むつ犬のおまぬけ日記
平成18年10月
10月31日 はれ
このところ、寒いという朝も晩もない。日中は暖かいぐらいだ。御主人なんか、大汗を掻きながら草刈りをしている。まるで、秋の初め頃の天気のようだ。ひょっとすると、この冬に何かがありそうな気がする。犬の勘に過ぎないのだけれど・・・・犬は野生で暮らしていたオオカミさんの血を色濃く持っているので、自然に関する勘は良く当たる。僕は飼い犬だけれど、少なくとも、御主人の天気予報よりはあたると思っている。ところで、この冬に何かあるのでは、と言う事については僕も確かな事は言えない。「暖冬」であるとか、冬を通り越して春になってしまうとか・・・・なんて言うのは「ありえない〜」だろうけれど、寒くなる時にならないと何となく不気味である。出来るならば、いつもと変わらない季節の移ろいの中で過ごしたい僕なのであった。

10月30日 はれたりくもったり
いよいよ、御主人が仕事に追われる日がやってきた!!稲刈りは、とっくに終わり、お米にする作業もすべて終わった。しかし、稲刈り前に仕事以外で忙しい日々が続いた御主人は大豆畑をほったらかしにしてしまっていた。今、大豆の収穫時期を迎えて草ぼうぼうになってしまった大豆畑の草刈りをするお仕事がせっぱ詰まっているようだ。刈取機械はすぐ側まで迫ってきているというのに、草刈りのお仕事の見通しはぜんぜん立っていない・・・・と言うよりは、間に合わないといった方が正しいだろう。それなのに僕を散歩に連れて行く時間があるのだから、ありがたいと言えばいいのか、のんきだと言えばいいのか、飼い犬に対しては誉めたいような、お仕事に関しては罵倒したいような複雑な心境にある今日この頃の僕なのであった・・・・大豆畑は、まるで童謡にある「待ちぼうけ」の歌詞のような有様なのである。ああ、救い難し!!

10月29日 くもりときどきあめ、はれまあり
午前中は雷が鳴って、とても恐ろしかった。その時は御主人が側にいて「ムツ雨が降ってくるから犬小屋の中に入れ。」と言われたのだけれど、僕はその忠告を無視したんだ。どうせ御主人の天気予報など当たるわけがないと思ったものだからね。そのうち空が真っ暗になって、「ピカッ!!」と光ったと思ったら、しばらく間をおいて「ゴロゴロゴロ、ドッカ〜ン!!」という、ものすごい音がしたので僕は尻尾を下げながら犬小屋の中に入った。それから雨が降ったり止んだりの天気だった。たまにお日様が出て、僕が外に出て寝ころんでいると雨が降り始める。今日の天気は、本当に意地が悪い。さいわい、朝と夕方の散歩には行く事が出来たけれどね。

10月28日 くもりときどきあめ、はれまあり
「歌う犬」として評判の僕ではあるけれど、最近は、散歩の時間が17時頃と重なるので歌う事が出来ないでいる。市役所が17時を知らせるオルゴール調の音楽を流すのに合わせて僕は歌う(人間には遠吠えとしか聞こえない)、とても気持ちよく歌う事が出来る。それに秋は空気も澄み切っているので声が遠くに響き、美しく歌う事が出来るようだ。でも、人間が風呂場で歌うと声が反響して歌がうまくなったような気がするのとは違う。僕の場合は、暮れゆく西の空に向かって歌うのだから本当に美しい歌声に聞こえるのだ。ドイツのライン川で美しい歌声で人々を惑わしたという魔女「サイレン」の伝説として名高い「ローレライ」のお話も、かくやと思われるばかりの僕の歌声のすばらしさなのである。しかし、僕は人前では決して歌わない。恥ずかしがり屋の僕なので決して歌わない・・・・出来るならば、17時の前後は、一人で過ごしたい僕なのであった。

