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2025年8月1日発行 No.686

「音楽は世界をつなぐ言葉」

                            金田 佐久子


 7月21日(月・祝)に「出会いと学び、交わりを楽しもう!」をテーマに、日本基督教団関東教区「宣教を考える集い」が、大宮教会で開かれ、出かけて参りました。賛美いっぱいの開会礼拝に続き、「音楽は、世界をつなぐ言葉」と題して、チェロコンサートがありました。演奏者のグリブさんが、ウクライナから避難してきたプロのチェロ奏者であることを知りました。
 帰宅してからネット検索すると記事が見つかりました。本年2月25日付の読売新聞オンラインの記事から紹介します。
“…ロシアによる侵略が続くウクライナから、つくば市に避難したプロのチェロ奏者、グリェブ・トルマチョブさん(30)…。ウクライナ第2の都市で北東部のハルキウ出身。…生活が一変した2022年2月24日。演奏の仕事に向かおうと、首都キーウの空港で飛行機を待っていた時に爆撃に遭遇した。出国できなくなり、すぐさまハルキウに戻った。しばらくの間は家族や友人と身を寄せ合って緊迫した日々を過ごした。攻撃は連日に及び、地下室に避難することもあった。
 侵略から数か月後、家族を残した上で「相棒」のチェロを抱えてオーケストラのチャリティーコンサートに向かった。ポーランドやオーストリアなどで演奏を続けた。
 その後、日本の大学に妻が通うことになり、23年に自身も来日、妻の姉が住むつくば市に避難した。現在は県などから支援をもらってアパートで妻と暮らす。日本語のレッスンを受けながら演奏の練習に励む。コンサートではクラシック、ウクライナ、日本の3種類の曲を弾く。「どんな国の人も、音楽を通して一緒になれる」と信じている。…「早く戦争が終わり、みんなが平和な生活を送れるように」。そんな願いをチェロの調べに乗せ、前を向く。”
 グリブさんが演奏されたどの曲もとても素晴らしかったのですが、「鳥の歌」が特に心に沁みました。実は、2023年11月の当教会でのボーマン・ベアンテ先生のチェロコンサートでこの曲の背景を知ったので、心に残っていました。
 「鳥の歌」はスペインのカタロニア民謡です。この曲が有名になったのは、カタロニア地方で生まれたチェロ奏者パブロ・カザルス(1876~1973)のおかげです。カザルスは20世紀最大のチェロ奏者と言われています。スペイン内戦のときフランコ政権に抵抗したカザルスは南フランスに亡命しました。彼はアンコールには必ず「鳥の歌」を演奏しました。カザルスは国連に3回呼ばれて演奏し、最後の時は94歳でした。「鳥の歌」を演奏する前に「空の小鳥たち、みんな『ピース、ピース、ピース(peace・平和)』と鳴いています」と言いました。
 戦争のためにウクライナから避難して日本で暮らすグリブさんに、カザルスの平和への思いが響き合うように感じて、胸がいっぱいになりました。
 前述のチェロコンサートのとき、ボーマン先生が、『新聖歌』94番の曲は「鳥の歌」で、クリスマスキャロルだと教えてくださいました。
“小鳥の歌 
 村に町に告げ知らせる
 良い知らせを 
「この世の罪 
 その身に負うために
 生まれ給うた この方こそ
 世の救い主」と”(『新聖歌』94番2節)
 鳥の歌を、世界をつなぐ言葉を、平和を告げる言葉を聞くことができますように。
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