大阪(Lおおさか)で2度目の酸性雨講演会を開催

 

 19936月に「酸性雨調査研究の基本的視点」と題して大阪での2度目の酸性雨講演会を開催した。場所は前回と同じエルおおさかで、共催団体は前回とほぼ同一であった。講演会は村野健太郎氏(国立環境研究所)、小山 功氏(東京都環境科学研究所)および田口圭介氏(大阪府公害監視センター)を座長として進行された。

 最初に玉置元則氏(兵庫県立公害研究所)が「酸性雨調査研究の到達点と現在の課題」について次のように講演した。現在、酸性雨による生態系への影響の評価は沈着量(濃度×降水量)を基本にして行われている。この中での成分濃度やpH測定の意義付けについての問題提起を行った。また、酸性雨データの地域汚染と地球規模汚染解明への活用区分、酸性雨の定義、日本でのモニタリング体制および測定法の問題点を整理した。さらに、自動測定機、測定精度、バックグラウンドデータ、森林調査、洋上調査などの最新のトピックスを紹介した。

 次に松本光弘氏(奈良県衛生研究所)が「酸性雨調査でのpH測定における問題点」と題して次の内容の講演を行った。降水の汚染の程度は基本的にはその中に溶解しているイオンの種類とその濃度から総合的に判断されるべきではあるが、酸性雨調査におけるpH測定は酸性雨現象を解明する一つの出発点であり、指標としての有用性がある。しかし、10μS/cm以下の低導電率の降水の指示値の安定性や再現性はきわめて悪い。これは電極の構造上避けられないことであろうか。液間電位差などの問題点の整理、標準操作法、フローセルなどの紹介も行った。これに対して、押尾敏夫氏(千葉県環境研究所)から、「模擬酸性雨試料のpH測定結果」、後藤良三氏(東亜電波工業)から、「酸性雨調査でのpH測定における問題点」および大川浩美氏(堀場製作所)から、「pH電極の特性」の話題提供があった。

 次いで、市民運動などによる酸性雨ネットワークからの報告があった。現在、環境庁では自動測定機を基本にした国設29局での酸性雨モニタリングを実施している。また、自治体研究機関でのネットワークも形成されている。いっぽう、これとは別に市民運動などによる酸性雨ネットワークでも酸性雨のデータが出されるようになってきた。以下のグループからの発表があった。大阪北生協自主サークル「酸性雨グループ」(福島栄子氏:活動状況および92年度酸性雨測定結果)、コープこうべ環境問題推進事務局(丹羽めぐみ氏:コープこうべの酸性雨測定活動方法)、堀場製作所(大石正行氏:パソコンネットワークによる酸性雨調査)、兵庫県高校酸性雨ネットワーク(小林好樹氏:姫路南高校、ネットワークによる酸性雨調査)、酸性雨調査研究会(伊瀬洋昭:全国公害患者の会:酸性雨調査に関する市民運動の経験をつうじて)、市民バンク・エコ研究室(増山博康氏:全国酸性雨測定ネットワーク)および高槻・市民自主講座(植村振作氏:市民による酸性雨調査)

 今回も150人程度の参加があったが、とくに近畿地方以外の地域から30名の方が遠路駆けつけてくださったのが印象的であった。

 

 

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