針江生水(しょうず)の郷 エコツアー(4月9日)報告

(主催:滋賀県(社)新旭町観光協会運営:針江生水の郷委員会)

 

●針江生水(しょうず)の郷 エコツアー(4月9日)報告  平本幸子((財)ひょうご環境創造協会)

  酸性雨メールニュースNo.102で既に2件報告がありましたが、私も滋賀県新旭町のエコツアーに行ってきましたので、少し感想などを書きたいと思います。

 玉置さんや一緒に行った同僚の1人はNHKの番組を見ていたそうですが、私は何も知らずに、ちょっとおもしろそうなので行ってみようかなという軽い気持ちで参加しました。当日は小春日和のとてもいい天気で絶好のピクニック日和でした。こんな田舎町のツアーだし、いくらNHKで紹介されたと言っても、参加者は私たちのグループくらいだろうと思っていたのですが、集合場所には約20人もの参加者が集まっていました。親子連れからご夫婦で参加された方、また、NHKの番組に感動しお一人で参加された方など参加者の顔ぶれもさまざまでした。

 新旭町をのんびり散策しながら地元のボランティアの方が丁寧にガイドをして下さいました。地元の方はみなさんとても親切で川端の水を私たちツアー客が自由に飲めるようにコップまで用意して下さっているご家庭もありました。新旭町はいわゆる古き良き日本の雰囲気をもった、とてものどかな町で、ここだけ時間がゆっくり流れているような気分にさせられました。 私の感覚では、たとえ庭先だけでも観光客が自宅の敷地内に入ってくるなんてとても考えられませんが、新旭町ではそれがごく自然に行われていて、とても暖かいもてなしをしていただきました。多くの方々の努力とご理解があってこそ成り立っているツアーなんだなぁと感心してしまいました。

 針江の水路にはコイやカモがゆったりと泳ぎ、地元の人はその水を上手に利用して生活しています。針江の人たちは自然とうまく共生しているという印象を受けました。私はコイは泥だらけの池にすんでいるイメージがあったのですが、地元の人に聞くと、コイが水路を泳ぐことで水が適度に撹拌され、きれいな状態に保てるとのことでした。物質的なものでは満たされない豊かな生活がここにはあるような気がします。いつまでも新旭町がのどかな雰囲気のまま変わらずにいてくれたら、と思いました。

 約2時間30分のツアーを終え、帰りの電車に乗ると、私や同僚達は歩き疲れてすっかりいい気持ちで寝てしまいました。行きの電車の中では京都で途中下車して円山公園のしだれ桜を見ようと話していたのですが、とてもそんな気力はありませんでした。ところが玉置さんは元気たっぷりで帰りの電車でも一睡もせず、三宮で下車され、お嬢さんと王子動物園の夜桜の通り抜けに行かれるとのことでした。年齢的には私たちの倍(?)くらいのお年なのに、体力的には私たちよりかなりお若いようですね・・・。

 

●里山、命めぐる水辺・北琵琶湖「新旭・針江地区」を訪ねて   玉置元則((財)ひょうご環境創造協会)

