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2023年9月1日発行 No.663

『空っぽの器』を用意して

                            金田 佐久子

 7月22日に、第12回「がん哲学外来コーディネーター養成講座」に初めて参加しました。テーマは「原点回帰 ~がん哲学外来へようこそ~」、主催はがん哲学外来市民学会、会場は両国国技館の近くのビルの10階セミナールームで、東京スカイツリーが大きく見えました。
 私は「信徒の友」の連載によってがん哲学外来カフェを知り、川口がん哲学カフェいずみを立ち上げるところで「社団法人がん哲学外来」の認定が必要と知り、後援していただくことができました。同じころ「がん哲学外来市民学会」の存在を知り、市民学会の会員になりました。どちらもがん哲学外来の理念に根差して活動しています。
 今回の養成講座のガイダンスにこのようにありました。
 “…多くの人は、自分自身または家族など身近な人ががんにかかった時に初めて死というものを意識し、それと同時に、自分がこれまでいかに生きてきたか、これからどう生きるべきか、死ぬまでに何をなすべきか、という哲学的な問いに直面します。一方、医療現場は患者の病状や治療の説明をすることに手一杯で、がん患者やその家族の精神的な苦痛までをケアすることができないのが現状です。そのような医療現場と患者の間にある「隙間」を埋めるべく「がん哲学外来」が生まれました。
 その「隙間」を埋めるのは…集まりやすい場所で、立場を越えて集う交流の場…現在では…メディカルカフェという形で全国に広がっています。「がんであっても尊厳を持って人生を生き切ることのできる社会」の実現を目指し、より多くのがん患者さんが、垣根を越えた様々な方との対話により、「病気であっても、病人でない」安心した人生を送れるよう力になりたいと思っております。(がん哲学外来HPより抜粋改変)
 カフェを訪れた方々をこのような精神で応接するのが「がん哲学外来コーディネーター」です。養成講座ではそのための心がけを学びます。しかしながらそれを実現するためにはカフェごとに、個人ごとに、様々なやり方があると思います。自分はどのようなコーディネーターになりたいのか、そのことを本日一日かけて考えていきましょう。”
 参加者は100人近く、他にスタッフや講師の方々で、コロナのため対面でようやく開催できたという喜びも感じられ、非常に活気がありました。会場はグループ毎に着席し、講演が終わり、グループの時間に全員が自己紹介をしましたら、10人中私を含めて6人は、教会を会場にしているカフェのスタッフや出席者でした。私の隣の方はお子様が血液のがんになり(現在は寛解)、「そのときは喉もとに刃が突き付けられているようだった」との言葉に、家族の苦悩を知らされました。がん患者の方もおられました。その後「『空っぽの器』を用意して」をどう表現するかというワークでディスカッションとプレゼンテーションをしました。お互いの言葉に耳を傾け、自分の意見もしっかりと言い、共に造り上げていく貴重な時間を過ごしました。引っ込んでも出すぎてもよくない関係作りを体験できました。
 養成講座の学びを振り返ってみて「目に見える兄弟を愛さない者は、目に見えない神を愛することができません。神を愛する人は、兄弟をも愛すべきです」(ヨハネの手紙一4・20~21)の御言葉を思いました。がん哲学外来カフェに限りません。思いがけない出会いがあり、突然、対話が始まる時がくるかもしれません。訪れる人を、神の愛で受け入れることができますように。

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