平成19年 5月
5月31日 あめのちくもり
この前もお話ししたけれど、雨の日は何となくのんびりしていて心が安らぐ。散歩に行くと里山の緑が鮮やかで「山笑う」という俳句の季語がぴったりする風景を目にする事が出来る。田んぼの稲もすくすくと育ち、もう半月もすると、一面緑色のじゅうたんを広げたようになる。まさに「日本の原風景」の中で僕は毎日散歩をしているというわけなのだ。つまり稲作が始まったのは、今では縄文時代の後期と言われている。僕達犬族もその頃から人間のパートナーとして代々生き続けてきたのだ。日本人の心の中に早苗が植わった田んぼと里山の緑がDNAとしてすり込まれているように、僕達日本犬の一族の心の中にも、このDNAが脈々として受け継がれ、そんな風景の中でさわやかな空気に包まれていると心が安らぐのだと思う。
5月30日はれ
今日の御主人は野菜の苗を植えたり、種をまいたりするのに忙しいらしくて、僕の所へはやってこない。おかげで、一日中、ぐっすりとお昼寝する事が出来た。「わんわんわん」と吠えたのは、朝散歩へ行った時に、田んぼで出会った僕と相性の悪い町内の人に吠えたぐらいなものだ。もちろん御主人にはきつく叱られたので御主人が、その人と立ち話をしている間中、オスワリの恰好でじっと我慢していたのだけれどね。それで、今日一日中、御主人は暑いビニールハウスの中でお仕事だし、僕は小屋の中においてあるトラクターの下に潜り込んで涼しくお昼寝。両極端を過ごした。飼い犬と飼い主なのであった・・・・
5月29日 はれ
今日も暖かい、と言うより暑い一日だった。僕はぐったりとして、トラックの下へ潜り込んでお昼寝をした。ビニールハウスの中で野菜の苗を植える準備をしている御主人が、時々やってきては僕を突っついていく・・・「暑いからちょっかいを出すな!!」と、怒鳴りつけたいのだけれど、僕は飼い犬だからそういう事も言えないでいた。もっとも、ビニールハウスの中は、僕が寝ころんでいる外よりは、数倍暑いに違いないだろうから、御主人は時々暑さしのぎに僕の所へやってくるのだろう。
だけど、お互いに暑いのだから、干渉し合わずに、それぞれに涼んでいればいいものを、僕にちょっかいを出してくるので、僕はよけい暑苦しさを感じてしまうのである。御主人・・・お互い妥協し合って、もっとクールな付き合い方が出来ないものかねぇ〜・・・
5月28日 はれ
今日は、色々な人がたくさん我が家にやってきたよ。まず、てはじめに、おじいちゃんが我が家の隣の畑にやってきた。お昼になると、農協の人が積立金を集めにやってくる。お昼過ぎには、御主人の妹と姪がやってくる。おじいちゃん、おばぁちゃんも一緒だったよ。いずれも知った人でもあるし、やってきた人は、いずれも女の人だったので僕は吠えない。僕は女の人には、知っている人であろうが、ぜんぜん知らない人であろうが、基本的には吠えない事を信条としているのだ。それは、単に僕がオス犬だからと言う単純な理由なのである。その代わり、男の人がやってくると、何度も我が家へ来ていようが、たんぼ道で何度も出会っていようが、吠えたくなってしまう。但し、おやつをくれる人には吠えないという「お約束」もある・・・なんと言っても、純粋の秋田犬はデリケートでわがままなのである・・・・
5月27日 はれたりくもったり
