むつ犬のおまぬけ日記
平成18年8月
8月31日 はれ
今日は、朝散歩も夕方散歩も御主人の言う事をよく聞いて、素直にいってきた。「だだ」はこねなかった。
僕はつくづく思うよ・・・飼い犬は飼われている事をありがたいとも思わないで、当たり前のようにふんぞり返って、散歩や御飯を要求する。不満があれば、「だだ」をこねる。「飼い犬は謙虚を旨とすべし」という根本的な心を忘れていたよ。来月の「犬による犬のための標語」は「飼い犬は謙虚と飼い主の愛情を思いやろう!」・・・・かな?

8月30日 あめ
ちょうど雨が降り止んでいたので、いつものように夕方散歩に出かけた僕と御主人だったが、いつものように家の門口で意見が真っ二つに分かれた。「飼い主東へ、僕は西」というわけだ・・・・しばらくにらみ合っていたけれど、やがて雨が降り始めてしまった。そこで対立するのは中止して、二人で足並みそろえて帰ってきたというわけなんだよ。かえってからの御主人は、「わがまま犬、自己中心的犬!!」などと叱りつけたけれど、その言葉をそっくり御主人に返してやるよ!!「可愛い飼い犬の言う事は素直に聞くものだ」ってね。おまけにほっぺまでつねられてしまった。僕も御主人の何処かをつねってやりたいけれど、僕は犬なので、肉体的につねる事は出来ないようになっている。ならば噛みついてやりたいと思うけれど、子犬の頃からの「噛みついてはいけない(少なくても飼い主だけは)」というしつけが災いして出来ない・・・飼い犬の悲哀が降りしきる涙雨となって、今日一日、地上あまねく降り注いだのであった。

8月29日 あめのちくもり
昨日の夕方散歩は雨のために中止になってしまった。少しぐらい濡れてもこの季節なので、どうと言う事はないから御主人も連れて行ってくれればよいものを・・・・少しでも犬の世話をしたくないと思っているから、なんだかんだと理由を付けていかないようにしているようだ。・・・等々と、日頃の不平不満をブツブツと、つぶやいていたら、突然、激しく空が光ったと思ったら「がらがら、どっしゃ〜ん!!」と、ものすごい雷の音。普通の雷は、光ってから音が鳴るまでしばらく間があるのだが、今回のは間がなかった。つまり、僕の真上で雷が発生したという事らしい。僕はびっくりして飛び起き、安全地帯(トラクターの下)に逃げ込んだ。雨はすごいどしゃ降りである。今まで降らなかった分の埋め合わせでもしようとしているのか?、そして雷は今日も鳴るのか?。なぜ、そう犬を脅かせるのだ!!。か弱い犬をいじめておもしろいのか!!

8月28日 くもりのちあめがふったりやんだり
久しぶりに雨が降って気温が下がった。でも、相変わらず、すごい湿気である。僕はお盆の13日にシャンプーをしてもらったというのに、もう垢まみれである。御主人などは垢が移ると言って、まともにさわってくれない・・・・不幸中の幸いとでも言うのだろうか?、身体はベトベトの垢まみれなのに、とういうわけか頭のてっぺんだけは「サラサラ.ヘヤー」なので、「あたまなでなで」だけはしてくれる。そろそろ、「又、シャンプーをしようか」という話が持ち上がっている。今日この頃の僕なのであった・・・・・・


8月27日 はれ
朝、御主人が帰ってきた。何でも「寝台列車」とやらで帰ってきたらしい。なにやら手提げ袋を下げているので、早速中身をチエックする。どうやら食べ物らしいけれど、僕に食べさせるつもりはないらしい。そこで、僕は御主人が帰ってきて、大変うれしいというそぶりをするために「お帰りの踊り」を踊った。飛び跳ねながら御主人にまとわりついたり離れたりして、そこいら中をかけずり回る、あの踊りだ。さすがに暑いので、ほどほどにして止めたけれどね。僕へのお土産もなさそうなので、早々に涼しいところへ引っ込む。僕としては、今日も一日、暑さと戦わなければいけないのだ。べったりと御主人に関わり合っている場合ではないのだ。と、いうわけで夕方の散歩は御主人!!頼むよ!!

