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2022年2月1日発行 No.644

信教の自由を守る日

                            金田 佐久子

 西川口教会では、年末に来年のカレンダーを作成して主だった方々にお手渡ししています。そのカレンダーの2月11日には「信教の自由を守る日」と記されています。「信徒の友」2月号に「2月11日は『信教の自由を守る日』―制定の経緯」の記事があり、この日がいつから始まり、どのような背景があったのかを知りました。
 一般的なカレンダーでは2月11日は「祝日」です。明治政府が1873年、日本書紀中の神武天皇即位という神話により、2月11日を紀元の始まりとして祝日に制定したことに基づいています。第2次世界大戦後、紀元節は廃止されましたが、GHQの日本占領が終わると、紀元節を復古しようとする動きが始まりました。「信教の自由を守る日」が呼びかけられるようになったのは、1966年12月9日に、政府が「建国記念の日」を2月11日とすることを閣議決定し、政令で定めたことによります。日本基督教団は、同日ただちに「二月十一日が建国記念日に決定されたことに対する反対声明」を出しました。声明では、この日を祝日(国民こぞって祝い、感謝し、または記念する日)とするには無理がある。神社神道の一祭日である2月11日を国民の祝日としたことに憲法の「思想及び良心の自由」「信教の自由」の侵犯につながりかねない。古い日本の復古的傾向を強めると憂慮する。歴史的事実に基づかない日を建国記念日としたことで、科学的思考に代わって神話的思考が強制されることを憂慮する。このように反対理由が述べられています。

 先月、祈祷会での出エジプト記の学びを終えました。出エジプト記には、モーセによってイスラエルの民がエジプトを脱出し、シナイ山で神と契約を交わして律法を授与されたことなどが描かれています。
 学びでは、鈴木佳秀著「VTJ旧約聖書注解 出エジプト記」(教団出版局)を参考にしました。この注解では、イスラエルの民を奴隷として抑圧したエジプトの王ファラオを「現人神」と呼んでいました。注解書の「結び」を読んでこの言葉遣いに鈴木先生の思いが込められていたことを知りました。それはお母様の弟で、戦死した叔父様がおられたことです。第二次大戦末期に発せられた学徒動員令で叔父様は特攻隊に組み入れられ、戦死しました。その後に鈴木先生は生まれ、その時、お母様のご両親(祖父母)がこの子を鈴木の家の跡取りに貰い受けたいと願い出たそうです。お父様はこの子が成人するまで待ってほしいと固辞されました。祖父母は亡くなりましたが、お母様はそのことを忘れず、鈴木先生が結婚した直後に、鈴木の家を継いでほしいと両親が願い、申し出を受けて先生は鈴木になったというのです。戦時下であったため、拒否することも、現実を変えることも許されていなかった時代に生きざるを得なかった叔父様に思いを馳せつつ出エジプト記を翻訳し注解した、とありました。
 “ファラオに「現人神」と付したこともそうした思いによる。現人神とされたファラオの支配のもとで生きていたエジプトの民や、強制労働に駆り立てられたイスラエルの民のこと、ファラオの命令で戦車と共に海に入り、戦死してしまった兵士たちのことを覚えつつ、注解書を執筆したのである。”
 「願いと祈りと執り成しと感謝とをすべての人々のためにささげなさい。… 神は唯一であり、神と人との間の仲介者も、人であるキリスト・イエスただおひとりなのです。」(テモテ一2・1、5)

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