今日は肌寒いような天気だったので、またまた僕のシャンプーは出来ない日和だったのだ。もっとも、昨日お話ししたようにシャンプー液がないのだからやれるわけがない。人間のシャンプー液や石けんなどを使うと繊細で細やかな犬の肌はたちまち荒れてしまう。特に秋田犬などの純粋系統の犬の場合は皮膚が弱い。そんな秋田犬の中でも、僕の皮膚は特に繊細なのだ。で、何を言いたかったのかというと、昨日の日記で「買い置きの犬用シャンプーはない」と、報告したのだけれど、実はあったのだ。去年の稲刈り前に御主人が買ってきて、しまい込んだまま存在を忘れてしまっていた「犬用シャンプー」が出て来たのだ。でも、出て来たのが午後からでよかったよ。もしかすると、こんな肌寒い日和でも「シャンプー日和、千載一遇のチャンス」とばかりに無理矢理挙行してしまっていたかも知れない。今日の僕は、どうやら運勢が良いようだ。果たして来週はどうなる事か・・・・
5月26日 はれたりくもったり
昨日は雨が降ったおかげで、だいぶ過ごしやすくなったよ。この所「シャンプー日和」が続いたので、僕は何時シャンプーをされるのかビクビクしていたんだ。今日は土曜日でもあるし、気候も寒くも無し、暑くも無しと言った案配で戦々恐々としていたんだけれど、とうとう「シャンプー」はされないで済んでしまった。僕が1人でやきもきしていても精神衛生上良くないので、思い切って御主人に「シャンプーは一体、何時やるんだ」と聞いた。すると、シャンプー液がないという。買ってこなければいけないらしい。これは、当分シャンプーはないな、と思った僕は安心して地面に「ごろん」と横たわり、のんびりと昼寝にいそしむのであった・・・・
5月25日 くもりのちあめ
久しぶりに雨が降った。雨の日はのんびりしていて、とても心が安らぐ、おまけにお昼寝がはかどるというものだ。そう思って背伸びをして大きなあくびをしていたら、御主人がやってきて小屋の整理を始めた。農繁期中は忙しくて小屋の中がぐちゃぐちゃのごちゃごちゃになってしまっていた。それを整理しようと言うわけである。せっかくのんびりしようと思っていたのに、田植機は動く、トラクターは動く。様々な道具類があっちへ行ったりこっちへ行ったり、小屋の中にジグソーパズルのように納められていく。僕は行き場を失ってしまい、犬小屋の中に避難して一日中、物音と御主人に気を遣って耐えなければならなかったというわけなんだ・・・・
5月24日 はれ
とにかく暑い!!食欲も細る。ダイエットしなくても暑さで身体が参ってしまいダイエットの替わりを果たしてくれそうだ。しかも、この暑いのに御主人は御飯を熱々にして持ってくる。「こんなの食べられるわけがないじゃないか!!」と、これ見よがしに御飯を食べ残してやった。ほんの少しだけだけれどね。この季節は温めなくても材料をかき混ぜただけで良いのだ。その方が美味しく食べる事が出来る。御主人は、僕が食べ残した御飯のメッセージに気付いてくれるのだろうか?。明日も熱々の御飯を持ってきたら噛みついてやるからね。
5月23日 はれ
今日の夕方散歩はいつものコースだったけれど、途中で大型犬に出会ったよ。真っ黒なレトリバー犬だったよ。御主人同士もお知り合いだ。僕は、ちょっと緊張したけれど、向こうの犬は尻尾を振ってくれている。お互いオス犬同士だったけれど、なんとか唸りあったり興奮して飛びかかったりしないで済んだ。相手が尻尾を振ってくれているので僕も振らなくては、と思ったけれど、内気な僕は尻尾を振るほどの余裕はなかったよ。と、言うわけで少しだけお話をして西と東に別れたって言うわけなんだ。僕達は東側だよ。途中、あの犬が残した匂いが気になってあちこちの草むらの匂いを長時間
に渡ってかぎ続けるものだから、御主人がイライラし始めた。「早く、うちへ帰るぞ!!」と、怒鳴りつけられて、僕は渋々家路に足を向けたというわけなんだ。もちろん、御主人に引きずられるようにしてね。
5月22日 はれ
