第46回大気環境学会酸性雨分科会Acid Deposition Subcommittee

 

(1)  第46回大気環境学会年会の酸性雨分科会報告

  西川嘉範(大阪府環境情報センター) (2005/9/15)

 「地方自治体における酸性雨連絡会議(ネットワーク)の役割と現状」というテーマで標記分科会が名古屋市で開催されました。酸性雨仲間の集まりの後には国環研の村野さん指名により、酸性雨ニュースに原稿を提出するのが最近恒例になっています。このたびは私に白羽の矢が当ったので報告します。

長崎県、大阪府、愛知県、新潟県、山形県、名古屋市の6自治体からあり、まず、長崎県の森さんから「長崎県酸性雨調査研究協議会」の紹介がありました。長崎県では後で報告のあった大阪府や名古屋市と同様に昭和58年から始まった環境庁(現在環境省)の第1次酸性雨対策調査に参画を契機として酸性雨モニタリングが始まり、その後平成元年度より長崎県酸性雨調査研究協議会を設立し現在に至るまでその運営を継続しておられます。大阪府でも同様に平成元年より「大阪府酸性雨調査連絡会(APSN-OSAKA)」を設立して、梅雨期と秋期の季節調査ですがモニタリングを継続して実施しております。設立当初の大阪の新聞では自治体レベルでの酸性雨モニタリングネットワークを整備したのは全国初と書かれていましたが、長崎でもすでに同じ時期から現在まで活動を継続されてきたことに敬意を表します。

愛知県の原さんからは酸性雨による環境学習の取り組みをとして「こども環境サミット2005」を中心に報告がありました。愛知県でも酸性雨調査は古くから実施されていたことから酸性雨を題材として取り上げられたのではないかと思います。ほん1ヶ月余り前のホットな話題であり、模擬酸性雨の生成実験や土壌への影響実験などの工夫は他の自治体での環境学習のヒントになったのではないかと思います。

新潟県の家合さんからは平成15年度から開始した新潟県酸性雨研究連絡協議会の共同研究から降雨・降雪中の有機汚染物質に関する報告がありました。新潟県はご存知のとおり福崎さんや大泉さんが酸性雨研究センターで活躍され、まさに日本の酸性雨研究の拠点であるともいえます。家合さんのお話は始めて聞きましたが、酸性雨のより研究的な領域で外部資金などを受けての研究展開、ちょっと羨ましく感じました。

山形県の小野さんからは比較的新しく平成13年に設立された「やまがた酸性雨ネットワーク」の報告がありました。多くの自治体において酸性雨に対する風当たりの強い状況の中にあって環境学習・環境教育的要素を持った山形の取り組みは愛知県の例と共に一つのキーワードになるかもしれません。

名古屋市の酒井さんからは大気環境学会のご当地ということもあり、これまでの酸性雨調査の取り組みについて報告がありました。湿性及び乾性の環境モニタリングから土壌・植生や金属腐食の影響モニタリングまでに及ぶ広汎なものでありました。

自治体で酸性雨に取り組むきっかけになったのは多くの場合環境省の第1次酸性雨対策調査であったのですが、その後、湿性沈着→乾性沈着→土壌・植生等の影響→モデリングへとその技術的関心事項は多岐に及んでおり、自治体や全環研のネットワークの取り組みがその下支えをしてきました。4段ろ紙法では全環研の東海・近畿・北陸支部の取り組みが全国調査に、そしてさらに東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)に取り入れられており、パッシブ法では東海・近畿・北陸支部や北海道・東北支部の取り組みが全国調査に影響を及ぼしてきました。

いま、自治体の環境研究部門は逆風にさらされているなかで、酸性雨はネットワーク活動を通じて多くの実績を残してきました。これから新しい形のネットワークを模索すると共に今あるネットワークの火が消えないで受け継がれることを期待しています。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――

テーマ:地方自治体における酸性雨連絡会議(ネットワーク)の役割と現状

世話人:北村洋子(宮城県保健環境センター)、玉置元則(兵庫環境創造協会)、

福崎紀夫(新潟県保健環境科学研究所)、村野健太郎(国立環境研究所)

座長:大泉 毅(酸性雨研究センター)、皆巳幸也(石川県立大学)、平木隆年(兵庫県立健康環境科学研究センター)

 

1 長崎県酸性雨調査研究協議会の現状と今後

     森 淳子、横瀬 健、八並 誠(長崎県衛生公害研究所)

2 大阪府酸性雨調査連絡会(APSN-OSAKA)について

     西川 嘉範(大阪府環境情報センター)

3 愛知県における酸性雨調査と酸性雨による環境学習の取り組み

  (こども環境サミット2005 フィールドトリップを主催して)

     原 浩子(愛知県環境調査センター)

4 降雨・降雪中に含まれるPOPs等微量物質の動態及び起源の解明に関する研究―新潟県酸性雨研究連絡協議会の共同研究―

     家合浩明(新潟県保健環境科学研究所)

5 やまがた酸性雨ネットワークの活動について

     小野保博、情野 彰(山形県環境科学研究センター)

6 名古屋市における酸性雨調査の取り組みについて

     酒井哲男、中島寛則、山神真紀子、鬼頭 圭、北瀬 勝(名古屋市環境科学研究所)

 

酸性雨研究会ニュースに戻る

 

トップページに戻る