(1)第21回全国環境研究所交流シンポジウム参加報告
山神真紀子(
平成18年2月22日のシンポジウムの初日、会場である国立環境研究所大山記念ホールの中に入った私は、村野先生に手招きされました。近づいて挨拶をすると、「今回、感想文を提出しないと破門だから。」と言われました。実は、私は11月に行われた東海近畿北陸支部の酸性雨情報交換会の感想文を書く予定になっていたのですが、催促されてから書けばいいかなと思って、そのままこの日を迎えたのでした。
そういうわけで、いつも以上に真面目にメモを取りつつ、シンポジウムに参加しました。酸性雨関連は2日目の23日に行われ、全部で10題の講演がありました。個人的に興味深かった講演をいくつかご紹介します。まず、千葉県環境研究センターの横山さんがご講演された“千葉県における大気中ガス状アンモニア濃度分布”は、パッシブサンプラーによって千葉県内37地点で測定された結果の報告でしたが、私自身このような詳細なアンモニアの濃度分布は初めて見たということもあり、畜産地域でかなり高濃度になっている様子や、わずか2,3kmで20倍の濃度差があり、ばらつきが大きいなどといった特徴が興味深いものでした。私は以前データ処理をしていて、アンモニアだけが他の大気汚染物質とは違う傾向が見られ、理由が分からなかったのですが、この講演でその理由がわかりました。
また、宮城県保健環境センターの
さらに、沖縄県衛生環境研究所の友寄さんがご講演された“九州地方における酸性雨調査結果”は、大陸に近く、火山もある九州地方が、全国に比べて酸性物質の降下が多いのか?というテーマについて、一目でわかる結果を示し、さらに月データの地点間の相関をとることにより、どの範囲までが相関が高いのかというのがよくわかり、データのまとめ方についてもわかりやすく、勉強になりました。
酸性雨問題は地球規模の問題といっても、我々地方自治体の研究者は、地域の汚染を反映しているという視点で調査をしなければ、地方の税金で調査を行うことの理解が得られない状況です。そういった事が明らかになるような調査を今後していかなければならないと強く感じた、今回のシンポジウムでした。
(2)第21回全国環境研究所交流シンポジウム参加報告
吉牟田 博子(佐賀県環境センター 大気課)
平成18年2月22日から23日まで国立環境研究所において開催された第21回全国環境研究所交流シンポジウムに参加した。国立環境研究所と地方環境研究所とのC型共同研究「日本における光化学オキシダント等の挙動解明に関する研究」の交流研究会と開催時期を合わせて頂いたことから、共同研究参加機関から多くの発表があり、地方環境研究所の研究成果として、多くの方に発表できたことは有意義であった。発表者からのみならず
会場からも「研究成果が行政施策に活かされるためには」あるいは「県民、市民に研究の意義を理解してもらうためには」と言った発言があり、三位一体改革による行財政改革や逼迫した財政状況など地方環境研究所を取り巻く環境の厳しさを窺わせる風景であった。
酸性雨セッションでは、「酸性雨・越境大気汚染問題の現状と今後」と題して発表があり、東アジア地域のモニタリングネットワークとして、今後、発展拡大していく必要性および方向性が示された。将来、中国や韓国との研究者とも連携が深まり、日本においても発生源インベントリーの研究も進み、大気汚染予報システムの精度が向上していくことと思われた。村野先生が気象予報士よろしく、大気汚染予報の解説をしているのがテレビ画面に映し出されているのに驚いたら、眼が覚めた。近い将来実現することを期待したい。
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第21回全国環境研究所交流シンポジウム・プログラム
「大気環境研究の現状と将来 −都市大気汚染・越境大気汚染・酸性雨−」
平成18年2月22日(水)〜23日(木)
於 国立環境研究所大山記念ホール
2月22日(水)
13:15-13:20 開会挨拶 国立環境研究所理事長 大塚柳太郎
13:20-13:25 来賓挨拶 環境省総合環境政策局環境研究技術室長 宇仁菅伸介
13:25-13:45 特別講演 (座長:大原利眞)
「調整中」
○若松伸司(国立環境研究所)
