45回大気環境学会年会 酸性雨分科会に出席して

松本利恵(埼玉県環境科学国際センター) 

 

学会に参加された皆様、お疲れさまでした。また、秋田では何かとお世話になりありがとうございました。

酸性雨分科会では、「酸性雨長期モニタリングの課題」をテーマに、(1)酸性雨モニタリング成果の行政的・技術的対策への活用【玉置元則氏】、(2)一地方自治体における酸性雨モニタリングの現状と今後の課題【北村洋子氏】、(3)秋田の酸性降水・霧の長期フィールド調査結果と今後の展望【小川信明氏】の3題の講演があり、活発な質疑討論が行われました。まず、貴重なお話をいただいた3人の講師の方々に感謝いたします。講演の詳しい内容は省略させていただきますが、私の思いついたままの感想は次のとおりです。どうしても自治体での調査研究の進め方に関心が強くいってしまい、なにか分科会の感想というより個人の愚痴のようになってしまいました。

 玉置氏、北村氏は、自治体の酸性雨モニタリング継続に対する逆風について指摘されていました。

現在のように、自治体での予算縮小、人員削減が進められている状況では、酸性雨に限らず法的根拠(環境基準など)や世間一般(特にマスコミ?)の関心(流行)から離れた物質のモニタリングの継続は難しい風潮になっているように思われます。個人的には、何かあったとき(火山噴火、工場等の事故etc)の影響や被害状況把握のための通常時の対照データとして必要になりますし、また、環境の状況変化(特に、悪化)の早期発見につながるので、たとえ単なる測定値の蓄積であってもモニタリングの継続は重要と考えます。しかし、今は観測値の積み重ねだけではその価値はなかなか認めてもらえず、測定するだけではなくその結果を発展させて、どう(施策に)生かしていくかが求められています。また環境行政全体をみれば新しい問題が次々に話題となり対応に迫られる中、人員と予算が限られている現状では、スクラップ・アンド・ビルドはある程度、仕方ないという気持ちもあります。

したがって、これからもモニタリングを続けるためには、世間を納得させる、それなりの理由付け(目的)と成果が必要であり、それを捻出するために、頭を悩ませている方も多いと思います。分科会でも示されたように、行政にとってこれだけ役に立つというアピールや、広報や環境学習などを通じた県民への意義や成果のPRも必要ですし、研究成果という点では論文や学会発表などが要求されます。しかし、1人あたりの業務が増加し、時間に制約がある現状ではこれらを実施していくことは結構難しいことです。

 私は、酸性雨の担当となって今年で5年目です。長いのか短いのか微妙な位置ですが、まだよく解らないところも多く勉強不足を自覚しています。そのため、設備の面から大幅に測定項目を変えることもできないという事情もあって、調査研究を行うための目的の設定には、いつもたいへん苦労しています。酸性雨調査の目的として、国は今、大陸の影響というのを全面に出しているようですが、大陸に面していない自治体にとっては、今回の分科会で北村氏の提示されたような地域汚染(局所汚染)の評価というのも一案かという思いを強くしました。また、国、自治体、大学では、それぞれ立場や立地条件が違うのですべてにあてはまるというのは無理かもしれませんが、酸性雨研究会でヒントとなるような方向性やポイントを是非、示していただきたいと思いました。

 

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