8月26日 はれ
今日も御主人はお出かけ中である。今頃、「東京」にいる下のお兄さんとお酒でも飲みながらおいしいものでも食べているに違いない。僕は、さすがに子犬の時のように「きゅぅぅぅ〜ん、きゅぅぅぅ〜ん」と寂しがって泣く事はない。むしろ、僕としても御主人からの「しがらみ」から抜け出す事が出来て、のんびり過ごす事が出来る。御飯の世話も散歩も、お母さんや上のお兄さんがしてくれるのでなんの不自由もない。「はぁぁぁ〜、天国のようだぁ〜」・・・・・・天国ってどんなところか知らないけれど・・・・

8月25日 はれ
朝、御主人が僕の散歩もしないで「行ってくるからな」と言い置いて、お母さんの車で送られて出かけていってしまった。あとでお母さんに聞いたら「東京」と言うところへ出かけていったらしい。7月の初め頃。お母さんがお友達と東京に行き、御主人は忙しくていけなかったので、今行ったのだという。「何を好きこのんで、この暑い時期に出かけるのか」と僕は苦々しげに言ったのだけれど、御主人からしてみれば「いっさいのしがらみからほんの数日でも逃れるため」・・・・と言う。と、言う事は僕の世話も御主人を縛り付けている「しがらみ」とやらになっているらしい・・・・・

8月24日 あめのちくもり
この所、夜か明け方に雨が降るので涼しくなって大変助かる。念願だった「腹を出してのお昼寝」は、まだまだ無理だけれど、夜中に腹を出して外で寝る事が出来るので、悲願の50%は達成したと言っていいだろう。日中は涼しくなったとはいえ、まだまだ暑い。今日の最高気温は28度ぐらいだったけれど、湿気が多いものだから、それほど涼しくは感じない。何でも御主人の話によると、「えあこん」?・・・とやら言う機械で部屋の中を涼しくすると、28度ぐらいになると寒くなってくしゃみが出るそうである。犬には一生涯縁のない機械ではあるけれど、見聞を広めるために、一度は「えあこん」で涼しくなった部屋に入ってみたいものである。でも、何だか僕も入った途端にくしゃみをしそうだなぁ・・・・・

8月23日 はれ
犬は長く飼われていると「しがらみ」というものが生じてくる。御主人一家に限らず、近所の犬だったり猫だったり、スズメ、コオロギ、新聞配達の人から郵便屋さんまでが関わり合って来て、義理や人情、力関係等々で身体中、紐で縛られたような気持ちになってしまう事がある。犬に限らず、人間もそうだろう。犬より長く生きるから、「しがらみ」というものでがんじがらめに縛り付けられて、自分の意志など半分も主張できなくなってしまうのだ。パソコンも同じだろうと思う。色々なソフトや周辺機器がつながれ、パソコン本体やウインドウズなどは、「はぁぁ〜、嫌だ、嫌だ!!俺はどうしてこんなわがままなソフトや機械に酷使されなくちゃいけないのだ」と、愚痴をこぼしているに違いない。そんなときは「起動拒否」なり「だんまり(俗にフリーズするとも言う)」をすればストレス解消になる。人間、特に御主人などは、いっさいのしがらみから解放されるために「旅」を選ぶ。グループ旅行や団体旅行は、逆にストレスの元になるので、付き合い以外は行かない・・・一人で好きなところへぶらぶら行くのが楽しいらしい。その土地の人になりきってしまうのも楽しいようだ。犬は、「旅行」と言えば、生まれたところの親元から飼い主の家までやってくるものと、首輪がどういうわけかはずれて、1頭でぶらぶらと町内の中を歩き回るぐらいが旅行である。しかし、こんなチャンスは一生に1回と、年に数回あるかないかである。しからば、犬はどうやってストレスを解消しているのか・・・と、言うと「無い!」と言うしかない・・・・これといったストレス解消法は犬にはない。強いて言えば「食べる事」と「散歩」ぐらいなものだろうか、しみじみ思うと、犬って悲しい生き物なのである・・・・・

8月22日 はれたりくもったり
毎日、暑い暑いと愚痴をこぼしたり、泣き言を言ってトラクターの下にばかり潜り込んでいたけれど、世の中は、いつの間にか秋模様である。夕方、日中の暑さが一段落すると、どこからか虫の声が聞こえてくる。雲も、羊のような雲があちらこちらに浮かんだり、時には鰯雲も見える。今年の入道雲は、あまり良い形のものを見る事が出来なかったけれど、御主人の広く浅い知識を聞くに及んで、清少納言の「枕草子」の冒頭の所でも言われている通り、「秋は夕暮れ・・・云々」の季節になったのだ。御主人が、この季節になると雲と夕暮れの写真を中心に撮しているのが、このことからもわかる通り、秋は夕暮れが美しいのだ。犬の僕としても、

