むつ犬のおまぬけ日記
平成18年9月
9月30日 はれ
実は・・・・ここだけの内緒話だけれど、昨日はシュークリームを食べたお話をした。だけど、今日は胃がもたれてしょうがなかった。午後になって胃が悲鳴を上げたので、雑草を食べて体の中を洗浄した。僕達犬属は、遠い御先祖であるオオカミさんの時代から、胃がもたれた時は雑草を食べて胃袋の中へ送り込んでから吐き出すんだ。すると、胃の中がすっきりする。
そんな事を草むらの影で隠れてやっていたら、御主人にすっかり見られてしまったんだ。犬は御先祖だったオオカミさんの時代から、食べ物を噛まずに飲み込んでやる性質がある。それに飼い犬は与えられたものは、すべて胃袋に納めようとする。後者も御先祖から受け継がれている性質だ。野生の犬は、いつ食べ物が手にはいるかわからないので、食べられる時は腹一杯食べておこうという性質がある。だから「禁断のお菓子」である甘いものも、すべて胃袋の中に放り込んでしまう・・・・今日ばかりは、御先祖から受け継いだ血筋が恨めしい僕なのであった・・・・

9月29日 はれ 
昨日は、御主人がたいそう忙しかったので、上のお兄さんと夕方散歩に行った。おじいちゃんとおばぁちゃんの家に行き、家の中に上がり込んでたくさんおやつをもらったんだ。その帰り道、踏切の手前にあるケーキ屋さんにお兄さんが用があるからと中へ入った。そこで僕は甘い匂いに魅了されてしまい、すっかりとその場の雰囲気に和んでしまったんだ。ケーキ屋さんの中でフセの状態になって、ほのぼのとした気持ちになったんだ。おまけにシュークリームをごちそうになったりして、犬にとっては禁断のおかしではあるけれど、禁じられたものほどおいしいものである事は経験上知っているので、ありがたくごちそうになった。しかし、御主人に知られると「禁断のお菓子なんか食べて!!」と言われてしまうので、お兄さんには「御主人に内緒にしてね」とお願いした。ところが、すっかり知られてしまい。僕は、御主人から、お口を「あ〜ん」と開けさせられて、口の中の匂いをチエックされてしまったよ。おまけに、あちこちで、色々な物を食べてきたというので「夕御飯」は、少なめにされてしまったんだ。残念!!!!「口は、災いの元」だね!!

9月28日 あめのちはれ
我が家の稲刈りが始まったのは、前にお知らせしたのだけれど、それについては御主人から厳命があった。乾燥機を使っているので「火の用心」をすること。お米が小屋の中に積まれるので泥棒用心をする事、なお、この仕事には夜も昼もない!!・・・・と、言われてしまったんだ。そんな事を僕に言われても困る。何しろ、乾燥機が「ゴウゴウ」と、すごい音を立てている側にある犬小屋の中で「ぐっすり」と「お昼寝」及び「夜寝」が出来るぐらいの僕なので、言いつけられた事を実行できるかどうか、事が起こってからじゃないとわからないなぁ・・・・

9月27日 あめ
久しぶりに雨が降ったので、気温が下がった。僕は北国原産の犬なので寒さには強いのだけれど、いくら何でもコンクリートの床の上でお昼寝するには少々つらいものがある。犬ならば誰でも思う事だけれど、出来るならば快適な所でお昼寝をしたいと思う。そこで、今日は一日中、犬小屋の中で眠り込んでいた。作業小屋にやってくる御主人の音も聞こえないぐらい熟睡をしたのだ。それほど犬小屋の中が気持ちよかったという事だ。これからは犬小屋に防寒シートがかぶせられて、辺り一面が真っ白になる冬を迎える事になる。出来る事ならば、一年中、春や秋のような天気が続いてくればよいと思っている僕なのであった。