10月27日 はれたりくもったり、いちじあめ
今日は、農協からお米を取りに来るので、僕は朝から犬小屋の中に閉じこめられてしまった。昨日から御主人に「明日は一日、犬小屋の中だぞ。」と言われていたので、今日は朝から水を飲まないように心がけた。毎朝、散歩に行ってくるとおやつをもらう。人間の食べ物をもらったりするので少し塩味がきつい。だから喉が渇くのだ。おやつをもらった後は水を飲むのを常としている。今日はおやつをもらったけれど水を飲まないようにした。犬小屋の中に閉じこめられていて、オシッコが出そうになった場合は死ぬほど苦しいからね。犬は習性として、自分の近くにオシッコはしない事になっている。オシッコ、イコール自分の匂い、と言う事になる。自分の住みかの近くに自分を特定できる匂いをまき散らす事は、外敵をおびき寄せる事にもなってしまう。だから、犬は住みかのすぐ側では排泄をしない事になっているのだ。幸い、午後になって2時頃、御主人が帰ってきた。さすがの僕も長い間、狭い犬小屋の中に閉じこめられていたから、解放されるのを今か今かと待ちかねたよ。帰ってきた御主人の顔を見た途端に「きゅう〜ん」と、不覚にも泣いてしまったんだ。すぐに解放してもらったんだけれど、別に尿意はなかったよ!!水を飲まなかったおかげだね!!

10月26日 はれたりくもったり
僕が、少し黒雲が多いけれど、オレンジ色に暮れゆく西の空を風情豊かに眺めていたら、「ムツ、何を見ている」という無粋な声がしたのでびっくりして振り向いた。御主人である。僕がせっかく、のんびりと風雅の気持ちでいるところに声をかけるなんて、野暮の骨頂みたいなものだ。これからは冬に向かう季節だ。きれいな夕空などしばらくお目にかかる事はないだろう。夕空に込められた今年1年の思い出を心の中に描きながら、少し感傷的に眺めていたのだ。「むつ、散歩に行こう」という言葉なら、僕はすぐさま反応して、はしゃぐのだけれど、「むつ、何をしている」・・・じゃねぇ〜、がっくりと脱力したくもなるよ。ちなみに、夕方散歩は上のお兄さんといったのだけれどね。なんでも、御主人は明日のお米の出荷を控えて、お米を袋に詰めるお仕事に大忙しなそうなんだ・・・・だったら、僕に声をかける暇なんかあるわけ無いだろう!!「がうん、がるるるる〜!!」

10月25日 はれ
御主人が、万歩計とkcal消費計の付いた「めもりーたいぷ、みゅうじっくぷれーやー」・・・?なるものを買ったという。僕は犬なので、御主人からそんな事を言われても良くわからない。要するに自分が歩いた歩数とkm数、それに歩いて消費されたkcalが表示されて、音楽も聴ける物らしい。僕は思ったね。御主人も、いよいよダイエットに本腰を入れたらしいと。現在74キログラムの体重である御主人は、僕のほぼ二倍の体重がある。それを10キログラムも減らそうと言うのだから無謀にもほどがある。っていうかぁ〜、減りっこない。「中年太りの今日この頃、お変わりございませんか」という挨拶が常識になっている御主人の事だから、僕の散歩やその他を入れても一日で歩くのはせいぜい2.5〜3qぐらいなものだろう。そんな程度の歩きでダイエットなど出来るわけがない。マタギ犬(狩猟犬)である秋田犬の御先祖達は一日に20qは山の中を歩いたり走ったりすると言う。御主人の10倍は歩いている計算になる。僕は心の中で御主人の密かなるダイエット宣言をあざ笑い、忠犬の振りをして散歩に付き従うのであった・・・・

注・・・ちなみに御主人が「ミュージックプレーヤー」なるもので聞くのは音楽ではなく、落語なのであった・・・ハァァァ〜・・・ヤレヤレ・・・なのである。

10月24日 あめかぜつよし
昨日から台風のような強い風と雨が吹いてくる。時々僕の寝ている犬小屋の中にも吹き込んでくるので僕は避難をした。田植機の下である。ここなら床がコンクリートなので少し冷たいけれど、雨が吹き込む心配はない。こんな所で一日を過ごしていたのだ。所で、今日は御主人が黒い服を着てお出かけなので、夕方散歩は上のお兄さんと一緒に行った。時々、雨が降って道路も泥んこだ。おかげで僕の真っ白な毛が汚れてしまったよ。こんな日は早く御飯を食べて寝るに限る・・・・

