むつ犬のおまぬけ日記
平成18年12月
12月31日 くもりいちじゆき
今年1年、「むつ犬のおまぬけ日記」を呼んでくれてありがとう!!、来年は、もっとおまぬけになるように心がけるよ!!

ところで、犬は整理するとか、掃除をするとか言う習慣がない。御主人達は、お正月を前にごちそうを作ったり、お掃除をしたりと忙しそうである。僕は、じゃまにならないように犬小屋の中でひっそりしているしかない。家族はみんな忙しいので僕にかまってくれる人などは誰もいないのだ。それで僕は暇だったので、今年1年の反省をしてみたんだ。ええっ〜と?・・・・・・よく考えたら、犬は反省するという習性がまるでない動物だった事を思い出した。まぁ、反省なんかしなくても、その場その場でしのいでいけば、なんとか生きられるものなのだ。そう思い直して、おもちゃ替わりにしていた「鹿の骨」をしゃぶったり、咬んだりしながら静かに大晦日を過ごし、新年を迎える準備をした僕なのであった。
来年も、よろしくね!!

12月30日 ゆき、あめ、みぞれ
僕は犬小屋の中だったし、御主人は、年末の大掃除とやらで家の中の必要なくなったものを作業小屋の中に運んでいる途中だったんだ。突然、元気の良い白鳥さん達の鳴き声が聞こえてきた。空を見上げると厚い雲が空一面を覆っていて、白鳥さん達の姿は何処にも見えない。あの厚い雲の中を飛んでいるのだろうか・・・それとも、もっと高い、晴れ渡った雲の上を飛んでいるのだろうか・・・等々と、あれこれ想像しながらしばらく空を眺めていたんた。何処まで飛んでいくのか知らないけれど、今年中に南下してくれて本当に良かったよ。でも・・・・・本当に南下していったのかなぁ〜。やっと寒くなった、この時期に北上していく白鳥さん達なんてシャレにならないよぅ〜・・・・

12月29日 ゆきがふったりあめがふったり
この前、「僕にもクリスマスケーキのお裾分けをしろ!!」と言って噛みついてやったら、御主人は渋々ながら犬小屋までわざわざケーキを持ってきてくれた。それが、しみったれていて、ホンのひとかけらである。申し訳程度にサンタクロースの形をした砂糖菓子がおまけに付いていた、しかも、御主人がかじった跡があって気持ちが悪い・・・でも、もらうものはもらっておこうという飼い犬の習性で、一口で飲み込んでやった。普段、僕は甘いものは禁止になっているので、この甘さが身にしみる〜。こんな美味しいものを御主人は一人で食べていたのかと思うと腹が立つ。我が家では、このバターケーキなるクリスマスケーキなどを食べるのは御主人しかいないのである。他の家族は「生クリーム」だの「マロンクリーム」なんて言う洒落たのしか食べないのである。そういわれても、食べた事のない飼い犬の僕にはどんな味かはわからないのだけれどね。御主人から聞いた事をそのまましゃべっているだけなんだ。と、言うわけで、本音を言うならば、件のケーキは御主人しか食べないのだから、もっと僕にお裾分けをしても良いのではないかという事なのだ。何しろ1年に一度のケーキだからね。来年からは、もっと飼い犬に気をつかって、よりたくさんのケーキのお裾分けを頼むよ。御主人!!

12月28日 あめがふったりやんだり
昨日から今日にかけて、天気は大荒れになると御主人は言っていたけれど、大荒れにも、小荒れにもならなかった。御主人は人の言う事を簡単に信じてしまうらしい。「テレビの天気予報で言っていたから」とか「インターネットで、こう書いてあったから」等々、・・・・人間なんて、他人の集めたデータばかりを頼りにしているから脆弱になっていくんだ。犬のように自分の勘や本能を信じて生きていくのが一番賢いやり方なのである。それと、「骨占い」・・・・大昔、人間の世界では、骨を焼いて出来たひび割れによって吉凶を占ったものだという。犬の世界では自分がかじった骨の傷跡によって占っている。今日も、それをやってみた。この前、掘り返した「鹿の骨」を犬小屋の中に持ち込んで、一日中咬んでいたんだ。僕の「骨占い」によると、明日は雪が降って、雨に変わると出た。犬は外に出ると凶、但し散歩は吉、と言うお告げである。犬の世界では、占いを終えた骨は、丁重に土の中へ埋め戻して置くのが習わしである。僕も「育苗用土」のお山のてっぺんに埋め戻して置いたよ。