9月26日 はれのちくもり
9月21日から30日まで「全国秋の交通安全運動が展開されている。御主人は、毎日これに出かけて行かなくてはいけない。すると、僕の散歩は中止になってしまう・・・・必然的に、散歩から帰った時にもらう「おやつ」も無し!!って事になってしまう。悲しい事である。土曜日と日曜日は、出かけなくても良いので、いくらか助かる。この時期は冬を迎えて太らなければいけない飼い犬(おもに外犬)にとっては、御飯一粒、煮干し一本でも多くお腹の中に納めたいと思う。それが、10日間の内に土曜日曜の2日だけしか朝のおやつをもらう事が出来ないなんて、「地獄の責め苦」にも匹敵する。飼い主は、自分の飼い犬が厳冬の時期に、どんな思いで過ごしているのか思いやった事があるのか!!!・・・出来るならば、御主人を厳冬の時期に僕の犬小屋へ一晩ご招待したいと思っている僕なのであった・・・・。

9月25日 はれ
とうとう、我が家でも「稲刈り」が始まった。よその家では、とっくに始まっていたのだけれど、仕事以外で忙しい御主人は、昨日の日曜日は来年に秋田で開催される「国民体育大会(国体)」のリハーサル大会の警備にかり出されたらしい。せっかくの秋日和、稲刈り日和が台無しになってしまった。でも、今の時代はコンバインという稲刈り機械があるので、作業能率さえ気にしなければ一人でも「稲刈り」が出来る。のんびり屋の御主人の事だから、一人でお仕事をする方が「お気楽」なのかも知れない。それよりも、僕としては「平成18年産の新米」を早く、食べたいと思う、今日この頃なのであった。

9月24日 はれ
今日も一日「秋日和」だった。午前中は家族がみんないたのだけれど、午後になったら、みんな、別々に何処かへ出かけていってしまった。残された僕はお留守番である。「はぁぁ〜、今日も一日のんびりとすごそうと思ったのに・・・」とぼやいても始まらない。気を引き締めて、地面に横たわって「見張り」を始めた。しかし、秋のさわやかな風と、ほどよい暖かさのお日様が僕を誘惑するんだ。イヤイヤ、僕を誘惑するのじゃなくて、僕の上のまぶたと、下のまぶたを誘惑する。まるで愛を成就させるキューピットのように・・・・やがて「まぶた達」はくっつき会い。僕は深い眠りに陥るのであった・・・・・「はっ!!」と気付いて目を覚ますと、日はすでに、だいぶ西に傾いていて、すでにお母さんが帰ってきて洗濯物を取り込んでいる。そのうち御主人が帰ってきたので、僕は直立不動の姿勢になってお迎えをした。御主人にだけは午後いっぱい「番犬」のお仕事をまじめに勤め上げた・・・・と言う風に装ったんだ。そうしないと、後で「お叱り」がひどいからね。そうしないと「御飯抜き!!」なんて言う事にもなりかねないからね。そして、こんな事柄から学ぶ事としては、「飼い犬は要領を持って本分とすべし」だね。何事も、要領良く物事をこなしていけば、いらぬ、いざこざも起きないって言うわけだ。旧日本軍の教えは飼い犬の世界に脈々と受け継がれているようだ・・・・

注・・・軍人は要領を持って本分とすべし・・・の例に乗っ取っている

9月23日 はれ
今日は「秋分の日」という。何でも「秋彼岸」でもあるというので、我が家に限らず、日本国中が御先祖のお墓参りをするのだそうだ。今日は、雲一つ無い快晴だ。空は透き通った青さが何処までも広がっている。こんな日は、何処か旅にでも出かけたいような気分に人間達はなるらしい。僕は犬だし、飼い犬なので、何処かへ出かける事は出来ない。せいぜい、朝夕の散歩ぐらいである。でも、僕はお日様にあたってのんびり昼寝をしていた方が楽しいし、気が楽だ。スズメどもが、うるさいけれど、赤とんぼさん達が静かに青空を背景に飛び回っている風景はなかなかきれいなものだ。そんな風景を見ていると、自然に上のまぶたと下のまぶたが仲良くなってしまって熟睡してしまう。幸い、今日は家族全員がお休みなので「番犬」である僕としては、安心してぐっすりと眠る事が出来る。今日は、本当に、良い骨休めをさせてもらったと思うよ。明日も出来るかな・・・・?

