(3)第17回酸性雨東京講演会に参加して     野中 卓 (和歌山県環境衛生研究センター)             
               

 私は初めて酸性雨講演会に参加したのですが、講演内容が多岐にわたって充実しており大変参考になりました。今回のテーマは「越境大気汚染研究と地方自治体の酸性雨研究と体制」であり、前半の「越境大気汚染」では解析方法の複雑さに自分の勉強不足を痛感し、後半の「酸性雨研究と体制」では和歌山県との違いに戸惑いを感じました。

 まずは前半ですが、EAGRIDHYPACTRAMS…と聞いたことのない横文字が飛び交い、地図上に解析結果が分かりやすく表示されるのには圧倒されました。そして何よりも解析に用いたデータの膨大さには驚きです。基本的な分析結果の集まりでもすばらしい研究の基礎データになりうることに安心し(?)、自分の仕事も誰かの解析に役立ってるのかもしれないなと思うとモチベーションが上がりました。

続いて後半では、東京都と長崎県の酸性雨研究体制に関しては身につまされる思いでした。外部委託に共同研究、そして県内研究機関の連携など、和歌山県でもよく話が上がっており、他府県の実情をお伺いできたのは今後の参考になりました。

 参加された方々は気さくな方が多く、若輩の私にもいろいろと声をかけていただきました。今回、残念ながら懇親会に参加できなかったのですが、今後ともよろしくお願いいたします。

 

(2)第17回酸性雨東京講演会に参加して      中込和徳 (長野県環境保全研究所)                                   

 去る平成17年3月3日に東京都環境局職員研修所において開催されました、第17回酸性雨東京講演会に参加しました。今回は、「越境大気汚染研究と地方自治体の酸性雨研究と体制」というテーマで、越境大気汚染研究に関する演題が3題、地方自治体の酸性雨研究と体制に関する演題が2題でした。私は、昨年度の異動で初めて研究所勤務となりました。幸いにも、鹿角孝男循環社会チームリーダーのご指導のもと、国立環境研究所の村野健太郎先生や向井人史先生と、降水中の鉛安定同位体比の挙動と越境大気汚染に関する共同研究をやらせていただいております。その意味でも、今回の越境大気汚染研究に関する講演は、非常に身近なテーマで、大変勉強になりました。また、地方自治体の酸性雨研究と体制に関する講演は、同じ地方自治体の現状、特に、様々な課題や問題点が、具体的に、わかりやすく示され、大変参考になりました。

 最初の神成陽容先生の講演は、二酸化硫黄をはじめとした4区分の大気汚染物質について、中国をはじめとした東アジア地域での発生量を経緯度0.5度メッシュで推計されたお話でした。これらデータは、大気汚染物質の長距離輸送シミュレーションモデルによる長距離越境大気汚染研究の基礎データとして不可欠なものですが、講演の中で、畜産農業起源のNH3をはじめ、人為起源のNMVOC等の、中国からの排出量が非常に大きいという指摘は、大変印象深く、越境大気汚染研究の必要性をあらためて強く感じました。また、MICS-Asia-PhaseUにより、共通の排出量データを使ったモデル間の相互比較検討が進められているというお話も、とても興味深かったです。

 続いて、村野健太郎先生の講演は、大気汚染物質の長距離輸送シミュレーションモデルを用いて、東アジアにおける硫黄化合物及び窒素化合物について、どこから発生したものがどこへ沈着するのかを解析されたお話でした。日本に沈着する大気汚染物質の発生源の内、中国の占める割合が非常に高く、特に硫黄化合物では半分近くに達するという結果をお聞きし、越境大気汚染研究の重要性をあらためて強く感じました。また、モデル又はモデラーによって、中国から日本への寄与率がかなり異なるという点は、モデル研究の抱える難しさを象徴的に現していると感じました。

 越境大気汚染研究に関する講演の締めとして、大泉毅先生から、ロシアの東シベリア及び沿海州地域における、大気汚染物質の貴重な観測結果が報告されました。ロシアのこれらの地域は、全体に降水量が少なく、降水中の汚染物質濃度は日本と同程度ですが、沈着量としては、日本より少ない傾向にあるという特徴がよく分かりました。また、観測地点のきれいな写真が印象的でした。

 地方自治体の酸性雨研究と体制に関する講演の最初に、鎌滝裕輝先生から、東京都における、酸性雨の調査・研究の状況について講演がありました。東京都においては、公害問題としての酸性雨研究のウエイトが、相対的に年々下がる傾向にあるとの報告がされました。

 続いて本講演会の最後に、森淳子先生より長崎県における研究所改革の状況について報告がなされました。長崎県では、ルーチン業務は全面的に民間委託となり、研究所の機能としては、企画情報・教育分野のウエートが高まっているとのお話でした。また、中国大陸からの影響を最も間近に受け、対馬や五島といったリモート地域といった、長崎県の地理的特徴を生かした研究の重要性がよく分かりました。また、酸性雨と地球温暖化は、化石燃料の大量消費という同一の根本原因によるという指摘はとても印象的で、地球環境問題としての酸性雨研究のあり方の道しるべになるように感じました。さらに、大学院通学が職免となり、国際学会への旅費も支給されるなど、権利獲得の先進的な取り組みがなされてきたことに驚嘆しました。

 本講演会を通じて得られたものは大きく、ぜひ、今後の業務等に生かしてきたいと思いました。若輩者ですが、今後とも、よろしくご指導のほど、お願いいたします。

 

(1)  第17回酸性雨東京講演会報告  大原真由美(広島県保健環境センター)

日時:200533日(木)13:2016:50

場所:東京都環境局職員研修所(東京都千代田区外神田1-1-6

前半は

     東アジアにおける大気汚染物質の発生源インベントリー

            東アジアにおける大気汚染物質のソースリセプター解析

            ロシアの東シベリアおよび沿海州地域での大気汚染物質観測

についての発表があった。

発生源の把握、ソースリセプターモデル、実データでの検証、将来予測、さらには、明日の天気への応用には、これらのことをより精度よく発展的に行う必要があり、これらは、S,Nだけでなく、VOC、温暖化に関与しているメタン等、全てに関わってくることであり、さらなる研究推進が必要である。

後半は、東京都、長崎県からの研究体制の発表があった。

全国の自治体で、研究体制が見直されている中で、これからの研究体制の方向が試行錯誤で、苦労している状況が伺えた。

17:00過ぎから、懇親会が開かれた。縦長の居酒屋だったため、全員が話をすることは難しかった。懇親会の時にいつも感じるのは、立食にしてもらえないかなあ、と、いうことである。今回の会場は時間に追われ、質問がしにくい感じだった。

いつも私は聴衆の側にしかいませんが、毎年、会場の計画、世話、本当に、関係者の皆様、ありがとうございました。

最後に、環境問題が解決する時代は人間が生きている限りありえないと思う。新しい物質を人間が追い求め、つくり続ける限り、新しい汚染が発生すると、思います。

 

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