12月27日 あめ
今朝はとても暖かかった。御主人がやってきたので散歩に行けるものだと思って、喜び勇んで犬小屋から飛び出したら、外は雨だった。がっかりした、そのしぼんだ気持ちに追い打ちをかけるように「今日は雨降りだから散歩はなし」という非情な御主人の言葉が僕に覆い被さるように聞こえた。腹が立った僕は、自分の尻尾をくわえようと、うなりながらぐるぐると回った。(欲求不満や要求したい事、願望などがあった場合に発生する行動の事。通称、「腹立ち踊り」とも言う。)
と、言うわけで、またまた僕は犬小屋の中へ引きこもってしまったというわけなんだ。どうせ、この分では夕方散歩も駄目だろうなって思って・・・・・・夕方になって、それが事実となった時、落胆のあまり「腹立ち踊り」をする気力も残っていなかった僕なのであった・・・・

12月26日 はれ!!
我が家ではクリスマスケーキを毎年買っている。小さな子供がいるわけではない・・・・御主人が甘いものが好きだからだ。去年は、確か僕にもケーキのお裾分けがあったはずだけれど、今年はまだ無い。御主人が毎年クリスマスケーキを買うのには、単に甘いものが好きだと言うほかに理由がある。御主人が小さい頃、今のクリスマスケーキのような丸い形ではあるけれど、手のひらに載るような小さな小さなケーキを祖父に買ってもらい食べた記憶があるのだ。今から40数年も前の事である。当時、そんな小さなケーキで100円もしたのだ。今の時代100円なんてどうという金額ではない。僕がこの家にもらわれてきた時の値が23000円、つまり、件のケーキが230個買える値段である。しかし、当時の100円のケーキと言えば、今の物価で言えば1000円はくだらないだろうと思われる値段である。そして、丸いケーキは1年に一度しか食べられないものだと思いこんでしまっている御主人である。そのケーキにろうそくを立てて、食べた・・・様な気がする。と、御主人は言う。しかし、定かではない。味も何も記憶にない。まぁ、40数年も経っているので当たり前かも知れないけれど、その「小さな小さなケーキ」の形と色だけは、今もはっきりと記憶に残っているのだという。だから、その記憶が、毎年、今頃になるとクリスマスケーキを買いに走るという源になっているのだという。
結局、僕が何を言いたかったのかと言えば、「早く、ケーキのお裾分けを持ってこい!!」という事なんだ。

12月25日 はれっ!!
今日はクリスマス・・・だと言うのに朝から快晴である。雪もぜんぜん残ってはいない。まるで「東京の冬」のようだ。そういえば、御主人から聞いた話によると、人気歌い手グループの中に、そんな題名の曲があったという。御主人は今、その人気グループにはまっているのだという・・・・クリスマスから関係ない話になってしまったけれど、去年の今頃は大雪のクリスマスだった。「犬は喜び庭駆け回り・・・」状態だったのだ。今日の僕は一日中、外に出て、寝ころんで日向ぼっこをしたんだよ。でも、寝ころんでばかりいたのでは退屈だから、この前埋め直した「鹿の骨」を掘り出してみた。食べたりなめたりする気はないけれど、一応僕の宝物なので側に置いてじっくり鑑賞したのだった。夕方散歩は、午後から御主人がお出かけして、帰ってきたのが17時だったので、何時もよりは30分遅れの散歩になった。なんと星空のきれいな事!!きれいな冬の星空を眺めたのは久しぶりのような気がする・・・・と、御主人は言っていた。星座で言えば、「冬の大三角形」、「北斗七星」など、おなじみの星の並びが鮮やかにきらめいている。今日の散歩で一番満足したのは、僕ではなくて御主人だったのかも知れないよ。