9月22日 はれ
最近のニュースで「森の熊さんが里山や村に現れ、人間と遭遇する。」という事件が増えているという。森の熊さんは、突然と人間に遭遇して驚き、支離滅裂になって人間に襲いかかり、怪我をさせてしまうというものだ。昨日の日記でもお話ししたが、今は「天高く馬、肥ゆる秋」でもあるし、犬も熊もスズメも「肥ゆる秋」なのだ。だから、人間を始めとして動物たちは食べる事に余念がない。人間達や飼い犬は、今頃になって、たくさん食べなくとも生活していくのになんの支障もない。しかし、自然の中で生きていく動物たちは、今たくさん食べて皮下脂肪を蓄え、やがて来る冬の寒さをしのげるような対策を施しているのだ。さっき、飼い犬の場合は、「今食べなくても支障がない・・・」と、言ったけれど、それは「内犬」の場合であって「外犬」は飼い犬といえども暖房のない犬小屋で一冬を過ごすのであるから、ある程度の防寒対策は必要になる。ちなみに、僕は外犬なので、今の内にたくさん食べて太っておかなければいけない。それなのに、御主人がくれる御飯の量と来たらお話にならないぐらい少ない・・・・今度、御主人に厳重に抗議しなければいけないと思っている、今日この頃の僕なのであった・・・・

注・飼い犬には2種類の環境に暮らすものがある。

注・外犬(暑い夏にも寒い冬にも耐え忍んで
     家の外で飼われている犬の事)
注・内犬(暑い夏も寒い冬も快適な家の中で飼われている犬の事)


9月21日 はれ
「秋の日はつるべ落とし」とは、今の季節の入り日を表す言葉なのだ。どういうわけなのか、秋の夕日は「あっ!」っという間に沈んでしまう。御主人がグズグズしていて散歩へなかなか出られない時などは、たちまちあたりは薄暗くなってしまい、西の空だけが青空と夕日のオレンジ色が入り交じったような色に染まっているだけで、妙にわびしい風景に様変わりをしてしまう。御主人だってきれいな夕日を見たいだろうし、写真にも撮りたいのだろうけれど、「不精者」と来ているので、自分が気の乗らない物事を後回しにする性質がある。僕の散歩もその一つなのである。いい加減、飼い主の義務である「飼い犬の散歩」に慣れて欲しいと思っている僕なのではあるけれど、嫌いなものはどうしようもない。僕がバナナを大嫌いなのと似ているのかな・・・・?

9月20日 はれ
光がきらきらとして、透き通った金のレースを通して風景を見ているようで、本当に美しい秋の晴れた一日だった。「台風一家の秋晴れ」とは、よく言ったもので、空気中のチリもゴミも、すべて吹き飛ばして、ただ透明な空気だけを残して台風は北海道と言うところへ去っていった。
ところで、夕方散歩の時、御主人の叔父さんの家のワンコとばったり出あった。向こうは、純真な性格なので、なんの疑いもなく僕に近づいてきたのだけれど、僕の方は、人見知りな上に、愛想が悪いと来ているから、「がうん、がるるる〜」と、うなってしまった。向こうは、ラブラドール種なので性格がとても良い!!、一方僕は秋田犬なので、飼い主及び家族に対しては従順なのだが、対外的な性格は悪い・・・・つまり、よその人や犬には、いっさい妥協しないし、愛嬌も振りまかないという事なのだ。これが秋田犬の欠点でもあり、逆に長所でもあるのだ。人間世界でも、そうだろうけれど他人に対して、おもねる事が出来れば生きていくのは楽かも知れないけれど、自分に対してはつらい・・・逆に、自分に忠実に生きていこうとすれば、この世では生きにくい・・・・人間で言うならば、秋田犬は「昔気質の職人」の様な存在なのだ。今の世の中では珍しい存在なのである。はっ!!、もしかして、それで秋田犬は日本国の「天然記念物」なのか・・・・つまり、絶滅寸前という事なのかも・・・・?

