名古屋で初めての酸性雨講演会を開催

 

 19967月に初めて名古屋市で酸性雨講演会を開催した。これは、全国公害研協議会・東海近畿北陸支部の酸性雨共同調査グループ主催の酸性雨情報交換会が翌日から高山・乗鞍岳で開催されることと、名古屋市環境科学研究所からの暖かいお誘いの言葉があったことによって実現した。共催団体として大気環境学会中部支部などが開催を支援してくれた。座長は村野健太郎氏(国立環境研究所)、田口圭介氏(大阪府公害監視センター)と竹中千里氏(名古屋大学農学部)が担当し、三宅貞和氏(名古屋市環境科学研究所長)のご挨拶をいただいた。講演会の主題は「酸性雨による森林生態系等への影響」とした。

 最初に酒井哲男氏(名古屋市環境科学研究所)が「名古屋市における酸性雨と土壌調査について」を講演した。主な調査は、酸性雨については昭和58年以前にも調査はしているが、全国的に統一された手法での調査は昭和58年に環境庁が行った第1次調査に参加して以来であり、この調査は現在まで継続している。観測地点は当研究所と鳴海配水所の2地点で行っている。土壌調査に就いては平成3年度からに調査を開始した。さらに大気汚染による金属腐食調査や短期的な調査も実施している。

 新藤純子氏(農業環境技術研究所)が「酸性雨に対する生態系の感受性の評価、臨界負荷量の推定と問題点」を講演した。新藤氏は「臨界府下量」の日本への適用の妥当性などを系統的に研究されている。講演では臨界負荷量の概念の説明に引き続き、主に以下の点について述べられた。@定常マスバランスモデルによる臨界負荷量推定、A日本への適用、B鉱物風化速度の推定精度に関する検討、D手法間の比較および推定法の問題点。

 小川眞氏(関西総合環境センター生物環境研究所)が「ナラ類の枯死と酸性雪」を講演した。小川氏は日本海側でのコナラなどの枯死を現地調査し、その原因解明を進めておられるこの分野の第1人者である。講演では、日本海各地でのコナラの枯死の状況を自ら歩いた現地調査の結果をもとにして地図を用いて具体的に示された。原因についてはまだ解明されていないとしながらも、雪、根、きのこ、木の衰弱、カシノナガキクイムシ、枯れの間には「風が吹いたら桶屋がもうかる」といったことがあるかもしれない、として、酸性雪による樹木の衰退から見てゆく必要のあることを示された。

 また、この講演全体について、コメンテーターとして、石坂隆氏(名古屋大学大気水圏科学研究所)は自らの乗鞍岳における酸性霧調査の結果を交えながら以下の点について述べられた。@酸性霧・酸性雨の形成と森林の生育に及ぼす影響の調査、A大気質の特性と酸性霧・雨の出現状況,B森林への影響。

 参加者は150名を越えた。

 

 

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