12月24日 ゆきのちはれたりくもったり
今日はクリスマスイブとやらである。朝は雪が降って、あたり一面が真っ白になった。ホワイトクリスマスって言う感じである。僕も朝散歩の時は、背中に雪が降り積もって真っ白になったんだ。ふわふわの綿毛のような雪だったよ。この前、お盆で御主人もティシャツ姿で僕とお散歩していたのに、今は顔が見えないぐらいの防寒具に身を包んでのお散歩だ。はぁぁ〜、月日の経つのは早いものだ。

12月23日 あめがふったりやんだり、みぞれあり
昨日の夕方散歩の時、むく犬のようなのに襲いかかられた。暗がりでよく見えなかったので僕としては油断してしまったよ。何しろ相手は自由散歩だったからね。御主人が「危ないな!!」と思った時は、もうすでに僕達は犬同士「ガウンガルルル〜」状態になって鼻先を付き合わせていたんだ。喧嘩は数十秒ですんだんだ。情けない事に尻尾を下げた僕が御主人の後に隠れてしまったのだ。相手は僕の身体の半分もないというのに・・・・・お互い雄犬同士だったから気が合わなかったんだね。いいわけをさせてもらうと、相手は小さい犬だったので、僕が相手に怪我をさせないように身を引いたって言うわけなんだ。えっ?臆病犬だって・・・・誰?そんな事を言うのは。秋田犬というのはおとぎ話に出てくる桃太郎と同じで「気は優しくて力持ち」なのだ。相手の犬の御主人も散歩紐を付けて立ち去っていった。お互い何事もなくて安心したと思ったのもつかの間・・・・家に帰って御飯を食べ終えたら、鼻の頭がちくちくと痛い・・・・よく見ると、鼻のてっぺんに相手の犬の牙の跡がポツント付いていた。もしかすると・・・・嫌、もしかしなくても、僕はあの犬に噛みつかれてしまったらしい。悔しい。反対に相手の犬に対して僕の牙の跡を付ける事が出来たかどうかは喧嘩した当時は興奮していたので定かではない。願う事ならば相手には僕の傷より大きな傷を付けたのだと思いたい。そう思わないと、夜も眠れそうにないぐらい悔しいから・・・・

12月22日 はれ
今日は小春日和の一日だった。お日様もすっきりと顔を出したので午前中は外に出て寝ころんでみたけれど、地面は冷え切っているので長く寝ころんでいる事が出来なかったよ。と、いうわけで僕は早々に犬小屋の中に引っ込んでしまったんだ。御主人は小さいハウスの中にまいた、ほうれん草と春菊が心配らしく、時々様子を見に来る。もう双葉が出ているのだけれど、この冬が越せるかどうかはわからない。この状態で冬越しが成功すると、2月か3月頃になると、みずみずしくて美味しいのが出来るというわけなんだ。犬は普通、こんな物は食べないのだけれど、好奇心旺盛な僕としては少し食べてみたいような気もするよ。いずれにしても、春になったらって言う事だね。まだ本格的な冬も来ていないのに、こんな事を言うと鬼が大笑いするかも知れないけれど・・・・

