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2018年5月1日発行 No599
神の子とする霊を受けて
金田 佐久子
キリストの復活を祝うイースターから始まった復活節の日々の中、教会は、復活日から50日目の聖霊降臨日(ペンテコステ)へと向かう歩みを進めています。今年の聖霊降臨日は5月20日です。使徒言行録第2章に記された、最初の聖霊降臨の出来事以来、聖霊の神は今も、常に働いていてくださいます。
つい最近の忘れがたい出来事を、ここにも聖霊のお働きがあると信じて、分かち合いたいと思います。
この春わたしはAさんという60代半ばの女性と出会いました。始まりはAさんのお連れ合いからの電話でした。「妻が打ちひしがれているので、訪問をしてくれないか。牧師さんとはそういうことをしてくれるのではないか」。「一度お訪ねします」と約束し、後日訪問しました。
Aさんは難病のため常に介護が必要となり、川口市内の老人ホームに入居されていました。そして、キリスト教主義の大学を卒業されたこと、以前都内の教会の礼拝に少し通っていたことがわかりました。ホームでは部屋にこもっていることが多いようでした。Aさんが「毎週来てくれますか」とおっしゃったとき、わたしはAさんの心のうめきのようなもの、魂の渇きを感じました。
3月の終わりに2度目の訪問をしました。いろいろお話を伺ったあとで、ルカ福音書第15章1節から7節までを読んで「キリストは、見失った一匹をどこまでも見つけ出すまで探す羊飼いのような御方であり、Aさんのことも見つけ出してくださいます。だからこそ、今わたしがここにいるのだと思います」とお伝えし、お祈りしました。
4月13日の朝、3度目の訪問をしたときにはルカ福音書第15章11節から24節までを朗読し、「神様は、このお話しに登場するお父さんのような存在で、わたしたち一人ひとりを、子として迎え入れてくださいます。わたしたちを責めることも咎めることもありません。キリストがわたしたちの罪を取り除いてくださったから、父なる神は、わたしたちをそのまま受け入れてくださるのです。救われるために、善い行いをする必要はなく、ただ信じるだけでいいのです」とお伝えしました。Aさんの知っている讃美歌「いつくしみふかき」を共に賛美し、「主の祈り」を共に祈りました。次の訪問の日を決めて帰りました。ところがその日の夜、お連れ合いから「妻が亡くなりました」と電話がありました。血管の病気のためでした。
Aさんの御生涯の最後の1ヶ月間に3度お会いしただけでした。Aさんと共に耳を傾けた聖書の言葉、神の愛の言葉が、Aさんの心の慰めとなり、支えとなったでしょうか。
Aさんと共に祈った主の祈りはこう始まります。「天におられるわたしたちの父よ・・・」(マタイ6・9)。主イエスが教えてくだった祈りです。父なる神への呼びかけから始まります。この呼びかけの言葉から思い出される聖書の言葉があります。ローマの信徒へ手紙第8章15節です。「あなたがたは、人を奴隷として再び恐れに陥れる霊ではなく、神の子とする霊を受けたのです。この霊によってわたしたちは、『アッバ、父よ』と呼ぶのです」。
ですから、主の祈りを心から父なる神に祈るならば、神を「父よ」と呼ぶならば、そこに聖霊の働きを見ることができます。そのとき人は、恐れから解き放たれ、神の子としてくださる聖霊を受けているのです。この聖霊降臨は、すべての人に開かれ、備えられている神の恵みなのです。
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