44回大気環境学会酸性雨分科会講演会報告

 

酸性雨分科会講演会は10月24日の夕方に以下のテーマで開催された。

“大気汚染にかかわる野外観測と輸送変質モデルの相互検証“

講演

対流圏物質輸送モデルとその大気汚染物質観測への応用

鵜野 伊津志(九州大学応用力学研究所)

1次大気汚染物質とオキシダント濃度の関係

近藤  明(大阪大学大学院工学研究科)

六甲山における酸性沈着機構解明のためのフィールド調査

平木 隆年(兵庫県立健康環境研究センター大気環境部)

能登半島における大気汚染物質の沈着量とその標高依存性

皆巳 幸也(石川県農業短期大学生物生産学科)

 

参加者は70人余りであり、多数の分科会が競合して存在する大気環境学会の体制の中では参加者数としては満足のいくものであった。

最初に九州大学応用力学研究所の鵜野教授が東アジア地域における大気汚染物質輸送、あるいは黄砂の動態を酸性雨長距離輸送モデルによりきわめてよくわかるように説明されました。また今後問題になるであろう黒色炭素の長距離輸送に関しても観測結果とモデルの結果が合うという結果を述べられました。彼の言い分によるとモデルが精度高くなってくれば、フィールド観測が不用となる。モデルは大気汚染物質の汚染状況を反映するものになってきていると思いました。

次に大阪大学の近藤助教授がオゾン問題について話されました。オゾンは今後再度大気汚染の中心課題として取り上げられる可能性があります。首都圏地域においては窒素酸化物の放出量が多いことによってオゾンの生成が高く、オゾンに関しては東アジア地域からの越境輸送もあり、非常に高いレベルを保っている。近藤先生はオゾンの問題に関しましてモデルで解明されてきました。関西地域を三つのブロックにわけて、それぞれの地域でどういうことが起こっているかを解明した後、それぞれの地域でオゾン削減対策が違うということを示されました。ある地域では窒素酸化物の削減が意味があり、揮発性炭化水素の削減は意味がない。ある地域ではその逆のことが起こるというように地域特性に応じて、対策が異なるということをモデルの結果としてお示しになりました。

次に兵庫県立健康環境科学研究センターの平木さんが兵庫県における酸性霧の生成について、現在行われているフィールド調査を中心にお話をされました。

次に石川県農業短期大学の皆巳さんが、地元で行っている山を利用しての酸性雨の沈着に関する研究を述べられました。残念ながら鵜野教授が最初の講演で中座されたので総合討論はできませんでしたが、今後モデルとフィールド観測研究がいかに手を取り合って行くかに関してみんなそれなりの考えを抱かれたことと思います。     

(世話人:独立行政法人 国立環境研究所 村野健太郎)

 

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