10月23日 くもりいちじあめ
10月から、僕のおやつが替わった。「犬用ビスケット」は替わらないけれど「煮干し」を止めて、スティック状になった肉である。その名も「ビーフジャーキー スティックタイプ 犬用」となっている。僕は毎朝、このビーフジャーキーを4本か5本と、犬用ビスケットを3枚もらう。もちろん、これだけじゃ足りないのでお母さんから別のおやつももらう。ところが、この「ビーフジャーキー」なるものが問題なのだ。御主人は本気なのかシャレなのかは計り知れないけれど、僕の食事にこれをそえる。それは良いのだけれど、そえ方が悪い・・・・どうやらスティック状になったビーフジャーキーを御飯の上にのせて漢字を書いているようなのだ。昨日は「犬」という漢字だった。僕は犬なので漢字はおろか文字自体を読む事が出来ない、でも「犬」という漢字は形では知っている。犬小屋には僕が子犬の時、市役所に「飼い犬登録」した時にもらった金属製のプレートが張ってあって、丸の中に犬という字が書いてある。毎日これを見ているし、御主人にも読み方を教わったので、これだけは知っているのだ。
だけど、今日の御飯の上に乗っていたビーフジャーキーで書かれた文字は読めなかった。御主人に「これはなんと読むのだ」と聞いたら「木(き)あるいは(もく)と、読むのだ」と言った。それって、いったい何なのだ。御主人は飼い犬に漢字を覚えさせて何をしようと言うのだ。ついさっき起こった事も、すぐさま忘れてしまう犬に何をさせようと言うのだ。
この家に飼われる年月が長くなるほど、御主人が理解できなくなる僕なのであった・・・・

10月22日 はれ
今日の夕方散歩の帰りに三毛猫さんと遭遇した。御主人が最初に見つけたんだ。「ムツ、猫がいるぞ」と言われたのだけれど、僕は何処にいるのかさっぱりわからなかった。よく目をこらしてみると、わずか4〜5メートルの距離にある石の上に座っているのを見つけた。はぁぁぁ〜、犬が猫を見つけられなくなったらおしまいだなぁ・・・・僕が猫さんに近づいていったら、相手はものすごい形相になって僕をにらみつけるんだ。僕もにらみつけてやった。しかし、僕はみんなもご承知の通り「にらめっこ」には弱い。御主人とにらめっこをしても、すぐ目をそらしてしまうのだ。僕達のにらめっこは「目をそらした方が負け」というルールがある。僕と、この猫さんとのにらめっこも、最初に僕が目をそらしてしまった・・・・要するに勝負は、このにらめっこで付いてしまっていたのだ。僕は目をそらした後も猫さんに迫ろうとしたけれど、猫さんは牙をむいて、さらに僕をにらみつける。僕は恐くなって、御主人に促され猫さんの側から離れたのであった。あのまま猫さんに飛びかかっていたら、爪で目の玉を傷つけられたり、鼻に噛みつかれていたかも知れない。はぁぁ〜、図体の大きい僕が、子犬ほどの猫さんに気合いで負けてしまうとは情けない・・・情けない・・・

10月21日 はれ
我が家では、稲刈りも終わり、お米を袋に詰める作業の真っ最中である。他の家では、もうとっくにすべての作業が終わったというのに僕の家だけが遅れているのだ。何しろ世の中の流行にも疎くて後れている御主人の事だから、きっと農作業も遅れているのだろう。でも、それは僕とは無関係の事なので、どうでも良いのだ。ただ、お米が仕上がっているのに、我が家ではまだ一粒の新米も口にしていないと言う事だけが不満の種なのだ。新米を精米してお釜で炊くだけで、すぐ食べられるのに、なぜそれをしないのだ、御主人!!!「初物を食べると3年長生きする」と言うけれど、御主人は飼い犬の長生きを願わないのか!!イヤイヤ、それより自分の長生きを願わないのか!!僕は新米が食べたくて、夜の夢見が悪くてうなされるぐらいだ。朝、目が覚めると口の周りが冷たくなってベトベトしているぐらいだ。新米を食べる夢にうなされて眠っている間中よだれを流しっぱなしになっているせいだ。我が家の責任者である御主人、何とかしろ!!!