昼になってかえってきた御主人が「ごろん」と寝転がっている僕の所へ来て「ムツ、紐がはずれているじゃないか」といった。僕は「はっ!!」として飛び起きた。たしかに僕が寝ころんでいる遙か彼方にはずれた紐とフックが長々とあった・・・・「ぜんぜん、気が付かなかった・・・」のである。「しまったぁぁ」もっと早く気付いていれば、自由に何処へでも行けたのに、いつものようにのんべんだらりとして横たわり惰眠をむさぼっていたなんて、悔やみても余りある。そんな僕を見て御主人は「ムツはおりこうだなぁ、紐がはずれているのに何処へも行かなかったなんて」といって誉めてくれる。だからぁ、はずれているのに気づかなかったんだよ。今度ばかりは、いくら誉められても嬉しくない僕なのであった。でも、はずれるはずのない首輪をしっかりつなぎ止めていたフックがはずれるなんて「ありえないぃぃ!」と御主人共々、不思議に思う僕でもあった。
5月21日 はれ
今日は暖かい「五月日和(さつきびより)」になった。何しろ昨日の寒さとはうってかわり、暖かいの何のって答えられないような陽気だ。昨日の気温と10度も差があるというのだから驚きである。昨日の最高気温が11度。今日の最高気温が21度である。驚きを通り越してあきれるぐらいである。人間も動物も信じられないような出来事に出会うと、恐い、泣く、と言う感情を超越して、「笑ってしまう」のである。このような天気の急激な変化は、犬の僕でも笑うしか表現のしようがない・・・・もっとも、犬は肉体的構造上「笑う」という表現は出来ない事になっている。もし、皆さんが「犬が笑っている」と見えたとしたら、それは誤解なのである。犬は表情としては笑えないのである。ただ、心の中で笑っているかどうかは「犬のみぞ知る」というわけなので、ぜひ犬とお近付きになって、犬の心の奥底をのぞいてもらいたいものである。と、言うわけで、僕としてはあまりの気温の変化に心の奥底で笑ってしまったのであった・・・
注・・・五月日和とは田植えに適した天気の事を言う。ちなみに僕達の地方では田植えの事を「五月(さつき)」と言うのだ。
5月20日 あめのちくもり
寒い日が続く・・・・今日の夕方散歩はトラックで東の山裾にあるため池まで行ってきた。溜め池のすぐ上は山を切り開いて高速道路が造られつつある。まぁ、そんな事はどうでも良いのだけれど。僕達は今頃盛りである藤の花を見に来ただけなのである。毎年、田植えが終わると藤の花が満開を迎える。しかし、新緑の中をどう見ても藤色の花が見えない・・・・よく目をこらして藤の枝や葉を探す。すると、やっと見つけた!!そして、花芽の付け根が薄い紫に色に染まっているのが確認できた。早い話が、今年は藤の花が満開になるのが遅いのだ。やっと花が開き始めたというような状態なのである。今年は寒い日が続くからねぇぇぇ〜、「暖冬」の反動ではないかと自然と共に生きてきたオオカミさんのDNAを持つ僕としては直感として思っているんだけれどねぇ〜・・・・
5月19日 あめのちくもり
田植えが終わって田んぼに水が張られると、毎年恒例のやっかいな事が起きてくる・・・・・カエルどもの大合唱だ。主にトノサマガエルの集団である。その中にアオガエルが混じっている。殿様と付くから偉そうなのかというと、その通りなのである。寒い間はビニールハウスの土の中で冬ごもりをして、暖かくなってくるとはい出してきて稲の苗の上を平気で歩き回ったりする。僕の目の前も平気で飛び跳ねていったりする。少しも遠慮という物がない。そして、暖かくなると雄と雌がくっついて、ゼリーのような物に包まれた大量の卵を水路や田んぼの中の水に産む。それが、ぬるま湯のような水の中でふ化すると大量のオタマジャクシが発生するのだ。オタマジャクシはナマズの稚魚に似ている。しかし、ナマズは食べ物になるけれど、オタマジャクシやカエルは食べ物にはならない。