2007年度大気環境学会関東支部SPM部会・酸性雨部会合同講演会に参加して

中込和徳 (長野県環境保全研究所)                                   

 

 平成20227日に港区立港勤労福祉会館において開催されました、標記講演会に参加させていただき、関係の方々には深く感謝申し上げます。今回は、「関東及びその周辺地域の大気環境の質的変化および今後の展望」という統一テーマのもと、酸性雨とSPMの合同講演会という新しい形で開催されました。酸性雨については千葉県環境研究センターの押尾先生から、SPMについては山梨県衛生公害研究所の清水先生から、現在、関東地方環境対策推進本部大気環境部会の中に組織されている両共同調査会議の成果が総括されるとともに、酸性雨・SPM問題に関する今後の課題が提示されました。また埼玉大学の坂本先生からは、今後の大きな課題である微小粒子について、特に炭素成分に関する最先端の研究成果等を御講義いただきました。3題の講演の後には総合討論の時間も設けられ、押尾先生の司会のもと、酸性雨とSPMに関する様々な課題について活発に議論されました。

 最初の押尾先生の講演では、ロンドンスモッグに始まった酸性雨問題の主因が、燃料の良質化対策による硫黄分の低減により、硫黄酸化物から窒素酸化物に質的に変化してきた経緯について、具体的な事例を挙げてわかりやすく説明していただき、移動発生源等からの窒素酸化物やアンモニアの対策が今後の課題として残されていることが良く分かりました。また、三宅島火山ガスの影響や、発生源の排出状況の推移をもとに、SOxおよびNOxの経年推移の全体像を、測定法の変更による影響なども考慮して、解説していただきました。昭和49年に13県でスタートした、関東酸性雨共同調査については今年度で終了となりますが、押尾先生の講演による総括をふまえて、今後も酸性雨・SPM問題への更なる取り組みが必要だと強く感じました。

 続いて清水先生の講演では、昭和58年に13県で開始され、現在では関東甲信静に広がったSPM共同調査について、平成元年以降の調査結果をもとに、大気常時監視データの解析結果と合わせて総括されました。自動車排ガス規制等に対応した粒子状物質濃度の低下が全体で見られ、特に微小粒子については、冬期は、主因である自動車等の燃焼粒子の寄与も減り、全体に低レベルになったのに対して、夏期は近年、二次粒子の寄与が高くなっていることが示されました。そこでSPM共同調査会議では、来年度から調査内容をリニューアルし、今後の課題であるPM2.5に焦点を絞り、主因である二次粒子について前駆物質を含めた新たな調査を開始することが報告されました。

 最後に坂本先生の講演では、二官能基型カルボニル化合物の二次生成エアロゾルへの寄与や植物起源VOCs等の微小粒子への寄与に関する最先端の研究内容をご紹介いただくとともに、近年の微小粒子濃度低下の原因について、ディーゼル車対策による元素状炭素濃度の低下、廃棄物焼却炉対策による塩化物イオン濃度の低下、および両対策によると思われる有機炭素濃度の低下が主因であることを、わかりやすく御説明いただきました。今後の課題としては、微小粒子の主成分の一つである、バイオマス起源粒子等の含炭素粒子の挙動解明が重要であることが示されました。

講演会の締め括りとして行われた討論会では、1998から99年度にかけて大気汚染物質濃度が大きく低下した原因、粒子状物質濃度が冬に大きく下がっている原因、粒子状物質等のサンプリングにおけるアーティファクトの問題、アンモニアに関する今後の課題、SPM共同調査におけるレボグルコサン等の有機炭素成分の測定可能性等々、様々な話題について、活発に議論されました。特に、全体的な解析に加えて個別データで見直すことの重要性や、SPMNOxを合わせた解析の有効性に関する指摘は大変示唆的でした。

 講演会の中で繰り返し指摘されていたように、酸性雨・SPM等の環境問題に対して適切な対策を講じ、その効果を検証し、問題を解決してゆくためには、同じ手法で長期間にわたり、根本となる基礎データを確実に積み上げることが、とても重要であることが再認識されました。また押尾先生が講演の中で仰ったように、光化学スモッグ問題と酸性雨問題は表裏一体のものであり、同じ現象を切り口を変えて見ているという指摘は、今後ますます重要になるこれらの問題について、オキシダント、SPM、酸性雨の3つの視点を統合した調査・解析が必要であることを示唆しているように感じました。