10月20日 あめのちくもり
15時頃、お米の出荷作業からかえってきた御主人は、なにやら機械の組み立てを始めたんだ。だけど、なかなかうまくいかないらしくて、しだいに「イライラ」してくるのが見ていてわかった。何しろ僕は、一日独りぼっちでお家を守っていたので、帰ってきた御主人に遊んでもらいたくてしょうがないから、御主人の側を離れなかったんだ。御主人は、なかなかうまく行かない機械の組み立てに「イライラ」が高じて八つ当たりを始めたよ。幸い僕にまで八つ当たりをする事はなかったけれどね。やがて、あたりは薄暗くなり、すぐに真っ暗闇になってしまった。いつもの夕方散歩時刻は、とっくに過ぎている。僕も、なかなか散歩に連れて行ってもらえない事に「イライラ」し始めて、犬小屋の扉に引っかけてある散歩紐をくわえて、これ見よがしにコンクリートの上に置いておいた。そして、近くにあった物に飛びついたりして大きな音を立てて、御主人の気を引こうとした。それから、ややしばらくして御主人のお仕事も、やっと終わったようで「ムツ、散歩」と言ったので、僕は大はしゃぎで御主人の周りを踊り廻ったんだ。このようにして、僕達は秋も深まった真っ暗なたんぼ道を散歩に行ってきたんだよ。もっとも、散歩距離は短かったけれどね。

10月19日 はれ
僕は飼い犬なので、誰かと一緒じゃないと散歩に行けない。誰か・・・?とは、家族の誰かだ。従って家族の都合が僕の散歩に大きな影響を与えてしまう。今日などは、御主人が何処かへ出かけるらしく、散歩に出かけても僕をせかせる。僕はゆっくりと散歩を楽しみたかったので、「だだ」をこねようと思ったのだけれど、忙しい御主人が気の毒になってやめた。それで素直に御主人に従って家に帰ってきたというわけなんだ。その距離、わずか300メートルほどである。御主人は僕に御飯と水を与えると、僕から逃げ去るように何処かへ出かけていってしまった。他の家族は誰も帰ってこない。僕は1頭で寂しく犬小屋の中に潜り込むのであった。これが、飼い犬のわびしい生活実態なのである。・・・・・・

10月18日 はれ
頑固な性質は親に似ると言うけれど、犬の場合もそうなのかどうかは知らない・・・・僕の母親も父親も頑固かどうかは知らない。でも僕は頑固な方だ。自分の気に入らない散歩道へ連れて行かれそうになると、足をしっかりと大地に踏ん張り、自分が行きたい方向へ行けるまで頑張る。また、朝のおやつをもらう時は自分が満足するまで足を踏ん張って、おやつをくれるまで動かない。等々である。もっとも、御主人と、上のお兄さんと一緒の場合は僕の方が最後には負けてしまう。お母さんと行く時は、僕の方が勝つ!!おやつをもらう時も僕がだだをこねると、次から次へおやつをくれる。お母さんは僕に対して甘いのだ。だから御しやすいのだ。
お母さんと散歩へいける日が、たまにあるけれど、そんなときは「ラッキー!!」と叫んでスキップをしたくなるような気持ちになる。もっとも、犬の場合は「ラッキー」と叫ぶ事も「スキップ」を踏む事も、肉体的構造上出来ない事になっているので心の中だけにとどめるにすぎないのだけれどね。

10月17日 はれのちあめ
今日も気持ちの良いお天気だったので、お昼寝をしていた。でも、午後からは雲行きが怪しくなり風も強くなってきた。御主人が15時頃帰ってきて、洗濯物を取り込んだ途端に、ものすごい雨が降ってきた。数分で水たまりが出来るぐらいの雨だった。ちょうど外にいた僕は、たまらず犬小屋の中へ逃げ込んだ。小屋の軒先にいても雨が吹き込んでくる。ちょうど9日ぶりの雨という事になるらしい。今年の秋は暖かいので「秋日和」の一日がだいぶあった。何でもニュースではツツジなどの春の花が狂い咲きし始めたらしい。僕の毛皮も、いまだに夏毛なのは、どうやらその狂い咲きと何か関係があるらしいので、今「比較犬類学研究所」に問い合わせているところなのである。