「残暑厳しき折にもかかわらず、暑さは、日々に疎しと言ったような状態です。ご近所の飼い犬の皆様におかれましては、あと少し堪え忍ぶ事をともに誓い合い、乱筆乱文ながらお見舞い申し上げます。但し、クーラーの効いている部屋で夏を過ごされている内犬の皆さんは、この限りにあらずと言う事でご理解を願います。」

と、残暑見舞いをあちらこちらの知り合いの犬に出したい気分なのである。そして、早くトラクターの下からはい出て、お日様の下でお腹を出してお昼寝が出来るようになりたい今日この頃の僕なのであった。

注・・・内犬(常に家の中で飼われている犬の事)、くどいようだけれど、僕のような外犬(外で飼われている犬の事)の、暑さに対する名誉と努力にかけて、あえて注釈を附けさせてもらう!!

8月21日 はれ
入道雲がもくもくとわき上がって、御主人が大好きな夏の風景になった。何でも、山の方ではたいそうな雨降りで、バケツやたらいの水をひっくり返したように雨が降っている・・・・と、一泊旅行から、体中汗まみれでかえってきた御主人は、、そう僕に報告をした。雨降りの事はともかく、僕が思った通り、暑い日に熱い湯に入って、さらに暑くなり、体中汗ぐるみになって、最後には体中に塩の結晶がこびりつき、考えるのもおぞましい姿になってしまうのだ。だから、僕は、暑さに苦しむ飼い犬を置いて出かけるな、と忠告したのに・・・・でも、人間には「行水」という強い味方がある。犬も「行水」が出来るけれど、行水をした後は「蒸し風呂」となってしまう。水分が毛皮の奥底まで入り込み、体温と、外気温の熱さで蒸発しようとするからたまらない・・・・「打ち水」のようなものだから涼しいはずだろうという人があると思うけれど、地表と毛皮を同一のものと見てはいけない。地表は、比較的平らであるから水分が蒸発しても空気中に拡散しやすい。毛皮はと言うと、「もこもこ、ふわふわ」、と言うよう性質なので、毛の隅々まで水蒸気がこもって蒸れやすいというわけなのだ。この時期は、つくづく犬としての我が身が恨めしいと思う僕なのであった。

8月20日 はれ
今日は午後から御主人がお出かけのようだ。「何処へ行くのだ」と聞いたら、一泊旅行で温泉に行くのだという。何を好きこのんで、この暑いさなかに熱い湯に入りに行くのか犬である僕には理解が出来ない。御主人が曰く「付き合いで行くのだ」と言うけれど、本人は楽しそうである。「飼い犬が暑い中を苦しんでいるのを見捨てて自分ばかり楽しい思いをしに出かけて行くのか」とも言ってみたけれど、所詮、人間世界と犬の社会とでは共存していながら、相容れないものがあるらしい。ボーダレスの社会とやらになってきてはいるというものの、旧態依然として残っている理不尽な事も数多く残っている事を人間は知って欲しいものであるそうだ!!。9月の「犬による犬のための標語」は「犬の目線で物事を考えよう!」にでもしてみるかな?

8月19日 はれ
昨日は雷雨があって、幾分涼しくなったと喜んでいたら、今日は何十倍にもパワーアップした暑さが戻ってきた。おまけにひどい湿気である。昨日の雨が蒸発して「ムンムンムシムシ」なのである。僕は犬なので、この湿気が毛皮の奥に入り込み、体中を包み込むものだから、蒸し風呂に一日中入っているのと同じ状態になってしまい、苦しいのである。つらいのである・・・・。風でも吹けば幾分楽なのだろうけれど、午前中は「そよっ〜」とも吹かない無風状態である。いったい、今日の僕の運命はどうなるのであろうか・・・・献立としては「秋田犬の蒸し焼き 田舎風」になる予定ではあるのだけれど・・・・・ 

