講演会「環境と文化−ドイツ、オーストリアの環境−」報告

03/3/27、京都にて)        

                                          玉置元則

平成15327()、午後、京都市の佛教大学四条センターで、表記講演会を開催した。

主催は「環境と文化の会」であったが、演者の一人が村野氏でもあり、内容的には共通の課題もあったため、共催団体として酸性雨研究会も名前を連ねた。小牧市から駆けつけてくれた吉田氏やたくさんの資料を持参して滋賀県から参加してくれた坂口氏を含め50名近くの参加者があった。 

会を主催した「環境と文化の会」の代表者である溝口次夫氏(仏教大学)の本講演会の位置づけは以下のようであった。「私はこの3年間ドイツのフライブルグ市を中心にヨーロッパのいくつかの国を訪れ、それぞれの国の住民の自然保護、環境保全に対する考え方、行動を見てきました。ヨーロッパの多くの住民が環境についての意識が日本人に比べてはるかに大きいことが分りました。それぞれの国の地域の思想、文化、歴史、伝統などによるものと考えられます。今回はそのあたりも含めて、お二人の講師にそれぞれの考えをお話しいただきたいと思っています。」

 最初の演者はカール・ハインツ・ファイヤヘアト教授(神戸山手大学)で、「ドイツと日本の環境観の違い」という演題で講演された。カール先生は1947年ドイツ連邦共和国ニーダーザクセン州生まれで、ハノーファ工科大学で理学博士を取得され、1977年、ドイツの化学会社「BASF」に入社し、1981年「BASFジャパン」に赴任され、研究開発企画室の責任者として6年間東京に滞在された。その後、本社のエコバランス・プロジェクトに携わり、1997-1999年、エコ効率分析およびエコバランス・グループの責任者となったが、2000年からは再来日し、神戸山手大学人文学部環境学科教授をされている。現在は製品の環境負荷および金銭的負担の分析方法を研究されている。

主な講演内容は次のようであった。「環境を配慮する循環型社会を構築していくためには、技術的効率の向上、新法制度の確立および経済的整合性以外に、今までのライフスタイルや価値観を見直す必要があると指摘されている。最近はドイツが「環境先進国」として日本に広く知られ、常に「お手本」とされている。しかし、ドイツ人のライフスタイルを反映している例の省エネルギー対策を模範にしてよい結果を生み出すことは保証できない。」 最初にドイツ連邦議会の決議「国内における原子力発電所を今から20年以内に完全に廃止する」という産業と社会にとって大きな挑戦にどう対応すべきかを説明された。そのために、余熱利用技術の応用ならびに省エネルギー住宅の建設が重要であることを示された。また、これを支えるために必要な、製品の原料調達から製造、使用、廃棄にわたって環境への影響を評価するツールであるライフサイクルアセスメントの計算方法とその計算例を示された。そして持続可能な発展のためには経済、環境と社会の三本柱が必要であることやBASF式「エコ効率分析」およびISO14040についても説明された。最後に環境負荷と金銭的負担との関係を図示できるソフトを紹介し、具体的例でもって、「埋め立てより焼却では鉱物繊維のエコ効率はよくはならない」ことなどを示された。

次に村野健太郎主任研究官(独立行政法人国立環境研究所)が「オーストリアとドイツの酸性雨・大気汚染への取り組み」と題して講演された。村野先生は酸性雨研究の仲間であり、ここで改めて紹介するまでも無いが、1946年鹿児島県に生まれ、1975年東京大学理学系博士課程を修了し理学博士を取得されており、現在は国立環境研究所大気圏環境研究領域酸性雨研究チームに所属されている。

主な講演内容は次のようであった。「オーストリア、ドイツ見聞記、オーストリアとドイツの酸性雨・大気汚染の取り組み、北半球大気汚染研究の現状について概説した。欧州では越境大気汚染問題の研究が行われているが、酸性雨は窒素化合物(窒素酸化物、アンモニア)の問題や粒子状物質の問題に移っている。ウィーンは目線より上は文化財の宝庫であるが、路上を見るとゴミが多くて、日本の方が清潔である。ドイツは大気汚染問題に関する研究者層が厚くて、種々の研究を勢力的にやっている。米国環境保護庁の場合モデルによる大気汚染対策評価は数人の研究者により広く行われていた。」この中で、環境問題の中における酸性雨問題の歴史的経緯と現在における客観的な位置づけを説明されるとともに、酸性雨研究で開発されたモデルの紹介とそれが現在の環境問題の中でどのように活用されているか等も説明された。また、環境と文化についての独自の見解も示された。

 

酸性雨研究会ニュースへ

 

トップページへ