9月19日 はれ
人間の世界では、今頃の季節をたとえて「天高く、馬肥ゆる秋」というらしい。ところが犬の世界では「天高く、犬吠ゆる秋」という。空気が澄んできて、空が高くなったように見える。そして、食べ物がおいしい季節になり、馬も栄養満点の物を食べて太ってくる季節だなぁ〜」という意味らしい。広く浅い知識を持つ御主人の話によれば、これは中国のことわざで、もっと違う恐ろしい意味があるのだと言うけれど、100%は信用できないので話半分に聞いた。だから、後の方の話は、まるっきり聞いてなかったので知らない・・・・ところで、犬の世界のことわざは、「空気が澄み切って、空が高くなったように見える」までは同じである。「犬吠ゆる」とは、夏のひどい暑さが終わり、犬が一番活動しやすい季節になった。さぁ、これからは犬の季節だぞ!!。中秋の名月もやってくるのでお月様に向かって、つまり天に向かって遠吠えをしよう、御先祖だったオオカミたちの血を忘れないように!!」という意味なのだ。最後の「秋」は季節を表す言葉で、今まで長々と説明した言葉の意味が、すべて、この秋という言葉に集約されるのだ。単純明快を旨とする犬の世界ではあるが、こうしてみるとなかなか奥深く、風雅を愛する心が御先祖のオオカミの時代から犬へ脈々と受け継がれているらしい・・・

9月18日 あめのちはれ
知らない間に「台風さん」がやってきていたらしい。名前は「13号さん」というらしい。何でも、九州や沖縄ではものすごい被害をもたらした暴れ者らしい。その後、日本海を進み、僕達の住んでいるところまでやってきたようだ。幸い、日本海も中国大陸よりを通ったおかげで、風速8メートルぐらいの風が吹いただけですんだ。しかし、台風は過ぎ去ってからも危ないという・・・・夕方散歩の時も東からの風が強くてなかなか前に進めなかった。この風は、まだまだ強く吹くのだろうか・・・・?今夜は、危ないものが色々飛んできたら痛いので犬小屋の中で眠る事にしようと思う。まさか、犬小屋までは吹き飛ばされないだろうと思うのだけれど・・・・心配である。

9月17日 くもり、ぱらあめあり
今日は僕達の街のお祭りである。大名行列や山車が出て、とてもにぎやかである。もっとも、御主人から言わせれば、子供の頃から比べて、観客も、出る人や山車の規模も寂しくなったという・・・・
祭りなんて言うのは、今の人達に合わなくなってきたのかねぇ〜、そういえば我が町内の祭りも、ずいぶん静かである。
ところで、唐突にヨーグルトの話になる。先代秋田犬のまるさんの時代に秘められたヨーグルトの話とは・・・・?
我が家の「第1次ヨーグルトブーム」は、今をさかのぼる事、20年近い前・・・・上のお兄さんや下のお兄さん達が子供時代の事である。ちなみに、平成元年8月1日生まれのまるさんが我が家にやってきたのが、2ヶ月の子犬の頃、下のお兄さんは小学校の一年生だったという。お母さんがヨーグルトを自家製で作って、みんなで食べていた。当時は「ヨーグルト製造器」などと言うものは、あったか、無かったか知らないけれど、「魔法瓶」の中で作っていたのだという。僕は犬なので、そこら辺の器具やら状況などは理解できないけれど、御主人の話を忠実にお話しすると、魔法瓶の中に牛乳と、種ヨーグルトを混ぜたものを暖めて入れると一晩で出来上がるのだという・・・しかし、まるさんはヨーグルトを口にする事はなかった・・・・時代的な不幸なのか、御主人がケチだったのかは知らないけれど・・・・・・・・。「まるさん、残念だったね。こんなおいしい物が食べられなかったなんて!!」と言うしかない。
その点、我が家の「第2次ヨーグルトブーム」に、この家の一員となった僕は、食べ物に関しては至福を通り越して、「極楽だ!!」と言っても過言ではない。もっとも、このまま昇天してしまったら困るけれどね・・・・・

