むつ犬のおまぬけ日記
平成21年 12月
12月31日 くもりいちじゆき
吹雪にはならなかったけれど、この前、御主人達が京都まで往復でのった寝台特急「日本海」と東京上野行きの寝台特急「あけぼの」が強い風のおかげで運休になってしまったらしい。他の普通列車もあまり通らないからそれも運休してしまったのだろう。1年の一番最後の日だというのに、帰省客は足止めを食ってあわてているに違いない。一方、僕の乗った寝台特急「犬小屋号、冬期特別防寒仕様車」は時間という距離を移動している。未来だけに移動できる装置が付いている。そして、未来に向かいながら、うつらうつらと夢とうつつの世界をさ迷いながら思考は過去に旅をしているのであった。現実としての「未来移動」、思考としての「過去移動」のエネルギーがぶつかり合い、せめぎ合い、現在という位置に停滞してしまっている。現状維持を捨てがたく思っている。そこに未来もなければ過去もなく、退廃だけの世界になりはててしまっているのであった。いや、いまという幸せを無くしたくないといった方が上品な言い方かも知れない。・・・・・・・等々と、年末、師走で忙しく動いている御主人を横目で見ながら、暇な僕は哲学的な妄想を頭の中に描いていたのであった。

12月30日 くもりいちじはれまあり
あたりは、すっかり早春の風景になってしまった。この前もお話ししたけれど、あんなに「もそもそ」と降ってきた雪がほとんど消えて、彼方此方に残雪を残しているだけである。もっとも、もう数十時間もすれば「初春」つまり「お正月」がやってくる。だけど「春」には違いないけれど、気象学的、あるいは肉体的感覚では、まだまだ遠い春なのであった。ただ、今日の気温は北国の動物の感覚からすれば「寒い!」と言うほどではなく、「春は名のみの風の寒さや」と唱歌の歌詞に在る通りの気温なのであった。けれど、今日は風もなく穏やかだったので過ごしやすい一日だったのだ。明日からは吹雪になると言う予報が出ていると御主人はいっていたけれど、本当かなぁ・・・?

12月29日 くもりときどきゆきがぱらぱら
田んぼに雪が無くなったので白鳥さん達が落ち穂を拾いにやってくる。そこで僕たち主従は田んぼに白鳥さん達を見に行くことにした。もちろん夕方散歩を兼ねてのことだ。行ってみると、彼方の田んぼに白いものが見える「行ってみよう!」という御主人の言葉に僕も付いていったのだけれど、その白い物は動く気配がない。僕たちはおかしい、おかしいと思いながらも、なおも近づいていった。残雪かと思ったのだけれど、近づいてみて、それは白鳥さん達でもなく、残雪でもなく、白っぽい板か杭が田んぼに置いてあるだけなのであった・・・・はぁぁ〜「徒労」という熟語はこのような時のためのものなのだと思い知った御主人なのであった。そして、犬にとっては「御主人のために無駄な労力を費やした」と、いった難しい言葉は知らないまでも、心の中では「馬鹿馬鹿しい」と思いながらも、忠誠心の篤い秋田犬の僕はおくびにも出さず、黙々と御主人に従うのみなのであった。(御主人、そろそろ近眼の眼鏡を変える時期だと思うヨ?)

12月28日 くもりのちあめ
午前中はお日様も出て春のようなお天気だったのだけれど、昼前から雨が降り始めて、御主人か様々なお使いから帰ってきた時は本降りになってしまった。御主人が出かける時に「ムツ、お日様が出ていて気持ちが良いぞ」と言われたのだけれど、犬小屋からでないでいた。はっきりとはわからなかったけれど、きっと雨が降ってくる予感がしたんだろうと思うよ。ところで、「クリスマスケーキ」のことである。犬は食べ物に対して執念深いのでまだ覚えているのだ。そのケーキを我が家で食べきったらしくて、クリームの付いた皿を御主人が持ってきて「おやつ」だといった。そんなにクリームが付いているわけではなかったけれど、僕はありがたく口にくわえて犬小屋の中に引っ込んだ。中で「ペロペロ」と皿をなめ回した後「はぁぁ〜今年も終わりだな」とつぶやくのであった。1年に一度の「禁断のお菓子」・・・正確に言えば「禁断のお菓子の欠片」が食べられるのはこの時期をおいて他にない。そして、これをなめ終えるとお正月がやってくるのであった。「また歳を取るのか・・・」と思いながら、きれいになめ終わったケーキのお皿を抱いて眠りについた僕なのであった。