・・・・と、言うわけで、なぜやっかいな事になるのかという説明が後になってしまったよ。つまり、やつらは(かえるども)夜になると「ゲコ、ゲコ、ゲコ、」だの「げろ、げろ、げろ」だのと、やたらうるさいのだ。特に、もうすぐ雨が降りそうになると、盛大に嬉しそうに音量を上げる。外犬である僕の耳にはまともにあいつらの声が響いて眠る事が出来ないから困る。しかし、日本の風物詩であるからどうしようもない。唱歌「朧月夜」でも「かわずの鳴く音も、鐘の音も、さながら、かすめる朧月夜」と有るぐらいだからね。僕がこんな風に「わんわんわん」と吠え立てたら、たちまちご主人のお叱りを受けるだろうね。でも、カエル達はお叱りはない・・・・もっとも、あいつらは野良カエルで、僕は飼い犬なのだからね・・・・・・。
5月18日 くもりのちあめ
どんよりと曇って、風がない時に早苗が植えられて水を張った田んぼを見ながら散歩をするのはとても気持ちがよい。気持ちが安らぐ。犬は縄文時代から人間のパートナーになって久しい。農耕民族の血が人間にも、犬にも脈々と受け継がれているのかと思うと、何だか感動にも似た心の高まりを覚える。日本犬としての誇りを感ずるのだ。米を主食とする民族としてのDNAが早苗が植わった田んぼを見て心を動かされるのかも知れない。こんな風景を見れば食欲もわくというものである。しかし・・・・僕は夏の暑さに向けてダイエットしなければいけない状況にある。はぁぁ〜、「御飯は食べたし暑さは恐し」といった今日この頃の僕なのであった。
5月17日 あめ
とうとう僕に「毛替わりの季節」がやって来た。今年は変な事におかしな所から毛が生え替わっていく。鼻筋、両前足などと言ったところだ。まぁ、とにかく生え替わって「夏衣(夏の毛)」になるのは嬉しい事だ。
人間の衣更えは6月からと言うけれど、暑い盛りに無理して冬の服を着ているのも考え物である。どうも人間というものは融通の利かない生き物らしく、自分たちが決めた物事を理屈に合わなくなっても変えようとしない。その点、犬などは「臨機応変活殺自在」に物事に対処できてしまうから偉い!!簡単に言えば、その場しのぎって言われ方もするけれどね。そして、御主人は僕の毛を抜きながら一首の和歌を思い出した。そこで久々に一句・・・ならぬ一首詠んでみたよ。元の和歌があるので、それから説明しよう。
唐衣 きつつなれにし つましあれば
はるばるきぬる 旅をしぞ思ふ
・・・・在原業平(ありわらのなりひら)
ここでおもしろいのは、5,7,5,7,7の言葉の並びの一番目の音が「か、き、つ、ば、た」になっていることだ。つまり「カキツバタの花」が読み込んであるというわけなんだね。意味としては、唐衣、妻、どちらも慣れ親しんだもの「着慣れた衣のように慣れ親しんだ妻を思い出して、はるばる旅に来たんだなぁという実感がわいてきた。」と、言う事である。
僕のはと言うと
冬衣(ふゆごろも)、着つつなれにし 去年(こぞ)よりは
綿毛となりて 初夏の風吹く・・・・・・・・禄食
意味としては、「去年より寒い冬を慣れ親しんだ僕の冬毛(冬衣)が綿毛のように抜け落ちて、初夏の風の中を飛んでいく、あぁ夏がやってくるんだなぁぁ〜」って言う意味だよ。音をたどると「ふ、き、こ、わ、し」・・・・不帰恐し・・・帰ってこないのが恐いっていう意味になる。でも、無理矢理こじつけたんだけれどね・・・
5月16日 はれ
やっと田植えが出来た。いや、出来た事にしたようだ。機械植えはだけれどね。これから機械の行き届かなかったところを手作業で植え直すのだ。これが機械田植えよりは手間がかかる。