 琵琶湖の西岸の奥まった一角、針江大川の河口に新旭町という奇跡みたいな小さな町があります。

この話の発端は2月28日に酸性雨研究会の滋賀県の阪口さんにお送りした一編のメールから始まります。「つかぬことを伺いますが、ご存知であれば教えてください。この1−2ヶ月ほどの間に、NHKの同じ番組を4度見ました。「映像詩 里山、命 めぐる水辺」というタイトルです。内容は琵琶湖周辺の水辺(水郷)で三五郎さんという川漁師の方を通して見る四季の景色です。魚を採っていたり、鳥と共生していたり、家の中まで水を引き入れていたり、町の中の川を掃除していたり、小さな魚が孵化して琵琶湖まで行って成長し戻ってきたり、という小1時間の番組です。1-2年前もこれに似た番組(棚田、琵琶湖との行き来など)を見た記憶がありますから、姉妹作か、シリーズ編かもしれません。知りたいことはその具体的な場所です。番組の最後の協力欄には、地名として、米原町醒ヶ井、新旭町と安土町が出ています。これには旧名が含まれていますから、製作は少し古いのかもしれません。また、地図上ではこの三地点はけっこう離れており、私のイメージとは乖離しています。三五郎さんの活動(生活)されている場所はどのあたりでしょうか。手がかりがなければ、NHKに聞こうかとも思いますが、阪口さんの方で何か教えていただける情報がないかと思い、お願いした次第です。よろしくお願いします。」後から考えれば、これは、心ならずもNHKの受信料を払っているのですから、最初にNHKに問い合わせるべき内容でしたが、この間のNHK−朝日新聞バトルについて、朝日派の私としては頭を下げて聞く気は毛頭ありませんでした。同じ番組を4度も見た最後は予告なしの番組変更であり、おそらくラグビー中継の審判・朝日新聞ロゴの問題にからんでのことかと思いました。しかし、愚痴を言えば、かの朝日新聞も紛失したバックナンバー取り寄せの問い合わせに、2ヶ月も放置したあげく、お詫びの一言もなく、「大阪本社に聞いてください」という薄情さです。それに引きかえ(何も引きかえる必要はないのですが)阪口さんは親切でした。間髪を入れず返事をくれました。「ご無沙汰しておりますがお元気でお過ごしのご様子なによりと存じます。お尋ねの三五郎さんの詳細は下記の通りです。住所:高島市新旭町針江550、氏名:田中三五郎。なお、三五郎さんは、自転車で転んで現在入院中です。先ほど奥さんに電話で聞いたら、まだ病院におりますとの事でした。取り急ぎお返事まで。」 え?もしかしたら、お知り合いかと思って、阪口さんに電話したら、全然知らないけど、ということでまったくの親切心からここまで調べてくれたのです。しかし、それに対して私はまったくの恩知らずで、「ありがとうございました。さっそくの情報で、感謝しています。すぐということではないし、特に三五郎さんに会わなければということでもなく、映像の場面に立って見たいと思ったものですから。暖かくなったら、周辺の散策に行っています。」と間抜けな対応をしていました。さらに阪口さんから、追い討ちがかかりました。「琵琶湖の漁師の三五郎さん、自転車で転んだがやっとベットに座れるようになったそうです。 手元にあった資料、協会あて送りましたので見てください。お元気でお励み下さい。」これでほとんど退路が絶たれました。さらに、完全に退路を断たれるメールが来ました。「今、この前の雑学の話を聞いていたところです。私もNHKの琵琶湖の番組は2回観ました。ぜひ、田中三五郎さんちに行きたいです!!あんな家に住みたい。野外学習1回目は田中三五郎さんちでどうでしょう?春だし天気もいいですし。」私の協会の勉強会のメンバーからです。「もう、やけくそや」と思って、当協会の酸性雨ニュース(電子版)の100人目の会員である平本さんに相談して突如実行することになりました。最初の時点で興味を持っていただいた、環境技術学会事務局長の金子さん、産総研の本庄先生、谷尾さんと総勢7名で、平本さんが申し込んでくれた4月9日の現地主催ツアー(約20名)に参加しました。後から考えたらこのツアーに参加できたことはきわめてラッキーでした。「このツアーに参加せへんかったら、どないして見て回るつもりやったん?」と非難まがいの罵声を浴びるほど、私は何の計画性もなく、行けば何とかなるだろう、と思っていたのですが、本当は何ともどうともならないのです。すごく広いエリアだし、交通至便にほど遠いし、どこに何があるかもわからないし。神戸、大阪、京都などから、JR湖西線に乗り新旭駅で下車します。前の日に龍谷大学の竺先生から、「何にもないところやで。食べもんを持っていかんかったら、飢え死にするでぇ」と脅かされていたのですが、それは10年前の姿で、駅前の地場産ビルで安くて豪華絢爛な昼食を食べてから、町(市)主催のツアーに合流しました。