12月27日 あめがふったりやんだり
野山の雪はほとんど消えてしまった。所々に白いまだら模様が目立つけれど、それが残雪なのである。「残雪」というと春の季語のようにも感じるけれど、もう今頃の季節に残雪なのである。この間の寒波と大雪はこの一冬分の雪を降らせ終わったかのようだ。まだ12月の末なのだから油断は出来ないけれど、僕が秋頃に予想したように、この冬は「暖冬」なのではないかと思う。出来るならば、ほどほどに寒くて、ほどほどに雪が降って、ほどほどに快適な冬になることを希望する・・・

12月26日 あめがふつたりやんだり
今日はクリスマスの後祭りというわけで、ケーキの乗っていたお皿をなめさせてもらった。チーズケーキだったらしい。まぁ、普通の味だった。でも、もう一つ完全な形で残されたデコレーションケーキが家の中にあることを僕は知っている!!。それは「バタークリームケーキ」なのだ。こんなケーキは今時の若い人達には敬遠されるらしいけれど、御主人は子供の頃からこのケーキが大好きなのである。僕はこのケーキのお裾分けがいつになるのかわくわくしながら待っている。近々なのはわかっているけれど、お正月が来るより、こっちを味わう日が来るのが楽しみな僕なのであった。でも、「クリスマス」の後祭りって言うのは日本的発想なのかもね?

12月25日 はれ
今日はクリスマスだというのに、すっきりと晴れた。一日中、お日様が地上を照らして、僕もあまりのは気持ちよさに地面に寝ころんだりしたんだよ。積雪も一時は50センチもあったものが10センチ以下になってしまった。ところで・・・クリスマスって言うのはケーキを食べる日なんだよね?。去年はケーキのお裾分けをしてもらったようなかすかな記憶があるのだけれど、今年はどうかなぁ・・・?お裾分けと言っても、クリームが付いたお皿をなめさせてもらうだけなんだけれどね。なんと言っても犬にとっては禁断の食べ物・・・らしい。タマネギや長ネギの次に御主人が危険な食べ物であると認定しているものだから、僕としては不満もあるけれど飼い犬は飼い主に不平不満をあからさまに言うことは出来ないので、こっそりとこの日記で言っているのである。まぁ、あまり過度な期待をしないで待つことにしようと思う。あまり期待しすぎると不首尾に終わった時の失望感がものすごいからね・・・

12月24日 くもりいちじあめ、おひさまもでたよ
午前中はお日様も顔を出して、積もった雪はみるみる消えてゆく。道路の雪はほとんど無くなった。野山の雪はまだ残っているけれど田んぼの畦は見えている。おかげで、たんぼ道の方に散歩が出来るようになった。久し振りにお日様が顔を出したので、僕は外へ出て地面に座ってみた。そして、久し振りにお仕事をすることが出来たんだ。えっ?「おまえの仕事とはなんだ?」という人がいるかも知れない。この所の吹雪で犬小屋の中に閉じこもってばかりいたものだから、ろくにお仕事もしないで冬ごもり状態だったんだ。実は・・・と、声を潜めて言うほどの仕事ではないけれど「番犬」というお仕事を僕は持っていたんだ。そして、今日は家に来た人へ「わんわんわんわん!」と元気良く吠え立ててやった。いつも家に来る人で知り合いなんだけれど、久し振りなので吠えてしまったよ。早く外へ寝ころぶ事が出来るような暖かさになって、番犬のお仕事が忙しくなれば良いなって思っている今日この頃の僕なのであった。

12月23日 あめがふったりやんだり
いきなり雨である。一昨日まで猛烈な寒波が襲来していたのだけれど、今日は雨・・・・一時、50センチにもなった積雪が21センチにまで下がった。雨と気温の暖かさで溶けて流れてしまったのである。「ホッ」としたような、物足りなくなったような・・・雪国に住む動物(人間を含む)なら誰でも思う矛盾した気持ちである。雪はなければ無いに越したことはないけれど、雪の恵というか、雪景色の中に北国の動物の原風景が集約されているので、冬という季節に雪がないという現象は受け入れがたいのである。雪が多く降れば降るほど春を待ちわびる気持ちがふくらんできて、春になった時の喜びも大きなものがある。こんな気持ちが心の中に浮かび上がってきた時に思うことは、犬の先祖であるオオカミさんが雄々しく雪の野山を駆け回る姿なのである。そして「寒い、寒い」と表には出さねども心の中で思いながらも、飼い犬の熱き心はたぎるのであった・・・・