9月16日
僕は、最近「ヨーグルト」なる物を食べさせられている。この前は「グルメ志向」だったけれど、今度は「ヘルシー志向」である。初めて食べさせられた時は、良い匂いがしたので「ペロリ」となめてみたら、これがけっこうおいしい・・・いや、けっこうどころかすこぶるおいしいのだ。食器の上に出されたヨーグルトを夢中になってなめ、最後はお母さんが手に持っているスプーンまでなめる始末だった。そうなのだ、お母さんが「ものは試し」とばかりに僕にヨーグルトを与えたのだ。それ以来、これにはまってしまって一日中でも食べていたい気がする。いったい何で出来ているのか聞いてみたら牛乳で出来ているのだと言うからびっくりした。僕は、子犬の頃から今まで御飯に牛乳を混ぜた物を食べて育ってきた。最近はみそ汁に変わったけれど、牛乳は生育過程から言えば、母犬の味、原体験の味とでも言えるだろう。今でも、水替わりに呑みたいと思っている。それが今、ヨーグルトという形で再会できたって言う事については、僕も喜びを隠せない。さらに、よく聞いてみると、牛乳からヨーグルトを作る機械というのを御主人が買ったのだそうだ。値段は、僕が子犬の時にここの家に引き取られた時の値段の4分の1の値段だという。つまり5千円なり・・・と言うわけだ。この値段の機械で牛乳よりまろやかでおいしい食べ物を永久的に作る事が出来るなんて、まるで夢のようである。それに身体にも良いようなので、出来れば毎日食べさせてもらいたいものである。ちなみに、御主人を始め家族のみんなは毎日食べているようである。
しかし、このヨーグルトに関しては、僕の先代秋田犬であるまるさんの時代に、秘められた過去があったのだという・・・・そのことに関しては以下次号!!と言う事にしておこう・・・

9月15日 くもりのちはれ
僕は飼い犬なので、時と場所を選ばず、僕に対して御主人や家族から様々な命令が下される。「お手、おすわり、ふせ、待て、よし」この5つの動作が基本的なものだ。そして、この基本動作しか僕は知らない。だから、複雑な命令や意味不明な命令が出された時は、とりあえず、この基本動作のどれかをやって見せて命令者が納得すれば、「ははぁ、なるほどこういう事だったんだ」と、僕も納得する。しかし、命令者がしつこく、ある命令をくり返し、僕が基本的な動作を繰り替えして、して見せても駄目な時は、フセの格好で座り込み、「もうどうでもいいや」と開き直る事にしている。だいたい犬には複雑な命令は理解できないし、する気もない・・・・そこで飼い主に警告!!
その1.命令は簡単明瞭である事、複雑かつ長い言葉での命令は不可
その2.、犬の訓練学校では命令は英語を使って行うが、日本犬に関しては日本語で命令を行う事、但し、山形県庄内地方生まれの秋田犬である僕に対しての命令は、標準語、秋田弁、庄内弁どちらでも可
その3.命令が上手に実行できた時は、ご褒美として、おやつを与えるべし、但し、これは希望的要求である。

9月14日 くもりのちはれ
朝散歩から帰って、僕はいつものおやつである「煮干し」、「犬ビスケット」を御主人からもらったのだけれど、お母さんからは、昨日、三陸から届いた新鮮な焼サンマを丸ごともらった。丸ごとと言っても、片側半分の身がすでに食べられていたけれど、頭から尻尾まで残っているので丸ごとには違いない。これからの季節はうまいものがでそろう季節でもある。人間だけではなく、犬や猫も「ぐるめ・・・」とやらを目指すのがこれからの主流になるだろうと思うよ。もっとも、飼い主が飼い犬や飼い猫においしい物を食べさせてやろうという気持ちがないと無理だけどね・・・・

9月13日 はれたりくもったり
岩手県の三陸から新鮮なサンマが届いた。僕も毎年お裾分けをしてもらっているのだけれど、今年は豊漁だという。御主人は、なんと言ってもおいしいのは「お刺身」だというのだけれど、犬は生ものを食べないので焼き物を食べさせてもらっている。まだ届いたばかりなので、僕は食べていない。たぶん今夜の夕餉の食卓に上るのだろう。その余ったものが僕の口にはいるという事になっている。
ところで、「サンマにがいか、しょっぱいか・・・」という有名な詩があるのだけれど、サンマの一番おいしいところは「内臓」である。と僕は思う。脂ののった白身と内臓の少し苦いのを同時に食べると、とても味に深みが出てくる。人間達は、大根おろしに醤油をかけて白身と内臓を同時に食べるようだけれど、僕は犬なので、そんな事は出来ない。あああ〜、そんな事を思っているだけで、よだれが出て来た。下手なうんちくを語るよりも、早く新鮮なサンマを口にしたい僕なのであった。

