大阪に戻って第6回酸性雨講演会を開催

 

 19977月に大阪府教育会館(たかつガーデン)で第6回の酸性雨講演会を「酸性雨の化学と森林枯損解明の科学」と題して開催した。座長は村野健太郎氏(国立環境研究所)、田口圭介氏(大阪府公害監視センター)が担当した。

 最初に玉置元則氏(兵庫県立公害研究所)は「日本の森林地域での酸性雨調査の現状、酸性雨と森林枯損解明の研究を支えてきた人々」を講演した。まず、欧米での森林生態系の破壊と比較しながら、日本での森林衰退の現状を、スギ、モミ、コナラ・ミズナラ、マツなどを例にあげながら日本列島の地図上にそれらを落としながら説明した。次いで環境庁の第3次酸性雨対策調査、全国公害研協議会の酸性雨全国調査と林野庁の酸性雨等森林被害モニタリング事業など日本での酸性雨調査研究の実態を説明した。次いで、森林エコシステムの測定、植生調査と土壌調査の森林生態系への影響調査手法を説明した。最後に、神奈川県大山のモミなどの衰退、福岡県宝満山のモミの衰退、北海道樽前地区のストローブマツの衰退、日本海側でのナラ類の衰退および日光男体山でのダケカンバなどの衰退に対する調査研究の現状を説明した。

 森邦広氏(ナチュラリスト・登山家)は「谷川岳1275回登山で見た酸性雨・大気汚染の進行と自然環境の変化」を講演した。48歳の昭和58年夏、初めて谷川岳に登って以来この山に魅せられ、平成5年には新潟県三条市から群馬県水上町に転居してまで登山にかけた人生とその中で環境の異変に気づき酸性雨などの調査に取り組んできた経験を生々しく話された。この間、最高最低気温、天気、風向風力や降水量の気象的要素に加え、二酸化窒素や雪、霧、雨の成分まで測定してこられた。

 鳥居厚志氏(森林総合研究所関西支所)は「酸性雨に関連する土壌調査法と日本の土壌の現状」を講演した。自らの研究成果をもとに以下の点について説明された。@森林の回復と土壌の発達、Aはげ山の土壌の層位発達とpHの変化、B未熟土壌の10数年間でのpH変化、Cスギ樹幹周辺の表層土壌pH、D土壌の緩衝能と酸性化。一見とっつき難い土壌について、きわめてわかりやすい語り口で土壌の歴史、土壌の種類あるいは土壌の調査法の解説も含めて説明をされた。

 岩坪五郎氏(近畿大学農学部)は「降水と森林流失水の水質、降水と森林生態系の物質循環」を講演した。1961年以来、降水、林内雨、樹幹流、土壌水、渓流流出水量とそれらに含まれる溶存物濃度を測定し、それらを通じての森林生態系の物質循環の解明を目指されてきた主に京都大学農学部での研究成果を報告された。主な内容は@京都、滋賀森林地域の降水溶存物質量の経年変化、A降水と森林流失水に含まれる溶存物質量の比較、B渓流流出水質の広域的比較、であった。

参加者は217名であった。

 

 

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