天津便り その6( 04/03/09)          福 山 

 

マンションの窓からよく見える位置に何かの役所らしい建物があって、屋根の上に国旗(五星紅旗)が24時間はためいています。それを見て風向きと大体の風速を知ることができます。冬になると強い北風が多くなり、そんな日に外に出ると大抵喉の具合が悪くなりました。昨年暮れには、一時帰国の航空券の手配のため、片道20分ほどの旅行社に行ったところ、こちらに来てから初めて風邪をひいてしまったこともありました。ところが、1月30日から2週間一時帰国して天津に戻ると、旗の向きは正反対、風が南風に変わっていました(添付の写真参照)。もう冬は過ぎた、となぜかうれしくなりました。そして、2月24日、まだ高い位置にある太陽が直視できて、これまで見たことのないような異様な色(黄色に近い)だったのでちょっとびっくり。次の日 TVで日本のニュースを見ていたら、「昨日午後黄砂が西日本に飛来しました。」とのことで、ルートは天津の南方を通過したようでした。平年より早いそうです。当然とはいいながら、季節は確実に春に向かっています。

2月23日には、千葉大学の竹内延夫氏が訪ねて下さり、私の部屋に一泊して行きました。竹内氏には安徽光学精密機械研究所の研究員が同行し、翌24日一緒に天津市環境観測中心を見学しました。実を言うと、ここには昨年秋大学院のスタッフ・学生とともに既に一度来たことがありました。しかし、そのときの一行の中で中国語が解らないのは私ともう一人だけ、ということで、大学院中国人教官による日本語への通訳はごく断片的にしかされず、ほんの概要をおぼろげにつかんだだけという結果でした。今回は英語でコミュニケートできたのでかなり情報が得られました。竹内氏の目的はここで稼動している DOAS を見ることことでした。天津だけで DOAS が8台も動いているとのことで驚きました。「日本では routine で動かしている DOAS など1台もないですよね」、と竹内氏に訊ねると「そのとおりです。」とのことでした。話は前後しますが、先学期(1月2日に終了)の期末試験に代えて、学生たちにレポートを課しましたが、課題の一つに「天津市の大気にはどのような汚染物が含まれている可能性があるか? それらの発生源を知るためにはどのような観測をするのが適当だと考えるか?」というのを出したら中国人の学生達がいろいろ調べてくれました。上記見学や学生レポートで得られた情報についてはまとめて次回の便りでお知らせしたいと思います。

2月中旬から新学期が始まりました。昨年9月には日本人5人、中国人3人あわせて8人の学生がいたのですが、その後日本人3人が退学したり、転科したりして今は全部で5人になってしまいました。今後は修士論文作成が主になりますけれど、彼らが選んだテーマは

     天津市周辺の水資源の状況と将来への提言

     天津市周辺におけるごみ処理とリサイクルの現状と望ましい姿

     天津市が将来もつべき交通体系

     中国の企業における環境への配慮−サービス業を中心として

     中国における sustainable industry の可能性

といったもので、私が出る幕はなくなりました。最初の2つが日本人学生のテーマで、私もアドバイザーという形で論文作成をサポートすることになりました。そんないきさつで今学期予定されている私の講義は5回だけとなって、楽になったと思っていたら何と日本人の1年生(昨年9月入学)に数学を教えてくれ、と言われてしまいました。中国では文科系でも数学がかなり重視されていて undergraduateの段階で講義時間も多く設定されているのに対して、日本人の文科系学生は微積分もろくにできないから、という理由でとくに補講をするのだそうです。化学出身の私がまさか数学を教えるとは全く予想外でいささかとまどっています。

 まもなく滞在予定期間の1/3となります。中国語は全く上達しません。とくに聴くののが全然わかるようにならず悩みの種です。例えば、「チー」と聞こえる音が4種類(qi, ji, chi, zhi)もあるし、qu, ju とも区別しにくいし、その上声調の違いもあってもう絶望的です。全く声調というのは恐怖のタネです。昨年出発前に中国語の研修を受けていたとき、よく使う表現として「請問(Qing wen)・・・=お尋ねしますが・・・」というのを習いました。そのとき、この wen は第4声(下降調)ですが、それを間違って第3声(低音調)で発音すると「請吻 =キスしてください」になって大変なことになるよ、と注意されました。こちらに来てからものは試しと思って、中国人の女子学生に「Qing wen(第3声)」と言ってみたら「ヒャー」と言って手を激しく横に振りました。それで自分の発音が正しかったことはわかりましたが、そばにいた定方教授から「セクハラで逮捕されますよ。」と警告されてしまいました。こんなふうにこちらが話す片言は通じることが多いのですが、それに対する先方の応答が全くわからないのでプッツンか、相手によっては英語に移行するか、というありさまです。

 それではまた。

 

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