それでは、今日一日の田植えの経過をお知らせしよう。今朝、5時半に昨日の夕方に埋まってしまった田植機を引き上げようと、御主人と上のお兄さんが懸命の作業をした。トラクターで引っ張って、あがったのは良いのだけれど、今度は田んぼから道路へあがろうとして動けなくなってしまったのだ・・・・やむなく、となりの工場のクレーン車をお願いしてやっと引き上げてもらったんだよ。この間3時間もかかってしまったんだ。そして、80aの田んぼへ入り、昨日とはうってかわった快適な田植え作業をこなし、午後の2時半には「今年の田植えを出来た事にする」と、御主人が宣言してしまったというわけなんだ。埋まったところの10aの田んぼは、また埋まりたくないというので植えない事にした。植えれば僕や家族が1年間で食べきれないほどのお米が取れるのだけれど、買ったばかりの田植機を壊したくないという心情が強く働いたのか、ほとほと埋まるのが嫌になったのかは知らないけれど、そういう事になってしまったのだ。と、言う事で今年の機械田植えは終了となったのである。「ご苦労、ご苦労!!」僕は、地面に横たわって暑さに耐えながらお昼寝をしていただけだけれどね・・・
5月15日 くもりいちじあめ
今日の我が家の田植えはさんざんだったようだ。お母さんがお仕事へ出かけて、替わりに上のお兄さんが田植えのお手伝い。それは良いのだけれど、今日の御主人は厄日だったらしく、田植機が2度ぬかるみに埋まり、トラクターで引っ張り上げたけれど、最後の三度目の正直とやらで、とうとうどっぷりと埋まってしまったほかに、バッテリーが上がり、どうにも田植機の動きが取れなくなってしまったという次第なのであった。こういう日は、あんまりじたばたしないで、どっしりと構えた方が良いと思うよ・・・
悪あがきをすると、さらに深みにはまるのは世の中の常識なのだからね。と、言うわけで、埋まった田植機をそのままにして、今日のお仕事は終わりと言う事にしてしまったのである。飼い犬の僕としては、お昼寝するぐらいしかしてやれる事はないけれど、明日の健闘を祈るばかりである。
5月14日 はれ
今日は、昨日と違ってすこぶる良い天気で気温もぐんぐん上がって暖かい一日になった。御主人などはシャツ一枚で田植えをしている。顔が日に焼けて、お昼に帰ってきた時は一瞬、誰だか見分けられなくて「わんわんわん」と吠えそうになってしまったよ。
ところで、今日の夕方散歩は、上のお兄さんと行ってきた。上のお兄さんと散歩に行くと、歩く距離が長いので楽しみである。のんびりと、草むらの匂いをかいだり、御主人との散歩では見る事が出来ないような変わった風景を見る事が出来る。「極楽、極楽」なのである。これで夕食が「豪華絢爛美味満腹」であるなら、もう言う事はないのだけれどね。
5月13日 くもりときどきあめ、きょうふう
今日から我が家の田植えが始まったのだけれど、朝から雨が降ったり止んだりの天気。それは良いのだけれど台風並みの風が10時頃から吹き始めた・・・・なんと間の悪い御主人だ事・・・結局、一日中こんな天気で、作業がなかなかはかどらない。御主人はイライラしてきて、ハウスへ稲の苗を運びに来る度に僕に八つ当たりをする。もっとも、僕を蹴ったり殴ったりというわけではない。ほっぺをつねったり、身体をナデナデされるだけなのだけれど、僕は身体をいじられるのが大嫌いなので逃げようとするのだけれど、がっしりと僕の身体を押さえつけながら身体をナデナデするのである。「やれやれ」なのである。僕の力を持ってすれば、逃げられない事もないのだけれど、僕は一応「アニマルセラピスト」という資格のようなものを持っているので、飼い主がイライラしていたら、その心を癒してあげなければいけない事になっている。これは、「ペット兼番犬」に与えられた使命と言っても良いだろう。だから我慢をした、ひたすら耐えた・・・・飼い犬はつらいのである。