10月16日 はれ
体育の日も終わり、秋はいよいよ深まる・・・・・様子を見せない・・・野山も、まだ青々とした緑色である。柿の葉も色づいて、柿の実を収穫しても良い頃なのにそんな様子もない。家の中ではストーブを出してはいるけれど、暖房はしていないという。だいたい僕のお城である「犬小屋」も、まだ防寒対策はされていない。それだけ、今年の秋は暖かいという事なのだろう。日中などは、日向に寝ころんでお昼寝をしていると、暑くなるので、しばしば日陰に逃げ込んでしまう。いったい冬はやってくるのだろうか・・・・?ほどよい暖かさの今の季節が春まで続けばいいと思っている、冬にはしなり強い身体を備えている・・・と思われている秋田犬の僕なのであった。
注・・・犬だって、ほどほどの暖かさが良いに決まっている。暑すぎる夏は、もちろん嫌いだけれど、寒すぎる冬も本音を言えば嫌だ。1年が春と秋だけだったら「のほほん」と昼寝をしながら暮らせるかなぁ?と、思っている僕なのである。ちなみに、御主人は夏が大好きなのである・・・・

10月15日 はれ
今日も、昨日と同様「秋晴れ」のさわやかな一日だった。御主人は今日もお仕事以外の事で忙しいらしくて、お昼前には出ていった。今日は家に誰もいないので、夕方散歩には連れて行ってもらえるだろうかと心配しながら、秋の日射しを浴びてお昼寝をしていたんだ。すると、夕方になったら御主人が疲れたような格好で帰ってきた。僕は大喜びで出迎えたんだ。今日は御主人と一緒の散歩だよ・・・・・あまりうれしくないけどね・・・

10月14日 はれ
今日は秋らしい、とてもさわやかな一日だった。御主人は朝からお仕事以外で忙しいらしく、9時頃には何処かへ出かけていってしまった。夕方になっても帰ってこないので、僕は上のお兄さんと散歩に行った。お兄さんと散歩へ行くと、のんびりと散歩が出来てうれしい。御主人はせっかちなのか面倒くさいのか、僕の散歩を手早く終わらせようとする。僕は、わざと足を遅くして、さらに御主人をじらすのである。その点、お兄さんと行くと散歩距離が長いし、道ばたの匂いをゆっくり楽しめるからありがたい。御主人は、僕の散歩の介添人としては落第!!!

10月13日 はれ
今日は13日の金曜日なので、何か良くない事が起きるかとビクビクしていた・・・・・のは僕ではない。御主人も、そんな事は気にしていない。僕はのんびりと、残り少ない秋の日射しを浴びて、のんびりお昼寝をしていただけなのだ。ところが、今日は我が家のお米が農協へ運ばれる日だったのだ。突然やってきたトラックと作業をする人達にびっくりした僕は飛び起きて、「わんわんわんわんわん」と吠え立てた。すると、その中に、どうも見た事がある人がいる・・・・よく考えたら、家の御主人だった。作業員の中の一人だったのだ。僕は御主人と他人の見分けが付かないほどうろたえていたって言う事になる・・・僕は御主人に散歩紐を付けられてじゃまにならないところへ遠ざけられた。僕は怪しいと思われる人が見えなくなると吠えなくなるので、およそ30分ほど小屋の西側にある杭に散歩紐を引っかけられ、不自由な思いをさせられてしまったというわけなんだ。この前みたいに、朝から晩まで犬小屋の中に閉じこめられっぱなしよりはだいぶ良いけれどね。もちろん、お米の積み込み作業が終わったら解放されたよ。

10月12日 はれたりくもったり
犬は時々、よその犬と遭遇したり、遭遇しそうになる時がある。犬の縄張りの範囲は、その犬の強さによって広くもなるし狭くもなる。その縄張りが入り交じっている中での遭遇なので、出会うとお互いに「ガウン、ガルルルル〜」と、唸り合う事にもなりかねない。そこで飼い主は一計を案じて、よその犬を発見した場合は、遭遇しないように別の散歩コースを選択する。万が一、遭遇した場合は、散歩紐を短くして持ち、しっかり握り、犬が興奮して相手の犬に飛びかからないように配慮する。今日の夕方散歩の場合は、遠くにワンコと、そのご主人の姿を見つけたので、家の御主人がさりげなくコースを変えた。「飼い主も色々苦労があるものだなぁ〜」と、今日は思ったよ。僕達飼い犬も、あまりわがままは控えなくてはいけないと心の底から思ったよ。でも、犬の記憶はすぐに消えてしまうので明日になったら忘れてしまうので、いつまでも、心が痛いぐらい真剣に思っているわけじゃないけどね・・・・

