大阪での7回目の酸性雨講演会を開催

 19987月に大阪市・アピオ大阪で第7回酸性雨講演会を、「21世紀における東アジアと日本における酸性雨の課題」と題して開催した。座長は田口圭介氏(大阪府公害監視センター)、角田 寛氏(岐阜県保健環境研究所)と小川今日子氏(徳島県環境管理課)が担当した。

 最初に村野健太郎氏(国立環境研究所)が「東アジアと日本における酸性雨の現状」を講演した。村野氏は「酸性雨という言葉は、古くは1980年代に英国で初めて使用された。当時は産業革命による工業発展のために、工業都市の近傍では大気汚染がひどかった。この当時降った雨を表すために使用されたのである。酸性雨被害を人々が最初に認識したのは1950年代、ノルウェーなどの北欧3国で湖沼から魚がいなくなったことが釣り人の間で問題になったときのことである」と前置きし、酸性雨問題への行政的な

取り組み、酸性雨の研究、酸性雨対策および酸性雨問題への取り組みの今後の課題、について説明された。

 池田有光氏(大阪府立大学工学部)は「東アジア地域における大気汚染物質の輸送過程」を講演した。「東アジア地域の大気汚染物質の輸送現象は大きな季節的特徴をもっている。広域的に見ると、日本では夏季には南方風系の風が卓越し、冬季には北東風系

の風が卓越する。したがって汚染物質の発生源とそれが沈着する地点の間には明確な特徴が現れる。そのことは比較的汚染物質の輸送過程の解析をやりやすくしていると言える。しかし質的に統一された環境モニタリングデータと発生源データなどが今日まで同地域で不足していた。そのことが汚染物質の輸送現象・沈着量をはじめてする環境負荷量の解明に妨げになってきたことは否めない」としたうえで、大気汚染物質輸送過程の沈着モデルによるアプローチについて、沈着モデルの利用、沈着モデルに含まれる課題と諸モデルの計算結果の比較について述べられるとともに、沈着モデルの計算結果が示唆するものについても説明された。

 西山要一氏(奈良大学文学部)は「東アジアと日本における文化財への酸性雨の影響」を講演した。西山氏はまず、石造文化財の被害について、@韓国・中国の文化財被害、A日本の文化財被害、Bヨーロッパの文化財被害に分けて説明された。次いで、金属文化財の被害について、@東大寺大仏殿の金銅八角灯篭の被害とAヨーロッパの金属文化財の被害について具体的に説明された。

 生田和正氏(水産庁養殖研究所日光支所)は「酸性雨が魚類におよぼす影響」を講演した。「酸性雨が東アジア地域における陸水生態系や水産資源にどのような影響を与えているかに関し基礎的な研究が推進されており、酸性環境における魚類の生物現象に関する様々な知見が得られている」とし、@環境が酸性化するとなぜ魚は死ぬのか、A酸性でも死なない魚、B酸性環境が魚類に与えるストレス、C魚類の繁殖機能に及ぼす影響、などを説明された。

 また、[地域における酸性雨調査や環境教育の実例]として、黒木長通氏(三田・緑の環境クラブ)が「市民の手により三田市で始めた酸性雨調査」を、鈴木顕道氏(曹洞宗近畿管区教化センター)が「曹洞宗の酸性雨調査、宗教者としての取組み」を説明された。

 

 

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