『将棋世界』誌2008年6月号より、「第1回詰将棋解いてもらおう選手権」と題した企画が連載されました。
どんな内容かというと、プロ棋士6人が創作した詰将棋を作者名を伏せて出題し、読者投票によって作品の順位を決めるというもの。ただし、投票の権利は問題に正解した読者にしか与えられない(正解手順が判らない事には作品の評価のしようがないのだから、まあ、当然だ)。
という事で、いかに作品の内容と難易度のバランスを考慮して創作するかが作者の腕の見せ所となった。
ちなみに、僕は投票には参加しませんでしたが、毎号自分なりに順位付けをしていました。
そこで、僕が各作品に付けた順位及びその理由と、実際の投票結果を併記し比較してみました。
リンク右に★印があるのが読者投票1位の作品、☆印があるのが僕の評価1位の作品になります。
尚、棋譜再生は柿木義一氏の Kifu for Flash を使用しています。
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『将棋世界』誌の企画としてはなかなか画期的であったと思います。
しかし、企画として成功したといえるかというと、ちょっと疑問が残ります。各号の有効投票総数を見てもらえば、5手詰編をピークにそれ以降は参加者が減る一方で、17手以内自由編ではピークの半数近くまで落ち込んでいる事が判ります(ちなみに17手以内自由編1位の作品は5手詰編5位の作品と得票が同数)。
これが何を意味するかというのは書くまでもないでしょう。「誰にでも楽しめる詰将棋」というテーマで創作するには、せいぜい一桁手数が限界という事です。
自分自身の経験を顧みるとその事の裏付けになります。将棋に熱中し始めた初心の頃は詰将棋の本を持ち歩き熱心に取り組んでいましたが、5手や7手の作品でも何十分も頭を悩ます事が度々ありましたから。二桁手数の作品など、とてもとても・・・。かなり詰将棋慣れしてきた現在も解くのはせいぜい15手くらいまでで、『将棋世界』誌の詰将棋は、この企画が始まる前までは森、中田両先生のコーナーしか解いてませんし。
結局、作意が明示されていない詰将棋の評価をするには、ある程度の棋力(と感受性)が必要な訳で、本気で詰将棋初心者に作品の評価をさせるつもりなら、図面と共に作意、変化、紛れなどの解説を載せるべきではないでしょうか。