8月18日 はれのちらいう
僕が昨日、天に向かって言いたい放題な事を言ったので、天が怒ったのか喜んだのか知らないけれど、お昼前から「雷雨」になった。たった30分ぐらいの時間で.5から6ミリの雨を降らせたのだという。あちらこちらには水たまりが出来て、野山や田畑にはたっぷりと雨水がしみ込んだ。それにずいぶん涼しくなったしね。この地方の人々はみんな喜んでいるだろうと思うよ。何しろ、8月1日に通り雨のようなものが降ってから、1滴も雨が降っていなかったのだからね。それもこれも、みんな僕のおかげで大地が潤ったようなものだ・・・・・・おっと!、「飼い犬のたしなみ第5条」を忘れるところだった。この第5条には「飼い犬は、常に謙虚でなければいけない」という決まりがあるのだ。日本飼い犬協会という、飼い犬が自主的に組織する団体が作ったんだ。それに、あんまり大きな事を言うと、天の神様が本当に怒って「干ばつ」にでもしかねないからね。くわばら、くわばら・・・・

8月17日 はれ
今日の最高気温は36度近くまで上昇した。またまた記録更新である。昔の歌で「毎日毎日、僕らは鉄板の 上で焼かれて・・・・」という鯛焼き君の気持ちが非常に良くわかったような今日一日の暑さだった。もっとも、鯛焼き君は焼かれるのが本業というか、宿命なので、暑いとも痛いとも言わないと思うのだけれど、僕は犬なので、普段の生活で焼かれる事はない。そうであるから、よけいつらいのである。
ところで、毎日毎日、天気の事ばかり言っているので「おまえは、いつから気象予報士になったのだ。」と言う人があるけれど(主に御主人が言う)、僕は予報をしているわけではない。事実を冷静、かつ客観的にお伝えしているだけなのだ。はぁぁ〜、それにしても熱い!!雨よふれ!!嵐よ来い!!雹でもあられでも降って見ろっていうんだ。そうじゃなきゃ、天に向かってうなるぞ!!!
、・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・と、まぁ実際は冷静でもなく、客観的でもなく、自己中心的に天をののしっている僕なのであった。本当にこんな事があったら困るけれどね。でも、雨だけは降って欲しい・・・・・すると、御主人の言う事には「寒いより良い」とぽつり・・・・
そこで一句

「身を焦がす 夜蛾にも似たる 酷暑かな・・・・禄食」

8月16日 はれ
今日は気温が35度近くまで上昇した。毎日のように今年の夏の最高気温記録を更新している。雨も、もう半月も降っていない。昨日は、あまりの暑さに「犬の薫製」が出来上がるところだったけれど、今日は、あまりの暑さで「溶けてしまったアイスクリーム」状態になってしまった。つまり、「ぐずぐすのぐにゃぐにゃ」って感じかな?
ところで、今日はお母さんの実家のおばぁちゃんと横浜って言うところに住んでいる、お母さんのお姉さんが我が家にやってきた。・・・・らしい。らしい・・というのは、前述したように僕は溶けたアイスクリームのような状態でトラクターの下から一歩も出なかったから知らなかったのだ。お姉さんは午後の新潟廻りの特急で帰ったようだけれど、おばあちゃんは我が家に泊まったよ。夕方散歩に行く時に声をかけてもらったんだ。ついでにお母さんからおやつをもらったんだ(夕食に出す鶏のささみ)。散歩に出かける前におやつをもらえるのは非常に珍しいから、明日は何か良い事でもあるのかなぁ・・・・?

8月15日 はれ
今日は涼しくない風が強く吹いて、すべてのものが乾いてしまったような状態だった。僕も、もう少しで「犬の薫製」になってしまうところだった。僕は「ピクリ」とも動かず死んだようになって、トラクターの下で目をつむっていた。
ところで、昨日の夜は家族で、何かうまい物を食べてきたらしい。察するところお肉なのではないかと思われる。お肉の匂いがみんなの身体からするし、僕へのお土産がお肉2切れだったから、そう思ったのだ。そして、お土産はストレートに胃袋の中へ落ちていってしまった。かすかに牛肉だなって思っただけで、一瞬の出来事だった。
思えば、食べるという行為は、なんと虚しくて、かつ必要かくべからざるものなのであろうか・・・・