案内はボランティアの方が数人ついてくださり、主な説明は高校の先生(専門は数学)がしてくれました。最初にバスで湖岸に行き、土筆で埋まった土手から琵琶湖を眺め、水鳥や葦原に圧倒されました。琵琶湖の向こうには雪を頂いた比良山系が屏風のようにひろがっています。次いで三五郎さんの船着き場で、NHKの映像で見た三五郎さんの船やそれをつつんでいる水辺の景観を堪能しました。春の花に包まれた、梅花藻が生い茂る小川をハヤの群れが通り過ぎる文字通りの「春の小川」に沿って針江の集落に入りました。残念ながら三五郎さんはまだ入院中とのことで、会うことは出来ませんでしたが、琵琶湖と行き来をしているハリヨ(五里)が住みついている集落の水路を辿りました。この水源はすべて比良山系の伏流水で、村のいたるとことから湧き出ています。ほとんどの家では湧き水を利用した「かばた」と呼ばれる井戸があり、生簀のような囲いの中で鯉が群れ、そこに透き通った水を引いており、そこで野菜や果物を洗ったり冷やしたりしています。最後に、村の公民館で集落の方から、地場産のもち米で作った餅のしゃぶしゃぶ、鮎の天ぷら、地酒をご馳走になりました。すばらしい景色は心を打たれましたが、もっとも感動的だったのは土地の方々との交流だったような気がします。早春の湖北の「蒼い宇宙(今森光弘)」を堪能した1日でした。詳しくは谷尾さんや平本さんも見聞録を書いてくれるような気がします。

写真はこちら   http://album.nikon-image.com/nk/NAlbumPage.asp?un=57256&key=554210&m

 

● 針江生水(しょうず)の郷 エコツアー(4月9日)報告  (谷尾桂子)

私が今回のエコツアーを知ったのは4月7日の夜、玉置さんからのメールでした。天気は良さそうだし、ということだけで参加を思い立ちました。メールに書かれてあったキーワード「滋賀県新旭町探索(かばた、針江の水路、三五郎さん)」の意味も確認せず、当日は電車に乗り遅れ(JR湖西線新快速は1時間に1本)、筆記具、デジカメも忘れ、間抜けな様。土曜日の朝は頭も体も働きません。でも、以下に書きますように、得るところが沢山ありました。きっかけを下さった玉置さんに感謝しています。

京都市内は桜が満開でしたが、電車で琵琶湖に沿って北に進むにつれ、だんだんと桜のつぼみは固く、琵琶湖の北西の地域では厳しい冬がやっと終わったというところでしょうか。針江生水の郷委員会(ボランティア)の方の案内で、琵琶湖のヨシやノウルシ群生地、水鳥、伏流水を水源とする針江大川に生えている梅花藻、湧き出てくる地下水(生水−しょうず−)をたくみに利用されているお家を何軒も拝見しました。土曜日の午後、晴れ晴れとしたひとときを過ごす事が出来ました。

私は、地元委員会による企画運営のされ方についても、興味を持ちました。いいなあと思ったことは、

     地元が見せたいものと、ツアー客が見たいものがぴったりと合っていること。(私はテレビ番組を見ていないのですが、事前にNHK取材があったことで、お互いそのイメージを元にしているのでしょうか。)

     無理な受け入れをしていないこと。(観光協会主催のツアーとしては月に2回、1回当たり20人程度。

水鳥を驚かせないため、距離をとって観察する。など。)

     最後のアンケート内容が詳細であり、今後の取り組みにつなげる、という意図が良くわかりました。また、このツアー客を受け入れることを通じ、地元の方の環境意識にも働きかけるところがあるとも聞き、環境(あるいは地域つくり)に対する委員会の「志」を感じました。

     「かばた」は今も各家庭にとっては炊事場、洗面所etcです。また、三五郎さんの船がある場所にしても、それぞれのお家のプライベート空間に入ることになります。辺りはきれいに掃除してあり、季節の草花が植えられていました。見知らぬ客が入ることを許していただける地元の方の理解と、様々な御協力があってこのツアーが成り立ちますし、このような受け入れ態勢を取りまとめられた実行委員の方の働きに頭が下がります。

さいごに、

・ 湧き水を使っているお豆腐屋さんがあり、1丁買ってしまいました。我が家に着く頃にはいい具合に水分が抜け、身の締った豆腐でした。水の良いところの豆腐はやっぱり美味しかった。(次に買うなら、タッパー持参、水ごと持って帰ったら、やわらかい豆腐が味わえるのかも。)

観光協会の里山水辺ツアーはhttp://www.biwa.ne.jp/~windmill/ibennto/haikinngu/satoyamamizube/haikinnguhyoudai.htm

伝統漁法「モンドリ漁」については、  http://www.jijigaho.or.jp/cabi/041015/fukei02.html

「かばた」については  http://www.jijigaho.or.jp/cabi/041015/fukei03.html

 

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