12月21日 はれたりうすぐもり 
「夕方散歩へ行こう」と誘いに来た御主人は、僕に散歩紐を付けると家の裏口に向かって歩き出した。「何処へ行くのだ」と、僕が文句を言うと、防寒具を着てくるのを忘れたという・・・・「ほんとに、おまぬけなんだから・・・」今度から、この日記を「むつ犬の御主人のおまぬけ日記」という題名にしてしまうぞ!!と脅してやった。そのせいか、どうかはわからないけれど、御主人は裏口の戸を開けて僕に入るように言った。「なんだろう?」と思いながら裏口に一歩はいると、忘れていた思い出が鮮やかによみがえってきた。「そうだ!、この裏口の中で僕は赤ちゃんの頃から1年間を過ごしたのだった。」僕が山形の実家で生まれて50日間を過ごし、ここの家に縁があって家族になったんだ。当時は僕専用の犬小屋もなく、まだ赤ちゃん犬だというので、ここで朝から晩まで過ごしていたんだ。赤ちゃん犬の頃は一日中寝てばかりいたけれどね。えっ?、今も変わらないだろうだって?・・・そういわれれば、そうかも知れないけれどね。当時はこの中でばかり過ごしていたので、外の世界を知るのは散歩に行く時だけだ。しかし、赤ちゃん犬だったので、散歩の距離はごく短い。だから世間知らずの僕は「箱入り犬(人間の世界では箱入り娘、または若旦那とも言う)」で育ってしまった。でも、他の犬の生活を知らないので、飼い犬の生活なんてこんなものなのかと思っていたわけなんだ。ところが、この家に来て一年が経ち、立派な犬小屋を造ってもらって一人暮らしを始めて見ると、なんと世界の広い事、広い事・・・カルチャーショックというのか、目が点になったというのか、僕は今まで牢獄の中にいたのかと思えるほど、自分で動ける範囲が広がってしまったのだ。おかげで好奇心旺盛な僕は色々な事をしては叱られたり誉められたりしながら、今まで生きてきたんだよ。
と、言うわけで、今日の夕方散歩は懐かしさの余韻を味わいながらのんびり、御主人と黄昏色の残る西の空を眺めながら行って来たんだよ。満足、満足!!

12月20日 くもり
今日は「年末の交通安全運動」の最終日である。僕の御主人は、朝通学路にたって街頭指導をしなければならないから、と言って朝散歩には行く事が出来なかった。日中は「決算」とやらをしなければいけないからと言って僕の相手をしてくれない。夜は夜で、「交通安全広報」とやらで市役所の車に乗らなければいけないから、と言って、僕の御飯と散歩は上のお兄さんに任せっきりにして出かけていってしまった。「交通安全運動」は今日で終わりだという事なので、明日っからは僕に平穏な日々が訪れるのであろうか・・・・?つまり、普通に朝散歩も夕方散歩にも出かける事が出来て、おやつももらえて、御飯もきちんといただける・・・なんて言う事だ。「平々凡々是好日」というわけだ。普段通りが一番ありがたくて幸せな事だと言う事を僕はすでに悟りきってしまっているのに、御主人は、まだ悟りきってはいない。人間は煩悩がありすぎて悟る事が出来ないのかも知れない。その点、犬は悩みがないし、欲もない。本能のままに生きているので、よけいな悩みなど無いのだ。「生き方を犬に学べ」という本でも書いてみようかしら・・・・?

12月19日 くもり
今日は朝仕事をした。誰も起きてこない、まだ外が真っ暗な頃に犬小屋を密かに抜け出して、お米の苗を作る時に使う「育苗用土のお山」の上に、だいぶ前に埋めた「鹿の骨」を掘り出して外へ持ち出して松の木の根本に埋めたんだ。こうしておけば、この上に雪が降り積もって春になって雪が消えるまで誰にも見つかる心配はないと思ったのだ。これで僕も安心して「枕を高くして眠れる」というものだ。僕が骨を埋め終えて、しばらく経つと御主人が「散歩へ行こう」とやってきた。すると、鼻も泥んこ、手足も泥んこになって外に立ちつくしている僕を見て、「何をしたんだ?」と聞く。しかし「鹿の骨を外へ埋めました」と言うほど僕は正直犬でも、お犬好し(人間界ではお人好しとも言う)でもない。知らないふりをして、いつものように「朝散歩へ行けるんだ。わぁ〜い、楽しいなぁ〜!!」とはしゃいで見せた。あっ!!、この事は、ここだけの秘密だからね。よそへ言ってしゃべらないでね。約束だよ!!