8月14日 はれ
昨日はお盆という事で、御主人をはじめ、おじいちゃん、おばあちゃん、お母さん、それに二人のお兄さんが家でごちそうを食べたらしい。らしい・・・と、言うのは僕は、その食卓に座ったわけではないので、上のお兄さんからもらった「高級豚肉」を食べて「あっ、こんなごちそうをみんなで食べたんだな」と思うだけなのだ。僕は犬だから家族でありながら、いざというときは家族ではないという中途半端な一員なのだ。お座敷犬のように、一緒に食卓を囲みたいものだとは思っているけれど、外犬としてのプライドもあるし、番犬としての使命感もあるので、我慢しているような状態なのだ。でも、内犬になりたいなぁ・・・・

注・・・お座敷犬=内犬(家の中で飼われている犬の事)外犬(家の外で飼われている犬の事。内犬の事を脆弱なる犬と馬鹿にしているけれど、反面うらやましさも感ずる矛盾を併せ持っているのだった。)

8月13日 はれ
今日は「お盆」だってね。犬にはなんにも関わりがない事だけれど、せめてごちそうだけはお裾分け願いたいものである。所で、毎日暑い日が続いているけれど、「自立した犬」を目指す僕は、今日も今月の標語である「イヤ!といえる犬になろう」を実行した。今日は、家の前を出た途端に足を踏ん張って動かなかった。御主人は田んぼの方に行きたかったらしいけれど、僕はおじいちゃんとおばあちゃんの家に行きたかったので、家の真ん前で意見が分かれた。今日は御主人が折れて、僕の言う通りの道に向かったのだけれど・・・・向かいの工場の入り口まで歩いてから立ち止まり「帰ろう」と言った。僕は。ここでも足を踏ん張って抵抗したのだけれど、ほっぺをつねられて泣く泣く家まで帰ってきた。この距離が往復100メートルほどである。情けない。なさけない・・・・・結局、おやつは普段の朝散歩の時のように、しっかりともらった僕だった。

8月12日 はれたりくもったり
今朝、大きな雨雲が僕達の街へ近づいている・・・と、御主人はいった。朝の9時頃になったら雨が降ってくるかも知れない、とも言った。しかし、雨雲はほんのわずかにそれて、秋田県の内陸部の一部に大量の雨を降らせて行き過ぎてしまったのだった。残念!!
ところで、僕は今「毛替わり」の真っ最中・・・らしい。「らしい」というのは、僕自身の事でありながら、まったく自覚がないからだ。ただ、御主人が一生懸命に僕の身体にブラシや櫛をかける。そうすると、ごっそりと古い毛が抜けてくるので「そうなのかな?」と思うだけなのである。実際、僕の身体に櫛を入れて古い毛をすく作業は大変なようだ。御主人は体中汗だらけになりながらやっている。僕は、と言えば、「気持ちよい!!」という意外にない。ただ、面倒なのは毛とリ作業をしている間は、身動きできない事だ。ちょっとでも動くと「動くな!!」と叱られてしまう。でも、すき取られたソフトボールより二回りも大きな毛玉を見ると、何だか身体が軽くなって風通しが良くなったような気がするよ。まったく、飼い犬だから、こうして毛替わりの時期に飼い主に抜いてもらえるけれど、御先祖達は野山で生活していて、どうしていたんだろうねぇ〜、山のウサギさんも毛かわりすると言うけれど、一人で「ぱらり」と生え替わるのかなぁ〜

8月11日 はれ
今月の「飼い犬の為の標語」は「嫌だと言える犬になろう!!」である。飼い犬は、常に飼い主に服従して、嫌な事でも言う事を聞かなければならない。でも、飼い犬といえども自主性がなければよい犬にはなれない。実際も、初代の秋田犬「まる」さん(正式名称は「大雲女号」、通称を「まる」という)・・・僕の先輩秋田犬とは違う犬、優秀な子犬をたくさん産んだので、秋田犬の歴史に燦然と名を残している御主人の叔父さんの飼い犬なのだ。ちなみに先輩犬「まる」さんの正式名称は「久円女号(きゅうえんめごう)」という。僕は「睦号(むつみごう)」・・・・・一文字が少し寂しい僕なのであった・・・・はっ!!なんの話をしていたのか忘れてしまったぞ・・・・そうそう、この大雲女号は秋田犬の品性を駄目にするというので、いっさいの芸をしなかった。人の言う事も聞かなかった。つまり、僕が常日頃から強いられている。おて、ふせ、おすわり、まて、などというものはいっさい出来ない犬だったのだ。風格があって、なまじっかな人間より存在感があった・・・・と御主人は言う。御主人などは、さぞかし、この大雲女号に鼻であしらわれたに違いない。
そこで、僕も大雲女号にあやかって「今月の標語」を実行してみる事にした。朝散歩コースでの最初の分かれ道で「だだをこねた」。いつもは右に行くのだけれど、「左に行きたい!!」と足を大地に踏ん張って動かなかった。無言の抵抗を続ける事5分・・・・ほっぺを思いっきりつねられた僕は折れて、御主人の言う通り右へ曲がったのだった。はぁぁ〜、僕の自主性が崩れて行くぅぅぅ〜・・・・育てられ方が悪かったのかも知れないなぁ・・・・大雲女号の様に育てられたら、今頃、御主人をアゴでこき使っていたに違いないのに・・・・