12月22日 くもり
「春がそこまで来たようだ〜」と歌い出したくなるような暖かさである(これ以上は著作権の関係で歌うことは出来ないけれど・・・)。お日様は顔を出さなかったけれど、日中の最高気温が6度である。今頃の季節には滅多にない暖かさである。僕も時々、外に出てみたのだけれど、気持ちがよいし身体も調子がよいようだ。朝散歩も夕方散歩も意欲的に行くことが出来る。もっとも、御主人にとっては気温が6度でも寒いらしくて今日も「完全防寒」体制である。まぁ、「春が来たようだ」というのは、今頃の季節に北国の人間や動物が抱く幻想に過ぎない。これから「寒くて雪が深くて辛い冬」が待っているという現実からの逃避に過ぎないのである。でも、春は必ずやってくるのである。それまでは「冬眠」するよ。僕!!でも日記は書くからね!

12月21日 ふぶき
雪は収まるどころか、いよいよ勢いづいて朝から吹雪になった。吹雪があまりにもひどいので御主人は僕の散歩にもやってこない。それに、除雪もしなければならないのだけれど、午前中の御主人は家に閉じこもったままなのであった。午後から吹雪が時々止むようになってきた。お日様も顔をのぞかせたりする。すかさず、御主人が「完全防寒装備」で外に出て来た。僕も除雪する御主人を応援しようと外へ出たのだけれど、トラクターのエンジン音が恐くて、すぐ犬小屋の中に引っ込んだんだよ。でも「御主人を応援したい!!」という気持ちが沸々とわき上がっている僕は、「何かをしなければ!!」と思い、プラスチックの植木鉢を相手に咬んだり、なめたりしたのであった。これで御主人の応援になるかなぁ?

12月20日 ゆきがふったりやんだり
今日はだいぶ暖かくなったらしくて、道路の雪もグズグスのみぞれ状態になっている。おかげで歩きにくい。暖かくなったといっても最高気温が3度だから、どうということはない。・・・・ところで、今日は御主人夫婦がおそろいで、町内の農家の人達と忘年会だというので夜になって出かけて行ってしまった。もちろん僕は散歩とご飯はいただいたのだけれどね。今日一日中、雪の降り方は少なかった。これでしばらく治まってくれたらいいのだけれど・・・

12月19日 ゆきがふったりやんだり
こんな大雪の日なので夕方散歩へ行けないのかと思っていたら、御主人は別な思惑があった。御主人夫婦が「京都、奈良の旅」へ行ったことは前にも話したのだけれど、その時に奈良で有名な「柿ノ葉ずし」の詰め合わせを家に配達してもらうように頼んだのだった。それが今日届く予定になっている。届いたら、おじいちゃんやおばあちゃん達と一緒に食べようと楽しみにしているのだけれど、まだ届かないのである。この雪だし、遅れるんじゃないのかなぁ・・・と僕は思っているのだけれど、とりあえず僕の「夕方散歩行き」は「柿ノ葉ずし到着待ち」と勝負しても勝てないようなのである。そして、とうとうご飯だけが僕の目の前に出されて、今日はおしまいと言うことになってしまったのだった・・・

12月18日 ゆきがふったりやんだり
今朝は、見渡す限りことごとく凍り付いた。気温は氷点下4度・・・朝散歩へ行く時なんか滑って転ばないようにおそるおそる足を動かさなけれいけなかった。雪は日中は止んだので「ヤレヤレ、除雪をしなくても良さそうだ」と御主人が喜んでいたのも束の間・・・・昼頃には大量に降り始めた雪なのであった。そして、僕としても困っていることがある。昨日は墓地方面へ行こうか、たんぼ道へ行こうかなんて優雅に悩みを楽しんでいたのだけれど、たんぼ道はもちろんだけれど、墓地方面へ行く道も除雪されていないのであった。除雪されているのは民家がある所までなのである。例年だと墓地の所まで行って大きな通りへ抜けるまで除雪してくれていたのだけれど、今年はそうじゃないようだ。「きっと、この大雪で除雪が間に合わないんだ」と、善意に解釈してしまった僕なのであった。なんと言っても、犬は善意と誠意の塊みたいなもので、善意と誠意が毛皮を着て歩いているようなものなのである・・・・