10月11日 はれ
今日は久々に、こってりと叱られてしまった。それは、何かというと、「米が入った袋」にオシッコをかけてしまった事に対してのお叱りである。去年も、こんな事をして米袋を取り替える騒ぎがあったように思うけれど、犬の記憶はすぐに薄れてしまう性質を持っているので、定かではない。さしずめ、犬の記憶とはパソコンで言えば、電源が切れるときれいさっぱり、すべてが消えてしまう「RAM」みたいな物だ、と御主人は言う。所で「オシッコ事件」だが、この事件のために僕は一日中「オシッコ犬」と、呼ばれ続けた。毎年恒例になっている。いわばお祭りみたいなものだから、許してくれても良いと思うけれど、御主人にとっては大切な商品なので見過ごす事は出来ない様だ。「お叱り」も毎年恒例の「お祭り」の中のイベントの一部と化しているのかも知れない。それじゃぁ、この「オシッコ引っかけ祭り」も伝統になりつつあるので、来年も・・・・・・また・・・

10月10日 はれ
やっと、やっと稲刈りが出来た。僕は最後にお手伝いをさせられた。御主人がコンバイン(稲刈り機械)を田んぼから家に持ってきたので、もみを積んだトラックは田んぼに置きっぱなしである。歩いて取りに行かなくてはならない。それを家に持ってくるために僕も動員されたのである。もっとも、歩いて5分ほどの距離に置いてあるのだから御主人が一人で行けばいいのに、僕も連れて行くというのである。僕を連れて歩けば、一人で歩くよりは楽しくて、同じ時間がかかるにしても短く感じるらしい。散歩のつもりで喜んでいったのだけれど、たった5分の散歩は味気ない。たちまちトラックが置いてあるところについてしまい、僕は「助手席に乗れ!!」と言われ、イヤイヤながら乗ったんだ。本当は、もっと遠くまで行きたかったのだけれどね。トラックは「あっ!!」という間に家に着いてしまったんだ。僕は不平不満を言う暇もなくトラックから降ろされてしまったよ。ここで、僕は、我慢の限界を過ぎていたので、御主人に文句を言った。「なぜ、もっと散歩に連れて行ってくれないのだ!!」そして、「がうん、がるるるる〜!!」と唸って脅してやったら、御主人も、僕をかわいそうに思ったのか、夕方散歩は、ちゃんと連れて行ってくれたよ。これを読んでいる飼い犬のみんなも、御主人だからと言って、゜「ご無理ごもっとも」と思わないで、主張すべき事は主張した方が良いと思うよ!!

10月9日 はれ
ひさしぶりに晴れた。御主人は喜々として稲刈りを始めた。お母さんもお休みなのでお手伝い。でも、僕は・・・・・「ううっ、お腹の調子が良くない・・・」お尻からの落とし物が超特急なのだ。原因はわかっている。冬に備えて、僕を太らせようと御飯を多めに与える御主人のせいなのだ。犬は冬に備えて皮下脂肪を蓄えなくてはいけない。特に外犬(家の外で飼われている犬の事)は、これを蓄えないと生死に関わる事になる。しかし、いくら皮下脂肪を蓄えなければいけないからと言って、一度にたくさんの食べ物を飼い犬に与えればいいというものではない。出来れば、もっと栄養価の高い物、牛肉のステーキとか、チーズに牛乳、それから、ええ〜と?・・・・高級食材は、すべてが栄養価が高いはずだから、何でもかんでも、美味しくて高級感あふれる食べ物を僕に与えるべきなのだ。それにしても・・・・また、お腹の調子が・・・ううっ・・・

10月8日 あめときどきくもり
人間は、知り合いに出会ったら挨拶をするのがマナーであるけれど、犬の場合は、知っている犬に出会ったら、まず最初にやる事は「お尻の匂いをかぐ」という事だ。犬は嗅覚が鋭いので、犬を識別する場合は匂いでする。そして、相手が僕より強そうだなと思ったら、フセの格好をして腹を出すのである。これは、最初から「僕はあなたにかないませんから、ごめんね」と言っているようなものである。戦う前から降伏しているのである。相手と対等だなといった場合は唸り合いになる事もある。犬は縄張りが決まっているので、競合する縄張り内で出会った場合は、あまり友好的な態度にはならない。このようにして、犬は交友関係を減らし、孤独に陥っていくのであった・・・・(僕の場合は)