8月10日 はれ
昨日の夜は、「夕涼み」と称して御主人から苦行を強いられた。亀のような歩みで、約30分も家を出てから、たんぼ道を歩かされたのだ。何しろ、昨日はこの地方で、この夏の最高気温を記録した日である。こんな日の飼い犬が無事に一日を乗り切れたわけがない。日中の酷暑が夜まで祟り、もうぐったりの状態だったのだ。それをさらに、「夕涼み」と称して連れ出す御主人・・・!!あんたはいったい何者なのだ。鬼か邪か、はたまた、魑魅魍魎のたぐいなのか!!か弱い秋田犬を暑さが残るたんぼ道に連れだして、どうしようというのだ!!・・・蛍を一匹見つけたようだけれど、犬にはいっさい関わりない事だ。さだまさしの曲である「線香花火」の世界にひたる御主人は、恍惚として気持ちが良いかも知れないけれど、付き合わされる飼い犬の身になってもらいたいものである。

注・・・ちなみに、さだまさしと御主人は同級生・・・いや、同年なのだ。飼い犬の僕には、いっさい関わりのない事だけれど・・・・


8月9日 はれ
今日は、日中の最高気温が33度を超えたらしい。だけど、僕がぐったりと寝ころんでいる作業小屋の中に涼しげな風が吹き込んでくるから、幾分は暑さしのぎになる。ところが、この場所は西日が容赦なく当たってしまうところだった・・・・しかし、犬というのは一度「こうだ」と思いこんでしまうと、その思いこみを変えない習性なので、西日が当たっても小屋のトラクターの下でぐったりと死んだように眠ってしまうのだった。一度、トラクターの下でひんやりした思いがあるものだから、その思いから抜けきれない僕なのである。御主人からは馬鹿にされ「外の日陰に来い」と言われたけれど、外へ出ても熱風が吹き付けてくるし、アスファルトの上は日陰になったとはいえ、まだ熱い・・・・犬の僕がいる場所は、絶対トラクターの下しかないのだ。いくら西日が容赦なく照りつけても、ここしかないのだ・・・・そう思いこむより仕方がないのである。人間のことわざに「心頭滅却すれば火も又涼し」とやらである・・・・・はぁぁ、それにしても・・・・

8月8日 はれ
魚釣りの人達の間に広く言われている言葉がある。「朝まずめ、夕まずめ」である。どういう意味かというと、日の出前後と、日の入り前後をさす言葉なのである。これが、いったいどういう意味を持つのかというと、この時間帯に釣りをすると釣果を期待できるのである。つまり、この時間帯は魚の活動が活発になるので、たくさん釣れやすいというのだ。ならば、いったい「むつ犬のおまぬけ日記」になんの関係があるのかというと、おおいに関係があるのだ。犬の「朝まずめ夕まずめ」というのは夏場の散歩時間をさすのだ。日中の散歩が厳禁なのは犬の飼い主であれば常識だ。アスファルトの上は卵焼きが出来る位の熱さのフライパンの上を歩くようなものだし、お日様は容赦なく火のついた矢を犬の身体を的に打ち付けてでもいるようなものだ。だから、前述の時間帯に散歩するのが理想とされているのだ。・・・・・・ところが・・・である。我が家の御主人と来たら、人間優先の考えが抜けきらない旧態依然とした考えの持ち主なので、自分の時間の都合に合わせて飼い犬の散歩を実施する。まぁ、散歩に連れて行ってくれるだけでもありがたいと思わなければいけないのだろうけれど、夏場だけは「犬の基本的散歩時間」を守って欲しいものである。もし、どうしてもこれを守らなかったなら、「犬の基本的権利擁護委員会」に提訴する事にしているから、御主人!!覚悟をするように!!