12月17日 おおゆき
我が家の近辺の積雪が45センチにもなった。僕のお腹よりもっと上ぐらいの高さである。一方、僕の生まれ故郷である山形県の庄内地方では90センチの大雪だという。我が家の近辺の2倍もの高さである。僕なんか完全に雪の中に埋もれてしまう。例年だと僕の故郷は、ここら辺よりは雪が少ないはずなのだけれど、今年は異常気象なのかこんな積雪になってしまったようだ。さて・・・?当面の問題は、どうやって散歩に行くかだ。午後になって、やっと除雪車が来たので道路は何とか歩くことが出来る。但し、いつも行く散歩道はたんぼ道なので除雪はされていない。ここは無難に墓地方面の除雪されたコースを行くか、冒険をして雪の中を泳ぐようにいつもの散歩道を行くか、思案のしどころである。でも、きっと御主人は無難なコースを行くだろうと思うな。だって石橋をたたいても渡らない性格の人だから・・・・

12月16日 おおゆき
雪は3日連続で降り続け、止むことを知らないようだ。積雪は、すでに20センチを越えたという。・・・僕たちが住んでいる地域でこのぐらい積もったのだから、山の方にはもっとたくさん積もったに違いない。今日も朝散歩には張り切って出かけていったんだけれど雪の中を泳ぐように行くのが嫌になって途中から引き返してしまったんだ。御主人は行きたがったけれど僕が嫌がってねぇ〜。若犬の頃のように自分の背丈の半分ぐらいまで雪の中をかき分けて進んでいったことがいまとなっては懐かしいよ。犬小屋の中で丸くなって寝ていた方が幸せに思えるようになってきた。こんな状態で御飯を食べて運動しないでいると春になった時の体重が気になるけれど、まぁ何とかなるだろう・・・・それにしても、この雪は・・・・。

12月15日 ゆき
昨日から降り続けた雪は、辺り一面を雪景色に変えて非常に寒い朝になった。身震いするほどである。・・・と御主人は言った。でも、残念なことに今日は御主人が「年末の交通安全運動」で街頭に立たなければならないので朝散歩は無しと言うことになった。でも、夕方散歩はしっかりと雪を踏みしめていくことが出来たよ。寒がりの御主人は頭からつま先まで防寒対策は完璧に近いぐらいだったよ。きっと汗をかいたに違いないと思うよ。と、言うわけでいつもの僕たち主従の代わり映えしない日常が始まったのであった。

12月14日 ゆき・・・あきたは
朝というか夜明け前4時52分、京都駅から直行で寝台特急「日本海」は羽後本荘駅に到着。今回の旅は終了と言うことになった。本当はタクシーで家に帰り着いて終了だったんだけれどね。でも・・・・家に帰って僕とご対面でやっと終了なのかな?・・・ぐっすりと眠っていた僕のところへ御主人が煮干しを持ってきて帰りのご挨拶をしてくれた。「やっと帰ったのか。無事で良かった。」と僕は鷹揚に返事をしたのであった。二人が帰ってからすこし経つと雪がゆっくりと舞い落ちてきて、やがて辺りを白く彩り始めた。この冬初めての積雪である。二人が帰ってくるのを待ちかねたように降り始めた雪である。「はぁ〜、やっぱり冬になるんだな」と実感した僕なのであった。そして二人は、今日一日旅行の残務整理に汗をかいたのであった・・・