最後になりましたが、押尾先生は今年度一杯で、めでたく県職員を御卒業され、今後は「さくら生態研究所」(NGO)を立ち上げ、地元の小学校や公民館活動などを支援される御予定とのことで、ご活躍を祈念するとともに、今後とも御指導くださいますよう、お願い申し上げます。

 

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2007年度東京講演会報告

友寄 喜貴( 沖縄県衛生環境研究所)

 

2008227()、「2007年度大気汚染対策、SPM及び酸性雨汚染に係る合同講演会(大気環境学会関東支部SPM部会・酸性雨部会合同講演会)」に参加させていただきました。

 

例年は酸性雨東京講演会として開催されるのですが、今回は大気環境支部SPM部会と酸性雨部会、酸性雨研究会、そして関東地方環境対策推進本部大気環境部会の共催として開催されました。

 

国環研の村野先生、埼玉県の福田氏のご挨拶で始まった会は、酸性雨1題、SPM2題のご講演の後、総合討論が開催され、酸性雨研究会会長の大政先生(東京大学)の閉会のご挨拶で締めくくられました。

 

酸性雨分野からは、「関東及びその周辺地域の酸性雨について」と題して、千葉県環境研究センターの押尾敏夫先生によりご講演がなされました。押尾先生は今年3月に千葉県職員をご卒業されるということで、先生の30数年にわたる関東を中心とした酸性雨調査についての総合的なご講演となりました。面白いなぁと思ったことは、今回、この記念講演的な場を押尾先生ご自身でセッティングされたとおっしゃっていたことでした。きっと私たち後輩にたくさんのことを伝えたかったのだろうと思います。ご卒業後も環境に関わる活動をされる予定であることもご講演の最後にアナウンスされていました(詳細については、ご本人からメールニュースへのご寄稿があるかもしれないので、この場では記載を遠慮させていただきます。)。これからも私たちのよきアドバイザーとしてさまざまなサポートをしてくださる頼もしい存在であるとともに,時には厳しくご意見くださることでしょう。

ご講演は、ロンドンスモッグ、40年程前に千葉県で発生したSOXによる梨などの植物被害の話に始まり、30数年前に先生が奉職された後の関東を中心とした酸性雨問題の話題へと展開されました。関東地方で1974年頃に湿性大気汚染が問題となり、その調査が開始された当初から、先生は関わってこられたそうです。本・文献などでは読んだことある湿性大気汚染問題ですが、実際にその問題となった当初から調査に携わってこられた方のお話は,その言葉ひとつひとつに重みがあり,とても興味深く拝聴させて頂きました。酸性雨調査の解析では、三宅島噴火の他にも、軽油中のS分規制、自動車NOX法などの施行との関連などについても解説されていました。30数年もの間、酸性雨分野の発展に貢献されてきた先生のお話は45分ではとても短く感じ、まだまだ拝聴していたい気持ちになりました。

ご講演の後、座長の宮城県保健環境センター北村洋子先生から、押尾先生のこれまでのご活動に対する感謝とこれからのご活躍を激励する意味を込めて花束が贈呈されました。

 

SPM分野からは、「関東及びその周辺地域のSPM汚染について」と題し、山梨県衛生公害研究所の清水源治先生から、「大気中の微粒子について」と題し、埼玉大学大学院理工学研究科の坂本和彦先生から、2題のご講演がなされました。

私自身、SPMのことはほとんど無知であり、今回のご講演で初めて耳にするようなことも多く,とても興味深く勉強させていただきました。難しいことはわからなかったのですが、関東周辺では・ディーゼル車に対する各種規制が奏効し、SPMは低減してきたこと、・微小粒子および粗大粒子中の成分組成等を検討すると、その起源や寄与率が変化してきているということなど、が示されていたと思います(間違っていたら、ごめんなさい)。その他にも、因子分析による検討や、レボグルコサン濃度から推定したバイオマス起源の寄与などについても、ご講演されていました。