9月12日 くもり
実りの秋を迎えて、田んぼの稲もますます黄金色に熟し始めた。それと同時にスズメどもが群れをなして田んぼにやってきては稲穂をついばんでいる。スズメどもにとっては餌を探す必要のない季節になったと言う事なんだ。稲作農家が一生懸命に育てなお米をスズメどもに食べられるのは悔しい・・・・だけど、少しぐらいなら奴らも命がかかっているので食べさせてやっても言い。と、御主人は言っている。それを良い事に、奴らは道ばたに面したところを余すところ無く食べるから油断がならない。何しろ何十羽という群れが一度にやってきては食べていくんだからね。おまけに家の近所の田んぼには「ひとめぼれ」、「あきたこまち」、「もちごめ」なんかが植えてあるから、スズメどもは「よりどりみどり」と言うわけだ。さらに困った事には、奴らは騒がしい。僕達、飼い犬は「御飯を食べる時は静かに食べろ」と、子犬の頃から飼い主に言われ続けている。ところが、奴らと来たら、食べるかしゃべるか、どっちかにしてくれと言うぐらい見境がない。うるさいから、犬の昼寝を阻害する。良い事なんか、ちっとも無いスズメどもである。奴らがいない秋を願う事しきりである。そうなったら、やすらかで、本当の豊饒を迎える事が出来るのではないだろうか・・・・

9月11日 くもり
めっきり涼しくなったので、僕の散歩の足もはかどる。今日の夕方散歩は自転車散歩で、御主人はいつもより自転車を速く走らせる。涼しくなったので、僕が早足で最初から最後まで歩けると思っての事に違いない。まったく、その通りなのだが、僕にことわりも無しに、いきなり自転車を速く走らせのは、意地の悪いやり方だ。僕の方にだって「散歩へ出かける時の心構え」というものがあるから、いきなりは困る。「昨日の散歩であそこに気になる匂いがあったから、今日はじっくりとかいでみよう」、とか、「不思議な物体を見つけたから、今日は近くまで言ってみたい」等々と、犬には犬の思惑というものがある。それを、馬(この場合は自転車)が荷車(この場合は僕・・・・)を引っ張るような散歩の仕方は困る。だいたい風情というものがない。今は秋、秋の哀れさを感じながら心静かに野道を歩くべきである。清少納言の枕草子にいう「秋は、夕暮れ。夕日のさして、山の端いと近うなりたるに、烏の、寝どころへ行くとて、三つ四つ二つなど、飛び急ぐさへ、あはれなり。また、犬の野辺の草むらを愛で、虫の音に耳を傾けるも、いとおかし・・・云々」ってね。
もっとも、犬の所は嘘で僕が付け足しただけだけれどね。・・・・

9月10日 くもりのちあめ
今日は朝から湿気がひどい、ムシムシするような天気である。「きっと今に雨が降ってくる」と御主人は言うのだが、いっこうに雨が降る気配がない。僕は暑いものだから、又トラクターの下に潜り込んでいた。連日、忙しい御主人は、今日ばかりは「忙中閑有り」と、言うわけで家の中に閉じこもったきり飼い犬の様子すら見に来ない。別に、僕は毎日変わる事もなく犬小屋の周辺にいるのでどうと言う事はないけれど、愛犬の様子ぐらいは見に来て頭の一つもなでてやるのが飼い主の愛情表現じゃないのかなぁ・・・・?ついでにおやつを持ってきてくれれば、僕は尻尾を千切れるように振って親愛の情を示すと思うんだけれどなぁ・・・・?

9月9日 はれ
今日は、又馬鹿な暑さで真夏並みの気温になった。当然、僕はトラクターの下に潜り込んで暑さをしのいだ。昨日までは誠に秋らしい乾いたさわやかな空の下でのお昼寝で、気持ちよく過ごせたんだ。ところが、今日は、舌を「ハァハァハァ・・・」と、出しながら苦しそうにあえいでいるばかりだ。こんなに暑くなったり涼しくなったりしたら犬でも夏風邪を引いてしまうと思うだろうけれど、犬というのは案外丈夫なもので、今のところ何ともない。。だから、案外、犬も「馬鹿」ではないという、よい証拠である。反対に、御主人は気候がめまぐるしく替わるものだから、くしゃみばかりしている。逆に飼い主の方が「ばか・・・・・」いゃ、そのう・・・なんだよ。つまり・・・・・・
そこで一句「もの言えば 心は寒し 秋の風・・・禄食」・・・・って、どこかで聞いた事がある句だって、それはきっと思い過ごしだと思うよ・・・・