12月13日 はれたりくもったり・・・きょうとは
昨日の続きである。昨日と似たような時間に京都駅から「太秦(うずまさ)」という駅へ出かける。ここには広隆寺というお寺があって、仏像好きな人にはよく知られたお寺である。ご主人はこのお寺の仏像を見たくて見たくて30数年も思い焦がれていたのだったのだけれど、今日はやっと拝観できる。そして、やっと「弥勒菩薩」を目の前にした時。見る人の心を何でも許してくれるような、そんな姿にわくわくしたうれしさと、心が洗われるような、そんな様々な感情が渾然一体となって御主人の心の中が満たされていくのであった。さて、今度は路面電車で嵐山と言う所へいった。でも、目的は嵐山ではない「嵯峨野」である。ここは平家物語のゆかりの寺や場所が多くある。天竜寺、常寂光寺、落柿舎、野々宮神社と、孟宗竹の林に囲まれた小路を歩きながら各寺を巡る。そして、嵯峨駅から電車で京都駅へ帰ったのであった。京都駅で昼食。14時30分なのであった。これでは昼食とは言えないけれど・・・その後、やっと念願の京都タワーにのぼり、今回行けなかった名所旧跡を遥か上から眺めたのであった。帰りの寝台特急「日本海」の発車時刻は刻々と迫ってくる。1時間ほどで京都タワーを降りて、お土産を物色して、京都駅0番線から18時22分発の「日本海」に無事乗り込むことが出来たのであった。

12月12日 くもりときどきあめ・・・ならは
昨日の続きだよ。朝の9時過ぎ、京都駅から宇治駅まで電車で移動して宇治へ。源氏物語の舞台としても知られるここには世界遺産「宇治平等院」が在り、これを拝観。この建物自体が国宝である。その国宝の内部に入れてもらえることが出来て御主人夫婦は大感激である。そして、また電車で奈良駅へ行き、興福寺と東大寺を拝観した。興福寺は東京上野や福岡で展示された「阿修羅像」などがあって、それぞれの仏様のお顔の色が旅疲れしているようにも感じられた。東大寺は時間が無くて大仏様だけしか見ることが出来なかった。仏像好きの二人にとっては残念だったが、欲を言えばきりがない。第一、仏教は「欲」というものを押さえるように教えている。あっ、鹿さんもたくさん見たと言っていた。鹿は近くの春日大社のお使いとかで江戸時代は鹿を傷つけたり殺したりしたら死罪になったと言われている。こうして、色々見学したり、おいしい物を食べたりしながら19時半の奈良駅発快速に乗り、京都駅に着いたのは20時半なのであった。京都タワーが夜空に美しい光を放っていて登りたかったけれど今日もいっぱい歩いたので、ホテルに帰りぐったりとベット横たわった二人なのであった。

12月11日 あめ・・・きょうとは
僕の日記ではあるけれど僕を観察する唯一の御主人が旅行で居ないので、後から聞いた旅行の土産話をご披露するよ。さて、昨夜の11時8分に羽後本荘駅を発車した寝台特急「日本海」は乗換え無しで京都駅7番ホームへ朝の9時52分に到着した。外は雨である。そこで、お母さんと相談の上で今日は日程を入れ替えて近場を巡ることにした。仏像の宝庫である東寺。西本願寺、そして我が家の大本山である東本願寺などを巡って夕方に京都駅前のホテルに入ったのであった。列車好きではあるけれど、何年たっても寝台特急の中では中々眠ることが出来ない御主人なので、早々に寝てしまったのである・・・・・(紙面節約のため事実のみを淡々とつづる。)

12月10日 かいせい
今日は気持ち良く晴れたので、時々は外に寝ころんでいた。さて、夕方散歩へも行ったし、御飯も食べたのでぐっすりと寝入っていたら、何だか犬小屋の外が騒がしくなって御主人が顔をのぞかせた。「ちょっとお出かけだからお留守番を頼むぞ」と言われた。「こんな夜更けに何処へ行くのだ」と聞いたらお母さんと京都、奈良へ旅行なのだという。初めて聞く所なので良くわからなかったけれど、いつも行く東京ではないらしい。「それじゃぁ、ちょっとお出かけじゃないよ!」と唸り声を上げて不満を漏らしたら、さっさとお兄さんの車に乗ってお出かけしてしまった。毎年のことで慣れてはいるけれど、少し寂しくなるなって思った僕なのであった。

12月9日 くもりいちじあめ
今日も穏やかに一日が始まり、そして穏やかに暮れていった。日中の最高気温は9度。いつもの年より暖かいのは毎日のようにこの日記で述べている。ところで、夕方散歩の時に御主人のおじさんの犬と出会ったよ。メス犬なんだけれど、ずいぶん元気で僕と遊びたがっていたようだ。だけど御主人同様の中高年犬の僕なので、ちょっと興奮したけれど比較的理性的に相手をやり過ごしてしまったよ。
僕は帰り、向こうは行きで、御主人の叔父さんが散歩紐を持っていたようだ。でも、・・・はぁぁぁ〜、歳を取ると経験や知識ばかりが増えてしまって好奇心と言ったような気を奮い立たせるものが少なくなる。世間からの刺激がそんなに感じられないのである。「ヤレヤレ、困ったものじゃのぅ〜・・・」と、言葉付きまで年寄り臭くなってしまっている僕なのであった。

