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2019年8月1日発行 No.614
天は開いている
金田 佐久子
「八方塞がりでも天は開いている」進むことも退くこともできない、と思ったら、天を、空を、見上げてください。
(樋野興夫先生の言葉の処方箋より)
川口がん哲学カフェいずみは2019年7月で第19回を数えました。いずみの案内はホームページしかありませんが、社団法人がん哲学外来のホームページにも掲載されているので、それを手掛かりに、ほぼ毎回、初めて参加してくださる方がおられ、うれしく思っています。
がん哲学カフェとはどういうものでしょうか。川口がん哲学カフェいずみのホームページから引用してご紹介します。
“がん患者はがんとともに生きていく上で、病気を治すことだけでなく、人とのつながりを感じ、尊厳を持って生きることを求めています。一方医療現場は患者の病状や治療の説明で精一杯で、患者や家族の心の求めに応えきれないのが現状です。その医療現場と患者との隙間を埋めるべく「がん哲学外来」が始まりました。「がん哲学外来メディカル・カフェ」は、お茶を飲みながら、ゆったりとした雰囲気で、患者さんや、ご家族や関心を持つ人たちが同一の平面で対話する場です。”
がん哲学カフェでは、最初に参加者全員が自己紹介をします。どのような思いで、今日ここにきたかを伺います。このとき、参加者でがん患者の方は、ご自分の病状を知らされたときのこと、ご家族や仕事のこと、将来のことを語られます。他の人はじっと耳を傾けます。聞きながら切なくなり心が痛むこともあります。幼いお子様や学齢期のお子様がおられる方からの言葉は、特に胸に迫るものがあります。「子供の成長を見ることができないかもしれない…」という心を感じるからです。心配、不安、悲しみを吐露されることもあります。一方がんになって初めて分かったことがある、とポジティブなことを語られ、聞いているわたしが勇気づけられることもよくあります。がんになって、「今」というかけがえのない「このとき」を「目覚めて生きておられる」と感じます。
お話を伺いながら、わたしは心で祈っています。自分は弱く、何もできませんから、ただ「神様がこの方を慰め、励まし、癒して、良き道を開いてくださいますように。ご家族を支えてお守りくださいますように」と祈っています。
聖書には人間関係が破れ、全くの孤独となり、身一つで、野原で一夜を過ごした人が登場します(創世記第28章)。その人はヤコブ。彼は真っ暗な野原で冷たい大地に横たわり、石を枕にして寝るのです。ヤコブは父と兄をだましたため、兄から殺意を抱かれ、そこから夜逃げしたのです。叔父を頼って叔父のいる町を目指しますが、自分を迎え入れるかどうかは分かりません。前途も真っ暗です。もちろん、元に戻ることもできません。このヤコブほどの孤独はわたしも味わったことはありません。ところが聖書は、こういう事態のただ中に神が訪れてくださるというのです。ヤコブは夢の中で、天まで達する階段が地に向かって伸びてくるのを見ます。さらに主なる神が傍らに立たれ「わたしはあなたと共にいる。あなたがどこへ行っても、わたしはあなたを守り、見捨てない」と力強い約束の言葉をヤコブに語ってくださいました。神はこのように八方塞がりのヤコブを訪れてくださる。八方塞がりでも天は開いているのです。天におられる神を仰ぐ信仰を与えられるのです。
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