5月12日 はれたりくもったりのつあめ
今日から、いよいよ田植えである。もっとも、今日はよその家の田んぼを植えるんだけれどね。農繁期は家に誰もいなくなるので「番犬」の僕としては責任重大である。少しでも怪しい人や物体に対しては容赦なく吠えなければならない。だけど、ただ吠えるだけというのが悲しい。本当に怪しい人が来て、家の玄関をこわして中に入っていっても僕は、ただ吠えるだけなのである・・・・・こうなった時に困るのが御主人と家族であるけれど、「どうして留守番をしっかりしていなかったんだ!」と、叱られるのは僕なのである。理不尽ではあるが心情としては、そういう事になるのだろう。だから、飼い犬にはもっと強権を発動できるようにしてもらいたいものである。本当に怪しい人に噛みつくとか、噛みつかないまでも近くに行って威嚇するとか出来るようにしてもらいたいものだ。もっとも、犬はあまり利口ではないので、こんな事を飼い犬自身の判断でやったらとんでもない事になるだろう・・・・と思う。こんな事というのは、何度も言うけれど、吠える。威嚇する。噛みつく、飛びつく・・等々であるが、それを可能にするのは飼い犬をつないでいる紐をなくすという事が絶対条件なのであるが・・・飼い犬をつないでいる紐をなくしてしまったら、飼い犬は「番犬」のお仕事を放棄して、好きなところへ自由散歩してしまう。それは厳然たる事実なのである・・・・飼い犬とは、紐でつながれているから「飼い犬」なのであり、ついでに番犬の役目を果たしているのであった。
5月11日 くもり
僕の「暑い、暑い」というぼやきが天の神様に通じたのだろうか。今日は馬鹿に寒い・・・・まるで冬のようだ。何しろ、昨日との気温差が10度もあるのだから尋常ではない。だから僕は、今日一日中、犬小屋の中で寝ていたんだ。でも、寒くなったので僕としては過ごしやすかったけれどね。ところが今日から「田植え」の予定を組んでいた御主人は、あまりの寒さに困ってしまい中止という事にしてしまった。御主人のように困る人がいるかと思うと、僕のようにありがたがる犬がいるから世の中は複雑である。もっとも、まんべんなく平等になんて出来るわけがないと思うけれどね。
5月10日 はれ
今日も暑いのだ。気温が22度ぐらいある・・・日陰にいても暑いので、つい田植機の下などに潜り込んでしまう。今年は田植機が新しくなったので、潜り込むとひんやりして気持ちが良い。でも、これから「田植えシーズン」になってしまう。僕は一体何処で避暑対策をすればいいのだろうか・・?よその飼い犬たちは、どんな対策をしているのだろうか?知っていたら教えて欲しい。但し内犬からは駄目だよ。どうせ「クーラーの下で一日寝ている事」なんて言い出すと思うからね。僕は、なんと言っても「外犬」なのだ!!
注・・・内犬(家の中で飼われている犬の事)、外犬(家の外で飼われている犬の事)
5月9日 はれ
暑い!!暑いのだ!!誰がどう考えても、見ても、感じても、夏なのである。とても外へ等、寝ころんでいられない・・・・「犬にとっての受難の季節」がついにやってきたのだ。と言うのに、僕のダイエット計画はうまくいっていない。昨日お話ししたように、相変わらずの「ボテボテのデブデフ犬」なのである。果たして僕はこれから「火炎地獄」のような6.7,8月を乗り切る事が出来るのであろうか・・・乞う、ご期待!!・・・・って期待されても困るんだけれどね。
5月8日 はれ