12月8日 くもり
今日は比較的、穏やかに一日が終わった。この所見えなかった白鳥さんも、この前と違う田んぼで落ち穂をついばんでいたよ。でも数羽程度だったけれどね。さて、今日は日中の気温が8度ぐらいだったので犬小屋から外に出てみた。さすがに地面に寝ころぶまで行かなかったけれど。若い頃はこんな天気の日でも平気で地面に寝ころんだものだけれど、「今は昔・・・」なのであった。ところで、いまサザンカが満開なのである。暖冬のせいか、いつもの年より多く咲いている。犬は花を愛でるという風習はないけれど、風に散らされたサザンカの花びらが僕の目の前に舞い落ちてきて「はぁぁ〜・・・風流だなぁ〜」と、花鳥風月というか、人間の侘び、寂びと言った日本人の心を体験している僕なのであった。やはり僕も日本原産の犬なのである。

12月7日 ふうせつながれ・・・いやなんでもない
昨日は10度近くまであった気温が、今日になって4度か5度である。極端な下がりようである。そして、昨日からの雨が雪に変わって強い風と共に吹き付けてくる。僕は犬小屋の中で、じっと耐え忍ぶばかりである。幸い僕の住んでいる犬小屋は防寒対策がされているので比較的暖かい。森の熊さんが洞穴の中に入っているような状態と思ってもらうと良い。でも、この犬小屋の防寒対策は夏も対策しっぱなしなのである。さすがに正面に張り巡らされたものはめくり上げられるけれど、右左と後は冬と同じなのである。もっとも、暖かくなれば犬小屋なんかに入ることはないので別に気にはならない。さて、いきなり雪が降ってきた事である。御主人は頭からつま先まで防寒対策をして僕と散歩に出かけたのだった。行きは西からの強風が背中を押すように吹き付けてくる。帰りは行く手を阻むように吹き付けてくる。いつもの冬の光景である。だがいつもと違うのは、この前、御主人が買ってきた防寒具である。真冬でも家の中にいるのと同じ状態で作業が出来るというのがうたい文句の優れものである。ところが、これを着て散歩に行った御主人は大汗をかいたのであった。この寒いのに?、でも、うたい文句通りの防寒具?・・・でも、犬にとってはこの寒い中で汗をかくなんて不思議なことである。「ちょっとおかしいんじゃないの?」と僕は思ったのだけれど、「世の中には不思議なことなど、そこかしこにあるものだ」・・・と御先祖であるオオカミさんの教えがDNAの中に記憶として残っているので、知らんぷりをした僕なのであった。それに飼い犬は飼い主に対しては意見がましいことは言えないことになっているのでね。

12月6日 ふうう
今日は朝から風が強い。朝散歩にはかろうじて行ってきたのだけれど、夕方散歩は雨風とも強くて行くことが出来なかった。いや?御主人が「行こう」と思えば行けたかも知れない・・・でも飼い主の意向に飼い犬は逆らうことが出来ないので不平不満をブツブツと犬小屋の中でつぶやきながらご飯が目の前にやってくるのを待ち続けた僕なのであった。さて、この時期に海が荒れると「ハタハタ」という秋田名物の魚が岸に寄ってきて大漁になると言われているけれど、今日はどうだったのだろうか?。この前はたらふく食べ過ぎたけれど、またたらふく食べることが出来るかなぁ〜。この頃はすることもないので食べることばかりが気になる今日この頃の僕なのであった。

12月5日 くもりのちあめ
今日はお母さんの誕生日だというので、僕と御主人は田んぼにいるはずの白鳥さん達を見に行った・・・・えっ?、なんかおかしいって?・・・・犬にとってはどこもおかしくないのだ。お母さんの誕生日が今日なのも事実だし、白鳥さん達を見に行ったのも事実だ。それに、前もって「ここしばらくは、白鳥さん達の話題がおまぬけ日記に載るだろう」と予言をしている僕なのである。と、言うわけで白鳥さん達を見に行った僕たちなのであった。でも、いない・・・・一羽もいないのである。天気が悪くてやってこなかったのか、それとも南の方に旅立ってしまったのか?思いは募る御主人と僕なのであった。イヤイヤ、思いが募るのは御主人の方である。もっと良い写真が撮りたかった・・・と。この分では明日もきっと行くだろうなと予想はしているのだけれど、今夜から明日にかけて僕たちの地方には「暴風警報」が出ている。果たして明日は散歩に行けるのか、白鳥さん達の行方は・・・?謎は深まるばかりの今日なのであった。

