後に気をつけるんだな・・・!!」と、脅しをかけられるかも知れませんぜぇぇぇ・・・食い物の恨みは恐ろしいって言いますからねぇぇぇ〜。
※御主人の談話・・・よだれをこぼせばこぼすほど、消化酵素の働きが良くなって胃には優しくなるのだ。従って飼い犬に不当な命令を押しつけて隷属させているわけではない。いわば、愛犬かわいさと、愛犬の健康のために実施しているのだ。
3月7日 はれ
今日は、とても気持ちの良い日だった。朝からお日様が「ポカポカ」と僕を照らしてくれた。地面の上に寝ころびながら背伸びをしたんだ。日だまりの雪はほとんど消えた。真冬にうずたかく積まれた雪も僕の身体分ぐらいの量しか残っていない。しかし、この雪も明日1日か2日の運命だ。それが過ぎれば水になって地面にしみ込むか蒸発して天に昇っていく運命だ。それにしてもなんて気持ちが良いのだ。長い間、家の中に閉じこもり、「収支決算書と確定申告」という犬には理解できないものに取り組んできた御主人が、外の仕事を始めた。まぁ、暦で言う「啓蟄」も過ぎた事だし、御主人も冬ごもりから出てくるはずだ。と、言うわけで、今日の最高気温9度の一日を有効に楽しく過ごさせてもらったよ!!
3月6日 くもりのちらいうのちくもってゆき
朝散歩の時は風があったけれど、散歩に行く事が出来たんだ。15羽ぐらいの白鳥さんの群れが北東の方向に飛び去っていくのが見えた。帰ってからおやつをもらい、のんびりしていると雨が降ってきた。しかも激しく雷も鳴り始めた。僕は恐くなって大急ぎで犬小屋の中へ避難した。いわゆる「春雷」というヤツである。昨日までの暖かさは「もうけもの」ぐらいに思って、一日を犬小屋の中で過ごす事にした。だから、今日の日記は「別にぃ〜、退屈ぅぅぅ・・・」の一行だけである。・・・・
そこで一句、「春雷や 犬の昼寝を おびやかし・・・・禄食」
3月5日 はれ
今日は、暖かい一日だった。小さな虫も日だまりの中を飛び回っている。だけど、最高気温が7度なんだよね。まぁ、キュウリだったら生きていける最低レベルの温度だ。つまり、死なない程度って事だよ。僕は犬だし、動物でもあるので植物と違って最低レベルの生存温度というのはさらに低いと思われるけれど、僕の気持ちとしては、ほどほどと言う事だ。つまり暑くもなく寒くもない気候の方がありがたい。今日は、そんな感じの天気だったので、僕は外に寝転がって一日を過ごしたんだ。そんなところへ御主人がやってきて、「シャンプーをするか?」なんて言うんだけれど、僕はうろたえなかった。今頃シャンプーなんかするわけがない。もし、されたとしても、風邪を引いてしまいそうだ。それに「犬ランドリー(500円で犬をシャンプー、ドライヤーができる施設」)等へ、面倒くさがり屋の御主人が連れて行くわけがない。そう思って僕はただ聞き流す事にした。案の定、御主人は「ただ言ってみただけ」って言う感じで、その場を立ち去ってしまったよ。まったく、もう!!!冗談を言うなら、もっと飼い犬を喜ばせるよう冗談を言え!!!
注・・・秋田犬は犬ランドリーでは500円では治まらない・・様な気がする・・?