どうやら・・・・僕は誰がどう見ても「ボテボテのデブデフ犬」らしい・・・つまり、今はやりの言葉で言うなら「メタボリックシンドローム」簡潔に言うなら「肥満タイプ」らしいのだ。それを言うなら御主人だって体重は75キロではあるけれど、自分の飼い犬を笑ってはいられない。御主人だって立派な「メタボリックシンドローム」なのである。「同病、相哀れむ」という言葉があるけれど、飼い犬の状態をさしおいて「御主人!!他人の事や飼い犬の肥満を笑ってすませるような立場なのか!!あんたはっ!」って言いたくもなってしまう・・・・しかし、御主人の場合はこんな状態になったのは自己責任であるけれど、僕がこうなったのは御主人のせいなのである。散歩(運動)は短時間で終わる。御飯の量はそんなに減らさない。飼い犬を甘やかすからこんな事になるのである。つまり、何事に対しても甘い考えなのである。自分自身に対しても甘いから、僕と同じような状態になってしまうのだ。あまり、あからさまに言うと鼻をぶたれるので多くは言わないけれどね・・・・
5月7日 くもり
今日は、代かきが出来たと御主人が言って、早めにトラクターと共に家に帰ってきた。あとはいよいよ田植えなのであるが、5月の10日過ぎになるようだ。今日などは寒いぐらいの一日だったようで、御主人は防寒具を身にまとっている。ハウスの苗たちは外の気温に慣らすために夜中も開けっ放しである。人間も犬もそうだけれど、温室育ち、つまり大事にされすぎた生き物は生命力が弱いという事なんだね。えっ?、僕はどうなのかって・・・僕は御主人から「飴と鞭」のしつけを受け、身体の中に耐性菌を作るために子犬の頃は「生ゴミ」をあさり、それはそれは野性的に生きてきたと思っているんだ。だから、あまり無菌状態でもいけないし、毒が無さ過ぎてもいけないと思うなぁ・・・江戸時代の狂歌に「白河の清きに魚の住みかねて元の濁りの田沼恋しき」と言うのがあるらしいけれど、寛政の改革があまりにクリーン過ぎて江戸庶民が反発して作った狂歌らしい。これと同じだと思うよ。犬には複雑な事は理解できないけれど、「物事はほどほどだよね」って言う事だけは理解できるよ。
5月6日 あめ
雨が降ると散歩に行けないのがつらい、悲しい、なさけない・・・綱彼のみから離れて、辺りの景色や匂いを楽しみながらの散歩は、飼い犬にとっての気晴らしである。それがいけないとなるとストレスがたまってしまう。それだけなら良いけれど、散歩に行かない日は決まって御飯の量が減らされて出される。僕の御飯は、ドッグフードが御主人の手の大きさで「6つかみ」、御飯が茶碗に一杯半、犬の缶詰(注・・犬がカンの中に入っているわけではない。牛肉と野菜の混ぜたものが入っている。)さじで大盛り5杯ほど、と毎日の量が決まっている。それが、散歩に行かない日は「ドックフード4つかみ」、御飯は茶碗に一杯」、「犬カンは確実に一さじぐらいは減っている」というぐあいなのである。飼い犬のダイエットと健康を考えての事だろうけれど、僕はひもじくなって「わぉぉぉ〜ん」と、泣いてしまうのである・・・・
5月5日 あめのちくもり
今日は霧雨のような雨が午前中一杯降り続き、辺り一面墨絵のような風景が広がって何とも言えない風情だったよ。僕は、犬小屋の中で寝てばかりいたんだけれどね。御主人は「代かき」というお仕事の真っ最中である。「代かき」というのは田んぼに水を張って土を泥んこにしてしまう作業の事なんだ。この泥んこの田んぼにお米の苗を植えるというわけなんだ。だから、大型連休末期に入っているお母さんといっしょに夕方散歩に行ってきたんだよ。墓地の方に歩いていくと、御主人がトラクターで一生懸命にお仕事をしている。それにもかかわらず、仕事の手を休めて僕に声をかけてくれたので、僕は感激のあまり感涙にむせんだ・・・・嘘だけど・・・
とにかく、辺り一面の風景は霧がかかって墨絵のような風景の中をのんびりと散歩に行ってきたというわけなんだ。
「以上、報告終わり!!」敬礼!!