 

3名の先生方のご講演で、共通して強調されていたことは、「同じ手法で長期間調査を継続してきたこと」の重要性でした。これらのデータの蓄積により、経年的な変動や効果の検証が可能となるのであり、押尾先生のおっしゃった「(測定方法の変更があったことによりデータが変化してしまうような場合があり、)測定方法の変更が間違った情報を与えてしまう可能性を秘めている」という言葉はとても重い言葉だなぁと思いました。

 

その他にも様々な話題が提供されましたが、全体としての印象は、私の住んでいる沖縄や西日本では大気汚染の問題は越境的な関心が中心になっていますが、関東ではまさに関東で起こっている問題であり,認識が大きく異なるなぁという印象を受けました。また、酸性雨講演会だけでは得られない情報・知見をたくさん伺うことができたのも合同開催(懇親会も含めて)のメリットだと感じました。これらのことも含めて、私にとって、とても有益な講演会になりました。

講演会の準備に携わった皆様方,たいへんお疲れ様でした。そして,ありがとうございました。

 

末尾となりましたが、普段の講演会なら、ぼーっと座っていただけだったかもしれないところを、村野先生に宿題を仰せつかったことで最後まで集中して拝聴することができましたことに感謝いたします。

 

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2007年度大気環境学会関東支部SPM部会・酸性雨部会合同講演会

 

主催:大気環境学会関東支部SPM部会・酸性雨部会、酸性雨研究会

関東地方環境対策推進本部大気環境部会

共催:大気環境学会都市大気エアロゾル分科会・酸性雨分科会

 

日時:2008年2月27日 13:15〜17:00

             (受付 13:00から)

 

場所 港区立港勤労福祉会館 1F 第1洋室

http://www.city.minato.tokyo.jp/sisetu/syoko/kinro/index.html

      東京都港区芝5-18-2(電話03−3455−6381)

      都営三田線・浅草線三田駅A7出口左

      JR田町駅西口 第1京浜国道と日比谷通り交差点角

 

申し込み2月20日までにお願いします。

先着100名とさせていただきます。

    申込先電子メール(g738331a@pref.saitama.lg.jp)、またはFAX(0480702055

        いずれも埼玉県環境科学国際センター 松本・米持あて

      (メールあるいはfaxには、

件名(2007大気環境学会講演会申し込み)、

出席者氏名,所属,住所,連絡先,学会員か否か,懇親会参加/不参加

を明記してください。)

 

  ※講演会の詳細については、千葉県環境研究センター押尾(TEL 0436-21-6371)まで、お問い合わせ下さい。

 

参加費:会員(大気環境学会及び関東知事会関係)無料、

非会員(500円

 

テーマ:関東及びその周辺地域の大気環境の質的変化および今後の展望

 

【趣旨】関東地方には日本の人口の1/3が生活しており、かつその工業生産規模も非常に大きいものがあり、NOxSPM汚染等については非常に厳しいものがあり、国は固定発生源に対しては総量規制および自動車に対してはNOxPM法を施行、また軽油の質の向上も図ってきた。また、2000年には三宅島の大噴火があり、膨大な硫黄酸化物を中心とした酸性ガスの放出があった。そこで、これらの対策等の経過と大気汚染状況およびSPM汚染、酸性雨汚染について関係者に話題提供していただいて、総合討論により今後について見通してみたい。

 

13:15〜13:00 趣旨説明、主催者挨拶(酸性雨、SPM

 

13:30〜14:15 大気汚染対策の経過及び今後について(仮題)

              坂本和彦(国立大学法人 埼玉大学 大学院理工学研究科)

14:15〜15:00 関東及びその周辺地域のSPM汚染について(仮題)

清水源治(山梨県衛生公害研究所)

 

15:00〜15:15 休憩   

 

15:15〜16:00 関東及びその周辺地域の酸性雨について(仮題)

押尾敏夫(千葉県環境研究センター)

 

16:00〜16:45 総合討論 

 

情報交換会

(申し込み先は講演会申込先へ事前にお願いします。約2時間を計画しています。)

 

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