17演者で大阪地域3回目の酸性雨講演会

 

 1994年7月に「生態系破壊など酸性雨現象に係わる諸課題」と題して3回目の講演会をエルおおさかで開催した。今回の特徴は酸性雨研究の最先端の情報を提供するため、近畿地方で酸性雨研究に携わっている主要な研究者を総動員するとともに、国立環境研究所からの最新研究成果の発表をいただいたことである。座長は、西川嘉範(大阪府公害監視センター)、大原真由美氏(広島県環境センター)、松本光弘氏(奈良県衛生研究所)、藁科宗博氏(大阪市環境科学研究所)、田口圭介氏(大阪府公害監視センター)、小山 功氏(東京都環境科学研究所)、広瀬 恢氏(京都市)と玉置元則氏(兵庫県立公害研究所)が担当し、朝930分から17時まで続けられた。

最初に 関西の大気汚染ならびに酸性雨研究の重鎮である、宗森信氏(大阪府立大学工学部)が「酸性雨問題の現状と今後の課題」と題して概要を述べられた。ついで、精力的に酸性雨などを用いて生徒に環境教育を実施されている川嶋宗継氏(滋賀大学教育学部)が「小中学生における「酸性雨」学習」を具体例を引用して説明された。相賀一郎氏と平野高司氏(大阪府立大学農学部)は「酸性雨などの植物への影響」を、鳥居厚志氏(森林総合研究所関西支所)は「土壌酸性化とその評価に関する研究手法」を説明された。池田有光氏(大阪府立大学工学部)は「バックトラジェクトリーによる解析手法」を、前田泰昭氏(大阪府立大学工学部)は「大気中の窒素酸化物の変換過程」の研究成果を披露された。

畠山史郎氏(国立環境研究所)は「大気中における硫黄酸化物の酸化反応」を、村野健太郎氏(国立環境研究所)は「酸性霧による影響の特徴と日本での実態」を、国立環境研究所での研究成果として発表された。北村守次氏(石川県保健環境センター)は「日本の積雪と酸性融雪水の流出現象」を、谷尾桂子氏(京都府衛生公害研究所)は「日本海側の地域特性から見た海塩粒子」を、自治体研究機関での研究成果として発表された。笠原三紀夫氏(京都大学原子エネルギー研究所)は「大気汚染物質の変質と乾性・湿性沈着降雨洗浄作用」を、片山幸士氏(京都大学農学部)は「森林生態系での酸性降下物の挙動」を、國松孝男氏(滋賀県立短大農学部)は「降水過程による閉鎖性水域への負荷量」を、大学での研究成果として発表された。

さらに、ユニークな研究として、平木隆年氏(兵庫県立公害研所)は「洋上調査による地球規模での降下物評価」を、加藤進氏(三重県環境科学センター)は「酸性雨データの統計的解析法」を、押尾敏夫氏(千葉県環境研究所)は「酸性雨自動測定機の影響調査への活用」を発表された。最後に、西山要一氏(奈良大学文学部)が「東大寺・正倉院など文化財への影響」で講演会を締めくくった。参加者は220名の多数であった。

 

 

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