5月4日 はれ
今日は上のお兄さんが、昨日お話しした秋田県大館市にある。秋田犬保存会が運営する。「秋田犬会館」に行ってきたらしい。我が家の先代犬である「まるさん」は大館市からやってきたのでふるさとに違いないけれど、僕は山形出身の秋田犬だ。秋田犬の血統書はここで発行する。これには3代前までの父犬母犬の名前が書かれてある。血統書の犬がいかに由緒正しい血筋であるかと言う事を証明してくれるのだ。だけど、たとえば僕のひいおじいさんかひいおばあさんが、秋田犬の歴史に燦然と輝く有名な犬であったとしても、僕自身、会った事も聞いた事もないような名前なので、「誰それの御落胤」などと言う気持ちはさらさら無だろうし、気にする事も無いだろうと思う。一般庶民の犬と同じように、日々漫然と暮らしているだけだろう。いつか、この日記でもお話しした。御主人の叔父さんが飼っていた「大雲女号」は秋田犬の歴史に、それこそ燦然と名を残すような名犬だったのだが、もしかすると僕もその血筋を受け継いでいるのかも知れない・・・・と、思っているだけだけれどね・・・
5月3日 くもりときどきはれ
今日は「秋田犬のふるさと」である秋田県大館市の公園で「秋田犬全国大会」が開かれたのだという。観桜会に合わせた毎年恒例の行事なのだという。「秋田犬全国大会」というのは秋田犬を飼っている全国の飼い主が自慢の飼い犬を連れて大館市にやってくる。その公園には、秋田犬の佃煮が出来るほどたくさんの犬が集まったのだという。そんな大切な日なのに、僕と言えばいつもの如く外へ出ては地面の上にごろんと寝ころんで惰眠をむさぼってばかりいたのだ・・・・はぁぁ〜、全国・・いや、全世界にいる秋田犬に対して恥ずかしい限りである。かのヘレンケラー女史も秋田犬を飼った事があると言うから、秋田犬の名は世界で知らぬ人がないほど有名なのに、僕と来たら・・・・でも?、僕もインターネットを通じてこのホームページで世界に知られているはずだよね?。インターネットというものは全世界の何処にいても見る事が出来るはずだからね。すると、もしかして僕の事も全世界に知られているのかもね・・・・?
5月2日 あめがふったりやんだり
今日は寒い一日だったので、僕は一日中犬小屋に寝ていた。御主人も犬小屋には近寄ってこないのでぐっすりと寝る事が出来た。ところが、夕方に犬小屋にやってきた御主人が驚きの声を上げて「ムツ!!、犬小屋の入り口に蜘蛛が網を張っている!!」という・・・・それは蜘蛛も網ぐらいは張るだろう。僕が犬小屋の中に入った後に張ったんだろうね。それで、一日中、中にいたから蜘蛛の巣もこわされずに残ったというわけだ。もっとも、犬小屋の出入り口に網を張っても虫なんかやってくるわけがない。今度、蜘蛛を見つけたら、もっと効率よく虫を捕らえる事が出来る場所を教えてやろうと思っている、今日の僕なのであった・・・・
5月1日 はれのちあめ
今日は今年最初の「フィラリアの薬」を呑まされる日である。記憶力が悪いと言われる犬でも自分の生命に関わる事になると良く覚えているものなのである。ここで改めて学習してみよう。フィラリアとは、蚊が媒介する寄生虫の事である。蚊に刺される事により、蚊の体内にあった寄生虫の卵が犬の体内に入り込み、血液の流れを伝って心臓にいたり心臓内部でふ化して成長する。そして心臓を駄目にしてしまう。つまり、蚊によって犬から犬へ伝搬する寄生虫なのである。この薬は体内に入った卵をふ化する前に殺してしまうと言う、すぐれた薬なのである。飼い犬は、この薬を蚊が飛び回る期間中に飲み続けなければいけないのだ。もっとも、「ヒィラリアの薬」だけなら2000円ぐらいで済むけれど、僕の飲む薬には「ノミ、ダニ、カ」の害虫を駆除する効果もあるので3000円もする。つまり、この薬を6ヵ月も飲み続ければ、僕がこの家にもらわれてきた時の礼金である2万円ぐらいになってしまうと言うわけなんだ。なんだかなぁ〜、複雑な気持ちもするけれど命には替えられないと思い直す僕なのであった・・・・
謹告・・・さて、今年初めての「薬飲み」だったのだが、これに関しての「飼い主対飼い犬」の攻防は、いずれまた!!
謹告ばかりしていて前置きばかりが長く、いっこうに本題が始まらないのが御主人の悪いところではあるけれど、気長に待っていてね。御主人が忘れていなければ近い内に聞けると思うよ。期待しないで待っていてね。