8月7日 はれ
朝晩は20度ぐらいになって、涼しいのだけれど、日中は灼熱地獄もかくや、と思われるような暑さである。今日も、ぐったりとトラクターの下で目をつむっていた。
と、言うわけで夏は、僕がこういう状態なので日記に書く事は、昨日に同じ「暑さのため休業」と・・・・・。でも、台風7号が、どうやら日本を横断して日本海に入り込む気配を見せているので、僕はそれに期待をしている。「台風一過」で、涼しくなったらありがたいのだけれどね。もっとも夏を通り越して、いきなり秋になってしまったら、御主人は泣くだろうね。なんと言っても2月生まれで寒いのが嫌いな御主人は夏が大好きなのだから・・・・夏生まれで夏が苦手な僕としては何の因果か知らないけれど、好みの合わない御主人と巡り会ってしまったものだと思っているよ・・・・

8月6日 はれ
今日も、僕は一日中トラクターの下で「夏眠」をしていた。身体全体をひんやりとしたコンクリートにべったりとくっつけていた。御主人が小屋の窓を開けてくれたので、そよそよとかすかな風が入ってくる。どんよりと生ぬるい、にごった風ではなく、涼しくてさわやかな風なのが救いである。問題は御主人である。家の中で涼んでいて、身体が少し冷えてくると外へ出て、お日様を浴びて身体を温めに来る。「おまえさんは冷血動物なのか!!」と言いたい(冷血動物は外気温の変化によって行動が活発になったり停滞すると言われている。)。もっとも、僕も似たような行動を取る事があるけれど、さすがに夏の真っ盛りにそんな事はしない。それに、エアコンもない部屋の中で涼んでいて身体が冷えてしまったというのはなんなんだ!!うらやましいにもほどがある・・・・・と、言うわけで以上、御主人がこの炎天下に外へ出てくる理由を長々と説明した。それで、これ(御主人の事)が、僕がぐったりとして寝ころんでいるのを暇に飽かせていじくり回す。反応する気もないので知らんぷりをしていると、「おやつ、ごはん、さんぽ」という僕が反応する言葉を次から次に発して僕の気を誘おうとする。僕は悲しい犬の習性で、それらにいちいち反応して起きあがってしまうのだった。終いには「トマト」という言葉にも反応してしまった。トマトなんか好きでもないのに習性とは恐ろしいものである。・・・・・

8月5日 はれ
今日は僕達の住んでいるところの「子吉川かわまつり」昨日は昨日で駅前のメインストリートを封鎖して「菖蒲カーニバル」と称してお祭りをやり、今日は今日で「かわまつり」である。お母さんの実家のおばあちゃんもやってきて家の二階から遠い花火見物である。御主人はこの行事の交通警備、上のお兄さんはお仕事である。僕は・・・・と言うと、花火の音が雷のようにも聞こえるので小屋の奥に引っ込んでいた。外へちょっと出てみればきれいな花火が見えるのだけれど、生憎、犬と言うものは美しいものには関心を示さない習性なので大きな音におびえながら小屋の奥に引っ込んでいた。出来れば耳をふさぎたい気持ちなのだが、犬は両前足で耳をふさげないような肉体構造になっているので、花火が終わるのをじっと我慢するしかないのである。我が家の先代秋田犬のまるさんは、花火の音がする度にうろたえていたと、御主人が言っていたけれど、僕の場合は、それはさすがにない。雄犬とメス犬の違いなのか。それとも、まるさんが神経の細やかな犬だったらしいから、そのせいかもね。でも・・・・?、ひょっとして、僕は図太い神経の持ち主って言う事、それとも、神経の鈍い犬って言う事・・・・?