9月8日 はれ
犬は美術品や骨董と違って、古くなったから、歳をとったからと言って価値は上がらない。犬はあくまでも血統が大切なのだ。良い父母からはよい子犬が生まれ、価値も高い。秋田犬の子犬は一頭が20万円もするのがいる。僕は2万円でここの家に引き取られた。僕の父と母だって良い血統なのだけれど、僕の親元が上のお兄さんの知り合いだったので安くなった・・・・普通であれば、僕だって20万ぐらいは・・・・・
「忠犬ハチ公」のふるさとである秋田県大館市にある秋田犬保存会が発行する「血統書」には3代前までの僕の御先祖が書かれている。もちろん母親以外は会った事もない犬たちである。そしてコンテストなんかで入賞したりすると、「繁殖」依頼が後を絶たない事になる。つまり、雄犬の場合は黙っていてもお嫁さんが来てくれるというわけだ。ちなみに僕の場合は「コンテスト」に出る予定も、お嫁さんが来る予定も、全くない。・・・・・

9月7日 あめのちくもり
今日の夕方散歩は上のお兄さんといってきたよ。御主人は連日のような雑用により、お仕事が遅れているので、今日は一日田んぼの草刈りである。イナゴもカエルも、畦道に咲いている可憐な野の花もなんのその、草刈り機械で力任せに刈っていくので風情や哀れみもあったものではない。だだ、ただ、仕事の遅れを取り戻したいだけなのだ。僕と上のお兄さんは、そんな御主人の仕事ぶりを冷ややかに見ながら、のんびりと散歩を楽しんだ。こういう時の散歩の後の水はおいしいし、食も進む。「満足、満足」という気分が心の中に満ちてくる。御主人、ご苦労さん!!

9月6日 くもり
昨日の朝から散歩に行っていない・・・・ここ数日、御主人が朝から晩まで忙しいせいだ。「なぜこんなに忙しいのだろう?」と、自分でも不思議がっていた。お仕事で忙しいのではない。雑用で忙しいのだ。きっと、こっそりと「罰当たり」な事をしていて、天罰が下ったのかも知れない・・・・従って、僕の御飯も遅くなる。かろうじて御飯抜きという最悪の事態にまでは至っていない。これは天の神様が「世の中に善行を施している僕」を哀れんで、御飯を食べさせてくれているに違いない!!御主人は忙しいさなかに神様に操られて、僕に御飯を与えているに過ぎないだけの存在なのだ。ところで、「おまえは、どんな善行を積んでいるのだ?」という疑問が入道雲のようにもくもくとわき起こっているかも知れないけれど、「飼い犬というのは存在するだけで、すべての人間の心を穏やかにするという、善行を施しているのだ!!」・・・・犬が嫌いな人はどうなのか知らないけれどね・・・・

9月5日 くもりのちあめ
だいぶ涼しくなった。コンクリートの上やアスファルトの地面は、少し冷たくなってきたので、今日は久しぶりに犬小屋の中でお昼寝をした。犬小屋の中は去年から掃除をしていないのでホコリだらけゴミだらけだ。おまけに中に敷いてある発泡スチロールの板が泥だらけ・・・・すべて「だらけ」の世界である。くもの巣がかかっているし、僕の抜け毛がそこかしこに落ちている。御主人!!もう少し犬の環境に注意を向けた方が良いと思うよ。「良い環境はよい犬が育つ」だよ。もっとも僕の場合は成犬になってしまったので、「育つ」というわけにはいかないけれど、犬の健康にも関係があるので犬小屋の管理はおろそかにしないで欲しいなぁ〜