12月18日 くもりときどきゆき
今日は、風が強くて雪も降ってくる。もう少し雪の降る量が多ければ吹雪になるところだった。今日は雪だったので散歩に行けたよ。雪が降るのはもちろん嫌だけれど、中途半端に降るのがもっとも良くない。「降るならふれ!!」と言う感じで辺り一面真っ白になって春まで続くのならまだあきらめもつく。白くなったと思ったら、又消えて、灰色の風景に逆戻り、なんて言うのは願い下げにしてもらいたい。今日の雪降りは、まさに中途半端な振り方である。辺り一面真っ白ではなく、白犬がサンタクロースになって煤だらけの煙突をくぐり抜けたような白さである。つまり、景色の所々が白くなっている・・・・と言うような風景なんだ。おまけに、僕の真っ白なお腹の毛が泥んこになってしまうんだ。どうせなら、早く辺り一面の雪景色になって欲しいと願っている今日この頃の僕なのであった。

12月17日 あめのちゆき
朝からシトシトと降り続けていた雨が、午後になって、突然に雪に変わった。予報では、これから毎日雪が降るような天気だという。僕はご存じの通り、御飯と散歩だけを楽しみに生きている飼い犬である。ところが、今日はお母さんの実家のおばぁちゃんがお客さんでやってきたし、お母さんの従兄弟の人もやってきたので、夕方散歩は無しだった。朝散歩に行けたのが不幸中の幸い・・・・?だった。何しろ、冬の飼い犬は養鶏で言われるブロイラー飼育方式の状態なのだ。つまり、あまり運動せず、一生懸命食べ続ける。夜も昼もない。・・・なのだ。説明しよう。サラサラの雪降りだったら散歩へ出てもどうと言う事はない。身に降りかかった雪は「ぶるぶるぶるん」と身体を震わせれば吹き飛んでしまう。でも、湿気のある濡れ雪の場合は、どうしても身体に水分が残ってしまうのだ。御主人はそれを嫌がる。僕の身体を拭いてやらなければいけないから面倒だ・・・と言うわけがあるからだ。次に「一生懸命食べる」と、言うのはあまりあたっていないかも知れない。普段、腹がパンクするほどの量はもらっていないからだ。でも、冬で運動量が少ない割には1年を通じて同じ量だけ食べている。動かないから消費カロリーが少ない。すると「ぶくぶく犬(デブ犬とも、カロリー貯蓄犬とも言う)」になってしまう。3つ目は、何かというと、雪が降り続けると空は濃い灰色の雲に覆われて、真昼でも夕方と同じような暗さになってしまう。作業小屋に時計はあるけれど見方を知らない犬にとって今が何時なのかわからない。おまけに犬小屋をすっぽり覆っている防寒シートが中を暗くしているので、犬小屋の中に閉じこもっていると、まるっきり闇の中なのである。これから、まだ2ヶ月から3ヶ月もの間、こんな暮らしが続くのである。

12月16日 あめがふったりやんだり
はぁぁぁ〜、嫌だ、嫌だ。今年葉の冬は暖かいというものの、これから雪が降ってくるのかと思うと何もする気にはなれない・・・・犬小屋の中に閉じこもって、じっと冬が過ぎるのをやり過ごすしかないのだろうと思う。熊狩り犬だった御先祖の秋田犬たちだったら冬は山の中で駆け回れる季節だったのだろう。犬が一番活動的になれる季節だったのだろうと思う。しかし、秋田犬が、番犬または観賞用の犬となってしまった今は、冬は、ただただ忍従を強いられる季節に他ならない。唯一の慰めは御主人と家族の愛のみではあるのだけれど・・・それも、なんだか・・・・・・

12月15日 はれ
今日は、冬には珍しく、一日中お日様が顔を出していた。僕と言えば、一日中犬小屋の中に閉じこもっていたんだ。この前、お日様が顔を出したので外に寝ころんで日向ぼっこをしていたら、お腹が冷えてお尻が超特急になってしまったので、今日はお日様には悪い事をしたけれど、外に寝ころぶのは差し控えさせてもらったんだ。しかし、御主人が暇を見ては僕を外に誘いに来るのだけれど、僕は断ったんだ。すると御主人は犬小屋の中に入ってきて僕に外へ出るように促す・・・・ご承知のように僕の住まい(犬小屋の事)は僕のような秋田犬が2〜3頭ぐらい同居できるほどの広さである。そこへ御主人が入ってくる。別に狭くはならないけれど、心情的に狭苦しい。つまり御主人が気になって自分の家なのに落ち着けないのだ。だから外へ出て気晴らしをする。何をするのかというと、だだ外を駆け回るだけなのである。こうして、僕は「好むと好まざるとにかかわらず」、外へ出てお日様の顔を拝む事になったというわけなんだ・・・・はぁぁぁ〜、つまらない、どうでも良い事を長々と遠回しにお話ししてしまったよ・・・・