12月4日 うすぐもり
すっきりとした晴れではないけれど、薄日が射して日中も10度から8度ぐらいの穏やかな日が続く。この日記の主人公である僕も、薄い日射しながらも外で「うつらうつら」と居眠りばかりしている隠居犬になってしまっているので、「むつ犬のおまぬけ日記」の話題に苦労する御主人なのである。だから、白鳥さんのお話しがまだまだ続くのであった・・・そこで、今日の話題は、夕方散歩に出かけた僕たち主従である。白鳥さん達は午後4時半前には餌場、つまり田んぼの中に落ちているモミをついばんでいる場所からねぐらへと飛び立つようだと、ここ数日の観察で御主人か確認した。夕方からはポツポツと雨も落ちてくる空模様だったけれど、西の空にはわずかに夕日の色が見えている。そして午後4時25分、北東にある田んぼから白いものが鳴き声を上げながら空へ舞い上がった。白鳥さん達の群れである。そして、わずかに残るに夕日の明るさの中を飛び南西の方角へ消えていったのであった。そこで御主人は我を忘れ、飼い犬の存在も忘れて写真機を向けたのだったけれど、どれもこれもぼやけていたのである。そこで、すかさず僕は御主人の嘆きが聞こえる前に、「明日こそ、と言う言葉は現状からの逃避であって、今日やれることに最大の努力を尽くすことこそが明日への道なのである」と言い放ったのであった。もちろん、この言葉の真意は毎日のように飼い犬の散歩を犠牲にしての写真撮りにうんざりしていたからなんだよね・・・・。

12月3日 うすぐもり
昨日見た白鳥さん達の写真を撮ろうと、僕と御主人は夕方散歩を兼ねて白鳥さん達の所へ行った。田んぼの白鳥さん達の声がにぎやかになって、いよいよ自分たちのねぐらへ帰り支度を始めたようだ。御主人は白鳥さん達に写真機を向けた。と言っても本格的なカメラは持っていないので「誰でも写せるデジタルカメラ」を向けた!・・・ところが辺りはすでに黄昏時、夕日はとっくに落ちに東の方には満月らしきものが大きく見える。満月を背景に白鳥さん達が飛んでいく姿を写すことが出来れば、と御主人は願っていたのだったけれど、白鳥さん達は西の方に飛んで言ってしまったのだった。しかも低空で飛んでいる。露出不足で写真を写すのは無理のようだった。結局、御主人は撮影をあきらめて白鳥さんが飛んでいく姿を目で追うのみなのであった。それを僕は最初から最後まで冷めた目でオスワリをして見ていたのだった。「よし!、明日こそ!」と言う御主人に一言、「僕の散歩を犠牲にしてまで、そんなことはしないで欲しいな」と・・・言いたかったのだけれど飼い犬は飼い主の行動に意見することは許されないので心の中でつぶやいただけの僕なのであった。

12月2日 かいせい
今日の夕方散歩の時、白鳥さんが南西の空に飛んでいくのを見たんだ。最初は30羽ほどが元気良く鳴き声を上げながら飛び去った。その後に20羽ほどの編隊が僕たちの真上を超低空で飛び去っていった。夕焼けに染まった西の空に飛び去っていく白鳥さんを間近で見ることが出来て感激したよ。「また、春になって北へ帰る時に逢おうね!」と約束をした僕なのであった。白鳥さん達が約束を承知したかどうかはわからないけれど、春になったらきっと同じこの空を飛んで帰るに違いないと確信している僕なのであった。

12月1日 はれ
今日は昨日にも増して大変良い天気になった。何だかだんだん暖かくなってきて、このまま春になりそうな今日この頃なのである。もう1ヵ月もすると桜が咲いて「春爛漫」の季節を迎えることだろう。と、お日様の下で気持ち良くお昼寝をしながら夢を見ていた僕なのであった・・・・