真夏恒例の酸性雨講演会が天神祭の大阪市で開催

 

 第10回近畿・酸性雨講演会が725日、大阪市(大阪府立労働センター:エルおおさか)で開催された。この真夏恒例の行事はここ2年間、金沢市と京都市で開催されたこともあり、久しぶりのホームグラウンドに戻っての開催となった。本講演会は19926月を第1回とし、その後4年間はエルおおさかで催されており、名実ともにホームグラウンドに帰ってきた感があった。会場は天神橋のまん前にあり、会場周辺は夕刻に近づくとともに、大阪の天神祭のクライマックスである船渡御や花火に包まれた。約70名の参加者の下、「酸性雨など環境監視におけるサイティングの重要性」をメインテーマとして4人の演者が講演した。大気環境学会近畿支部長である池田有光・大阪府立大学教授の挨拶に引き続き、西川嘉範(大阪府公害監視センター)、平木隆年(兵庫県立公害研究所)および谷尾桂子(京都府)の3名を座長にして会は進行された。

 今回の講演会の主旨は、「環境監視においては、測定地点の選定は重要であり、データの信頼性確保の基本である。行政枠を越えた隣接2地点の取り扱い、常時監視測定局データ活用の限界性、理想的な地点と現実の局のギャップなど、現実の調査研究においてもとまどいは大きい」ことに対する回答を求めて設定されたものである。

 最初の演者である村野健太郎氏(国立環境研究所)は「21世紀における大気汚染と酸性雨問題の課題」と題した講演を行った。「環境問題において防止対策を採る場合には科学に基づいた環境研究の結果が求められるが、実際には明かにされる知見は少なく、政治は不確実性の元で対策せざるを得ないため、理想と実利的の狭間で揺れ動く」と前置きし、世界、東アジアならびに日本での酸性雨と大気汚染問題をわかりやすく解説し、最後に地方自治体の果たすべき役割を示し、期待感を持って講演を締めくくった。

2番目の演者である日置 正氏(京都府保健環境研究所)は「地方自治体における大気汚染や酸性雨測定局の適性配置」と題して講演した。京都府では大気汚染常時監視測定局38局、酸性雨測定局8局を有している。三宅島噴火に伴う二酸化硫黄高濃度事例を解析する際に、既存の測定局のデータでも限界はあるものの有益な解析が行えたこと、また京都府下の南北に離れた2地点であっても、酸性雨中の微量金属成分の地域特性が明かにできたことを報告した。

 3番目の演者である溝口次夫氏(仏教大学)は「国レベルにおける大気汚染常時監視測定網の課題」と題し、日本の大気汚染監視網の推移、大気汚染計測の課題を示すとともに、かって環境庁が日本の「国設大気測定網のあり方に関する調査研究」(今後の国設大気測定網と方法の検討)を行った際の座長としての経験から貴重な知見を示された。

 最後の演者である福崎紀夫氏(酸性雨研究センター)は「東アジア酸性雨モニタリングネットワーク(EANET)における測定地点について」と題して、EANETの活動内容を紹介するととともに、酸性雨モニタリングを題材にしてQA/QCの重要性とりわけサイティングの重要性を説明した。その中でモニタリング目的に応じたモニタリング地点の分類、モニタリング地点の選定基準を詳細に説明した。

 講演会終了後、参加者の半数以上が参加して遅くまで懇親会が続けられた。来年度は富山市で開催する予定である。               (文責:玉置元則)

 

 

酸性雨大阪講演会へ戻る

 

トップへ戻る