12月14日 はれたりくもったり
又、骨の話である。僕も、つくづくうんざりしているんだけれど、犬の本能、習性には逆らう事が出来ないでいる。ふと思いついて、御主人の居ない間に土の中に埋めて置いた「鹿の骨」を掘り返し、カリンの木の根本や、紫陽花の木の根本などに埋めた僕なのではあるけれど、どうも御主人に奪われそうな気がしたので、今日は一日、側で見張り番をする事にした。一日中外でオスワリの格好やフセの格好でじっとしているのは少々つらいものがある。それを見て、御主人も僕を気の毒に思ったのか、見て見ぬふりをしてくれたので、僕の骨は、今のところ無事に土の中にあるって言うわけなんだよ。

12月13日 くもりときどきあめ
今日は暖かいけれど雨降りである。あまりに暖かいので小さな虫が外を飛び回っている。ところで、今日の僕はお腹が超特急なのである。雷様なのである。原因は・・・・?たぶん、御主人の食事管理の不備か、昨日一日外で日向ぼっこをしていて腹を冷やしてしまったのか、どちらかだ。たぶん御主人の食事管理が悪くて、お腹の調子が悪くなったのだと思う。昨日の御飯は3分の1残してしまった。散歩へいったけれど、なにか雲の上を歩いているようで、しっかりした足取りで歩く事が出来ない。そのわりには散歩から帰ると、おやつをほしがってしまう。まぁ、癖と言えばそれまでだ。御主人だって、そんなにお酒は飲む方じゃないのに晩酌は毎日やるという。これも癖である。だから、僕はいつものように玄関に入り込み、いつものおやつをもらって食べたのだった。さて、今日の御飯は食べる事が出来るのだろうか・・・・?

12月12日 はれ
今日は久しぶりに暖かくて「小春日和」の一日だった。僕も外へ出て寝ころんでいた。しかし、素肌で寝ころぶには少し地面が冷たいのだ。いくら僕が毛皮をまとっているからと言って、これはさすがに冷たい、特にお腹の所は白い毛が薄く生えているのでそのままだと腹を冷やすおそれがある。そこで、犬小屋の中に敷いてある大きなタオルをくわえてきて、地面に敷き、その上に寝転がっていたよ。風は少々冷たいけれど、淡いお日様の光とかすかな暖かさが僕の毛皮を通り抜けて素肌にしみ込んでくる。「ハァァァ〜気持ちが良い!!」こんな事をして今日の僕は一日を過ごしたんだよ。

12月11日 はれたりくもったり
今日は、早朝から「おまぬけ」な事をしてしまった。明け方にオシッコがしたくなり、外へ出て南天の木の根本にいった。オシッコを終えて帰ろうとすると、紐が南天の木に絡まっている。直そうと、もう一回りすると、ますます絡まってしまい結局、紐は二重巻きになってしまったのだ。こうなってしまっては、犬の知能ではどうにもならない。右回りとか左回りが出来るのは御主人の号令があっての事なので、僕一人では何も出来ない。途方に暮れて、その場に座り込んでしまった。しばらくしてやってきた御主人に助けてもらったのだけれど、「今日から冬の交通安全運動なので散歩に行けない」と言われてしまったよ。だから、僕は仕方なく犬小屋の中へひっ込んだというわけなんだ。この所、僕に関する話題が少なくなっていただけに、久しぶりに御主人へ「おまぬけ日記」のネタを提供する事が出来て良かったと思っているよ。

12月10日 はれたりくもったりいちじゆき
僕が夕方散歩へ行く時間は、今頃の季節だと、4時半から5時ぐらいである。もう当たりは真っ暗で御主人は僕がお尻から落とし物をしても見つける事が出来ないので、勘で拾っているような有様である。夏だったら、今頃の時間は、まだまだお日様が高く、暑いぐらいの日射しで僕達を照らしている頃だ。わずか3ヵ月ほどでこんなにも違うものなのかと毎年の事ながら驚いている。「そういえば、去年の今頃は、もう雪がだいぶ積もっていたっけ」等々と、昔の事柄、今年1年の思い出などを感慨深げに思い出している今日この頃の僕なのであった。こんな事をしている僕って、もうお年寄りなのかも・・・?。秋田犬、オス六歳の師走!!!