3月4日 はれたりくもったりいちじゆき
午前中はたいそう暖かい日和だった。僕も外へ出て日向ぼっこをしていたんだ。もちろん「番犬」のお仕事もやったよ。僕が怪しいものを見つけて「わんわんわん」と吠えても、御主人には、何に吠えているのか見つける事が出来ないでいるから笑ってしまう。動くものを発見する事にかけては、犬は人間より数倍・・・いや数十倍は優れた能力を持っているのだ。「むつ、何に向かって吠えているんだ?」と御主人に聞かれても、僕は対象となるものに向かって吠える以外、教えようがない。犬が手を挙げて、そのものを指さす事は出来ない。何しろ犬が、手を挙げるのは「おて」と命令された時に、命令された人の手のひらに「ぱちん」と手を挙げる時と、後ろ足は雄犬ならオシッコを電柱や草むらに引っかける時以外は行わない動作だからだ。結局、御主人は僕が吠えている対象物を発見する事が出来なかった。「こりゃぁ、人間という動物は野生では生きていけないな。」って思ったね。厳しい自然界で生きていくには「野生の感」ってものが必要なんだ。人間なんか、たちまち他の動物に襲われて、絶滅してしまう事は必至だね・・・・
3月3日 くもり、ちらちらゆき
今日は人間の行事で言うところの「モモの節句」、つまりおひな祭りだ。我が家に女の子でもいれば(お母さんはいるけれど、女の子ではない・・・・)、それなりのごちそうでも作ってお祝いするのだろうけれど、残念ながらいない。当然、飼い犬にもごちそうのお裾分けが廻ってこないという事になる。残念!!。人間の世界では、この「おひな祭り」は、結婚という事柄を意識した行事なのだそうだ。ところで、犬の場合の結婚はと言うと、「お見合いイコール結婚」なのだ。ただし、犬の場合はメス犬に主導権がある。メス犬は種族保存の本能が働き、出来る限り優秀な子犬を生もうとする。だから父親になる雄犬は優秀な犬でなければいけないのだ。メス犬がお見合いをした時に、ちょっと首をかしげて「この犬はちょっとねぇ・・・」と、思えば雄犬がいくら夢中になっても、もう駄目なのである。結婚不成立と言う事になってしまう。ではメス犬は、どんな犬を優秀な雄犬と判断するのだろうか・・・・・それはメス犬のみぞ知る。雄犬である僕にとっては永遠に謎なのである。だから、たとえば僕がお見合いするにしても、僕が優秀であるかどうかは、僕自身すら知らない事になる。しかし、メス犬が気まぐれに相手を選ぶなど言うのは絶対にあり得ない事なのである。ただし、犬の種類は問わない・・・・秋田犬とチワワが夫婦になろうと、セントバーナードとチンが夫婦になろうと、犬の世界ではやかましい事は言われない。ある意味ではアバウトなのである。いい加減なのである・・・けれど、雄犬はつらいのである。情けないのである・・・・ちまたでは俳句で春の季語にもなっている「猫の恋」が盛んであるけれど、僕の恋はいつ頃やってくるのだろうか・・・・・
3月2日 ゆきのちくもり
なんでも、今日は平年並みの天気と気温なのだそうだ。平年並みっていう事は、いつもと同じっていう事なんだよね?僕の日常と同じで昨日と同じ、明日も同じという生活の事を言うんだよね。近頃は、天気まで犬並みのレベルまで低下してきたようだ・・・・えっ?、犬レベルの頭で色々、物事を考えるなって・・・・どうも、犬は短絡的にものを考える習性があるので、複雑に物事を考える人間とは会話がかみあわないので困る。
ところで、今「お絵かき」にこっている御主人なのであるが、僕の絵が描きたいそうなのである。だが、犬は人間と違って描くのが難しいという・・・「何で?」と聞くと、「犬はもこもこ、ふわふわと毛があるから」、なのだそうだ。毛がもこもこしている事こそ、犬の最大の特徴なのに、御主人はいったい何を考えているんだろうか・・・よくよく御主人のお話を聞いてみると、暗い過去がしだいに浮き彫りになってきた。小学校の頃より「絵」というものがまともにかけず、よその幼稚園児の絵の方がよほどすばらしいのを実感したらしい・・・かわいそうな御主人である。情けない御主人である。しかし、「ぬりえ」は案外好きで、子供の頃、よく遊んだそうだ。しかし、僕が思うに、その塗り絵だって他の人から比べたら、目も当てられないものだったに違いない。まぁ、余り期待はしていないけれど、気長に僕の絵が完成するのを待っているよ。男前の僕に描いてね。御主人!!!!
3月1日 ゆきのちあめ
今日から人間の暦でいえば「春」なはずなのに・・・・朝、目を覚まして外へ出ると、一面雪の原だった。しかも、風の中を雪が舞っている。そういえば、昨夜の夢見が悪かったよ・・・・きっとこの天気を夢で予知したんんだろうね。なお悪い事に、昼前にこの雪が雨に変わったという事だ。このまま雨が降り続けば、当然散歩はなくなるだろうし、もし行けたとしても、僕自慢の白いお腹が、真っ黒の泥んこになってしまう・・・・それだったら、早く御飯をもらって犬小屋に潜り込んで、ひたすら眠る。そして、明日の朝に期待した方が賢い方法だと思うんだ。(なんの期待なのか犬の頭では定かに示しがたいけれど、わくわくするような期待である事はたしかだ。もしかして春らしい陽気?)
かくして、飼い犬は飼い犬なりの知恵と知識で、様々な事を考えながら一日を犬小屋の中で過ごしたのだった。結果は、僕の考えた通りになってしまった。つまり「散歩無しの御飯早め」という事だ。後は、寝るだけ・・・・・
そこで一句
「白鳥(しらとり)や 旅立つ朝の なごり雪・・・・禄食」