10月7日 あめ
台風の影響なのか雨が降り続く・・・今日も、御主人は稲刈りが出来ないので「もみすり」、つまり稲からモミガラを取り除いてお米にする作業を一人でもくもくと続けている。側であくびをしながら見ていたら、仕事を言いつけられてしまった。それは何かというと?、ペットボトルの蓋を取って商品名が印刷してあるラベルを取り除く仕事である。ペットボトルは、この2つを取り除いて資源ゴミとして出さなければいけない。御主人は、僕にペットボトルを投げてよこした。犬は動く物に敏感に反応する習性があるので、僕はすぐさまペットボトルに飛びついて「カミカミ」をしてフタをはずし、噛みついてボトルをつぶしてからラベルをはぐのだ。4本ばかり、そういう作業を繰り返したら、さすがの僕も飽きてしまい嫌になった。だいたい、こんな作業をしても見返りがないのだ。ジュースなどの甘い飲み物が入っているペットボトルなら、開けて中身をなめて楽しむという余録もあるけれど、御主人が呑むペットボトルはお茶だけなのだ・・・・だから、おいしくも何ともない、「なんとか園の濃いお茶」などは、僕の口にはいると身震いがするほど苦い。御主人は、こんな物を好んで呑んでいるのだから気が知れない。このようにして、僕に資源ゴミとして出す前準備をさせた御主人ではあったのだが、今日が、そのペットボトルの収集日だという事をすっかり忘れてしまっている御主人なのであった・・・・・はぁぁ〜、この後また2週間も待たなければいけないのだ。その間に僕は、またペットボトルの処理をさせられるのだろうか・・・・

10月6日 あめ
今日は、一日中雨が降り続いた。犬小屋の中で寝てばかりいた。少し運動不足であるから暴れてみた。朝にもらったヨーグルトの空き箱を獲物に見立てて、狩りのお稽古である。空き箱に、上から覆い被さるように前足で襲いかかり、爪でひっかくのである。それを何度も何度も繰り返した。しかし、良いところ10分もやればくたびれるので、またまたお昼寝である。シトシトと雨は降ってなかなか止まない・・・・もう、これ以外の退屈しのぎは見あたらない・・・・・・あっ、あった、あった!!!御主人の長靴が小屋の前に置いてある。これをくわえてきて「カミカミ」して遊ぼう!!・・・・しかし、その結果はいつもの通り、ご主人のお叱りがある事をすっかり忘れてしまっていた僕なのであった。

10月5日 はれ
犬には「賢い犬」と「賢くない犬」がいる事は事実である。ちなみに、我が家で僕は「歴代秋田犬の中で2番目に賢い」と、言われている。一番目は、御主人が高校生の頃に飼っていた「ブチ」という秋田犬だ。しかし、子犬のまま「ブチ」は当時の金額(30数年前)で20万円という大金で売られていってしまったのだ。それだけ血筋も身体のつくりも良かったのだろう・・・・
ところで、「賢い犬」とは、人間の価値判断においての「賢い犬」であって、犬の立場ではないのである。たとえば人間の命令を素直に聞く。新聞を持ってくる(おもに家犬の仕事)。番犬をする(おもに外犬の仕事)。等々である。つまり人が犬と暮らす上での事柄を良くこなせるというのが条件なのだ。一方、野生の犬は餌の取り方がうまい。寒さを堪え忍ぶすべを心得ている。危険を察知する能力が高い、等々のサバイバル的要素が高い。
だから、「おりこうさん」などと言って頭をなでたりしないで欲しい。犬はすべて平等なのだ。人間にとって賢くない犬は野生では賢い犬だし、野生で賢ければ、人間との調和の上では「賢くない犬」になってしまう。そこの所を理解して犬を飼って欲しいものだ。だから、僕が御主人の言う事を聞かない事など、犬全体から見たら、どうって事はないのだ!!!

