トップページに戻る西川口だよりに戻る

2024年2月1日発行 No.668

「逆境にどう立ち向かうか」

                            金田 佐久子

 今年の復活日(イースター)は3月31日です。教会はイースターに先立つ40日間をレント(受難節)として定めて、主イエスの受難と十字架への歩みを思い、祈り備える期間としています。この40日間に主日(日曜日)はカウントしません。レントの始まりは必ず水曜日で、灰の水曜日」と呼ばれています。今年の灰の水曜日は、2月14日です。
 この巻頭言を書いた日の聖書日課は、ちょうど、主イエスが弟子たちにご自分の死と復活を予告された箇所に当たりました。「人の子は必ず多くの苦しみを受け、長老、祭司長、律法学者たちから排斥されて殺され、三日目に復活することになっている」(ルカ9・22)。人の子であるイエスが、人々から苦しめられ、捨てられ、命を取られることは、避けられない神の定めだというのです。イエスは苦難と死を経て復活されます。死者の復活という希望が成就する主イエスの復活が神の定めでありました。イエスからこの言葉を聞いたとき、弟子たちは理解することができませんでした。神の御業は時に適って一つ一つ進められていきました。すべてが実現した時、弟子たちはイエスの言葉どおりであったことを知ります。
1月13日の午後、礼拝堂を会場に、川口がん哲学カフェ「いずみ」開所7周年記念講演会がありました。講師は樋野興夫先生(順天堂大学名誉教授。新渡戸稲造記念センター長。一般社団法人がん哲学外来名誉理事長。恵泉女学園理事長)、講演題は「自己の行動の勇気〜逆境にどう立ち向かうか〜」でした。参加者に講演の資料が配付され、それを見ながら樋野先生より講演を伺い、その後質疑応答がありました。樋野先生の講演は、まことに豊かな内容で「スルメ症候群数え唄」(4頁参照)の通りです。参加者それぞれ心に触れる言葉をいただきました。
 講演後の質疑応答の時間も充実した対話のひとときでした。私の心に残ったのは、樋野先生が尊敬する新渡戸稲造が、生涯で2回うつになったこと、2回目のうつの時に名著「武士道」が書かれたことでした。
 樋野先生の「21世紀のエステル会ブログ『何事にも時がある』」の第323回「愛読書 〜 生涯に幾度となく読み返す 〜」にそのことが書かれているので引用いたします。
 “…新渡戸稲造は札幌農学校時代に『うつ病』になった。新渡戸稲造の母の死を知った内村鑑三からの激励の手紙によって立ち直り、東京へ出る。内村鑑三、新渡戸稲造に、札幌農学校時代に洗礼を授けたメリマン・コルバート・ハリスと新渡戸稲造は、横浜にて再会し、トーマス・カーライルの『衣服哲学』という一冊の本を譲り受ける。『衣服哲学』は新渡戸稲造の『うつ病』を克服し、愛読書となり、生涯に幾度となく読み返した。…アメリカでメアリーと結婚して、1891年に帰国し、教授として札幌農学校に赴任する。…札幌時代に再び体調を崩し、札幌農学校を休職して米国西海岸のカリフォルニア州で転地療養した。この間に、新渡戸稲造は、名著『武士道』を英文で書きあげた。…1900年に『武士道』の初版が刊行されると、ドイツ語、フランス語など各国語に訳されベストセラーとなり…大きな感銘を与えた。…”
 樋野先生は質疑応答で「順調な人生を送っていない時に、何かが与えられたということですね」と言われました。その言葉が心に留まりました。逆境のときを経て、新しい何かが生まれるかもしれないと思いました。神に祈り、新しい御業を待ち望みます。



トップページに戻る西川口だよりに戻る