セッション1: 光化学オキシダント (座長:大原利眞)
(1)13:45-14:00 「オゾン等の予報システムの現状と課題について」
○菅田誠治(国立環境研究所)
(2)14:00-14:15 「日本における光化学オキシダント等の挙動に関する研究」
○山川和彦(京都府保健環境研究所)
(3)14:15-14:30 「大阪平野におけるオキシダント濃度の解析-海風前線の影響について-」
○吉村 陽(兵庫県立健康環境科学研究センター)
(4)14:30-14:45 「夜間にオキシダント濃度が下がらない原因について」
○三原利之 (岐阜県保健環境研究所)
(5)14:45-15:00 「平均気温、日照時間とオキシダント濃度の長期変動について」
○田中孝典(島根県保健環境科学研究所)
(6)15:00-15:15 「光化学オキシダント濃度の上昇に対する高層大気の影響」
○山崎 誠(福岡市保健環境研究所)
(7)15:15-15:30 「ヒートアイランドが発生した時の影響」
○飯村文成 (東京都環境科学研究所)
15:30-15:45 休憩
(8)15:45-16:00 「オキシダント濃度月別出現パターンの広域的分布」
○森 淳子(長崎県衛生公害研究所)
(9)16:00-16:15 「オゾンの高濃度現象と比湿(湿度)および 7Beとの関係について」
○大石興弘他(福岡県保健環境研究所)
(10)16:15-16:30 「光化学オキシダントとNOx・SPMとの関連及びウイークエンド効果の検証」
○大野隆史(名古屋市環境科学研究所)
(11)16:30-16:45 「光化学オキシダントの農作物に及ぼす影響」
○米倉哲志 (埼玉県環境科学国際センター)
セッション2: SPM・有害物質 (座長:畠山史郎)
(12)16:45-17:00 「2004年春に沖縄で捕集された大気エアロゾルの有機組成分析」
○佐藤 圭(国立環境研究所)、李紅(中国環境科学研究院)、
畠山史郎(国立環境研究所)
(13)17:00-17:15 「宮城県におけるPM2.5自動測定結果について」
○中村栄一(宮城県保健環境センター)
(14)17:15-17:30 「群馬県におけるSPMの組成と挙動」
○田子 博(群馬県衛生環境研究所)
(15)17:30-17:45 「都内大気中VOCの多成分モニタリングとその排出源の推定について」
○星 純也(東京都環境科学研究所)
(16)17:45-18:00 「離島及び山間地における大気中POPs及びPAHs濃度の季節変動」
○村山 等(新潟県保健環境科学研究所)
18:30-20:00 懇親会 (国立環境研究所食堂)
2月23日(木)
セッション3: 酸性雨 (座長:村野健太郎)
(17)9:00-9:15 「千葉における大気中ガス等アンモニア濃度分布」
○横山新紀(千葉県環境研究センター)
(18)9:15-9:30 「パッシブ簡易測定法(N式)による酸性ガスの測定」
○西川嘉範(大阪府環境情報センター)
(19)9:30-9:45 「全国酸性雨調査(47)第4次調査第1年次調査結果 -フィルターパック法による
粒子及びガス成分濃度-」
○山本匡利 (兵庫県立健康環境科学研究センター)
(20)9:45-10:00 「全環研乾性沈着推計ファイルの開発と沈着速度分布図の作成」
○野口 泉(北海道環境科学研究所)
(21)10:00-10:15 「フィルターパック法を用いた降水中主要成分の洗浄比観測」
○福崎紀夫(新潟県保健環境科学研究所)
10:15-10:30 休憩
(座長:清水英幸)
(22)10:30-10:45 「酸性雨自動測定結果の評価指標と降水特性」
○仁平 明(宮城県保健環境センター)
(23)10:45-11:00 「降水成分に反映される地域汚染」
○
(24)11:00-11:15 「富山県における酸性雨の経年変化について」
○溝口俊明(富山県環境科学センター)
(25)11:15-11:30 「九州地方における酸性雨調査結果」
○友寄喜貴 (沖縄県衛生環境研究所)
(20)11:30-11:45 「酸性雨・越境大気汚染問題の現状と今後」
○村野健太郎(国立環境研究所)
11:45-12:00 閉会挨拶 国立環境研究所理事長 大塚柳太郎
施設見学会 14:00-16:00 (希望者は大山ホール前に集合)