10月4日 はれ
我が家の稲刈りは、まだ出来ない・・・・よその家では刈取が終わり、家から見渡す限り稲株だらけの田んぼばかりが広がっている。その中に「ぽつん」と100アールばかり、稲穂が黄金色に染まっているのが見える。それが我が家の田んぼなのだ。僕が、散歩に行く時は必ずそこを通る事になる。散歩コースになっているからだ。「早く刈り取ってしまえばいいのに・・・」と思うのだけれど、御主人の言い分はこうである。「まだ10月になったばかりだ」とか「半年も育ててきた稲を慈しみながら刈るんだ」とか理屈はこねているけれど、要するに「のんびり屋」なのだ。物事というのは、そのうちに、なるようになって治まってしまうものなのだ・・・と言う考えなのである。犬の物欲的かつ即物的な考え方とは相容れない考え方なのだ・・・・だから、僕は、あえて何も言わない事にしているのだ。僕は、ただ、今年の新米を早く食べたいだけなのである・・・・

10月3日 あめのちはれ
僕と御主人は、たびたび「にらめっこ」をする。人間達がする「にらめっこ」は笑った方が負けであるけれど、僕達の場合は、相手から目をそらした方が負けというルールなのだ。ルールと言っても御主人が勝手に決めたに過ぎないのだけれど・・・・だけど、御主人の目は恐い・・・・じっとにらまれると、まるで叱られているようだ。何もやましい事がないのに、じっとにらみつけられると、自然に僕としては目をそらしたくなる。ここで我慢をして、にらめっこを続けていれば、御主人は飽きてしまって目をそらし、僕の勝ちとなる。ところが、なかなかそうはいかない。僕が目をそらさない限り、御主人は僕をにらみ続けるのだ(どうしてかと言えば、御主人が暇な時に限って僕に挑戦してくるからだ)。僕は犬なので飽きっぽいし、いつまでも御主人の勝手なルールで進められる「にらめっこ」に付き合う義理もないので、適当に遊んでやって、適当なところで目をそらしてしまう。すると、御主人は「俺が勝った!!」と、満足するのである。思えば、御主人は犬より単純なのかも知れない・・・・

10月2日 あめ
今日はお米の出荷日なので犬小屋の中に閉じこめられた。犬小屋の中に閉じこめられるの一年ぶりで、この季節をのぞいてない・・・・昔の子供は悪い事をすると押入や蔵の中に閉じこめられたものだと御主人が言っていたけれど、犬の場合は悪い事をしてもそんな事はない。第一、犬には人間にとって、何が良い事で、何が悪い事かわからないから、例え閉じこめられたとしてもその意味がわからないだろうと思う。さて、農協からお米を取りにトラックがやってきた。しかも午後3時頃になってやっと来た。僕は朝の7時頃から閉じこめられっぱなしだったのだ。退屈で退屈でたまらなかったのだ。そんなところへたくさん人がやってきたので、僕はここぞとばかりに「わんわんわんわんわん」とお米を全部積み終わるまで吠えて吠えて、吠えまくった。さすがに作業している人達はうんざりした事だろうと思うが、僕は今まで閉じこめられていた鬱憤晴らしだったので、気持ちよく吠える事が出来て良かったよ!!!

10月1日 はれ
稲刈りが始まっているので、僕はゆっくりと「お昼寝」が出来ない。刈り取ったもみを積んだトラックが頻繁に出入りするからだ。運転するのは家族の誰かだ。車が来るたびに「じゃまだ!!」と警笛を鳴らされるので、僕はそのたびに立ち上がり、のそのそと移動しなければならない。この前などは、通路の真ん中でぐっすりと熟睡してしまい、警笛を鳴らされて飛び起きたら、トラックのタイヤが僕の目の前にあった・・・・その時は、さすがに両方のほっぺを右左に力強く引っ張られながらお叱りを受けてしまったよ。今頃の季節は、気温がちょうど良いとは言っても、日中は一日いっぱい日向にいると暑いぐらいである。だから、たまにはトラクターや田植機の下に潜り込んでしまう。機械の下に潜り込んでしまえば「じゃまだ」などと怒鳴られなくてもすむから安心である。ところが、しばらくこの下で寝ていると、肌寒くなってくるのだ。すると、又日向へ出て行って通路の真ん中で寝る事になる。どうしようもない悪循環と言えばいいのか、さけがたい事と言えばいいのか・・・・通路以外では、お日様があたらないので、自然に真ん中で寝る事になってしまうのだ。せいぜい、僕を車で引かないように気を付けておくれよ!!