8月4日 はれのちくもり
昨日の夜は、夕方に散歩へ行ったというのに、又「夕涼み」とやらで散歩に付き合わされてしまった。何でも、今頃の季節は田んぼで「蛍」を見る事が出来るという事らしい。僕は夜になっても暑いので、うつむいたまま、のろのろと御主人について歩いた。御主人は、行き帰り3匹の蛍を見つけたらしいけれど、僕は「蛍」には興味もなかった。ただ暑い!!早くお家へ帰りたい・・・・ただそれだけを思って歩いた。本当は行きたくはなかったけれど、飼い主の言う事は絶対、と言うのが飼い犬の法律で決まっているし、犬はそういう習性なので逆らう事が出来ない。でも、今晩は勘弁してもらいたいよね・・・・

8月3日 はれ
梅雨が明けた途端に、夏が真っ盛り状態になってしまった。気温も30度近くまで昇った。犬にとっては「受難の季節到来」という、最悪の季節になってしまった。
ところで、森の熊さんなどが冬に「冬眠」をするのは一般的に知られている。ところが犬、特に飼い犬、その中でも外犬(屋外で飼われている犬の事)が「冬眠」ならぬ「夏眠」をすると言う事を知る人は少ないと思う。犬は毛皮を年中まとっているので、夏の暑さは大敵である。そのために夏になると、死んだように眠り続け、なるべく動かないようにする。これが「夏眠」である。でも、そんなときには、きっと御主人が僕にちょっかいを出しに来る。ただでさえ暑いのに、身体をいじくり回されたら暑さが2倍3倍にもなってしまう。出来たら法律で「夏眠をしている犬にさわるべからず」と、言うのを作って禁止してもらいたいなぁ・・・・

8月2日 はれ
やっと、やっと僕達の住んでいる秋田県を含む東北地方が南部北部、ともに「梅雨明けを・・・・したと思われる。」と、発表があった。・・・・なんだい、それは?・・・梅雨が明けたのなら、ズバリ「梅雨明け宣言」と言えばいいのに、どうやら人間達というのは無難な言い方で物事の本質を曖昧にしてしまう習性があるようだ。なぜ犬のように、「好き、嫌い」というデジタル思考で物を考えないのだ。犬の頭は2進法で物を考える。良い、悪い、0と1の世界なのだ。犬は太古の昔よりコンピューターなどと言うものができる、ずっと前からこのデジタル思考で行動して栄えてきたのだ。だけど、御主人は、これに反論して言う。0と1の間には無限に0に近い1とか、無限に1に近い0があるはずだ、それらは、すべて切り捨てられて、対極にある0と1だけで物を考えてしまっても良いものだろうか・・・と。そんな風に理論的に、つっこまれると、犬は弱い。何しろデジタル思考だからね。「はいはい、そうです。御主人の言う通りです。」と逃げの体制に入り、議論を打ち切ってしまう。これ以上、複雑な話をされると、犬の頭では理解不能である。なにしろデジタル頭だからね。ここは、「御主人の言う事には逆らえない」という飼い犬の習性をうまく利用して逃げ去る事が出来たのであった。犬も、なかなかしたたかなのである。えっ、そういう行動自体が、人間と同じアナログ思考じゃないかって?「僕は犬だから、わかんないよぅ〜・・・・・?」

8月1日 くもりのちときどきあめ
雨が降るような空ではなかったけれど、その空から雨が降ってきた。「雨が降りそうもない空」と言ったのは、御主人だ。いつもの事ながら、御主人の天気予報は当てにならない。
ところで、今日は夕方散歩が雨で中止になった。その替わりなのか、あんパンを丸ごと持ってきて、僕に食べろと言う。飼い犬にとっては甘いお菓子は「禁断の食べ物」と言われていて、タマネギ、ネギ、タコ、イカの次に危険な食べ物に分類されている。(犬は、歯をあまり磨かないので虫歯になってしまうし、人間で言えば成人病とやらになりやすい。)「これは、何かあるな?」と、思ったので匂いを丁重にかいでみたけれど、別にどうと言う事もないので、ペロリゴクンと、一呑みに胃袋の中へ送り込んでやった。1秒か2秒で始発から終点まで到達してしまう乗り物など、世界中どこを探してもないだろう。僕の口と胃袋が、まさにそれである。ところが・・・・である。あんパンが喉を通りすぎた時、柔らかいあんこの部分に何か堅いものを感じた。「はっ!!薬だ!!」と、そう思った時は、あんパンプラス薬は胃袋に到着してしまっていて、胃袋は活発に胃酸を分泌し始めたところだった。
注(薬とは)・・・蚊が媒介する寄生虫を予防する薬の事。蚊が出没する期間は一ケ月に一度飲み続けなければいけない。この寄生虫が身体にはびこると、「花の命は短くて苦しきことのみ多かりき」
と、作家である林芙美子の言葉通りに寿命を縮める事になってしまう。飼い犬を花にたとえる事が出来るかどうかは別問題であるけれど・・・・