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2024年11月1日発行 No.677

生 き 抜 く

                            金田 佐久子


 7年ほど前からカトリック教会の「心のともしび運動」の「今日の心の糧」をメールで配信していただいています。各方面で活躍中の執筆者が、月のテーマに沿って書き下ろしたお話が、毎朝届きます。気づきを与えられることが多くあります。
 先月半ばの「今日の心の糧」は、古橋昌尚氏(清泉女学院大学教員)のお話で、心を動かされました。
 テーマは「生き抜く」。
 “「生き残りの者」はイスラエル民族の大きなテーマです。かれらは過酷な現実のなかで自らの運命を神への信仰に委ねて生き抜いた人々です。
 イスラエルは時代が移れど、エジプト、ヒッタイト、アッシリア、バビロニア、ペルシアなどいつも列強国に翻弄されながら生き残ってきました。
 ヨセフは隊商に売られエジプトで生き延びます。モーセは川から引き上げられ幼児殺害から生き残ります。…ナオミは飢饉を逃れてモアブへ移住し、ルツはベツレヘムに姑と移り、ボアズの好意で生き延びます。ダビデもサウルの手から逃れ、後に自分の罪に下される罰からも生き延びます。…物語のたびに挿入される系図は、イスラエルの民がいかに生き残り、苦難を生き抜いてきたかの記録です。その背後には、彼らを支えてきた人々の物語が無数にまとわりついています。そのうえで今日ある世界が成りたっています。
 これは数千年前の地球の裏側の話に留まりません。私たちすべて、あらゆる民族や国民にも当てはまります。現在ロシアのウクライナへの侵攻、イスラエルのガザへの攻撃においても日々犠牲者とサバイバーの話が伝えられます。地球温暖化による異常気象、それに伴う自然災害、災難からのサバイバーは数えきれません。私の親族も東京大空襲を生き延びて、今の自分があります。
 第2次世界大戦でユダヤ人大虐殺を生き延びた精神科医ヴィクトール・フランクルは、自ら生き残った恵みに相応しく生きていこうと誓います。
 あらゆる苦難を生き抜いた人々に思いを馳せ、身近なサバイバーの人生をじっくりと噛みしめたい…”
 「サバイバー」(survivor)には、生存者、生き残った人々、遺族、逆境に負けない人という意味があります。「生き延びた者」が語源で、虐待や災害などさまざまな原因から生じた傷を、心や身体に負っても、なんとか生き延びている人のことを指します。また、がん医療においては、がんの告知を受けてこれから治療する人、治療中の患者さん、治療が終了した人、あるいは患者さんの家族や友人など身近な人々のことを「サバイバー」と呼びます。
 NHK・Eテレの「こころの時代」のフランクルの人生と思想に迫るシリーズについて以前書きましたが、現在全6話の内容を「こころの時代」のホームページから読むことができます。フランクルは、たくさんの人が苦しんで亡くなっていったのを見ました。彼は「その人が、かつて生まれて死んだという事実は、誰が思い出すことがなくなっても事実として残る。一人ひとりが大事で、あなたたちの生きたことは無駄ではなかった」と言いました。
 キリストの教会は今の時代を生きる「聖書の民」です。私たちも避けがたい現実を通されますが、神に信頼し、神に委ねて生きていきます。
 11月3日は今年の召天者記念礼拝です。私たちを支えてくれた人々を思い出し、その支えに感謝し、神の御手にすべてをお任せして、礼拝をささげます。
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