12月9日 くもり
今日は、とても穏やかな一日だった。「何だか太平洋側の冬のような匂いがする」と御主人は言う・・・千葉と言うところに若い頃に住んでいた御主人は、関東びいきである。「寒い」、「雪が降る」という東北は、つくづく嫌なのだという。「夏は、こっちの方が良いけれどね」と、わがままな事を言う・・・いま、「田舎暮らし」というのがブームなのだそうだ。老後は田舎でのんびり過ごしたいという都会の人が増えているという。僕の御主人は違う。僕の御主人は田舎の人なので、老後は「都会でのんびりしたい」という考えである。都会は寄席もあるし美術館、博物館もある。それに江戸を間近に感じ取れるのだという。そうなったら僕も都会について行かなくちゃいけなくなるのかなぁ・・・?

12月8日 くもり
昨日は体の芯まで雨に濡れてしまった僕であったのだけれど、一晩寝たら乾いてしまったよ。洗濯物と同じだね。ただ、日本海側の今頃の気候は湿気がある。太平洋側だったら、からからお天気が続くので洗濯物はすぐ乾いてしまうのだけれど、僕達の住んでいるところはそうもいかない。それに外に干すなんて言う事も出来ない。家の中に干しても二昼夜ぐらいかかる。僕の毛皮の場合は体温で内部から乾燥するから一晩で乾いてしまうのだ。まるで乾燥機付き洗濯機と同じだね。
などと、つまらない話を延々としてしまった・・・・それだけ、飼い犬は暇なのだというわけにのさ!!

12月7日 あめはげし
今度は「鹿の骨事件」である・・・・上のお兄さんが、何処かからもらってきたものを熱湯消毒して僕にくれた。何だか「豚の骨」よりも美味しくなさそうである。でも、もらったからには僕のものなので早速土の中に埋めた。外は雨が激しく降り続き、僕はぐしょぬれになり泥んこになりながら懸命に骨を埋めたんだ。ところが、埋め終わって犬小屋へ戻ろうとしたら庭木に引っかかってしまい戻れなくなってしまった・・・・・しばらく雨に打たれながら、途方に暮れていたのだけれど、「しゅう〜ん、しゅう〜ん」と泣こうと思いついた。しかし、一昨日「秋田犬らしく振る舞う」と決めてしまったので、そんなみっともない声では泣けない。だから、ふつうに「わんわんわん」と声高らかに吠え立てる事にした。家の中にいる御主人には、なぜ吠えているのかわからないので、気付いてもらうまで吠えていた。ややしばらくして、僕の所へやってきた御主人によって、僕はやっと解放されたのだった。その時は、もう体の芯までびしょぬれの犬になってしまっていた。普段は「おまぬけ犬」と呼ばれている僕ではあったが、今度は「おおおまぬけ犬」と呼ぼうという考えもあったけれど、呼びにくいので、今日からは「おお馬鹿犬」という呼び方に変わりそうである。しかし、なんと言っても「大」という呼び名が付くのは大物である証なので、誇りに思っても良いんだなと理解する事にした。

12月6日 はれたりくもったり
御主人は母方の従兄弟のお葬式で出かけてしまったので、今日は僕が一人でお留守番である。お日様も出たけれど、寒いので犬小屋の中で寝てばかりいた。
夕方になって御主人が帰ってきたので「散歩に行こう」と誘ったら簡単にうなずいてくれた。と、言うわけで散歩に行ったらワンコに出会ったよ。御主人の父方の従弟と、その愛犬である。僕はお近づきになりたくて騒いだけれど、わずか数十センチの差でふれあう事が出来なかった。残念!!!いつか御主人達、従兄弟同士と同じように、その飼い犬同士も交流を深めたいと思った今日の夕方散歩なのであった・・・・

