育 児 ・ 介 護 休 業 法 (平成17年4月施行)

 次世代育成支援を進めていく上でも大きな課題となっている育児や介護を行う労働者の仕事と家庭との両立をより一層推進するために、育児・介護休業法が改正されました。施行は平成17年4月1日からです。
 ここでは、改正後の育児・介護休業法の概要を紹介します。

育児休業制度(法第5条〜第9条)

 労働者は、申し出ることにより、子が1歳に達するまでの間、育児休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。
 一定の場合、子が1歳6か月に達するまでの間、育児休業をすることができます。

 ○  育児休業ができる労働者は、原則として1歳に満たない子を養育する男女労働者です。日々雇用される者は対象になりません。
 ○  法改正により、休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者は、育児休業がとれるようになりました。

<改正ポイント>
 新たに育児休業の対象となった一定の範囲の期間雇用者とは、申出時点において、次の(1)、(2)のいずれにも該当する労働者です。
 (1)  同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
 (2)  子が1歳に達する日(誕生日の前日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(子が1歳に達する日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)

 ○  労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、その契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態となっている場合には、上記の一定の範囲に該当するか否かにかかわらず、育児休業の対象となります。

 ○  休業期間は、原則として1人の子につき1回であり、子が出生した日から子が1歳に達する日(誕生日の前日)までの間で労働者が申し出た期間です。
 ○  法改正により、一定の場合には、子が1歳6ヶ月に達するまで育児休業ができるようになりました。

<改正ポイント>
 1歳6か月まで育児休業ができるのは、次の(1)、(2)のいずれかの事情がある場合です。
 (1)  保育所に入所を希望しているが、入所できない場合
 (2)  子の養育を行っている配偶者であって、1歳以降子を養育する予定であったものが、死亡、負傷、疾病等の事情により子を養育することが困難になった場合
 育児休業中の労働者が継続して休業するほか、子が1歳まで育児休業をしていた配偶者に替わって子の1歳の誕生日から休業することもできます。

 ○  申出に係る子の氏名、生年月日、労働者との続柄、休業開始予定日及び休業終了予定日を明らかにして、1歳までの育児休業については、休業開始予定日から希望通り休業するには、その1か月前までに申し出ます。
 ○  1歳から1歳6か月までの育児休業については、休業開始予定日(1歳の誕生日)から希望通り休業するには、その2週間前までに申し出ます。


介護休業制度 (法第11条〜第15条)

 労働者は、申し出ることにより、要介護状態にある対象家族1人につき、常時介護を必要とする状態ごとに1回の介護休業をすることができます(一定の範囲の期間雇用者も対象となります)。期間は通算して(のべ)93日までです。


 ○  介護休業ができる労働者は、要介護状態にある対象家族を介護する男女労働者です。日々雇用される者は対象になりません。
 ○  「要介護状態」とは、負傷、疾病又は身体上若しくは精神上の障害により、2週間以上の期間にわたり常時介護を必要とする状態をいい、「対象家族」とは配偶者、父母、子、配偶者の父母並びに労働者が同居しかつ扶養している祖父母、兄弟姉妹及び孫をいいます。
 ○  法改正により、休業の取得によって雇用の継続が見込まれる一定の範囲の期間雇用者は、介護休業がとれるようになりました。

<改正ポイント>
 新たに介護休業の対象となった一定の範囲の期間雇用者とは、申出時点において、次の(1)、(2)のいずれにも該当する労働者です。
 (1)  同一の事業主に引き続き雇用された期間が1年以上であること
 (2)  介護休業開始予定日から93日を経過する日(93日経過日)を超えて引き続き雇用されることが見込まれること(93日経過日から1年を経過する日までに労働契約期間が満了し、更新されないことが明らかである者を除く)

 ○  労働契約の形式上期間を定めて雇用されている者であっても、その契約が実質的に期間の定めのない契約と異ならない状態となっている場合には、上記の一定の範囲に該当するか否かにかかわらず、介護休業の対象となります。

 ○  法改正により、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回、通算93日までの間で労働者が申し出た期間、介護休業ができるようになりました。

<改正ポイント>
 2回目の介護休業ができるのは、要介護状態から回復した対象家族が、再び要介護状態に至った場合です。3回目以降も同様です。
 対象家族1人当たりの取得日数の上限は、通算して93日までです。

 ○  申出に係る対象家族の氏名及び労働者との続柄、介護を必要とする理由、休業開始予定日並びに休業終了予定日を明らかにして、休業開始予定日から希望通り休業するには、その2週間前までに申し出ます。


子の看護休暇制度(法第16条の2、第16条の3)

 小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得することができます。


 ○  法改正により、小学校就学前の子を養育する労働者は、申し出ることにより、1年に5日まで、病気・けがをした子の看護のために、休暇を取得できるようになりました。

<改正ポイント>
 申出は口頭でも認められます。
 事業主は、業務の繁忙等を理由に、子の看護休暇の申出を拒むことはできません。
 ただし、勤続6か月未満の労働者及び週の所定労働日数が2日以下の労働者については、労使協定の締結により対象外とすることができます。この他の労働者(例えば配偶者が専業主婦である労働者等)を対象外とすることはできません。


不利益取扱いの禁止(法第10条、第16条、第16条の4)