9月4日 はれ
すっかり「夏の毛」に生え替わった僕の身体は、すっきりさわやかである。「もう秋だというのに、何を今頃!!」と、叱られそうだけれど、僕の身体は、毛が自然に抜け落ちて生え替わる事が出来ない体質のようだ。梅雨の頃から毎日のように御主人から「毛取りブラシ」で身体をくしけずってもらっていたのだけれど、今頃になって、古い毛がほとんど取れて、「夏の毛」になったというわけなんだ。話は変わるけれど、山のウサギさんの身体は、夏は褐色のような色になって、冬になると全身が真っ白になってしまう。これは保護色で、敵に見つからないようにするためだ。犬の毛替わりとは根本的に違う。犬の夏の毛は、太くて長く、ごわごわしている。涼しい空気が皮膚まで通り、身体が蒸れないようになっている。一方、冬の犬の毛は、ふわふわと綿のようなものが夏の毛のごわごわした毛の間に生えてきて、この綿のような毛に暖かい空気をため込んで防寒の役目を果たす。従って、僕の今の状態は、涼しい風を皮膚まで取り込んで、真夏を満喫しているって言うわけなんだ。でも、「今はもう秋・・・」という歌もある通り、暦の上では秋なのだ、幸い残暑が厳しいからなんとか助かっているけれど、朝晩はめっきりと冷え込んできた。「毛替わりの遅い犬」とか「流行遅れの犬」等々と、ちまたで様々に言われている僕なのではあるけれど、実際問題として、冬の毛が生えてくるのはいつ頃の事なのだろうか・・・?もしかして、来年の初夏・・・なのでは・・・・?

9月3日 はれ
夏の間は真っ青な空に太陽が昇り、又真っ青な空から海へ沈んでいくばかりだったのだけれど、この頃、めっきりと秋めいてきたので、空に雲が浮かぶようになってきた。すると、この雲が夕焼けの光を受けて様々な色や形に変化するので、見ていて飽きない・・・・と、御主人は言う。僕は御主人が散歩の時に、そんな風景写真ばかり撮ってなかなか前に進まないものだから、じれったくてしょうがない。そのくせ、僕の趣味である、野道にちりばめられている様々な匂いをかぐ楽しみに、御主人はあまりいい顔をしない・・・。自分の趣味には飼い犬を無視するくせに、飼い犬の趣味には理解を示さない。これは飼い主のもっとも悪い例と言える。ことわざにもあるけれど、「大いなる慈悲を与えるものは大いなる施しを受ける」・・・だよ。御主人!!誰が言ったのかは知らないし、もしかして、でたらめのことわざかも知れないけれど・・・・?
そこで一首(今日は短歌で行ってみたよ)

黄昏れて かそけき野辺の 虫の音に 我が腹の虫 高らかに和す
・・・・・・・禄食

9月2日 はれ
今日はシャンプーをしてもらったよ。昨日から「シャンプーをするぞ」と、予告はされていたんだ。僕は、してもらいたいようなもらいたくないような気持ちだったので、なるべく御主人と目を合わせないようにしていた。そして、今日・・・・になった。一晩、シャンプーする時に抵抗するか素直になるか、寝ながら考えた結果、素直にシャンプーに応ずる事にした。御主人がトラクターの下に寝ている僕を引きずり出そうとしたので、僕は自分からはい出て、先頭を切ってシャンプー場に足取りも軽く歩いていった。シャンプーしている時は、相変わらず御主人からの注文が多い。「動くな」、「向こうを向け」等々とね。それにも素直に応じて、輝くような、立派な秋田犬の白犬になった。僕は本来、赤犬なんだけれど、年とともに白犬になりつつあるようだ。白髪が増えつつある御主人のように、僕も赤毛が白毛、つまり白髪に変わっているのかなぁ・・・・? 「僕、秋田犬の雄、6歳!!!」

9月1日 はれ
朝晩はめっきりと涼しくなった。何だか虫の声も勢いを増したような気がする。アスファルトの地面は真夏の頃のように焼けたフライパンのようではなくなった。僕は、大いばりでその地面にお腹を出して夜は寝ているのだ。蚊がいるのが少し難点だけれどね。日中は、急に空が高くなったように感じて、青さも透き通ったような青だ。風も光も透き通ったようにさわやかに感ずる。こうなると、もう秋なのだと思う。夏のあの死にそうな暑さと「おさらば」出来るのがうれしく思う反面、「もう夏が終わってしまうのか」というさみしさもかすかに感ずる。そこで一句
「一瞬の雷雨に 別れし 酷暑かな・・・・禄食」