12月5日 くもりときどきあめ
御主人や、家族の食事の世話が良かったせいか、おかげさまで無事「冬太り」になる事が出来た。首のくびれも、腰のくびれもわからなくなり、何処から何処までが頭で、何処から何処までが腰なのか見境が出来なくなってしまった。つまり「ずんどう」の身体、たとえて言えば1本の太い丸太ん棒に4本の足が枝のように「にょっきり」と付いているといったぐあいである。身体の色も、白いところと赤いところがくっきりと目立ってきた。品評会に出られるような体型と毛並みになってきたのだ。だから、せいぜい「秋田犬」らしく振る舞う事にしようと思っている。少なくとも来年の夏が始まるまではね。

12月4日 ゆき
朝早く、御主人夫婦が帰ってきた。何でも「寝台特急」という、寝ながら走るという便利な電車があるそうで、それで帰ってきたのだという。僕は取りあえず「お帰りの踊り」を踊り、「お土産は?」と聞いた。すると「ない」という素っ気ない答えが返ってきたので、僕は御主人にまとわりつくのを止めた。でも、御主人は自分が疲れているにもかかわらず朝散歩へ連れて行ってくれたよ。ところが、帰ってきたら必ずもらえるはずのおやつをもらう事が出来なかったんだ。忘れてしまったんだね。「時差ぼけ」というのか「地域差ぼけ」というのか・・・・?

注・・・お帰りの踊りとは、飼い主及び家族が我が家に帰ってきた時にお出迎えをする。その時に踊るもの。ぴょんぴょんとはね回りながら、迎えた人の側をうれしさのあまりはしゃぎ回る、あるいは、はしゃぎ廻るふりをする行為の事を言う。

12月3日 ゆき
雪は降るけれど、そんなには積もらない。明け方は、一面白くなるけれど、日中になるとシャーベット状態になってしまう。今日も紐が柱にからみついてしまった。犬は自分がつながれているのだという事を普段は意識しない。紐が届く範囲を超える様な行為をすると、紐が自然に首を絞めるので、「あっ、ここから先へは一人では行けないのだ」と初めて思うだけなのである。御主人が居たら、「ぐるぐる」と声をかけてもらって、絡まった紐を直すところだけれど、それも出来ない。上のお兄さんが帰ってくるまでか、おじいちゃん、おばぁちゃんがやってくるのを待つしかない。いくら北国の「熊狩り犬(秋田犬の事)」でも、冷たいところにいるのは願い下げである。早く僕の「専用世話係(御主人の事)」が帰ってくる事を望みたい。

12月2日 ゆき
今日は、柱に僕をつないでいる紐がぐるぐる巻きになってしまったけれど、かろうじて犬小屋の中にはいる事が出来た。もう少し紐がからみついてしまっていたら外で寝なければならなくなっているところだった。
御主人達夫婦は「東京」とやらにいった。下のお兄さんと出会って美味しい物をたらふく食べている事だろう。僕はいつものメニューにいつもの量だけもらって食べた。

12月1日 あめになったりゆきになったり
とうとう白い物が空から振ってきた。雪である。朝散歩の時は「チラチラ」と雪が降っていたけれど、日中は雨に変わった。秋田の北部や山沿いなどでは、あたり一面が雪で真っ白になったという。これは僕達も覚悟を決めなければいけない。冬が来て雪が積もるという事は頭で理解していても、いざ降ってくると、うろたえてしまう。雪国の犬にとっては「雪は嫌なもの」、「じゃまなもの」という意識が強い。春になれば消えてしまうものに「除雪費」などという名目で何十億円と消えてしまうのだ。出来れば、下のお兄さんが暮らしているという「東京」という、雪が滅多に降らないと言うところでのんびりと日向ぼっこをしながら暮らしたい僕なのである。
ところで、御主人とお母さんは、その東京という所へ「仏像展」とやらを見に行くので、2〜3日は、この日記がお休みになるよ。でも、僕は困らない。おじいちゃんやおばぁちゃん、それに上のお兄さんがしっかりとサポートしてくれるからね。出来れば、1ヵ月ぐらい帰ってこなくても良いよ。そうすれば、僕ものんびり出来るからね。ついでにお土産も頼むよ!!