 事業主は、育児休業、介護休業や子の看護休暇の申出をしたこと又は取得したことを理由として、労働者に対して解雇その他不利益な取扱いをしてはなりません。


 ○  事業主に対して禁止される解雇その他不利益な取扱いは、労働者が育児休業、介護休業や子の看護休暇の申出をしたこと又は取得したこととの間に因果関係がある行為です。
 解雇その他不利益な取扱いの典型例として、次に掲げる取扱いがあげられます。
 1  解雇すること。
 2  期間を定めて雇用される者について、契約の更新をしないこと。
 3  あらかじめ契約の更新回数の上限が明示されている場合に、当該回数を引き下げること。
 4  退職又は正社員を非正規社員とするような労働契約内容の変更の強要を行うこと。
 5  自宅待機を命ずること。
 6  降格させること。
 7  減給をし、又は賞与等において不利益な算定を行うこと。
 8  不利益な配置の変更を行うこと。
 9  就業環境を害すること。


時間外労働の制限の制度(法第17条、第18条)

 事業主は、育児や家族の介護を行う労働者が請求した場合には、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働をさせてはなりません。


 ○  請求できる労働者は、小学校就学前の子を養育し、又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用される者を除く)です。ただし、勤続1年未満の場合など、法令に定める一定の要件に該当する者は請求できません。
 ○  請求は、1回につき、1か月以上1年以内の期間について、その開始の日及び終了の日を明らかにして制限開始予定日の1か月前までに申し出ます。


深夜業の制限の制度(法第19条、第20条)

 事業主は、育児や家族の介護を行う労働者が請求した場合には、深夜(午後10時から午前5時まで)において労働させてはなりません。


 ○  請求できる労働者は、小学校就学前の子を養育し、又は要介護状態にある対象家族を介護する労働者(日々雇用される者を除く)です。ただし、勤続1年未満の場合など、法令に定める一定の要件に該当する者は請求できません。
 ○  請求は、1回につき、1か月以上6か月以内の期間について、その開始の日及び終了の日を明らかにして制限開始予定日の1か月前までに申し出ます。


勤務時間の短縮等の措置(法第23条、第24条)

 事業主は、3歳未満の子を養育し、又は要介護状態にある対象家族の介護を行う労働者については、勤務時間の短縮等の措置を講じなければなりません。
 また、事業主は、3歳から小学校就学前の子を養育し、又は家族を介護する労働者については、育児・介護休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置に準じた措置を講ずるよう努めなければなりません。


<育児のための勤務時間の短縮等の措置>

 ○  働きながら育児をすることを容易にするため、3歳未満の子を養育する労働者について、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
 短時間勤務制度
(1)  1日の所定労働時間を短縮する制度
(2)  週又は月の所定労働時間を短縮する制度
(3)  週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度をいいます。)
(4)  労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
 フレックスタイム制
 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
 所定外労働をさせない制度
 託児施設の設置運営その他これに準ずる便宜の供与
 その他これに準ずる便宜の供与の例として、ベビーシッターの費用を事業主が負担する等が考えられます。
 なお、1歳(1歳6か月まで育児休業ができる場合にあっては、1歳6か月)以上の子を養育する労働者については、これらの措置の代わりに育児休業の制度に準ずる措置を講ずることでも差し支えありません。
 ○  3歳から小学校に入学するまでの子を育てる労働者について上記の勤務時間の短縮等の措置を講ずることが、事業主の努力義務として求められています。


<介護のための勤務時間の短縮等の措置>

 ○  働きながら要介護状態にある対象家族を介護することを容易にするため、要介護状態にある対象家族を介護する労働者について、次のいずれかの措置を講じなければなりません。
 短時間勤務制度
(1)  1日の所定労働時間を短縮する制度
(2)  週又は月の所定労働時間を短縮する制度
(3)  週又は月の所定労働日数を短縮する制度(隔日勤務、特定の曜日のみの勤務等の制度をいいます。)
(4)  労働者が個々に勤務しない日又は時間を請求することを認める制度
 フレックスタイム制
 始業・終業時刻の繰上げ・繰下げ
 労働者が利用する介護サービスの費用の助成その他これに準ずる制度
 ○  法改正により、対象家族1人につき、要介護状態に至るごとに1回、通算93日までの間で労働者が申し出た期間、措置が受けられるようになりました。

<改正ポイント>
 介護のための勤務時間の短縮等の措置が受けられる日数は、介護休業と通算して93日までとなります。要介護状態から回復した家族が、再び要介護状態に至った場合には、この範囲で再度措置が受けられます。3回目以降も同様です。

 ○  介護休業の制度又は勤務時間の短縮等の措置の内容については、介護を必要とする期間、回数、対象となる家族の範囲等について法で定められた最低基準を上回るものとすることが、事業主の努力義務として求められています。


転勤についての配慮(法第26条)

 事業主は、労働者を転勤させようとするときには、育児や介護を行うことが困難となる労働者について、その育児又は介護の状況に配慮しなければなりません。


 ○  配慮することの内容としては、例えば、
 その労働者の子の養育又は家族の介護の状況を把握すること。
 労働者本人の意向を斟酌すること。
 就業場所の変更を行う場合は、子の養育又は家族の介護の代替手段の有無の確認を行うこと。
等が考えられますが、これらはあくまでも配慮することの内容の例示であり、他にも様々な配慮が考えられます。


職業家庭両立推進者の選任(法第29条)

 事業主は、職業家庭両立推進者を選任するように努めなければなりません。


 ○  職業家庭両立推進者は、法の規定に基づき事業主が講ずべき措置等を円滑に実施することをはじめ、職場の雰囲気作り等労働者の職業生活と家庭生活との両立を図りやすくするために必要な一切の業務を行います。
 ○  まだ選任されていない企業におかれては、1企業につき1人、本社人事労務担当部課長以上の方等企業全体の人事労務管理について責任を持つ方を選任し、都道府県労働局雇用均等室に届け出てください。